底辺ダンジョン配信者がトラップ踏んだらTS天使になりました!?   作:星野林(旧ゆっくり霊沙)

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復帰配信

 同接人数八万人という見たことが無い数字が出ているが、いつもの様に配信を始める。

 

 服装はスーツを持っていないので、一番綺麗な服を選択し、十秒のカウントが始まった。

 

「···皆さんこんばんは、天使のイブキです。この度は皆様にご心配をおかけしましたこと誠に申し訳ございませんでした」

 

 ブワァーっと見たことが無いようなコメント欄がコメントで溢れ、超高速で文字が流れていく。

 

「まず初めに鮭酒アンラさんは今回の事件の被害者と言っておきます。私も被害者ではありますが、意図して起こったとは言い難い出来事でしたので詳しく説明していきます」

 

 アンラさんと私がお墓のダンジョンで賢者の墓について説明をする。

 

「まずあのお墓のダンジョンはとある人物が意図的に生み出した人工的なダンジョンで、自然生成とは全く別物···一人の天才が生み出した物であります。名前を辻聖子···十年前に愛知県で起こった多層次元断裂事故に巻き込まれた星六探索者が今回の騒動に関わってきます」

 

 配信で時折私が不可解な動きをしていた理由として彼女の幽霊を見ていたからと説明する。

 

 そして私が壁に飲み込まれる前に映った足枷がハメられたスケルトンは彼女が意図的に残した鍵であり、彼女が見出した者を別のダンジョンに転送するトラップであったと説明する。

 

「彼女は天使病かつとある条件のある者を探しており、その条件に合致したのが、たまたま私でした。そこからは配信の通り壁抜けをして別次元にあるダンジョンに転送されました」

 

 辻聖子が探していた天使病患者の特徴を話していく。

 

「とある条件とは···賢者になりうる存在で、私の場合処女受胎を成したからでした」

 

 カメラから少し離れてお腹を見せると天使のリングが二つお腹から浮き出ていた。

 

「とあるダンジョンの宝箱で私はイヤリングのマジックアイテムを入手したのですが、太陰大極図のイヤリングで、身につけることで女性だと子供が宿るというアイテムでした。私はイヤリングの効果を知らずに身に着け、取り付けて数分で壊れたので何ら影響は無いと思ったのですがご覧の様に赤ん坊を宿しています」

 

「処女じゃないんじゃ無いかとか男がいるんじゃないかという論争が起こりそうですが、人と天使病患者が交わっても人しか産まれませんが、私のお腹には天使が宿っています。まぁ厳密には天使じゃ無いらしいのですが、天使とさせていただきます」

 

 コメント欄は案の定大荒れしているが、気にせずに発言を続ける。

 

「まぁ辻さんの琴線に触れたために呼び出され、ダンジョン【ヘブン】にて肉体を捨て解脱した辻聖子さんと出会いました」

 

「直ぐにでも戻りたかったのですがこのダンジョンが再び現世と接続するのは半年後と言われ、半年間辻さんの下で修行をしておりました。連絡が取れずに申し訳ない」

 

 天使の固有能力は隠し、辻聖子さんが自称賢者と言うほど天才であった為に肉体を捨てても魂で生存しているという異次元の魔法使いであることを話し、彼女の下での修行の話をざっくりと説明し、【ヘブン】ダンジョンに出現した嫌いな物が出てくる名も無きモンスターの説明をする。

 

 そしてそこで仙人の様な修行をしたと話し、私はステーキ肉を取り出して実際に吸うという行為を見せる。

 

 唇に付けているだけなのにみるみるステーキの色が灰色になり、最後には塵になって消えると、再びコメント欄は荒れ始めた。

 

「仙人が霞を食べるのと似たような事ができるようになりました。食事法、呼吸法や魔力の循環法など色々ありますが、辻さんの言葉を借りるなら魔法使いが行うべき六つの基礎···六基を習得してきました」

 

「とはいえこれをやれば下級でも上級の探索者を倒せるかと言えば違います。やはりレベルが絶対です。レベルよりも一つ上の位に勝負になるという物と思ってください。まぁやれば魔力の燃費は劇的に変化しますが···」

 

「六基の修行に六ヶ月を費やして戻ってきた訳で···レベルは前回の計測から五しか伸びていません」

 

「なので今のレベルは十五になります」

 

「さて、大まかにこの半年間どう生活してきたかを話したので次の話し、今後の配信についてです」

 

「配信ペースは週に三日程、解説動画は週に二本を予定し、妊婦になったので子供に影響が出ない範囲での活動をしていきたいと思います」

 

「戦闘スタイルも今までは近接戦闘でしたが、魔法重視の遠距離攻撃に子供が産まれるまでしていきたいと思います」

 

「今後の目標ですが私の弟子と言ってくれている上級下位まで成長した山田と椎名をパーティーメンバーとした八人パーティーを結成することを目標としたいと思います」

 

 パーティーメンバーの募集等のコメントが出てくるが

 

「パーティーメンバーの募集は未定です。とりあえず中級下位のレベル三十を来年の目標とします」

 

 と公言した。

 

「次にコラボについてですが、出産し、子育てが安定するまではダンジョンアタック系のコラボは控えさせていただきます。なので参加するとしたら個々人での家や会社でのコラボかつ、移動距離が少ない人か来てもらう形にさせていただきます」

 

「最終目標ですが辻聖子さんの後継者を目指しますので、星六探索者以上になること、彼女が人生をかけて編み出した魔法理論を広めることを探索者の目標、子育てを両立させることを私生活での目標、登録者数百万人を配信者としての目標としたいと思います」

 

「再出発です。どうか皆さん天使のイブキを応援してください」

 

 配信はこれで終わった。

 

 

 

 

 

 

「ふぅ、終わった」

 

 配信は終了し、私の配信の同時視聴をしてくれていた配信者の方々がコメントを残す。

 

 半年間行方不明だった探索者が生還したというのはそれだけ大きな事なのだと改めて感じた。

 

 メッセージが数件届き、そっちに行くのでコラボしませんかというお誘いが早速届いた。

 

 また収益化プログラムが認可されましたとメッセージが届いたのでこれからは配信からも収益が出るようになった。

 

 今回の配信の同接数は二十万人。

 

 チャンネル登録者数百万人以上の誕生日や企業勢のライブイベント並みに同接され、急上昇ランキングにも掲載されている。

 

 切り抜き動画も早速作られており、動画序盤で話した事が切り抜かれていた。

 

「よし、明日はダンジョンに潜ろう! 気分転換だ!」

 

 私は半年ぶりに好きなラーメン屋に行った後にダンジョンに潜ることを決め、配信告知をするのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「失礼します!」

 

 岐阜県百合ヶ丘探索者支部の支部長室にスーツを着たボブカットの女性が入室した。

 

「東横君、よく来たね」

 

 東横雪子···探索者協会が経営する百合ヶ丘探索者育成高等学校出身で優秀な成績で卒業し、東京の本部で二年間ダンジョンの治安維持部隊であるギルドナイトの教育を受けた生粋のエリートである。

 

「東横君、君のレベルは幾つかな」

 

「はい、四十八になります」

 

「二十歳でそのレベルは中々居ない。そんな君にとある人物の護衛をしてもらいたい」

 

「護衛ですか」

 

「後藤伊吹さん。昨日半年間ダンジョンに閉じ込められて生還した人物だ。資料はこちらに纏めてある」

 

「失礼します」

 

 ペラペラと東横が資料を流し読みすると魔導書と魔法理論について目に入った。

 

「もし魔法が教えられるのと更にその魔法が星持ちでも通用する物であるのならば強力な戦力になり得ますね。それこそ他の支部を追い抜く起爆剤となり得ます」

 

「君にやってもらいたいのは護衛と彼女が作る教育動画の監修だ。魔法理論は別に良い。魔法を教える事に関しては慎重に事を進めてくれ。本当に実践できるのかの教育も受けて欲しい」

 

「わかりました。彼女とパーティーを組むということも了承済みで?」

 

「あぁ、問題ない。住み込みで護衛をしてもらう都合上立地が悪い所に二年間引っ越してもらうが良いか」

 

「問題ありません」

 

「任務の期間は一応五年だ。彼女の話が本当であれば教育者として凄腕であることになる。ギルドナイトの幹部の席は空けておくから任務をこなしてくれ」

 

「畏まりました」

 

 こうして東横雪子はイブキの護衛任務に就くのだった。

 

 

 

 

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