黒颯のエレティコ ~忘れ去られた神の力で凌辱シナリオをぶっ壊す~   作:サイリウム(夕宙リウム)

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101:蹂躙の足音

 

「あ~、しゃあない。じゃあフアナの代わりに仕事しますか……。」

 

(プ。)

 

「言うなってタイタン。」

 

 

私の中にいるタイタンから『今起きてること大体お前のせいじゃね?』という発言を流しながら、準備を始める。わざわざ言語化しないでよ。なんとなく私もそうなんじゃね? って思ってたところだからさ……。でもその場その場で一応最適なことはしてきたつもりだよ? まぁ長期的な目線がなかった上に、その場その場の解決で『あともう大丈夫だろ』と思ってたのは確かだけどさ……。

 

そんなことを考えながら、神秘を体中に廻し、同時に脳の保護を。視界一杯の“空間”たちを開いていく。

 

フアナがキレて使徒討伐に行っちゃった以上、私がこの狂える民衆をどうにかしないといけない。神秘を大量に含んでの“後光フラッシュ!”が出来ないわけではないけれど、アレは光だから距離が離れてるとちょっと効果が薄くなってしまう。私が持つ神秘も有限、最大効率を模索する必要があるだろう。

 

 

(無力化しながら同時に自軍に引き入れる技だから、洗脳し直してるってことを除けば最適なんだよね。……まぁどうするにも、一回無力化した方が良いのは確かだ。)

 

「んじゃとりあえずあのグループ……、撃ぇ!」

 

 

号令と共に、空間から放射するのは久しぶりの『銅の棒』。最近は威力不足でご無沙汰だったけど、こういう時にも使える便利な弾丸さんだ。これをいまだ侵攻する帝国民たちの進路上に突き刺していき、壁を形成する。

 

今から作るのは、『籠』だ。神秘の光が隅々まで行き渡る様に人を固めて、フラッシュする。おそらくそれが私が出来る一番早い無力化方法だ。

 

彼らの指揮系統というか、どういう命令を受けているのか正確には解らないが……。銅の棒によって作られた壁を乗り越えようとしながら進んでいるのを見るに、『王国に向かってただ進め』という命令のような気がする。つまりそこまで強い洗脳じゃない。帝国の民全員を先兵とするために、込める神秘をケチったのだろう。つまりこれならば、私でも簡単に上書きできる気がする。

 

 

(っと、壁に向かってただ進み続けてるせいで先頭の人が後ろからやって来た人に踏まれて潰れちゃいそうになってる。はよ助けてあげないと。)

 

 

フアナの魔法だったらもうちょっと穏便に済んだんだろうけど……。我慢してね?

 

 

「頼むよタイタン。」

 

(プ!)

 

 

彼に翼の制御を任せ、私が空間から取り出すのはただの鉄の棒。けれどいつも使ってるオリンディクスよりもかなり長い50m級のものだ。これを使いましてぇ!

 

集団に向かって急降下し、翼で起こす風圧と鉄の棒で帝国民たちを固めていく。そして外周を銅の棒で出来た壁で埋めることによって、集団を一塊に。後はこれを何回も繰り返せば……! 帝国人塊柱の完成って感じ? ネーミングセンスない? それはそう。んじゃ下の人たち重そうだし、早めに助けてあげないとね~。

 

 

「というわけで通常出力! ティアラちゃん~、フラッシュ!」

 

 

瞬間、放たれる光。

 

神秘を込めてはいるが、ある程度抑えたソレは瞬時に帝国民たちの洗脳を焼き尽くしていき……、同時に脳も焼いてしまう。それまで何も言わずただ王国を目指していた民たちの眼、何も考えていないような眼に理性ではなく狂気が戻ってくる。うんうん、これで良し。んじゃ檻からだしてあげまして……!

 

 

「はーい、みんなティアラちゃんの方見てくださーい! 今から君たちと同じ、帝国のクソ女神に洗脳されちゃった人を助けていきまーす! 使徒とか強めな奴は私の友達が何とかしてくれるので、どんどん頑張っていきましょー! 頑張れば頑張る程私も褒めるし、アユティナ様も多分褒めてくれますよー!」

 

「「「うぉぉぉおおおおお!!!!!」」」

 

「うむうむ、いいお返事。……これ繰り返したらまぁ何とかなるか。」

 

 

よーしタイタン。んじゃこの調子でいくぞー!

 

 

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 

 

場面は代わり、フアナへ。

 

自身の愛する存在を攻撃された彼女は、それはもうキレていた。勿論自身の夫があの程度の攻撃を無効化できないとは思ってなかったし、喰らったとしてもダメージは大きくなかったことは理解している。けれど帝国民が多くいる集団の中からこそこそと狙撃して来るような卑怯者、ティアラがそんな奴を相手するような存在ではないと理解していた。

 

いわば、格が違い過ぎるのを理解していながら、卑怯な手を使って夫の手を煩わせた、気を害したという点に、彼女はキレていたのだ。

 

後ついでに、ティアラ自体そういう欲を持っているのにも関わらず年齢を理由に相手してくれないことに対しての八つ当たりなんかも多分に含まれていた。

 

 

フアナは非常に優れた魔法使い、故に“魂”についてもある程度の理解がある。つまりティアラが持つその少々いびつな魂。何かと何かが混じり合ったようなそれが、すでに成人年齢を通りこしていることを知っていた。さらにそもそも、フアナ本人も時間停止空間で結構な時間鍛錬していたため、生まれてから経過した時間はすでに成人を越えている。肉体の成長こそ止めていたため、見た目は変わらないが……。

 

まぁつまり、精神的な成人と、肉体的な成人。ティアラが逃げる時によく使う言い訳である『私達まだ8歳だから! せめて成人してから!』というのはクリア済みだったのだ。

 

 

(やろうと思えば肉体を最盛期にまで成長させることも可能です、というか一回しました。私はティアラ好みの肉体になっていましたし、ティアラも……。っと、戦闘中でしたわね。ストレス発散のためにも少々暴れさせていただきましょう。)

 

 

怒り狂う本能と、常に冷静さを保つ理性。理性の方が浮かべていた思考を打ち切り、本能に身を任せながら魔力を叩き起こす。上空から地上へと叩き落すのは、彼女が持つ能力の一つ。故郷にいたころアユティナ神から教わった、組み合わせと込める魔力量によっては神すらも打倒出来る可能性を持つ、『複合魔法』。

 

合わせるのは彼女が最も得意とする“火”と、それに相反する属性である“氷”。そしてそこに追加するのは、“切断”と“拡散”。

 

 

 

「『炎氷断の魔法・拡散(ギアフォタイテ・ディフシアン)』」

 

 

 

左手に生成された火炎球、右手に生成された氷結球。それ単体で比較的RESの高い後衛職が吹き飛ぶ可能性のある魔法攻撃。その球体を強く掌を合わせることで、合一化。そして叩きつけられた衝撃によって、地面に撃ち出される炎氷の刃弾。

 

軽く音速を越えた速度で撃ち出されたソレは……、地面に叩きつけられる瞬間に、弾け飛ぶ。フアナによって仕込まれた“拡散”のキーが作動し、先ほど彼女の手から生み出されたものと、“同一”の魔法が全方向にまき散らされる。威力減衰が全く起きず、地上で起きるのは、ただの殺戮。

 

周囲にいた敵たちが、切断される間もなく、弾け飛んでいく。

 

その場に残るのは、たった一人。黒い瘴気のような物を身に纏った弓兵。

 

 

(……まだ生きてやがりますわね。)

 

 

フアナ自身、巻き込まれた帝国民に対して哀れみの心がないわけではない。洗脳され来たくもない戦場に送り出されている。確かに哀れであるし、可能なら助けてやりたい。そういう思いがないわけではないが、ティアラのように少し面倒な思いをしてまで助けたいとは思っていない。邪魔なら、切り捨てる。その程度の扱いだ。

 

先ほどまで彼女が組み上げようとしていた“無力化”の魔法も、『ティアラが望んでいるから』行使しようとしていただけである。つまり“下手人”付近にいた者たちがどうなろうと、知ったことではない。

 

 

「視界も晴れましたし、どう料理……、あら。」

 

 

そう言いながらゆっくりと地面に降りようとした瞬間、敵から飛んでくるのは、先ほどと同じ光の矢。それを軽く魔力防壁で弾きながら、大地に足を付けるフアナ。

 

 

「可哀想に。思考能力どころか人格もかなり消去。いえ喰われていますね。言うなればただ標的を殺すだけの人形。というべきでしょうか? 空いたスペースに無理矢理神秘を詰め込んでいるせいか、醜い程に歪。帝国の女神とやらは美を解する知能すらないようで。」

 

 

どうやら相手は過去の使徒であり、類まれな能力を持った弓兵だったのだろう。

 

残弾に限りがある実物の矢を用いず、魔力によって生成された矢を連続で撃ち出していく。女神の濁った神秘による強化を受けているせいか、先ほどの攻撃も致命傷には至らなかったのだろう。ティアラに放った初撃と変わらず、光の速度に近しい弓撃を、連続的に。そしてフアナの周囲を走り回りながら、矢を放って行く。

 

けれど一切、その矢が彼女の柔肌に触れることはできない。

 

使徒ながらまだ“人”の範疇に収まる存在が、バケモノを越えた存在になりつつある“超越者”に勝てるわけがなかったのだ。

 

 

「確かに哀れ。ゴジケサという女神に“それ相応”の地獄を味わって頂くとして……。“貴方”にも代償を払ってもらいましょうか。」

 

 

彼女がそういった瞬間。時間が、止まる。

 

世界から色が消える、フアナが掌の上に掲げる魔法陣から推測できるように、“時空間魔法”が発動された。

 

これの欠点として、使用者がその魔法に込めた魔力量よりも多い魔力、もしくは神秘を持っていた時。その存在が対象外になってしまうというものがある。つまりフアナが魔法を使用した際、彼女が持つ魔力量よりも多く魔力を持っているヘイカには効かないし、それ相応の神秘を持つティアラや、圧倒的な神秘を持つアユティナ神には効果がない。簡単に言えば、自分よりも強い存在や上位の存在には効きにくいのだ。

 

つまりいくら神秘持ちだったとしても、その総量が使用魔力量を下回っていれば……。

 

 

 

いくら神の力を植え付けられているといえ、“止まる”。

 

 

 

彼女の目の前には、矢をつがえようとしている敵の使徒が。彼が放った光の矢たちも、空中で静止してしまっている。見渡せば自分以外の多くの存在が、この止まった世界に飲み込まれてしまっていた。

 

フアナは今から起こすことに対し“愉しそう”に笑いながら、この止まった世界の中で未だ動き続ける存在たちに目を向ける。おそらく急に時間が止まったことに驚いたのだろう。黒い羽を羽ばたかせこちらの様子を伺うティアラに『大丈夫』と手を振りながら、術式を起動する。

 

 

「痛覚を、軽く十万倍。慣れによる耐性の獲得を無効化。体感時間を同様に十万倍ほどにして、永劫の苦しみを味わってもらおうかと思っていましたが……。自身の意識が残っていない貴方に、そこまでするのは酷でしょう。十倍程度で勘弁してあげます。」

 

 

ティアラ以外正直どうなろうとも構わない。愛に飢えている彼女は、そういう感覚を持ってはいた。けれどそれ以外に対して感情を持たないわけではない。故に目の前の存在に哀れみを感じ、与える苦痛を軽くしてやる。……でもまぁ軽くなったといっても、眼前の存在が自身の愛する人を傷つけようとしたこと、格の違いを理解せず勝負を仕掛けたこと、そしてその勝負を卑怯な手で自ら穢したことは確かである。

 

与えられる苦痛が、常人では一瞬で精神が吹き飛ぶレベルである事は確かだろう。

 

 

(まぁ消し飛んでも、治る様に組んでますけれど。)

 

 

彼女が発動するものは、本来は医療用に開発されたもの。『外科手術の際に体内と体外を魔法で繋ぎ、患者に与える負担を最小限にする』魔法を、悪用する。繋げるのは体内と体外ではなく、“体内と体内”。しかも肉や臓器を無理矢理繋げ、捻じ曲げる。一つではなく、無数に。自身の魔力ではなく、眼前の罪人に払わせることで、魔力が枯れているのに無理矢理吸われるという苦痛も、追加する。

 

体の中を、無理矢理捩じ切られ、絞り尽くされるような感覚。指定した対象の経過時間を極端に遅くする魔法を掛けた後……、フアナは世界に付与していた、時間停止を解除した。

 

 

「ふぅ、少しスッキリしましたわ。」

 

 

いずれ自然消滅するだろう敵使徒を軽く蹴飛ばし、そう言いながら飛行用の術式を起動する彼女。

 

 

「さ、旦那様にお任せしてしまっていましたし、私も私の仕事をしませんと……。にしても、さっきの時間停止。お祖母様や、あのへスぺリベス公爵夫人はともかく。泥棒猫まで突破されるなんて。神秘どころか魔力すら感じないのに……。いえ、考えるのは後ですわね。」

 

 

自分のわがままで仕事を押し付けてしまったようなものだと考えるフアナは、足早に自身の夫の元へと向かっていく。ティアラが自分と泥棒猫、エレナと仲良くしてほしいことは理解していたが……、そもそもの気質が致命的に相性が悪いと言うことも、理解していた。

 

 

(……とりあえず、顔を合わせても殺し合わないようにはしないといけませんわね。業腹ですが、ティアラに迷惑を掛けたいわけではありませんから。)

 

 

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 

 

時間は少し巻き戻り、エレナの元へ。

 

『ヴァルパラ』という物理特化職に転職したせいか、魔力を完全に失ってしまった彼女だったが……。その分肉体性能の驚異的な向上が起きており、その中には感覚が各段に鋭くなるというものも含まれていた。

 

それまで感じ取る事すら難しかったはずの“神秘”さえ突き止めてしまった彼女は、自身のペガサスを羽ばたかせ、ティアラが持つ神秘よりも酷く濁ったものを持つ存在へと向かう。

 

 

「みつけ……、3人もいるのね。まぁちょうどいいわ。」

 

 

そう言いながら、自身の愛槍を構えるエレナ。

 

彼女の眼前にいるのは、三人の使徒。フアナが排除した使徒と同じように、戦闘に必要なもの以外は全て帝国の女神ゴジケサによって捕食されており、空いたスペースに彼女の神秘が詰め込まれた存在たちである。口を動かすどころか、言葉を解す能力すら残っていない。

 

あるのは、肉体に染み付いた得物を振るう力だけ。

 

 

(剣に斧に槍の一人ずつ。昔ならちょっと斧へ苦手意識があったけど、今なら……。)

 

 

ティアラが知る原作と同じように、この世界にも三すくみの法則が存在している。斧よりも軽く速度を出せる剣に、剣よりも長く技術を活かせる槍に、槍をそのまま叩き折ることが出来る斧。この世界で生まれ育ったエレナたちもそれを理解しており、槍を主兵装とする彼女は斧使いが少し苦手だった。

 

けれどそれも、過去の話。何せエレナの現在のATKは、70。人類の限界であったはずの50を軽く超え、もしステータスがその肉体に反映されていたのならば、信じられない程の筋肉がその身に宿っていただろう数値。つまりこの世界の“人”でしかない存在が、どう足掻いても勝てるわけがない存在なのであった。

 

ペガサスをゆっくりと大地に降ろし、槍の切っ先を地面へと向けることで、先手を譲るエレナ。

 

それに向かって、何の感情も出さず、ただ人形のように動き出す帝国の使徒たち。けれどその身に宿っていた技術と能力は本物だったのだろう。以前のエレナでは目で追えない程の速度で、真似できない様な技術で、接近していく。

 

 

(先頭は、斧。)

 

 

真っ先に突っ込んでくるのは、斧を持つ使徒。

 

大きく飛び上がり、その全力をもって槍ごとエレナの肉体を両断しようとしている。そしてその後ろに続く剣の使徒はエレナの死角を縫うように動いており、同時に槍の使徒は斧の背後に立ちながら、ペガサスを貫こうとその槍を大きく引き絞っている。

 

斧が受け止められてしまっても、剣によって妨害し、更に槍の攻撃で騎馬を落す。後は落馬した存在を囲んで叩けは終わり。確かに騎馬対策としては、隙のない策と言っても良かったのだろう。

 

ただし“策”は、相手が同じ立場にいなければ機能しない。

 

 

「遅い。」

 

 

振り落とされた斧を【終槍ディフェクト】で受け止め、そのまま振るうことで斧を叩き割るエレナ。そして即座に槍を切り返し、体内に宿る活力、HPをその槍に叩き込んでいく。

 

ティアラが持つ【神槍オリンディクス】が魔力や神秘に反応しその能力を発揮するのであれば、この【終槍ディフェクト】はHPに反応し、その機構を反応させる。

 

太古の時代に活躍していたその槍が新たな主人の来訪を喜び、埋め込まれた蒼い宝玉が光った瞬間……。槍が振るわれる。光に達しかけたその一閃は誰も目で追うことが出来ず、残ったのは槍が通ったのであろうことを表す蒼い残像だけ。

 

それまでエレナの視界を遮っていたはずの斧の使徒、槍が通ったのであろう肉体が抉り取られ、消し飛び、両断される。そしてその少し奥に生成された、世界の歪。威力が高すぎたあまり、世界が悲鳴を上げ、世界が切断されかかっている。

 

 

「次。」

 

 

それによって、少しやり過ぎてしまったことを理解したのだろう。エレナは込める力を少し弱め、返す刀でもう一度槍を振るう。その行く先は、死角から攻撃しようとしていた剣の使徒、案の定何もできないままに消し飛ばされる彼。加減が出来たようで、空間の歪は産まれていない。

 

そして残る槍の使徒、彼女のペガサスを狙っていたその存在。騎上のエレナが何かすることもなく、ペガサスの口によってその槍が受け止められ、槍を奪取。首を大きく振るいながら使徒ごと槍を地面に叩きつけられることで、爆散させてしまう。

 

 

「……うん、体力調整も良い感じに出来てる。貴方もありがとうね。」

 

「ププ。」

 

 

『ヴァルパラ』の真骨頂。それはHP消費による強烈なブースト効果にある。武器や自身の騎馬にHPを流すことによりその能力を爆発的に増加させる。故に本来ただの“騎馬”でしかないエレナのペガサスも、一時的にではあるがタイタンすらも超える剛力を発揮できるようになるのだ。

 

だからこそ本来どう足掻いても勝てない様な使徒相手に、ペガサス単身での撃破が可能になる。そして消費したHPは、エレナの新たな相棒である【終槍ディフェクト】で吸収してしまえばすべてが済んでしまう。敵が存在する限り延々と戦い続けることが出来る。

 

太古の時代、世界の混沌をたった一人で祓い人にとっての楽園を作り上げた『ヴァルパラ』がここに再臨したのである。

 

 

「でもまぁ、なんか見せてもらったステータスの描写的に、MPとINTが0になっちゃってて、なんかすごく嫌なんだよね……。ティアラがずっとLUK0で泣き叫んでる理由が判るわ。ほんとに。」

 

「プ……。」

 

 

多分同情される可能性が高いが、あのティアラである。ふざけて思いっきり馬鹿にしてくる可能性もあった。まぁその時は『お前もLUK0じゃねぇか!』って突っ込めば勝手に黙るので良いとして……。まぁINT0って弄られるのはね? さすがのエレナもちょっと来るものがあるようで……。

 

 

「うん、考えないようにしよ。このなんか腐った魚の様な匂い、多分まだ敵の使徒が何人かこの集団に隠れてるよね。潰してみた感覚的に、なんか複製されたような感じが下から……。どこかに本体がいるはず。それ探しながら潰していこう……。アレ?」

 

 

そう考えていると、急に世界から色が消えていく。

 

フアナによる、時間停止だ。

 

本来『ヴァルパラ』には時間対策に成り得る能力は付与されていないのだが……、強化された感覚がその前兆を察知し、ほぼ無意識にHP、活力を消費することで自身をその対象外と置くことに成功していたエレナ。まだ魔力を扱えていたころ、母から『魔力による肉体強化でダメージを抑える』特訓を受けていたことが、幸いしたのだろうか。

 

 

「……たぶん、あのフアナとか言う奴の魔法。こんなのも出来るのか。カバーできないわけではないけど、出力を上げられたらちょっとまずいかも。勝負するなら、初撃で決めるのが鉄則、かな? まぁティアラ的にも、次期公爵的にも、あの子とは仲良くする方が良いんだろうけど……。」

 

 

出来るかなぁ、と悩みながら近場にいた敵使徒に向かって自身の愛槍を投射するエレナ。敵の体が爆散し、投げ飛ばした槍を手に取る事で、使徒が持っていたHPを吸収していく。

 

エレナがどんな選択をするのかはまだ誰も解らないが、このまま順当に成長すれば父の後を継ぎへスぺリベス公爵となることが決まっているエレナ。同じ公爵であるティアラの配偶者と仲良くしておくことは決して無駄にはならない、むしろ仲良くしておく方が貴族としても良いことは解っているのだが、親友にしてライバルであるティアラに押しかけて勝手に自分を婚約者としたらしいフアナをそこまで好きになれそうにないのは、確かだった。

 

ティアラに対し、とんでもない愛を抱えていることは事実の様だったが……。

 

 

「まぁ頑張ってみるかぁ。」

 

 

 

 

 






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