底辺ダンジョン配信者がトラップ踏んだらTS天使になりました!?   作:星野林(旧ゆっくり霊沙)

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混血との面接 一

 三月下旬、卒業式も間近となり、大学に進学とか就職の話が高校生達はしている中、覚悟を決めている集団が居た。

 

 混血の子供達である。

 

 探索者としての才能はあれど、モンスターとの混血により差別やイジメの対象となってしまう存在で、彼らは普通の職業に就く事は難しい。

 

 岐阜県探索者高等学校のモンスター研究同好会という活動をしているメンバーは全員が混血かつ、小中高と共に苦難を共にしてきた仲間達であった。

 

「天使のイブキさんのクランに向けた話···どうするか」

 

 彼らの話題は探索者協会から天使のイブキが君達に接触したい、できればクランのメンバーとして迎え入れたいと言っているという話ばかりだった。

 

「何故我々なんでしょう···今世間でも改革者として認識されて、配信者としても百万人以上の登録者がいるので、我々よりも誘うべき人員は多いと思いますが···」

 

「···俺達は産まれながらに誰からも産まれたことを喜ばれず、探索者になって親殺しの罪滅ぼしをしなければならない···」

 

「俺らに親なんていねーんだよ! 誰も辛い時に慰めてくれたり、食卓を囲んだり、一緒に寝たり···そういうのが家族であり、俺達の家族は皆でだ。親なんてのはいねぇ!」

 

 狭いコミュニティで生活を完結しているため、彼らはどこか捻くれていたり、卑屈だったりした。

 

 男の子的にはグレてしまいたい、非行に走りたいという気持ちがある人もいるが、そういうグループから真っ先に攻撃される対象であり、下手に民間人と揉め事を起こした時に、混血の仲間の評価を更に下げることに繋がるため、非行にも走れない。

 

 仲間とカラオケやスポッチャに行って遊びたい気持ちもあるが、探索者高等学校の単位を落とした瞬間に混血の仲間達と居られない恐怖から、遊ぶ余裕も無い。

 

 彼らはストレスを原動力にレベリングを続けてきた。

 

「俺達は上級探索者となって初めて人として扱ってもらえる。それまでの辛抱だ。辛抱なんだ!」

 

 振り絞るように言う。

 

 ここに居る十五人全員が探索者高等学校を卒業したら探索者となる。

 

 それ故にイブキからの申し出は今後自身が人として生きることができるかという事に繋がってくる。

 

 全員が履歴書を書き、時間の限り面接練習をした。

 

「···明日、いよいよイブキさんが来る。落ちても恨みっこ無しだ」

 

「「「おう!」」」

 

 彼らの進退をかけた面接が始まる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここが岐阜県探索者高等学校かぁ···私が通っていた高校の数倍あるね」

 

「校内が一種の街になっているからね」

 

「街?」

 

「学生だけが潜れるダンジョンから採取できる物資を生徒会が購入して、それを生徒が加工して外部に販売する。そこで得た資金を生徒会が各部活やチーム、学生寮に分配する形だよ」

 

「ほへ~」

 

「ただ学校だから個人間のお金のやり取りは基本禁止されているから独自通貨が流通しているんだよね」

 

「独自通貨?」

 

「呼び方は年々変わるけど、私の時は単純にポイントって言っていたな」

 

「へぇ~、じゃぁ一種の自治区みたいになっているんだ」

 

 そんな話をしながら、受付をし、入校手続きをし、校内に入る。

 

 世間は春休みシーズンに入っているためか寮生活の学生も帰省していてガランとしている。

 

 敷地の案内を見ると学生食堂の他に敷地内にアイテム屋とか製造棟みたいな普通の学校には無い建物が目立つ。

 

「じゃぁ私が面接官をするから東横は学生達の案内を頼むね」

 

「わかった」

 

 今日使って良いと言われている教室に私は入り、面接の準備を始めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 俺達十五人は待機室となった教室に着席して時間になるのを待つ。

 

 いつも偉そうにしている学年主任がやたらとビクビクしているのが印象的だった。

 

 ガラガラと女性が入ってくる。

 

 イブキさんのチャンネルでスタッフと呼ばれている女性だ。

 

「東横様今日はよくお越しいただきまして〜」

 

「相変わらずね糞担任、いや友岡、私の一族が探索者支部と繋がりが深いからっていつも依怙贔屓して···そうではない普通の家庭の子を差別しているの知ってんだからな」

 

「そ、それは···」

 

 学年主任がダラダラと冷や汗をかいている。

 

 女傑って感じでかっこよく思えた。

 

「はあ···まぁ良いわ。皆さんこんにちは。天使のイブキチャンネルではスタッフAと言われているチームガイアのメンバー東横雪子です。本日はこの学校の卒業生として皆の疑問に答えるために来ました。面接と平行してやっていこうと思います。面接次第では全員が合格するかもしれないし、全員不合格かもしれません。それはリーダーのイブキ次第になります」

 

 全員起立して礼をする。

 

「「「よろしくお願いします」」」

 

「はい、よろしく···じゃぁ名前の確認をするので呼ばれた人から返事をお願いします。相輪君」

 

「はい」

 

「明石さん」

 

「はい!」

 

 出欠席みたいに呼ばれていき、全員が呼び終わると、一番最初にゴブリンの少女である小風さんが呼ばれた。

 

 誰よりも頑張り屋でクラスではムードメーカーの彼女の合格を皆が祈った。

 

 

 

 

 

 

「失礼します」

 

 私が部屋に入室すると、白い大きな翼と美しく長く伸びた青黒い髪に宗教絵から飛び出してきた様な天使がそこに居た。

 

 頭の上で光るリングがより神々しさを醸し出している。

 

「小風凛さん、今日はよろしくね」

 

「は、はい! よろしくお願いします!」

 

 椅子に座るように促され、椅子に座る。

 

「緊張するよね。リラックスリラックス」

 

「ははは!」

 

 乾いた笑みを浮かべてしまう。

 

 イブキさんはまず私の種族について聞いてくる。

 

「見ての通りゴブリンです。裸が緑色なのと頭に角があるのが容姿的な特徴です」

 

「いや、胸めちゃくちゃデカいじゃん。真っ先にそっちに目が行ったわ」

 

「あはは」

 

 確かに私の胸は大きいが、眼の前のイブキさんの方が大きいだろう。

 

「目の色が黒に瞳が黄色何だね。綺麗だし、顔も整っていて人気者だったんじゃない?」

 

「いえ···仲間からはモテましたが···他の人からは」

 

「うーん、私なら配信者として売り出すのになぁ」

 

 そんな話から始まる。

 

 容姿で褒められたの産まれて初めてかもしれない。

 

 混血の子以外からは色が気持ち悪いとか言われていたので少し嬉しくなった。

 

「へぇ、クラン会計免許にモンスター調理師免許持ってるんだ!」

 

「は、はい! 私非力ですが手先が器用なので裏方でも活躍できる資格をと思いまして」

 

「なるほどね~、ちなみに将来の夢とかはある?」

 

「···上級探索者になって人前でも胸を張って生きれるようになりたいです」

 

「···それだけ?」

 

「え?」

 

「私のチーム···いや、クランに所属したらそれはあくまで通過点でしか無いんだよね。もっと夢を大きくしようよ。例えば···私と配信者の箱を作って百万人の配信者になるとか!」

 

「いやいやいや、私ゴブリンとの混血ですよ?」

 

「いや、行けるね! こんな可愛い子が美味しい料理を作っている動画を撮影すれば絶対にバズるよ! ゆくゆくは自分の店を持って!」

 

「···イブキさんに付いていけばなれますか? そんな人に」

 

「勿論。皆でビッグになろうや!」

 

「···でもなんで私達みたいな混血を誘うんですか?」

 

「息子と娘の為」

 

「え?」

 

「私の息子と娘もモンスターの混血ではないけどTSした元男がマジックアイテムで孕んだ子供という業が深いから差別されてしまうと思うんだよね。そのときに頼れる先輩がいれば苦難も乗り越えられるとは思わない?」

 

「それに少数とはいえ混血によって職業選択の自由が消えるのも、普通に差別されるのも調べれば調べるほど悲しくなってしまってね」

 

「悲しく?」

 

「私はこの体になるまで才能が全く無かった。そんな私より混血によって特殊な才能があるのにも関わらず虐げられているのはおかしいと思ってね」

 

「義憤に駆られたとかそういうのではなく私は君達の才能を純粋に評価し、育ててみたいと思った。ただそれだけだよ」

 

「そうなのですね···」

 

「ちなみにここまでの会話で小風さんは合格。是非一緒にチームを盛り上げていこう」

 

「え? は、はい!」

 

 どういうわけか私は合格になったらしい。

 

 部屋に戻って次の人を呼んできてくれと言われて私は退室するのだった。

 

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