底辺ダンジョン配信者がトラップ踏んだらTS天使になりました!?   作:星野林(旧ゆっくり霊沙)

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四十五リットルリュック三刀流計画

「よっこらせっと」

 

 レベルが三に上がった事でいつもより荷物が軽く感じる。

 

 この体はレベルアップによる身体能力の上がり幅ももしかしたら大きいのかもしれない。

 

 車で少し気になったので天使病や悪魔病で星持ちの探索者は居るのか調べたところ配信者で三名ほど、有名探索者だと六名ヒットした。

 

 彼ら彼女らは上級ダンジョンで病にかかったらしくレベルダウンしたことで表面上は上級上位の探索者だが、下級ダンジョンで鍛え直して今の地位に居るらしい。

 

 私みたいに最底辺ではなく元々上に居たのが落ちた為に舞い戻るのに相当苦労したのだろう。

 

 彼ら彼女らは舞い戻ってからはチームの顔役やエースとして最前線で戦っているらしい。

 

 まぁ天使病や悪魔病も私は罠だと思ったが、ダンジョンの宝箱から出た宝の一つなのかもしれない。

 

 才能の付与···そう考えれば納得できることも多い。

 

 まぁあくまで私が考えた仮説だし、レベルダウンしたショックで探索者を辞めた人も居るらしい。

 

 私は下がり幅が少なかった事を喜ぶべきかもしれないな。

 

 まぁそんな才能が付与されても現在星持ち探索者の中にあるランキングで大物王と賞金王の二冠を三年間守り続けている星七の探索者の東宮さんことひが神みたいに探索者協会がまだあやふやだった時代に今の上級ダンジョンに初心者時代から挑み続け、世界中のダンジョンを旅して神域に到達した達人というか偉人もいるが···

 

 彼曰くどんなに強くても死ぬ時は死ぬので最もダンジョンにおいて必要な才能は生き残る才能なのだとか。

 

 というか、ひが神率いる日本最強のチーム東会は平均年齢六十歳なのにレベルが高い為か見た目が四十代にしか見えないんだよな。

 

 車を運転しながらチームのことについて考える。

 

 探索者をやっていると中級以上のダンジョンからはチームを組む事が推奨される。

 

 単独で倒すにはモンスターのレベルが一気に強くなるからだ。

 

 それに中級になれば自分のレベルアップのスピードがおおよそ見えてくるので、それに合った人と組めば無理の無いペースで上級を目指すことができるのもポイントだ。

 

 大抵チームは四人から五人、多くても八人と決まっている。

 

 理由はやっぱり移動の問題である。

 

 装具等を置くスペースを込みでファミリーカーの定員が五人、普通車だと四人、ミニバンでも八人が身動きしやすい人数となる。

 

 内訳も四人なら前衛二名、後衛一名、サポート一名、五人だと後衛が一名追加する感じとなり、役割分担がしやすいので組んだ時のメリットがデメリットを上回る。

 

 上級に上がれば企業を中心としたクランへ参加でき、クランになると出来高プラス固定給に各種保障や案件等、新人のコーチング等で安定した生活を送ることができるようになる。

 

 下級はソロで実力を磨き、中級で連携を学び、上級で安定を手に入れる。

 

 これが一般的な探索者の将来設計である。

 

 私も前の体の時はこれを目指していたが、なかなかレベルが上がらなくて色々模索していた時に···って感じだ。

 

 二十代で上級に上がれれば凄く優秀、三十代でまあまあ優秀、四十代で普通···五十代で遅咲きと呼ばれる。

 

 まあ下級でも兼業であれば家庭を持てるし、ダンジョンが現れ始めの企業がバタバタと倒産して、地価も乱高下した時代に比べれば将来の希望が持てるし、子供が生みやすく法整備や自治体からの保障がしっかりしている今は恵まれているのかもしれないが···

 

「配信者として活動していくとしても将来的にはパーティは組みたい。けど···まずは中級に上がる所からだな」

 

 今までの私なら眼の前の事でいっぱいいっぱいだったが、余裕というより希望が出てきたのでこのままレールに乗れるように頑張ろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

「おっちゃん来たよー」

 

 まあ今日来たのは近場のおっちゃんのダンジョンだ。

 

 ダンジョン名は【シグナル】という少しカッコいい名前があるが、私からしたらおっちゃんのダンジョンだ。

 

「お、今日も来たか。ついさっきダンジョンから宝のが出たから多分今日は何もでねーぞ」

 

「マジかぁ結構早く来たんだけどなぁ」

 

 時刻はまだ九時である。

 

 たぶん早朝勢だろう。

 

 おっちゃんのダンジョンは夜やってない代わりに朝早くから開いてるからな。

 

 朝練みたいな感覚で近所の学生探索者が来るらしいし。

 

「どんなの?」

 

「見てくか?」

 

「え? 見せてくれるの?」

 

「俺とお前の仲だしな」

 

「おっちゃん···トクン」

 

「バカ、何言ってんだよ気持ち悪いな。お前が後藤って知ってなかったら恋に落ちそうじゃねーか」

 

「いや、それを口に出すのであんたも十分気持ち悪いが」

 

「見せてやんねぇぞ」

 

「サーセン」

 

 おっちゃんは布に包まれた金属製のメイスを出してきた。

 

「探索者協会の買取リストで調べたが復元のメイスじゃないかと思うんだよな。ホラ」

 

 タブレットを見せてきたが確かに似ている。

 

 下請けの買取金額は二十万円、探索者協会は二十一万での買取になっていた。

 

 つまりおっちゃんが支部に持ち込めば一万円の利益が転がり込んでくる。

 

 ただ気になったのが持ち手部分の柄が違うのだ。

 

 復元のメイスは鱗の様な模様だが、これはハートの形になっている。

 

「おっちゃん試した?」

 

「バカ言え、復元のメイス以外だったら傷が付くじゃねぇか」

 

「ですよねぇ···私はこれ復元じゃなくて色違いの魅惑のメイスだと思うんだけど」

 

「その心は?」

 

「持ち手の柄がハートじゃん。鱗じゃない。魅惑系のマジックアイテムはハートの模様が入ってたし、色違いならもっと価値高いんじゃない?」

 

「買取ミスしたか···色違いの魅惑のメイスだと買取額が二百万···あのガキに悪いことしたかもな」

 

「支部に持ち込んで鑑定してもらって復元だったらそのままで、魅惑の色違いなら差額分支払えば? おっちゃんの懐に入れるって手もあるけど」

 

「バカ、それやると買取の信用が終わるんだよ。幸い知ってるガキだから詫びの菓子持って差額を渡しに行くわ。支部行かないと行けないから今日は十三時にダンジョン閉めるからな」

 

「十三時ね。了解。あと四時間か···あ、おっちゃん、ダンジョン内での配信許可頂戴。今日じゃなくて今度配信するから」

 

「別に良いが、今のお前美少女だから変な奴に絡まれないようにしろよ」

 

「返り討ちできるくらい強くなるわ」

 

「まあそれが一番だわな。ならボスのオークに楽勝できるくらいにはなれよ」

 

「了解了解」

 

 そう言いながら私はダンジョンに潜っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「相変わらず薄暗いダンジョンだな」

 

 おっちゃんのダンジョンは幾度となく潜ったので構造は理解している。

 

 まず小部屋にぶち当たってそこから三本の道が分かれている。

 

 右に進むとボス部屋への近道で、左はスライムがよく湧いている小さな地底湖がある。

 

 まっすぐ進めばゴブリンがよく居る大部屋や枝分かれし、多くの小部屋がある。

 

 この小部屋の一つに数日に一個宝箱が出現する。

 

 どの部屋かは完全にランダムだし、おっちゃんも宝箱の出現周期は把握していないらしい。

 

 まあ仲が良いから無いことを教えてくれたが、本来は駄目な行為である。

 

 私みたいに無くても気にしない常連しか教えないらしいが···

 

 今日は駐車場に車も無かったし、朝のピークタイムは過ぎているので、スライムが再び湧いているハズなので、左の道に進もうと決める。

 

 まず分かれ道の小部屋に出るとゴブリンが二体湧いていたので挨拶代わりのライトアローをぶっ放す。

 

 レベルが上がった事で前より少し威力が上がったのか、頭に命中したゴブリンは倒れて動かなくなっている。

 

 気絶したか? 

 

 腹部に命中したゴブリンも痛みで苦しそうである。

 

 まだ意識のあるゴブリンにダッシュで近づき、頭を掴んで思いっきり地面に叩きつける。

 

 ゴブリンはビクビクと痙攣した後に動かなくなった。

 

 気絶したゴブリンも首を持ってゴキっと反対に捻じる事で絶命させてから魔石と素材を回収していく。

 

 この時に小さなビニール袋に一個ずつ部位を分けて入れると買い取りが楽になるので喜ばれる。

 

 まあ同じ部位なら纏めても良いのだが、纏めると数を数える時に取り出す必要もあるし、袋詰なら袋の数を数えれば良いので調べる時に手が汚れにくくなるので些細な心遣いだがこういう好感度稼ぎをしていればおっちゃんの様に仲良くなって情報をくれたりするので底辺探索者だとその情報一つが命を守ることになるのでバカに出来ない。

 

 ゴブリンを無事倒して左の道に進むと、道中にスライムがぷるぷる揺れていた。

 

 見つけ次第倒していくとあっという間にリュックがスライムの液体でパンパンになってしまった。

 

 四十五リットルのリュックなので他の道具とかも入っているのでスライムの液体が四十リットルくらい入っている。

 

 結構な重さだがレベルアップで最初より楽に感じる。

 

「あれ? もしかして」

 

 私はツナギのベルトを外し、リュックも降ろし、背中の翼の片方を掴んで前に持ってきて、ベルトや補助ベルト、背負う部分等を上手く組み合わせて翼に固定すると···

 

「おお! 浮いたし、くっついて来る。こりゃ便利だ!」

 

 翼は体にくっついているわけではなく、魔法的な感じで浮いているのでもしかしてと思ったができてしまった。

 

 片方の翼だけでこれなのでもう片方の翼も同じサイズのリュックを固定できるし、空いた体にはチェストバックを着用できる。

 

 四十五リットルリュック×二プラス十リットルくらいのチェストバックなので合計百リットル···いや、チェストバックでなく背中に四十五リットルリュックを背負えば百三十五リットル。

 

 スライムの液体が一リットル五十円計算で百三十リットルが使えるとしたら六千五百円···一体当たり五リットルの液体で計算すると二十六体···魔石も二十六個だとスライムだけでも二万円近くになる。

 

「となるとリュックがもう二つ必要だし、翼に固定するベルトも幾つか要るな。往復することなくスライムだけで二万円近く稼げるようになれば収入面で安定するな。スライムはゴブリンよりもそこらにいっぱい居るし、ライトアロー一発で倒れるから···家庭用のスライムの液体から燃料を精製する機械をレンタルすればガソリン代の節約になるな」

 

 精製機のレンタル代も一ヶ月五百円くらいだし、圧倒的に節約することができる。

 

 量が確保できないのがネックだったが一回で百リットル以上確保できるなら話は別だ。

 

 うちの軽自動車は三十リットルタンクだし、百リットルあれば遠出を繰り返しても余裕で余るだろう。

 

「ぐふふふ」

 

 美少女がしちゃいけない笑いをしながらスライム狩りにいそしむ私だった。

 

 




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