底辺ダンジョン配信者がトラップ踏んだらTS天使になりました!?   作:星野林(旧ゆっくり霊沙)

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魔導書談義

 探索者支部で会った子達と再び会ったが、多くの子が困窮していた。

 

 上手くいっている子達も勿論居たが、その子達は四人でチームを組んで下級ダンジョンでちまちま稼いでいたらしい。

 

 お金を出し合って安い物件を借りての共同生活をし、互いに料理番や掃除番を決めてやることで貧しいなりにちゃんと健康的な生活をしていた。

 

 ただ残りの六人はソロでどこまで行けるか試したいという気持ちが強かったのか、独力で頑張ろうとし、家事をしながらほぼ毎日ダンジョンに潜って戦っていたらしい。

 

 探索者高等学校のダンジョンでは大丈夫だったから他のダンジョンでもそれなりにできるだろうと挑んでモンスターの動きが違ったり、知識だけのモンスターと戦い苦戦をし、治療費等で出費が嵩み、治療費や武器購入費を借金で賄ってしまったらしく、借金を返すためにダンジョンに潜る、怪我をする、治療するの悪循環ができてしまい、多い子だと既に四十万近くの借金を抱えている子が居た。

 

 ただ亡くなった子は片腕を欠損し、その治療費が保険適用外だったので高額となり無理をして亡くなったということをこの時知った。

 

 ただ私も聖人ではない。

 

 最初の頃は今のように資金に余裕も無いし、住む場所も用意できないので抱えることはできない。

 

 私達が無理をすればその子は助かっていたかもしれないが、私達のチームが人数過多で潰れる可能性もあったため、これは巡り合わせというほか無い。

 

 とりあえず皆に百万円を各自に配り、クランに参加するまで傷を負っている子は治療に専念し、しっかり食事を取って、しっかり休んで体力を回復してほしいと伝えた。

 

 

 

 

 

 

 

 十一月、いよいよクラン本格稼働···といきたいが、佐倉と佐藤の出産が始まり、松田と萩原はそちらにかかりっきりとなる。

 

 なので残りのメンバーでマンションの受け渡しや金の支払い、新人たちの引っ越しの手伝いをしていく。

 

 配信業務もほぼ余裕が無かったので一週間全員がお休みを取り、クランの稼働や引っ越し手続きを終わらせていく。

 

 新規加入組の手伝いもあり、十三人の正式加入も済ませ、ガイアクラン正式稼働! 

 

 とりあえず私のグループには新人の中でもレベルが低い者を集め、不人気なオークのダンジョンに挑む。

 

 令嬢組には盾と解体用のナイフを持たせて、とにかく守りに徹してほしいと指示を出し、既存メンバーは新規加入組のアシスト、新規加入組はとにかく暴れろと指示を出す。

 

 ちゃんと休息を取れたみたいで、動きにハリがあり、危なげなくオークを混血の子達は倒していく。

 

 混血の子達のレベルも低い組でも四十前半あるため、万全な状態であれば多少武器が劣っていても通常オーク程度なら倒すことができる。

 

 令嬢組の三葉は慣れない環境や血の匂いから吐いたりしていたが、ほか二人の令嬢達や私、月精、山姫、スカーレットが支えてあげることで頑張っている。

 

 オークを五十体倒したところで一度ダンジョンを出て、駐車場で休憩を取る。

 

 一応バスコンとミニバン二台で来ていたが、令嬢組は慣れない解体作業や初めてのダンジョンアタックということで、休憩になると倒れ込んでしまい、バスコンのベッドで眠っている。

 

 その様子を見た新規加入組の一人が

 

「羨ましい」

 

 と呟き、何人かが頷く。

 

 混血である彼ら彼女らは戦うことでしか生活できない。

 

 なので学生時代から命がけでダンジョンアタックを繰り返してきた為かキモの座り方が段違いである。

 

 それに自由に暴れろと言ったが、車の中や駐車場などで連携を確認したり、魔法の発射合図を決めたりやるべきことをしっかり行っていた。

 

 これは私的に評価は高い。

 

 懸念点は混血の仲間意識が強すぎて混血でないメンバーと壁を作ってしまわないかという点だ。

 

 その先行実験として小風、南波、内藤、池田の四名を採用して他のメンバーとちゃんと交流できるか確認していた。

 

 そこに探索者として、社会人として先輩である五名を中和剤的意味合いで加入させている。

 

 正直五名以外も追加で明聖社から書類が送られてきたが、あえて境遇や背景が厳しい五名を選んだ。

 

 自身よりも境遇が厳しい人が居れば下手に文句は言えない。

 

 そしてちょうど良く彼らの真反対にいる令嬢達の参加を取り付けた。

 

 恐らく必ずどこかで混血の彼らと令嬢の彼女らは衝突するだろうが、それを予測し対処することができれば今後のクラン運営において大きなアドバンテージになる。

 

 混血を優先とは言っているが、必ず純血の人も人数比的に入れなければならない。

 

 結局どんな組織でも内部で人の好き嫌いや派閥が出てくる。

 

 それをいかにコントロールできるかが伸びるクランとそうでないクランの違いとなるらしい。

 

 私には東横というクランよりも更に上の組織である協会の、更に幹部教育を受けているため高い角度から組織を見てくれる事ができる。

 

 まぁ私的には初期は岐阜県の探索者高等学校出身者の割合が五、他県からの混血の割合が三、残りの二が純血にすれば上手いこと回るのではないかと思っている。

 

 それに池田が他のクランと仲良くできるように、一度懐の中に入るか、ちゃんと利益になることを理解できれば感情を優先し過ぎる人以外は上手く回るのだ。

 

 まぁ若いうちは感情的になりやすいので難しいっちゃ難しいのだが···。

 

 まぁそのうち令嬢達は探索者の教育を早期に受けることができて羨ましいみたいに考えるようになるだろう。

 

 私が才能を付与する関係上、初期のレベル差がそのまま離脱しない限り維持されるからだ。

 

『三葉って子はどちらかであります。大化けするか、潰れるかとスカーレットは持論を述べます』

 

 いつの間にか横に居たスカーレットが私の考えを先読みしたのかそう喋ってきた。

 

『クランのリーダーという立場上多少悪者になる必要があると思います。ただ、我々はイブキさんに恩を感じています。負担は分散、利益も分散。Win-Winでいきましょうとスカーレットは意見を述べます』

 

「ありがとうスカーレット···よし、昼食食べて午後の部いこうか!」

 

 私は気合を入れ直すのだった。

 

 

 

 

 

 

「これをこう···よし書けたんじゃない?」

 

「···うん、大丈夫、書けているね」

 

「よし!」

 

 クランが始動して数日後、ドタバタしている中、東横が遂に魔導書の作成に成功した。

 

「ふー、でもこれで私も魔導書を書けるようになったかー」

 

「おめでとう東横」

 

「ありがとうイブキ···でも魔導書を書くには適性が高い魔法じゃないと難しいのと、私はイブキみたいに魔法を組み合わせて新しい魔法を創るってのまではまだできないみたいだし」

 

「しゃーない、ただここまで魔法の理解をできるようになったらあともう少しだと思うよ」

 

「頑張ってみるわ」

 

「その意気!」

 

 これで私だけが現世で魔導書を書けるっていうのは無くなった。

 

 教えれば教えるほどメッセンジャーとしての役割は薄れていく。

 

「ただ魔導書を書けるように教えるにはイブキじゃないとまだ無理ね。私だとまだ理解力が足りてない感じだわ」

 

「何回も書いていればそのうち覚えるよ」

 

 東横が創った魔導書はフリーズという触れた物を凍らせる魔法で、魚や肉等の鮮度を保つ必要のある食材を保存するのに活用できる魔法だ。

 

 私が覚えてみて、更に探索者協会の方でも確認してから、私が新しい魔法と発表する形になるだろう。

 

 今後東横は強力な戦闘系魔導書を書いて探索者協会に渡し、後進を育成する必要もある。

 

「そうなると対抗の魔法も開発する必要があるねぇ」

 

 私の呟きに東横は

 

「冷気に対抗と言うと熱かな?」

 

 と言う。

 

 体温を一定に保つ魔法は安全かつ利便性が高いだろう。

 

 高難易度の上級ダンジョンの中には雪原や火山地帯と過酷な環境のフィールドが広がる場所もある。

 

 そうなると体温を一定に保つ魔法は装備のバリエーションを広げる意味もあり、重要になってくるだろう。

 

「こういう魔法の開発や競争が広まれば、ダンジョン攻略による死傷者も減るんだけどね···ただやり過ぎると魔導書の価値を落としてしまうから悩みどころだね」

 

「そうですね。公開できる物は絞る必要がありますし」

 

「だね」

 

 結局万能防御魔法がもう少し浸透するまではサンレイみたいな強力な攻撃魔法も公開できないし、万能防御魔法も更に強力な魔法に耐えられるように改良を加える必要がある。

 

「たぶん次にこの域に到達するのは魔法への熱量的にスカーレットだと思うし、彼女は魔法の適性も広いから多くの魔導書を残せそうだね」

 

 私は東横にチームのメンバーで次に誰が覚えるか話すのだった。

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