底辺ダンジョン配信者がトラップ踏んだらTS天使になりました!?   作:星野林(旧ゆっくり霊沙)

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不人気ダンジョン 一

 翌日、私達は事前に調べたダンジョンに集合していた。

 

「天気は快晴だけど、これから潜るのは洞窟タイプのダンジョンだからなぁ」

 

「後藤さんしゃあないですよ。それよりもゴブリンのアイテムがマジックアイテムであることを祈りましょうよ」

 

「宝箱が出てきたら任せてください!」

 

 萩原と佐藤がそう言う。

 

「そうだね。ただ当面の目的は全体のレベルアップだよ。私が成長曲線的に緩やかだと思うけど、ガンガン戦ってレベルを上げて、全員で上級に上がろう!」

 

「「「おう!」」」

 

 隊列としては先頭が罠解除役である佐藤、次に明かりを灯す役割の私、山田と松田がいて、リアカーを萩原が引き、佐倉と椎名、最後尾に東横となる。

 

 ダンジョンに潜る前に係の人に探索者証明証を全員見せて、入場する。

 

 ダンジョンの中は初級のダンジョンとは違い、更に薄暗くなっており、光源が無ければ迷ってしまうだろう。

 

 このダンジョンの決まりとして入場から十二時間以内に戻ることが厳格化されている。

 

 それはライトの明かりがこのダンジョンのアイテム屋で売られているのが十四時間タイプなので、二時間余裕を持って帰れるようにという管理人からの気づかいでもある。

 

 勿論乾電池の換えを持っていけば良い話だが、そもそも洞窟タイプのダンジョンで野営なんかしたらダンジョン内部が野営跡でゴミが散乱することもある。

 

 不衛生になれば変な病気が蔓延してダンジョンが封鎖なんてなったらたまったものではないので中級ダンジョンでも野営禁止のダンジョンがあったりする。

 

 私の頭のリングを全力で光らせればそこらのLEDライトよりも明るく、特に暗くて困る事は無い。

 

 ダンジョンの中を歩いていくと、早速ハイピクシーとゴブリンポーンが現れた。

 

 ゴブリンポーン···兵士や農民を意味する言葉を持つゴブリンで、武器として鎌を持っている。

 

 ゴブリンナイトよりも弱いが、それでも通常のオークと同じく下級上位の能力を持つ。

 

 なにより武器を持っていることで危険度が跳ね上がるのだ。

 

「サンレイ」

 

 私達に気がついたゴブリン達を私のサンレイで頭部を破壊する。

 

 ゴブリンポーンが肉壁となっている間にハイピクシーが風の刃を放ってきたが

 

「シールド!」

 

 私が魔法を切り替え、防御魔法を展開する。

 

 私が防御魔法をしている間に山田、椎名の二人が私の横に移動し、私の代わりにサンレイを放つ。

 

 数本のサンレイが放たれ、ゴブリンポーンやハイピクシー達がジュワという音と共にどんどん死んでいく。

 

 あっという間に十数体いた敵は消え去り、首から上が無いゴブリンの死骸とハイピクシーだった魔石が転がっていた。

 

「これ俺達いるんですか?」

 

 松田がそう質問するが勿論要る。

 

「私の防御魔法は相手の攻撃を通さない代わりに防御魔法の真後ろからは魔法を発射できない···防御魔法が内側にも作用して防いでしまうんだ。だから完全な防御ができないからその隙間を前衛が守る必要があるんだよね」

 

 と私は答える。

 

 ハイピクシーは風を基本操ってくるため質量が足りない為私よりも魔力量が数倍多くないと私の防御魔法を貫通してくることは無いが、岩石を高速で飛ばしてくるモンスターとかは場合によっては破られるし、オークが何回も防御魔法を殴りつけてきたりしても破られるだろう。

 

 万能防御魔法といっても全てに対して完璧に防げる魔法ではない。

 

 全体的に一定水準の防御ができる魔法でしか無い。

 

 それでも魔力の費用対効果や相手の魔法がわからない時に咄嗟に守ったり、格下相手には有効な防御魔法であることには変わらない。

 

「素材を剥ぎ取って次行くよ」

 

 見張りを交代しながらゴブリンの睾丸や心臓、魔石や手に持っていた鎌を回収していく。

 

「へぇこの個体鎌じゃなくてフォーク持ってる」

 

 牧場とかで見るピッチフォークのことで、鎌もそうだが特殊な金属でできているので溶かして再加工すれば良い建材や素材になる。

 

 今回手に入れたピッチフォークは軽くてそのままの状態でも売り物になりそうな程質が良いが···

 

「後藤さんどうしました?」

 

「ん、このゴブリンポーンがフォークを持っているなって思ってね」

 

「ゴブリンポーンは色々な防具を武器にしていますからね。買取金額的に当たりなのは金属量が多い鍬やスコップでしょうね。ハズレはどこで手に入れたかわからないですが竹槍で突撃してきますし」

 

「竹槍って···ゴブリン農民一揆ってか?」

 

「ゴブリンが社会秩序を持っているとは考えられませんがね」

 

 松田と喋っていると他の人も剥ぎ取りが終わり、先に進む。

 

 先に進む大部屋があり、先程の比じゃない程のゴブリンポーンやハイピクシーに、ゴブリンナイトやゴブリンメイジがうようよしていた。

 

「稼げない不人気ダンジョンとはいえ、間引きしなさすぎでしょ。これじゃあ近いうちにあふれるよ!」

 

「それだけ経験値を稼げると考えようよイブキ」

 

「···だね、東横、松田、萩原、前衛を頼むよ! よっしゃあじゃあ椎名演奏をお願い!」

 

「ラジャー!」

 

 椎名が演奏を始めると私達に力が湧いてきた。

 

 恐らく身体強化のバフを掛けてくれたのだろう。

 

 音楽に気がついたゴブリン達が入口付近にいた私達に殺到してくる。

 

「サンレイン」

 

 水鏡が空中に浮かび、拡散されたサンレイが当たりに突き刺さる。

 

 私が奥の方の敵を倒している間に山田が敵の中に突っ込み、野太刀の長い刀身で敵をバサバサと斬り裂いていく。

 

 松田と萩原も魔法を駆使しながら近づいてきた敵を少しずつ処理していく。

 

 松田が槍で牽制したり、叩いて転ばせて、そこを萩原が叩いて潰す。

 

 佐藤と佐倉は後方の警戒を、東横は地面を凍らせてゴブリン達の足止めをする。

 

「よっしゃぁ押し込め!!」

 

 数がある程度減った合図を出して東横が部屋全体を凍らせる。

 

 東横よりも後ろに松田と萩原は避難し、敵中に居た山田は熱の魔法で瞬時に凍った足を溶かして脱出する。

 

 ゴブリン達は下半身が凍りついて行動不能となったので、残りは浮いているハイピクシー達を魔法で叩き潰すだけである。

 

 細かく叩き潰すならサンレイよりもライトアローやライトバレットを放った方が確実だ。

 

「ライトバレット!」

 

 ライトアローよりも貫通力重視かつ弾速が速いライトバレットを放っていく。

 

「ハイピクシー以外は頭部破壊以外は気をつけてね。素材価値下がるから」

 

「わかりましたよ!」

 

「あいよー!」

 

 戦闘開始から十分後、特に負傷らしい負傷も無く、戦闘が終了した。

 

「ゴブリンナイトの鎧とか金属部分が多くて結構値段がつくんですよね」

 

「金属部分以外は捨てちゃって良いから。あー山田、金属熱して一塊にしてくれない?」

 

「あ、じゃぁ私が型作るよ」

 

 山田の言動に私が答え、椎名が型を作ってくれるらしい。

 

 地面をボコッと盛り上げ、そこに穴を開けると金属部品を投げ込んでいく。

 

 山田が手からバーナーの様に炎を金属に当てると真っ赤に光り、徐々に金属が溶け始めた。

 

「この金属の融解度ってどのくらいなの?」

 

 私の質問に東横が

 

「この金属魔法じゃないとほぼ変形も融解もしないんだよ。それに軽いから車のフレームとかイブキの籠手みたいな防具の素材、磨耗しやすい部品のコーティングに使われてるんだよね」

 

 と教えてくれた。

 

 ここら辺は探索者の学校で習うらしく、私や山田、椎名以外は頷いていた。

 

「今の相場だと金属一キロ五百円だっけ?」

 

「この量だと十キロのインゴットモドキが十個くらいはできそうですね」

 

「五万円にしかならないかぁ。マジックアイテムの武器は無さそうだったからガチャは失敗かな」

 

「百体近く倒しても出ないのは珍しいらしいですよ」

 

 と松田が教えてくれた。

 

「でない時はとことん出ないからねぇ〜」

 

「イブキさん! それでもこれだけのゴブリンの素材やハイピクシーの魔石を回収できれば黒字黒字!」

 

 今のゴブリンの相場が一体五千百円、ハイピクシーの魔石が一個五千円、現在の素材を回収できたゴブリンが七十二体、ハイピクシーの魔石は四十七個。

 

 すべてを合計すると約六十六万に少し届かないくらいになる。

 

 八人で割ると八万二千五百円···金だけであればオークの初級ダンジョンのほうが圧倒的に稼げる。

 

「たはー、稼げねぇ! そりゃ不人気だわなー!」

 

 オークのダンジョンであればオークが一体七万買取なのでハイピクシーとユニークゴブリン達の半数以下の五十体を倒せば三百五十万である。

 

 そりゃ人気が無いわなと思う。

 

 ただ経験値はここの方が圧倒的に稼げる。

 

「あ、レベルが上がった気がする」

 

「私も」

 

「俺も」

 

 私も含めた全員がレベルが上がった魔力が体内から溢れ出る感覚を感じた。

 

「じゃどんどん行こうか!」

 

 腕時計を確認するとまだ二時間も経過していない。

 

 まだまだ奥に潜りに行くのだった。

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