黒颯のエレティコ ~忘れ去られた神の力で凌辱シナリオをぶっ壊す~   作:サイリウム(夕宙リウム)

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32:デカいは可愛い

 

 

はい、ということで数時間馬車で移動して降車。お着換えして【山の主の衣】を装着した後、スキルでソウルウルフちゃんたちを召喚。彼らをモフモフした後に、馬と馬車の護衛を任せた後。オリアナさんと二人で森の中へ。目的の水場を目指して木々の間を抜けながら歩いてきたわけなんですけど……。

 

 

「なんか想像以上に澄み切ってる気がする……。」

 

「まぁあいつら、こういうところを好んでるみたいだしな。」

 

 

想像以上に自然がキレイ。よく大自然の中ってマイナスイオンで溢れてるって聞くけど、それ以上の何かがここにあるような感じ。吸い込む空気すらも浄化されてるような、土地自体に浄化の魔法が掛けられているような? 上手く言葉にはできないけれど、なんかそんな感じだ。

 

故郷の村の墓地、あの辺りはアユティナ様の神秘が土地に根付いていたけど、ここはそれとまたちょっと違った感じだね。さすが異世界。

 

そんなことを考えていると自身の魂に何かが繋がるような感覚、アユティナ様との通信がつながったようだ。ずっと神の視線のようなものを感じてたから、見てくださっていたのは知ってたけど、ちゃんとお声を聴くのは昨日ぶりだね。……いやそういえばほぼ毎日何かしらのお言葉頂いてるな。私幸せか?

 

っと、神の声に耳を傾けなければ。

 

 

【そんな改まらなくていいのに……。精霊とかそういう不思議存在が多くいる土地みたいね、ここは。私たち神が持つエネルギーとはまた違うものが土地に蓄積されて自然とこうなった、って感じ。精霊の側面も持つペガサスからすれば棲みやすい場所だと思うよ。】

 

(へぇ~。そうなんですね。)

 

【昔はもっとこういう場所も、精霊もいっぱい居たんだけどね~。精霊も人と同じようにある意味私の愛すべき子。けどこれほどまでに数を減らしてるとなると……。こりゃあのクソども喰いやがったな。】

 

 

あ。はい。とりあえずアユティナ様のお怒りゲージがぐんと上がったので静かにしておきますね……。話からして、おそらく精霊のエネルギーというモノは神の力とは別種のもの、けど神の力の方が強い。けれど神からすれば自分の力を向上させるご飯にもなるって感じかな。

 

豊かな土地からエネルギーを吸い取り枯渇させる、その土地に住んでいた精霊たちを食い尽くし養分とする。まさにあのクソ女神たちがやりそうなことだ。というか最終局面で大陸丸ごと吸い取ろうとしてたし、恒常的にやってたんかね?

 

と、とりあえず話題変えますね!

 

 

「……そうだオリアナさん。兵士してた時なんですけど、部隊に『空騎士』とかいなかったんですか? なんか聞いてる感じ、ペガサス関連のことがふわっとしているというか。馬に比べたらそんなに詳しくなさそうだったので。」

 

「そりゃ私は地上部隊だったからな、任されるのも基本前線だったし……。ペガサスってのは空の生き物だ。それを軍として運用するとなると、隊丸々一個ペガサスで埋めなくちゃいけねぇ。」

 

 

あ~、確かに。戦争ってある意味数の勝負ですもんね。十数人のペガサスと、残り80人くらいの地上兵。こんなんじゃ足並みそろわないですし。オリアナさんが率いていた前線部隊では求めるものが違う、って感じか。騎馬隊みたいな騎乗兵だけで構成されてる部隊みたいに、同じ兵種で固まってる方がいい、って感じかな?

 

 

「馬とか魔法使いとかだったらまだ足並み合わせて連携とかも出来るんだが……。まぁちょっと動かし方が難しいんだよ空騎兵は。私らみたいに地面を駆けずり回るんじゃなくて、あいつらは空もある。斥候はもちろん連絡兵から騎馬突撃紛いまで。敵陣内部に切り込んで相手を混乱させる、もしくは首狩り戦法なんてものもある。」

 

 

淡々と思いつく戦術を述べていくオリアナさん。確かに話を聞いている感じ、色々な役目を果たすことが出来る『空騎兵』。これを運用するとなると頭がごちゃごちゃになっちゃいそう。確かに常に相手の攻撃を受け止めながら戦線を押し上げる前線部隊の人が、空騎兵の運用もしながら戦うってのは色々難しそうだ。

 

 

「なるなる、二次元的な戦いと、三次元的な戦いってやつですな。」

 

「多分そんな感じだ。……それに、そもそもペガサスの数は少なくてな。馬と比べると数を集めるのが難しいってのもある。全部隊に数名配置して闇雲に消耗させるよりも、まとめてここぞというべきところで使う。そういう意味でも騎馬と同様、戦場の華ではあったな。」

 

 

勉強になるなぁ……。補給とか物資の輸送とかで馬に触れたりすることはあったけれど、ペガサスは完全に管轄が違うから解らないことも多い。百人隊だが指揮官として必要な情報、基本的な運用方法とかはわかるけど、詳しい話はちょっと難しい、ってところなんですね。

 

 

「指揮官として全兵種の運用の基本とかは頭に入ってるんだが、経験があるのは前線の部隊だけだ。専門的な知識になってくると他を当たった方がいいだろうな。」

 

「他?」

 

「あぁ、一応伝手がないわけじゃない。声かければ教えぐらいは説いてくれるだろうよ。……だがまぁそもそも私らには運用する部隊もなけりゃ、お前のペガサスすらない。槍の扱いも最初に比べればマシになったが、まだひよっこだ。気張れよ?」

 

「あ、はい。頑張ります……。」

 

 

オリアナさんなりの激励か、結構強めな勢いで肩を叩かれそのまま吹き飛ばされそうになる。普通に痛いからやめちくれ……。

 

まぁ確かに現状私の野望に必要なもの何も揃ってないからね。ちょっと気の早いお話だったかもしれない。でもでも、時間は有限。原作開始まで残り9年と言えば結構な年数だけど、原作への介入や準備を考えれば早め早めの行動が重要だ。

 

ただでさえロリコンに襲われたり、ペガサスに嫌われるっている謎の要因が邪魔してきたんだ。今後もそういうのを想定して動かないと、間に合わなくなっちゃうかもしれない。そうなれば色々オワオワリ。

 

 

(遅れを取り戻す? ためにも! 噂のクソデカペガサス。ゲッチュしてやるぜ……!)

 

 

そうこうしていると、木々の隙間から開けた場所が見えてくる。森のなかにぽっかりとあいた空白の草原地帯。そこに見えるのは、おそらく水が湧き出ているのだろう小さな泉。遠目からでもかなり水質がいいことが解るそこには何頭かの野生のペガサスがおり、水を飲みながら緩やかな時間を過ごしているのが見えた。

 

オリアナさんと顔を見合わせ、音を立てないように注意しながら、ゆっくりと姿勢を落し木々の陰に隠れる。

 

 

(サイズは普通くらい、目的の子は……。ッ!!!)

 

 

その瞬間、頭上に影。そして耳に到達する、轟音とも呼べる翼の音。

 

 

(でっか……。)

 

 

普通のペガサスが仔馬に思えるほどの巨大な存在が、地上へと降り立とうとしていた。

 

 

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 

 

(わっ! わっ!)

 

(凄いのはわかるが落ち着け、顔凄いことになってるぞ。)

 

 

いやいや! でも! あれ完全にロマンの塊だって! なにあのクソデカペガサス! 前世見た輓馬よりも何回りかデカいよあの子! え、何! 絶対体重トン超えてるじゃんか! ペガサスなのに! というかあのムッキムキな肉体もそうだけど! あの大きくて頑丈そうな羽! 巨体を支えるためかエグイくらいおっきいぞ! しゅき!

 

毛並みもすごい良いし……! ありゃ内臓も健康ですな! おほー! でっかくて健康!? じゅるりら!

 

ほしい! あの子ウチの子にしたい! ほしいほしい!

 

 

(駄々っ子かよ……、いや年齢的に見れば普通か?)

 

(ねぇ行っていい!? いいよね! スカウトしに行ってもいいよね!!!)

 

(はいはい、どうせ止めても勝手に行くだろお前。……何かあったら殺さない程度に反撃はしろよ? 体格差あるんだ。嘗められる前に、力関係をわからせておいた方がいい。)

 

 

解ってるって! 最初は恐怖でそこから優しくして仲良くするんでしょ! ほらヤンキーが猫に優しくしてるの見たらキュンってしちゃうやつ! 違う? まぁいいや! とにかくあのクソデカペガサスに突撃じゃ!

 

早く私とお友達になりましょー!

 

地面を転がりながら、木々の陰から飛び出す。その音でペガサスたちもこちらに気が付いたようで、向けた視線は即座に怯えへと変わる。お耳も後ろに引き絞っちゃってる。ごめんね♡ でもでも、お目当てのクソデカペガサスちゃんは違う。おそらく群れの長のような立ち位置なのだろう。しっかりとした意思のある目で、こちらを観察している。耳だってしっかりとこっちを向いている。

 

 

(私に、恐怖を感じずちゃんと注意を向けてる!)

 

 

他の子とは違い、しっかりとその四本足で立っている。視線は依然としてこちら、耳の向きだってこっちに向けて、音を拾おうと警戒している。

 

けれどその瞳には、恐怖など一切映っていない。

 

 

(~~~~ッ! 好きっ!)

 

 

ティアラちゃんそういう強い子だ~いすき! しかもしかも! 絶対気が強い子じゃん! 自我すごく強くて賢い子じゃん! んにゅぅ! 大好き! こういう子って最初は反抗的だろうけど、そういうのも含めて大好き! 飼い犬って手を噛まれるとこから始まるみたいなとこあるよね! あは! か~わい! ますますうちの子にしたくなってきた! とりあえず第一関門突破ァ!

 

ジリジリと距離を彼らとの距離を縮めながら、その様子を伺う。

 

案の定普通のペガサスたちは恐怖を感じているようだったが、彼らのボスであろう存在。クソデカが動かずじっとしていることで、逃げようとはしていない。ボスの号令一つで動き出せるようにしているような形だろう。

 

対してこちらも用意は万全だ。“空間”からお野菜と果物を取り出し、両手に装着。『ぼくわるい人間じゃないよ』の構えでゆっくりと前進だ。後ろで何かあったときのためにすぐに飛び出せるよう、姿勢を変えたオリアナさんの動作が聞こえて来た気がするが、とりあえず置いておく。ダイジョブだって! 我ティアラちゃんぞ!

 

 

「こわくな~い、こわくな~い。いいもんあげるぜよ……。」

 

「……。」

 

 

ゆっくりと近づきながら、ニンジンを伸ばしてみる。

 

クソデカもこっちが危害を加える気がないことを理解してくれたのだろう。ゆっくりと近づきながらニンジンを差し出す私を、じっと観察している。

 

 

「とれたて野菜だぜ……、とりあえずあげる。食べるか?」

 

「……。」

 

 

更に距離を近づけ、1mを切る。体高は3mを軽く超えててもおかしくないだろう。私の倍以上の背がある彼でも食べやすいように、ニンジンを上へと掲げながら、そう問いかける。

 

私に悪意がないこと、そして食べ物を渡そうとしていることを理解してくれたのだろう。ゆっくりとその鼻をニンジンへと近づけ……、食べた!!!

 

 

(あはぁ~~~~!!!! )

 

 

やっば! 何お前! 可愛いなぁおい! ……え、というか一口? んにゃ? もっとくれ? 仕方ないなぁ!

 

体がデカい分、食い扶持も多くいるのだろう。“空間”に手を突っ込み、木のバケツに放り込んだニンジンを食わせてやる。ほれほれ、もっと食べろ。それでもっと大きく成れ! デカさはロマンやで。にしてもニンジンさん甘くてうまいやろ~。せや、果物系も持ってきたから食べるか? もっと甘い奴!

 

 

「……。」

 

 

私がそういうと、目線でおかわりを要求して来るデカブツ。いいよぉ! あげるよぉ! ……でもちょっとお礼というかさ、触らせてくれない? ほら食べてる間だけでいいからさ。

 

そういいながら触れようとするが……、にらまれる。あ、あかんこれ。噛みつかれる奴だ。目がイってる。

 

 

「あは! 冗談だって~。んでさんでさ。私のとこに来たらこういうの毎日食べさせてあげるんだけど……、どう? 魅力的じゃない?」

 

「……。」

 

「ありゃ、無視? じゃあもう上げない。」

 

 

何も反応を返さず果物が入った籠に顔を突っ込むデカブツ。だがタダで上げるほど私も甘くない。餌やりティアラちゃんではないのだ。即座に全てを“空間”の中に収納し、コイツの目の奥を見つめる。まぁ私、君に比べたらかなりちっこいからさ、警戒に値しない雑魚なんだろうけど……。嘗めちゃだめだよねぇ。

 

デカブツからすれば急に自分の飯を取られたわけで、ブチ切れ案件だったようだが……、そっちの攻撃より、私の方が速い。

 

 

「“射出”。」

 

 

轟音と共に、彼の横に巨石が出現。

 

彼の巨体が一瞬にして押し潰されてしまうような存在が、地面へと叩きつけられる。

 

振動とその音によって森全体が揺れ、鳥たちが逃げ惑う様に飛び立つ音が聞こえる。おそらく周囲にいた野生動物たちも逃げ出したのだろう。私の鼓膜が何かの足音をいくつか教えてくれる。普通のペガサスたちは動かない。自分たちのボスであるあの巨体が、まだ逃げていないから。

 

その体を維持できるということは、この厳しい自然を生き抜く力と胆力があるのだろう。一瞬こちらに気を取られたようだったが……。思考の再起動が速い。これを見せられても、まだ私に攻撃しようという“意思”が見える。あはは、か~わい。

 

だが、その攻撃は、届かない。

 

 

彼の視界を過る、幾つかの陰。

 

 

そしてそれを視認した瞬間に鼓膜を震わす、激しい金属音。

 

 

「お・か・わ・り。好きでしょう?」

 

 

彼の眼前を通って行ったのは、側面から“射出”された金属たち。定期的に私に金属をプレゼントしてくれる盗賊がくれた、銅の剣だ。神に捧げる前のものだが、その数は28。先ほど叩き込まれた巨石に深々と突き刺さった物体たちは、彼に明確な“死”を自覚させる。

 

ようやく力関係を理解したこの可愛らしい巨体に、

 

もう一度問いかける。

 

 

「おいしいのはわかるけどね? 無視するのはいけないんじゃないかな……? 私の言いたいことわかるかい?」

 

「……(コク)。」

 

「なら良かった! 驚かせてごめんね~! ほらお詫びにイチゴちゃん! 甘くておいしいよ~。」

 

 

即座に巨石を収納し、雰囲気を変えて笑いながら彼に新しいものを用意してやる。

 

まぁ急に自分を踏み潰せるレベルの石が降ってきて、さらに剣まで飛んでくればさすがの彼でもビビるのだろう。かなり困惑しながらゆっくりとイチゴに口を付け始めるクソデカ。けどここまで見たのに逃げないってその強い精神力はティアラちゃん好み。ほんと好き。

 

いやはや、旅の途中で見つけた岩回収しておいて良かったよ! がけ崩れした後だったのか、道に巨石が転がってて邪魔だったから回収しておいたんだけど……。

 

この様子だと普通に対軍兵器としても使えそうだね! 今度見つけたら多めに補給しておこうかな? あ、ついでに盗賊も回収しておかないと! 経験値はアレだけど物資はまぁまぁ持ってるからね!

 

 

「もう怖いことはしないけど……、撫でるくらいは許してくれるかい?」

 

「……グプ。」

 

 

あ、イヤイヤだけど許してくれるみたい。

 

やっぱ体大きいのか声低いねぇ。うんうん、よちよち。さっきは怖がらせてごめんねぇ。というわけで私君をスカウトしに来たんだけど……、どうかな? 来てくれたら毎日おいしいモノ食べさせてあげるよ? その分まぁ色々しんどいことたくさんあると思うけど。

 

 

「約束できるのは、絶対“退屈しない”ってことかな? どう?」

 

「グピ。」

 

 

無視するとさっきみたいになってしまうということを理解してくれたのだろう。食べていた口を止め、ゆっくりと顔を上げこちらを見る彼。どう? 正直私、君に惚れちゃったし。用意できそうなことは、できる限り全部やろうかと思ってるけど。

 

そう言うと、何か悩むように静止する彼。その後視線を向けるのは、おそらく彼の仲間たちであるだろうペガサスたち。

 

 

「ん? あの子たちにも飯振舞えって? いいとも!」

 

 

“空間”から地面にバケツや籠の入れ物を出してやり、そこに大量の野菜や果物を入れてやる。ついでに馬ちゃんたちのために保管しておいた青草もドーンだ。ほら、ティアラちゃん怖くないぞ? 食べにおいで。後で二代目三代目に怒られるかもしれないけど、まぁその時はその時だ。

 

お金はまだあるからね! たくさん買い込めば問題なし!!!

 

 

(とりあえず、“怖がられない”の第一関門、“嘗められない”の第二関門、好感度稼ぎとしての“利を見せる”で第三関門。とりあえず全部突破、ってとこかな~。)

 

 

後はこの子をどうやって頷かせるかだけど……。どうしよっかな?

 

 

「……それはそれとしてお前。めっちゃ食うな。」

 

「グモ。」

 

「え、おかわり? 良いけど……。」

 

 

 





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