底辺ダンジョン配信者がトラップ踏んだらTS天使になりました!?   作:星野林(旧ゆっくり霊沙)

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ハイピクシー

「検査の結果、特に異常は見られませんでした」

 

 産婦人科の女医さんにそう告げられた。

 

「良かったです」

 

「今後どんどんお腹が大きくなってきますので無理な運動は控えてください」

 

「ダンジョン探索者なのですが」

 

「できれば控えた方が良いでしょうが、後藤さんの場合、それ以外の収入源が無いとのことなので、こちらも禁止とは言えませんので···」

 

「助かります」

 

「出産の場所はどうにかなりそうですか?」

 

「一応探索者支部近くにある医療施設で出産はする予定です」

 

「なら予定日の一ヶ月前からそちらの施設で説明等を受けた方が良いでしょう。力になれずに申し訳ない」

 

「いえ、病院側の都合上仕方がないですよ」

 

 そりゃマジックアイテムで孕んだ子供なんて何が起こるかわからない。

 

 他の患者さんに被害が出たら目も当てられない。

 

 報告と診断が終わり、車でそのままダンジョンに移動する。

 

「良いんですか? お医者さんに控えるように言われたばっかりじゃないの?」

 

「動けるうちに稼がないと···近くのピクシーが湧くダンジョンに行こう。配信もするよ!」

 

「了解」

 

 

 

 

 

 

 

 

 市街地にある下級ダンジョン【妖精の郷】。

 

 魔法の練習としてお世話になったダンジョンである。

 

「では皆さんに強くなった私の魔法技術を見せたいと思います!」

 

 配信をしているが昼時でも同接一万を叩き出せるのは人気になったなぁと思いつつも、炎上、復帰のブーストの影響がなければ落ち着いていくのだろうと思うと少し寂しくなる。

 

 まぁそれが配信者として本来の力といえばそれまでだし、現にレベルは他の配信者に比べると大幅に劣る。

 

 企業勢は中級下位がスタートラインだし。

 

 サーチをし、ピクシーが多くいる箇所に目星をつけ、歩くこと数分、花畑にピクシー達が多く群がっていた。

 

「ざっと花畑に四十体ほどピクシーが居ますね」

 

 私はそう言うと空中に水鏡を幾つも出現させる。

 

「魔力のこもった水鏡ですのである程度なら光の反射角度を調整することができます。まぁ私の頭ですと同時展開は三つが限界ですがね」

 

 私はそう言ってサンレイを発射する。

 

 光の束は拡散タイプであり、空気中で分散する。

 

 新品の竹箒をイメージすればよいだろう。

 

 持ち手の部分は纏まっていて、先端に行くほど分散し、細くなる。

 

 拡散型サンレイも同じ様に拡散すればするほど威力が落ちるし、射程も短くなる。

 

 ただ拡散したのが大きな水鏡に様々な角度で屈折するとどうなるだろうか。

 

 花畑いっぱいにサンレイの光が降り注ぐ。

 

 私は広範囲に光の雨を降らせるこの水鏡とサンレイを組み合わせた魔法を『サンレイン』と読んでいる。

 

 字のごとく太陽の雨である。

 

 花畑の花はボロボロに焼けており、美しかった場所は今では焦げた空き地が広がっていた。

 

 そこに無数の光る石···ピクシーだった魔石が散らばっていた。

 

 花畑はダンジョンの一種なので数時間もすれば再生成されるため問題は無い。

 

 問題はないが、拾うのが面倒だなと思いながら東横と一緒に雑談配信をしながらもちまちま魔石を回収するのだった。

 

 

 

 

 

 

 回収が終わり、私達が移動しようとした時に

 

「キキキキキ」

 

 と不気味な声が響き渡った。

 

 音の方向を見ると人の形をしたハイピクシーが佇んている。

 

 このダンジョンのボスだ。

 

「草原タイプのダンジョンの醍醐味は徘徊するボスモンスターですよね。ちなみに下級探索者の死亡原因の第二位はこのボスモンスターとの力量差がわからずに殺られるです。第一位? 引き際を忘れて疲労困憊時に奇襲されることだよ」

 

 私は籠手を構える。

 

「ボスモンスターのハイピクシーとの遭遇戦です。切り抜き確定の見どころですよ!」

 

 ハイピクシーの体が光る。

 

 すると突風が吹き始める。

 

 私は周囲に『ウォーター』の魔法で水の塊を生み出す。

 

 それにサーチを組み合わせる。

 

 魔力の流れをサーチで読み、水の塊に反応があれば···

 

 パシャ

 

「風の中に刃を潜ませているのがわかる」

 

 ハイピクシーの得意技である『カマイタチ』。風に乗って見えない刃で攻撃してくる魔法だ。

 

 重装甲であれば効かない魔法であるが、私みたいに軽装であれば普通に大ダメージを受ける可能性がある魔法だ。

 

 適正のレベルは下級上位···レベル二十以上が挑むモンスターである。

 

「サンレイ」

 

 私は狙いを定めて光のビームで攻撃するが、ハイピクシーは焼け跡の地面の燃えカスの花だった物体を無数に風で巻き上げて、サンレイを防御する。

 

「初見でも防ぐか、師匠なら隙間を通せたんだろうけど、そこまでの技量は無いからな」

 

 私はサンレイからライトアローに攻撃を切り替える。

 

 すると先程守っていたゴミの竜巻に穴が開く。

 

「こういうのは実体がある魔法の方が効くよね」

 

 ハイピクシーは風で防御するのが無駄だと直ぐに理解し、次は氷の壁を生み出して魔法を防いだ

 

 視聴者達は固唾をのんで私の戦闘を見守ってくれている。

 

「魔法戦において一番駄目なのは固まること。常に思考を巡らせろ! 考え続けろ!」

 

 私はそう言うと一気にハイピクシーに近づいた。

 

 ハイピクシーも魔法で応戦して距離を詰められまいと下るが、私のほうが飛行は早い。

 

 氷の壁を殴って破壊し、ハイピクシーに拳を叩き込む。

 

「ミュギュ!?」

 

 鈍い音と共にインパクトの魔法を発動させるとハイピクシーの腹部が破裂し、魔石が剥き出しになる。

 

 そのままハイピクシーの体内から魔石を抜き取ると、ハイピクシーは動かなくなった。

 

「死んだな」

 

 とりあえず倒し終わり、下級では珍しい魔法戦(?)だったために視聴者達も盛り上がるのだった。

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