底辺ダンジョン配信者がトラップ踏んだらTS天使になりました!?   作:星野林(旧ゆっくり霊沙)

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支部長の名前は松田努です

「人に才能を付与する能力···か···よく報告してくれた東横君」

 

『後藤さんは私達を信頼して話してくれましたので、それを踏まえての行動をお願いします』

 

「わかった」

 

 岐阜県探索者支部の支部長は支部長室の上質な椅子に腰を掛け、東横からもたらされた天使の固有能力についてを考えていた。

 

「天使病患者は何かしらの固有能力があるが、それに気が付かないで過ごす場合もあるか···」

 

 確かに最初は後藤伊吹よりも山田洋介と椎名華澄の成長速度の方に目が行っていたが、東横の急成長も合わせて違和感は感じていた。

 

「赤ん坊がレベル十五もあれば隠し通す事はできないわな。ならばバレても問題ない人の間で共有するに限る···もう一度話す必要があるな」

 

 支部長はスマホを手に取り、もう一度東横に連絡をする。

 

『はい東横です』

 

「支部長の松田だ。度々すまんな。もう一度後藤君と話すことはできるか」

 

『後藤さんと替わりますね』

 

『お電話替わりました後藤です』

 

「久しぶりだね後藤君」

 

『支部長さんもお元気そうで何よりです』

 

「君が固有能力を隠していた事をこちらは気にしていない。というか天使になると固有能力を身につけるというのもこちらは初めて知った。天使病の患者は日本に約千人いるが報告されていないということは秘匿されている感じか」

 

『辻聖子さん曰く独力で気が付くのが稀かつ、能力もランダム。私みたいに仲間と思った人に付与するタイプも居れば個人完結の能力もありますし、魔法の一種と誤認している人が大半だと思うと言われました』

 

「魔法と誤認か···確かにそれならばいちいち報告はされないな。後は知っていても他の支部には教えないか」

 

『支部同士って仲が悪いんですか?』

 

「言ってしまえばライバルだ。同じ会社の他部署というよりは支社同士で営業利益を比べている感じだな。連携も取るが、各支部でそれぞれのやり方がある。管理しているダンジョン数も質も違うから色々あるんだこっちも」

 

『はぁ···』

 

「まぁそれよりも、この固有能力の情報が広まれば、後藤君の身が危ない。日本中の探索者が欲しがるし、海外からも欲しがる者は多いだろう。君が相談したいのは上手く隠す方法だろ」

 

『はい、何か知恵をいただけると助かります』

 

 少し支部長は考えた後に

 

「私から言えるのは君が力を持つか、私が完全に保護するかのどっちかだな」

 

『力と保護』

 

「力はレベルだけでなく影響力や権力だ。君が上級へと上がり、クランを創設し、自身が目利きした人材が頭角を現しても周りは固有能力よりも教育能力や才能を見る目といった風に捉えるだろう。優秀な人材が集まっていれば能力を隠すのも容易い」

 

「保護は簡単だ。配信を辞めて支部のギルドナイトの地位を与えるから完全に支部の駒として働く代わりに安全は保障しよう」

 

『なら前者ですね』

 

「断言か。理由を聞いても」

 

『後者だと私の子供の自由も無くなる。引っ越したらただでさえそちらのお世話になるのに、これ以上縛られてしまったら探索者ではない。なにより辻聖子さんと約束した魔法理論を広める約束が守れない』

 

「···じゃあ強くなるしかないな。ただ事が事だ。東横よりは腕は劣るが信用のできる人材を二名追加の護衛として付ける。魔法理論だけでなく君は岐阜支部にとって金の卵を産む鶏となったのだからな」

 

『結局家畜じゃないですか!』

 

「例えだ! ただ末永く共栄させてもらうぞ」

 

『それは勿論』

 

 支部長は電話を切るとギルドナイトのリストから若手かつ性格は良いがレベルが上がりづらい人物をピックアップした。

 

「こちらも君を利用するが、君も我々を利用すると良い」

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうしよう···勢いでクラン創設する宣言しちゃったよ」

 

「良いんじゃないっすか? 俺はイブキさんがクランを創ったら面白い事になると思うけど」

 

「高卒かつ社会経験が探索者しか無い私がクランという箱の運営やるの!?」

 

 ガシッと東横に肩を捕まれ

 

「大丈夫、私が教えるから」

 

「ひぃぃぃい!」

 

「実際イブキさんには人を焚きつけるカリスマがありますよ」

 

 と椎名が言う。

 

「私の? どこが?」

 

「人徳って奴だろ。イブキと居ると俺達落ち着いて過ごせるし、安心感があるんだよ。レベルとはまた別の···なんていうだろうな」

 

「ふーん」

 

「なんだよ」

 

「まぁ皆が慕ってくれるんなら良いや···はぁ、勉強頑張るか」

 

「赤ちゃん達の子育ては私達も予行練習だと思ってやるから」

 

 椎名の言葉に私は

 

「だってよ山田」

 

 と山田を茶化す

 

「お、おう!」

 

 山田は赤面しながらそう答えるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

「本当によく飲むねぇ大和と長門は」

 

 私の乳首が大きめだから母乳が飲みやすいのか大量に二人は飲む。

 

 私は私で『吸う』による食事法を扱うことで食事から最大効率で体内に栄養を吸収している。

 

 特に母乳を作るためにカルシウム源の牛乳やヨーグルトだったり、レバー類をよく食べた。

 

 あとほうれん草や魚も良いとネットに書いてあったので毎日一食は食べるようにしている。

 

 まだ産まれたばかりで何もわかっていない赤ん坊達であるが、すくすくと育って欲しいものである。

 

 最近の動画が魔法理論だけでなく大和と長門の様子も動画で視聴者達に伝えると天使病が遺伝した事に驚いていたり、男の子の天使が産まれた事にも驚いていた。

 

 視聴者達は大和が天使病の優性遺伝子を持っていることを知らないため結構呑気なコメントで溢れかえっており、アンチも赤ん坊を使って金稼ぐなみたいなコメントがせいぜいで特に害がある行動はしていない。

 

 徐々に出産のダメージが癒えてきたある日、チャイムが鳴ると探索者支部から派遣されたという二名の男性がやって来た。

 

 家に上げると東横を交えて自己紹介をしてもらう。

 

「岐阜県探索者協会支部からやって来ました松田歩です」

 

「同じく探索者協会支部の萩原雄二です。よろしくお願いします」

 

「ん? 松田?」

 

 私が東横を見ると東横はチベットスナギツネみたいな顔をしていた。

 

「もしかして支部長の親族の方で?」

 

「はい、支部長の孫です」

 

「いやいやいや、普通あんたが護衛される側でしょ」

 

「ちなみに萩原も苗字は違いますが支部長の孫ですよ」

 

「大学卒業したばかりの若輩ですが頑張って守ります」

 

 この二人育てないと東横の負担が悪化しただけじゃね? と思いつつ、二人は住む場所はどうするのか聞くとここのアパートで暮らすらしい。

 

 金持ちのボンボンが住むような場所じゃないと思うが···とりあえず様子を見ることにした。

 

 ミルクを作ったり、オムツを交換してもらったが妙に手慣れている。

 

 二人にその事を聞くとどうやら兄弟がいっぱいいるらしい。

 

 上級探索者の家庭に多いが、ダンジョンで命のやり取りをするため滾ってしまい、子作りに励んで子供が多い家庭も珍しくは無い。

 

 二人の家庭もそうらしく、松田は六人兄弟の真ん中で、萩原は弟妹が七人もいるのだとか。

 

 弟や妹の世話をしているうちに自然と身についたと言われ、ボンボンだけど苦労した事が判明した。

 

 私が東横からクランの勉強を教えてもらっている間に松田と萩原が大和と長門の面倒を見てくれるので助かる。

 

 私も彼らに魔法理論を教え、二人に固有能力について聞いたら支部長から言われたが、これを広めたら絶縁と言われているので安心してくださいと言われた。

 

 岐阜県の支部長が絶縁宣言したら岐阜には住めなくなるからその意味は重い。

 

 とりあえず愉快な仲間が二人加わったのだった。

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