「――ひま」
全てを吐露しきったチナツが風紀委員の仕事で帰ったしばらく後。
引いていく痛みと反比例するかのように虚無感が湧き出る。
「SNS見るのも飽きたし……」
現場にバッグごと置き去りにされた私の携帯は、チナツがまるまる回収してくれていたらしく、帰り際に充電器とともに置いていってくれた。
だが、SNS中毒でもない人間が、数時間も携帯を
いっそのこと寝てしまおうと思っても、気絶という形で散々睡眠をとった脳は、そう簡単に眠りにつけるはずもなく。
「やほ~、カナメ~」
「お見舞いに来たよ」
「あっ、セキにヘチマ……」
だからこそ、来客というのは今一番嬉しいものだった。
「じゃ~、数週間はこのままなんだ~?」
「うん。まぁ、動きたくても動けないしね」
事前にチナツからMomoTalkが飛んでいたらしく、目覚めていた事には特に触れられなかった。
「無茶ばっかりして……変わらないよね、カナメって」
「ホントにね~」
「……ん?」
セキ、ヘチマの言葉に違和感を感じる。
二人の言葉は、まるで以前に無茶をした私を知っているような口ぶりだ。
しかし……
「……二人って、昔の私のこと知ってるの?」
二人とはゲヘナ学園に入学してからの付き合いだと思っていた。
少なくとも、私の記憶ではそうだ。
しかし、二人と出会ってからは……撃ち合いに巻き込まれる事はあっても、自分から無茶はした事が無いはずだ。
という事は、二人は入学前の私を知っている……という事になるが……
「うん、知ってるよ」
「ま~、カナメは私達を知らなくても無理ないかな~」
「えぇ~……?」
聞いてみれば特に誤魔化されもせず、素直に答えてくれる。
ただ、ヘチマの言うように、私は以前の二人を知らない。
それに、その言い方も気になる。
だが現状、その謎を解くカギが無く、頭が混乱するばかりだった。
「とはいえね~、手榴弾で自爆みたいな事するとまでは思わなかったけどね~」
「う゛っ」
「しかも投げたの私達だし……」
「ぐっ」
改めて考えれば、相当ひどい事を提案してしまった。
あの時はそこまで頭が回らなかったとはいえ、「友達に向かって手榴弾を投げろ」などと命令するなんて、常人の神経ではない。
「……それに関しては、本当に弁解の余地もないよ……」
「ま~でも、結果的に私達は助けられたしね~」
「うん。カナメが居なかったら、どうなってたか分からなかった。
――でも」
ポツリと、こぼれるように続けるセキ。
その声は明らかに落ち込んでいた。
「……私達は何の役にも立たなかった」
突然の自虐に、言葉を失ってしまう。
数秒の間をおいて状況を理解した脳が、なんとか言葉を
「なっ……そんなこと――」
「ん~ん。そんなことあるよ~」
否定しようとした言葉は、ヘチマに
しゃべり方こそ変わっていないが、セキと同じく、明らかに声が落ち込んでいる。
「私達だって銃は持ってる……何なら、カナメより撃ち慣れてる」
「……でも~、撃たなかった――いや、撃とうともしなかった、かな~」
「あの戦力差で応戦したところで、勝ち目なんてない……って思ってたから」
「最初から諦めてたんだね~、私達は」
違う。
その考えは間違ってない。
私だって勝てるなんて微塵も思ってなかった。
ただ、友達を助けるのに必死で、自分を犠牲にするあの戦法くらいしか思いつかなかっただけだ。
「……だからね」
「カナメ――」
「「ごめんなさい」」
謝られても、困る。
私は……
私が望んだのは……
「……も~!! 暗いよ二人とも!!」
暗い世界は望んでいない。
明るく、楽しく生きる。
「終わり良ければ全て良し!! 過去より
過去に囚われている私が言うのは滑稽だ。
でも、だからこそ言える事なのかもしれない。
一度失ったものは、簡単には取り返せない事を、よく知ってるから。
「――だから二人とも……チナツも入れて、三人とも無事で、本当に良かった」
先にチナツにも言った言葉。
今の私の心にあるのは、その一点だけだ。
だって、そのために命を張ったのだから。
ただ、当の二人は目を丸くしており、少しの間、静寂が部屋に訪れた。
「……ほんとさ~」
「カナメってそういうとこ、あるよね……」
呆れたような反応をされ、ちょっとだけ発言を後悔した。
……たしかにちょっと、恥ずかしい事言ったかも……
「……やっぱ今の無し!! 私は何も言ってない!!」
意識すればするほど、さっきの発言が恥ずかしくなってくる。
「だめ~。ちゃんと聞いたからね~」
「私も親友だって思ってるよ。もちろんヘチマも……」
「もういいです~!」
「だから私達も、カナメが生きてて本当に良かったって思ってるよ」
「もういいって、だからぁ~!!」
ニコニコと良い笑顔の二人。
ぶり返される発言に羞恥が止まらず、布団をあげて顔を隠す。
今日の事は、良い意味でも悪い意味でも、ちょっと忘れられなさそうだ。
「身体の痛み、ぶり返しちゃった……」
「なにやってるのホント……」
「ま~、カナメらしいね~」
羞恥心を隠すために顔を隠したときだろうか。
おそらく意識がそっちばかりに行って、いつもみたいな力の入れ方をしてしまったのだろう。
また、痛みと格闘しなければいけないのか……