底辺ダンジョン配信者がトラップ踏んだらTS天使になりました!?   作:星野林(旧ゆっくり霊沙)

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新人育成 Ⅰ

 昼食を取り、そのまま午後もダンジョンに潜ってレベリングに勤しみ、約束の十七時となった。

 

 私は焼き肉屋に再び顔を出すとウェイトレスの女性と換金所の兄ちゃんが居た。

 

「すみません私達の我儘を聞いてもらって」

 

「私達ってことは兄ちゃんもか」

 

「はい。お話を伺いたくて」

 

「別に良いよ」

 

 私はファミリー席に案内され、席につくと飲み物と食事を頼む。

 

 二人も食事を注文した。

 

「しかし、この時間は営業していないんじゃないの?」

 

「私の父親がここの店長兼、ダンジョンの管理人なので」

 

「失礼、お名前は」

 

「私は椎名です」

 

「俺は山田です」

 

「椎名さんに山田君ね、知っていると思うけど私の配信名はイブキ、本名は後藤だね」

 

「後藤さんと言った方が良いですか?」

 

「いや、イブキの方が嬉しいかな。二人共視聴者だし」

 

「ではイブキさん。時間を取ってもらったのは私達を鍛えるという依頼をした場合幾らで受けてくれますか?」

 

 指導依頼···下級探索者に依頼することは珍しいが、中級や上級探索者が下級探索者を技術的指導をするというのは珍しいことではない。

 

 ダンジョン専門の指導員を派遣する会社も存在するくらいだ。

 

「一回当たり一人五千円。こんなもんでしょうかね」

 

「思ったより安いですね」

 

 山田がそう言う。

 

「私の場合下級下位、普通なら教えられる立場じゃないからね。本来ならば中級以上に教わった方が良いと思うけど?」

 

「俺達の場合ここの【ケーナーティオ】を拠点にダンジョン探索者として働きたいので、イブキさんに【ケーナーティオ】ダンジョンの攻略の仕方と、近くにある下級の洞窟タイプのダンジョンの攻略を教えていただきたいのです」

 

「別に良いよ」

 

 二人の表情が明るくなる。

 

 私自身底辺で燻っていたから人に頼られるというのが嬉しくて仕方がない。

 

「ただ条件がある」

 

「条件ですか?」

 

「あぁ、道具の購入から付き合おう。私がオススメを紹介してあげる。ただ二人には動画と配信に出てもらうよ。それでも良いかな」

 

「構いません」

 

「その方が助かります」

 

「ちなみに準備にかけられる金額は幾らかな?」

 

「俺は十五万円、椎名が十三万円です」

 

「一ヶ月分の給料ってところかな···武器はナイフになっちゃうけど良いかな」

 

「「はい!」」

 

「よろしい。後は分前だけどきっちり三等分ね」

 

「よろしいので?」

 

「レッスン料は貰うから狩りの分前まで取るのは人としてね···ただ長々と教える気も無いから、長くても二ヶ月で区切るよ。それでも良い?」

 

「「はい!」」

 

「じゃあ連絡先の交換とダンジョン支部に向かう日を決めよう。ちなみに探索者証明証は持ってる?」

 

「イブキさんと話が纏まったら二人で取ろうと···向かう日はいつでも大丈夫です」

 

「よし、わかった。明後日の八時にこの店に車で来るから私の運転で支部に向かおう。二人は朝一で講習を受けて技術指導はパスで、能力測定を受ける。実地の技術指導を受けなければ能力測定合わせても十四時には証明証取れると思うから、そこから装備品を購入しようね」

 

「「ありがとうございます」」

 

「その時に一応紙で誓約書書いてもらうからよろしくね」

 

「「はい」」

 

 食事が届き、食べながら二人の関係性となぜ探索者になりたいのか聞く。

 

 椎名はダンジョン管理者を父親から引き継ぐ関係上、自身のダンジョンのボスを単独で倒せるくらいの力が欲しいとし、山田はダンジョン探索者となり長く活躍したいとのこと。

 

 関係性は幼少期からの幼馴染で···二人共言わないが異性として認識しているっぽい。

 

 下級探索者において親しい人以外とチームを組むのは推奨しないと言ったが、レベルの上がり幅の他にトラブルに巻き込まれやすい事も挙げられる。

 

 倒したモンスターの横取りだとかモンスターの擦り付け、口論からの殺し合いに発展したケースも多々ある。

 

 下級は生活にゆとりが無い為殺気立っている人も多く、そんな人達と初心者がパーティを組んだら鴨にされる事だって多い。

 

 そういうのを防ぐために探索者協会は下級はソロを推奨している。

 

 なぜ今回私がそんなリスクを負ってでもこの依頼を受けたかというと育成したという実績が欲しかったからだ。

 

 新人を育成しましたという実績は探索者協会への信用稼ぎにちょうど良く、信用が上がれば揉め事が起こった際にこちらに有利に仲裁してくれる事がある。

 

 また、初心者が独り立ちできるまでの流れを撮ることで、新人が参考にしやすくなり、再生数が稼げるという打算もある。

 

 悪知恵じゃないが、要領良く行動するのが探索者として長く活動するコツなのだ。

 

 まぁ人様の恋愛を見たいという邪な思いもあったりするけど···

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌日は、午前中におっちゃんのダンジョンでスライムとゴブリン狩りに勤しみ、午後は前日に稼いだ百万でどんな武器を購入しようか考えていた。

 

 私の今の戦闘スタイルだと籠手とかガントレットと呼ばれる金属製の手袋の様な物が合っているかもしれないと感じていた。

 

 籠手であれば後々剣や盾等の装備品を持つ事もできるし、百万位の物ならば本物の手の様に細かく動かすことができるらしい。

 

 それでいて攻守共に扱うことができるので今の私にはピッタリだ。

 

 欠点はリーチが無いので、常に零距離での殴り合いになってしまう点だ。

 

 まぁそれは魔法でカバーすれば良いだろう。

 

 頭に殴殺天使というワードが出てきたが···なんか配信で定着しそう。

 

 スマホで見る限り、百万だと中級下位から中級中位まで使える籠手が主流らしい。

 

 武器としての籠手だと中級下位までで、防具としてなら中級中位までみたいな感じだ。

 

 見ていないのでなんとも言えないが、魔石が手の甲に埋め込まれて殴るダメージを上げたり、属性を付与したり、魔法の補助をしたり···みたいな効果が色々と書かれていた。

 

 中には自動修繕機能が付いた物まであり、値段もまちまちである。

 

 これが千万とか一億とかになってくると武器の籠手も巨大化して、アニメとかに出てくるような巨腕になっているがそこまで行くとメインが籠手なので刀や剣を持つのは邪道になっていくらしい。

 

 逆に防具としての籠手は手のサイズにピッタリ合うようにチューニングされて、剣や刀、槍等を扱いやすくする補助機能と防御の要として使われるらしい。

 

 武器を調べるついでに明日の装備品のピックアップや安売り情報を集めておくのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 朝の八時···まだダンジョンが開いていない時間に【焼き肉椎名】の前で山田と椎名の二人を車に乗せる。

 

「お邪魔します」

 

「よろしくお願いします」

 

「はいよー!」

 

 ラジオを付けながら二人を車に乗せて百合ヶ丘支部へと向かう。

 

 黙って行くのも辛いのでどんな探索者になりたいとか使いたい武器はあるのかと聞いてみる。

 

 山田は高校まで剣道をやっていたらしく、太刀や剣を扱いたいとし、椎名は武道の様な事はやってこなかったのでどんな武器が合っているかわからないと言っていた。

 

「別に気にする必要は無いよ。ダンジョンに向けた剣技とか槍術とか教えてくれる人も居るけど、私も武器の扱いは我流だし」

 

「そうなのですか? ナイフの扱いとか配信を見る限り上手い印象がありましたが」

 

「まぁ最初はナイフでスタートするのが基本だね。というかナイフじゃないと金がかかって辛いからね。ナイフのやり方を覚えて、お金を貯めて、武器や防具を揃えていく。そうすることで中級になった時にスムーズに強いモンスターと対峙できるようになるらしいね」

 

「ちなみに防具と武器なら金をかける比率とかってありますか?」

 

 私と椎名が喋っている所に山田が質問してくる

 

「防具六の武器四···これが良い比率とされているよ。防具の方に金をかけるのは怪我をしにくくする為だね」

 

「怪我ですか」

 

「探索者が一番恐れているのが負傷だよ。欠損を治すのには高い治療費がかかるし、臓器が逝けば手術やリハビリで長い時間過ごさなければならないからね···それだけ上に上がれるペースも落ちる。生涯年収も大きく変わる」

 

「なるほど···」

 

「初級ダンジョンの装備品を今日しっかり教えるから安心してね」

 

 その後は好きなアーティストや配信者の話や戦ってみたいモンスターの話、何かを話していった。

 

「そう言えばイブキさんって男だったんですよね?」

 

「そうだよ?」

 

「ワンピースをずいぶんと着こなしているなって思いまして」

 

「あぁ、この容姿で男物で固めたらそれはそれで変でしょ。容姿にあった服装を心がけてるだけだよ」

 

 山田が

 

「戸惑いとかなかったんですか?」

 

 と聞いてきたが

 

「吹っ切れちゃった。別に性転換して困るような関係の異性が居たわけでもないからね」

 

 と自分で言ってて悲しくなるような事も言いながら支部へと到着した。

 

「じゃあ午後の二時過ぎにフードコートのフォーティーワンアイスで待ち合わせね」

 

「わかりました。頑張ってきます」

 

「送ってくれてありがとうございます」

 

 そう言って二人は受付へと向かっていった。

 

 私は籠手を買うために専門店に向かうのだった。

 

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