黒颯のエレティコ ~忘れ去られた神の力で凌辱シナリオをぶっ壊す~   作:サイリウム(夕宙リウム)

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73:素が強い

 

「ティアラぁぁぁあああああ!!!!!」

 

「え、エレナッ!? なんでここに居るの!?!?」

 

 

迷宮都市の直上から私の名前を叫びながらこっちに突っ込んでくるエレナ。え、ちょ、マジでなんでここに居るの!? お前子爵領でぬくぬく自己鍛錬してるんじゃなかったの!? というかなんで普通に武器持ちながら突っ込んできてるの!?!? あぁ、もう! ならこっちも受け止めるまで!

 

“空間”から【オリンディクス】! からのタイタンッ! 垂直跳びからのロールターンッ!!!

 

 

「ッ!」

 

 

交差する槍と槍。こっちはタイタンというバケモノ染みた出力があると言ってもただの一回転。以前までなら高度と筋力の差で押し返されていただろうが……、万を超える敵兵たちの魂が、私を強化している。圧倒的なレベル差は筋力の差をひっくり返し……、エレナを押し返す。

 

 

「やっぱり、強くなってる……ッ!」

 

「まぁね!」

 

 

でももう少しレベル上げられたら普通に追い抜かされそうな感じだな。さすが肉体性能おばけ。

 

少しだけ体勢を崩しながらも地面に着地するエレナ、それに合わせて私もタイタンを降下させ相手の動きを伺う。彼女は勝手知ったる仲だ。急に私のことを殺しに来るとは思えないので子爵領で良くしていた模擬戦の延長みたいなものなんだろうけど……。お前普通に【鋼の槍】持ってきてるじゃん。殺す気か? というか私も普通に【オリンディクス】出しちゃったんだけど。

 

 

「かなりの業物ね。」

 

「でしょう? お気に入り。……というかなんで切りかかって来たの? なんか私悪いことした? 困惑しかないんだけど。」

 

「……ライバルだと思っていた奴が、2万撃破とか敵将8人倒したとかいうバカげた報告受けた私の気持ちを考えたら?」

 

 

あぁ、そういう……。いやそれでも急に切りかかる理由にはならないのでは? まぁ別にいいけどさ。んで、なんで迷宮都市にいるの? 普通に子爵領で自己鍛錬してると思ってたんだけど。もしかしてエレナもレベリングしに来た?

 

 

「そうよ。貴女に置いて行かれるとか死んでも嫌だもの。最初は私も大人しく領土で待っていようかと思ってたけど……、ママから貴女が戦場に行った、って聞いて頭に来たの。だから家飛び出してここまで来たってわけ。」

 

「わぉ、アグレッシブ。」

 

「というかパパはともかくママにはある程度手紙で連絡してたはずなんだけど……、聞いてなかったの? というかなんでママも一緒にいるわけ?」

 

 

ちらっと後ろを見れば、『あ、伝えるの忘れてた』という顔をするナディさん。ママさんよぉ……、いやまぁ私のせいで色々あっただろうから別にいいんだけどさ。えーっとね、エレナ。もう帝国との戦争は終わったんで本当はこのままお互い自分のホームに帰る予定だったんだけど……。

 

簡単に言うと、もうちょっとしたら内戦みたいなのが起きそうなのよ。だからそれに向けての訓練? みたいなのを一緒にするつもりだったの。

 

ほら自己鍛錬もいいけどさ、短期的にぐんっと強くなるなら迷宮一択じゃん? 普通はまぁ団体様、しかもお貴族様の利用はちょっとギルドも他冒険者との兼ね合いで受け入れづらいだろうけど、私今のギルド長とマブダチだし、まぁ何とかなるかな、って。

 

 

「あぁ、なるほど。……というか普通に内戦って言ったわね貴女。何、五大臣でも殺すの? いいわね、私も連れて行きなさい。」

 

「え。」

 

「あら、貴女だって戦争に行ったんでしょう? じゃあ私が行ったらいけない理由なんてどこにあるのかしら? ……止めるんだったら、力尽くでも解らせてやるわ。」

 

 

そう言いながら、もう一度槍を振るうエレナ。あの、えっと。いや、気持ちは嬉しいんですけどね? 模擬戦も好きなだけ受けるけど……。そういうのって私じゃなくてご家族で決めるべきというか? 私もオリアナさんに許可もらって戦場に出ることになりましたし……。な、ナディママ! ヘルプ!

 

 

「ん? 私か? 別にそれでもいいと思ったのだが……。エレナ。」

 

「何、ママ。邪魔するつもり?」

 

「互いの意志が同じでなければそれは模擬戦ではないぞ、エレナ。……お前は聡い子だ、先ほどの打ち合いで理解しただろう? 今のティアラとの力の差を。確かに私が戦場に出る前のお前と比べれば、格段に強くなっただろうが……。まだ、足りない。」

 

 

淡々とそう言うナディママ。確かにエレナの実力は確実に上がっていると思う。もし彼女がレベリングせずにそのまま子爵領にいたとすれば……、さっきの打ち合いで私が押し勝って彼女を落馬させていた。それをちょっと押し負ける程度で収めていたのはレベリングの成果だ。

 

逆に言うと、上級職Lv25が下級職のおそらく前半の子に、ちょっとしか筋力で勝てなかったってことなんだけど……。う、うん。気にしないでおこう。そうじゃないと私の精神が持たない。

 

 

「お前の強みは、同年代に比べると格段に高い身体能力と、高く纏った戦闘へのセンスだ。だがティアラの方がセンスが上で、肉体性能も“階位の差”で埋められている。」

 

「解ってるわよ、そんなのッ!」

 

 

……あの、ナディーンさん? ティアラちゃんそんな方向性のこと言ってほしいんじゃなくて、『戦場危ないから辞めとけよ』とか『もうちょっと強くなってからにしましょうね』みたいな感じで収めてほしかったんですけど。エレナの顔、多分悔しさで歪んじゃってる感じですし。というか焦ってるのはティアラちゃんも同じというか、ティアラちゃんの方が今後不安しかないというか……。

 

あ、オリアナさん。え、何? ややこしくなるからお前は黙っとけ? りょ、了解です。

 

 

「けど私の隣はティアラで、ティアラの横は私なの! そうじゃなきゃ嫌ッ! せっかくできたライバルに置いて行かれて私が何もせず蹲っているだけだと!?」

 

「……ふっ、よい叫びだな。それでいい。」

 

 

声を荒げるエレナに、母として娘の成長を喜ぶような笑みを浮かべるナディママ。

 

確かにエレナ、昔は自分で作った“子爵の娘”としての殻に閉じこもっているというか、いい子ちゃん過ぎたもんね。感情をあらわにしてる方が私としても好きだったり……。原作での彼女も割とこんな感じだもんねぇ。

 

 

「さて、ティアラ。」

 

 

え、はい。何でしょうか……?

 

 

「お前の言う“レベリング”だったか? それに娘も参加させてくれ。お前としても戦力はあるだけある方がいいのだろう?」

 

「いやまぁそうですけど……。」

 

「なに、その後の“戦い”に参加できるかどうかはこの子の頑張り次第だ。“強者”足りえる実力に成れば顔でも隠して参加させればいい、足りなければ領土に戻す。お前にとっても下から追い上げてくる相手がいる方がやりやすいだろう。」

 

 

え、いや、でも。宗教的な問題というか、エレナには“内戦”って誤魔化しましたけど、私たちが控えているのってガチの宗教戦争というか、神殺しというか……。色々大丈夫なんですか?

 

 

「大丈夫かどうかはお前の問題ではないか? そういうのを明かすのが遅れれば遅れるほど話がこじれるぞ。いい機会だ、ついでに娘にも教えてやってくれ。」

 

「あ、はい。じゃあ……。」

 

 

タイタンの背から降り、エレナの元へ。

 

少しむすっとしているが、私がちょいちょいと手をこちらに振れば彼女も自身のペガサスの背から降りてきてくれた。んじゃエレナ、ちょっと今から色々驚くことが連続して起きるだろうから、覚悟だけしててよね? んじゃお手々を繋ぎまして……。“転移”、行き先はもちろんアユティナ様の元。

 

 

「はい、ということで私が信仰しているのは王国の女神でも帝国の女神でもない、アユティナ様でした~。ぱちぱちー!」

 

「いつもティアラちゃんがありがとね。私がアユティナでっす!」

 

「…………は???」

 

 

 

 

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

【というかティアラちゃん、別にお友達私の所に連れてくるのはいいけどさ。もうちょっと事前に言ってくれない? 来客用のお菓子とか用意しなきゃだし。手土産とかも予め用意しとかないといけないでしょ?】

 

(いやアユティナ様、そんなお母さんみたいなこと言われましても。)

 

 

そもそも貴方様って神なんですからお菓子もお土産もいらないんですからね? お会いできるだけで光栄と感激通り越して嬉死ぬ案件なんですからね?

 

エレナに色々カミングアウトした後。彼女が情報の整理を自身の母親としている間、私は自身が雇っている傭兵団たちのレベリング作業に勤しんでいた。そう、無限オーガ殺しパーティだ。私が迷宮30階層のボスであるオーガをいい感じに削って、達磨にする。んでその後一緒に戦ってた傭兵団の子にラストアタックを譲って、経験値を食べさせる。これを延々と繰り返す感じだね。

 

 

(とりあえずモヒカンズも姉妹ちゃんも下級職のLv10を目指して、って感じだね。)

 

 

下級職の折り返し視点、Lv10になれば上級職へと転職することが出来る。まぁそうなるとレベルアップの機会が10回も失われるわけだから限界の20まで転職させる気はないんだけど……。そこまで彼らのレベリングを手伝っていると、肝心の私の強化の時間が足りなくなる恐れがある。

 

故にLv10以降は自由にレベリングさせて、決戦のタイミングで全員上級職に転職させる、という方針にすることにした。転職すれば基本的にステータスが底上げされるからね。これでぐっと生き残れる可能性が増えるはず。

 

ま、“殺す”時はみんなに『成長の宝玉』貸してあげてるし、私は周回に慣れてるからもう自動化したようなものだ。無駄な時間を掛けずにどんどんやっていきましょう。

 

 

「というわけでポンポンとオーガの四肢を切断しまして、ぽいソーレちゃん。首を落してくださいな。」

 

「は、はいッ!」

 

 

無抵抗な相手を淡々と殺し続ける作業なので一部の子の眼が虚ろになっちゃうのが欠点ではあるけど……、確実にレベルは上がるからね。仕方ないね。

 

 

(にしても……、エレナやっぱクソ強かったな。)

 

 

アユティナ様の前で私は、エレナに色んなことをカミングアウトした。とりあえず宗教関連のこととか、頂いた加護のこととか。これから神殺しをしようとしていることとか。最初は困惑していたみたいだったけど、『そういうことならもっと早く言いなさい』と怒られ、彼女も宗教戦争に参加するためレベリングを行うことになっている。

 

まぁさすがに内容が内容だったし、彼女の母であるナディさんともちょっと相談したいって言ってたから今は迷宮の外で休んでいるんだけど……。

 

ま、その過程で私が自分と誰かのステータスを覗けると言うことを話し、『なら私と貴女が今どれだけなのか知りたい』と言うことでステータスの見せあいっこをしたんだけど……。私もエレナもびっくりしてしまったのだ。私はエレナの単純な成長率に。エレナは私の圧倒的なレベルに。

 

というわけでまぁ、こんな感じでした。

 

 

 

ティアラ 天馬騎士 Lv23→25

 

HP (体力)33→34

MP (魔力)27→29

ATK(攻撃)25

DEF(防御)19→20

INT(魔攻)31→32

RES(魔防)30

AGI(素早)29

LUK(幸運) 0

 

MOV(移動)5(8)

 

 

エレナ 空騎士 Lv3(前 貴族Lv1)

 

HP (体力)16→24

MP (魔力) 9→15

ATK(攻撃)12→19

DEF(防御)10→15

INT(魔攻) 4→ 6

RES(魔防) 4→19

AGI(素早)14→20

LUK(幸運) 3→ 7

 

MOV(移動)4(7)

 

 

 

【えっと、下級職の上限が20だから、ティアラちゃんとエレナちゃんのレベル差は42。んで肝心のATKの差は……、6。これさ、エレナちゃんが凄いってのもそうだけど、ティアラちゃんの体が弱すぎるんじゃ……。】

 

(い、言わないでくださいアユティナ様……!)

 

 

解ってるんですよそんなことぉ! オリアナさんからも私の体よわよわ過ぎて色々ヤバいって言われるくらいには! というかエレナ確実に上級職上がる頃には物理系のステ私を追い抜かしてるでしょ……。レベル上限の話しちゃってるから、どうせ20まで上げてくるだろうし。どう考えても追い抜かされる。

 

これでも私、頑張ってる方なんですよ! 原作の私と比べたら格段に高いですし! 前衛職を選んだおかげで私が持つ圧倒的な体の弱さ、最悪最上級職に成ってもATKやDEFが一桁で収まるっていうアホみたいなステになってないですし!

 

 

【おぉ、流石原作最弱枠。でも、ここからステータス向上の“宝玉”見つけていけばかなり底上げできるでしょう? 見つけた種類の宝玉を追加してプレゼントする、って約束まだ残ってるし。ガンバガンバ。】

 

(まぁそれも私のLUKじゃどれだけドロップしてくれるか、って話なんですけどね。……もうこうなったら試行回数で殴るしかないな。)

 

 

前にも言ったけど、ステ向上の宝玉は一つの項目に対して5つまで。一個につき+2されるから合計で+10の底上げをすることが出来る。つまりドロップさえすればアユティナ様からの補償が入り、全部+10してかなり強く成れるんだけど……。まぁまだ先の話。

 

今やってる傭兵団たちの底上げが終われば、私とオリアナさんとナディさんで、溶岩の巨人がいた50階層よりも下。より強く経験値が多い魔物たちがいる階層へと足を踏み込んでいく予定だ。探索を終えて周回ができるようになればどんどん試行回数を増やせていけるだろうし、後の楽しみにしておこう。

 

 

「だからこそ、さっさとみんなのレベリング終わらせちゃいたいんだけど……。ソーレちゃんまだー?」

 

「も、申し訳ありませんティアラ様! こいつの! 首が! 固くって!」

 

 

そう言いながら何回もオーガの首に剣を突き立てる姉妹ちゃんの姉の方。血は出てるんだけどまだATKが足りなくて刺さってない感じだね。うーん、ちょっとグロテスク。オーガくんも早く殺してって泣いちゃってるじゃん。

 

……そうだ。ソーレちゃん魔力あったでしょ? それを剣に流すイメージでやってごらん。そしたら切れ味上がるだろうし。

 

 

「それか、もっといい剣デリバリーしてもらう? 今重さの関係で【鉄の剣】使ってるみたいだけど、もっと攻撃力高くて軽い剣とかあるだろうし。アユティナ様ー、なんかいいのないですかー? 出来たら妹ちゃんの分もー!」

 

「てぃ、ティアラ様! そんな申し訳ないですし、恐れ多いです!?」

 

【そう? 私は頼ってくれてうれしいけど。そうだねぇ、んじゃちょうど面白い兄弟剣が宝物庫に眠ってたし、これを上げよう。……あ、でも何もしてないのに上げちゃうにはちょっと格が高いから、とりあえず貸すだけね? 何か凄いことしたらプレゼントしてあげよう。というわけでティアラちゃん、空間に入れておいたよ?】

 

「ありがとうございまーす。……ってほんとにいい剣じゃん。大盤振る舞ぃ!」

 

 

そう言いながら空間から取り出し、パッと手に取ってみるのは【白燕】と【黒燕】。白と黒の剣で対になっている奴だね。ゲームじゃ中盤ぐらいに手に入ってそのまま終盤までお世話になる剣だ。もちろんもっといい剣は存在してるんだけど、これは軽いから使いやすいのよねぇ。確かスキルもついてたはずだし。

 

 

「攻撃+8で、ミスリル級の武器だけど、重さはなんと2。鉄の剣レベル。触ってみた感じ……、うん、魔力も流しやすいね。ほいソーレちゃん。」

 

 

見本として魔力を剣に流し込んだ【白燕】を持たせてやる。それをオーガの首に当てれば……、すっと切れてしまう。ま、こんなもんね。魔力の扱いは私もそんなに得意ではないんだけど、スキルとかにもつながるし、ちょっと練習してみてね?

 

 

「は、はいッ!」

 

「うむ、いいお返事。んじゃま【黒燕】は妹のルーナちゃんに渡しとくね? んじゃ頑張ってレベリングしていきましょう!」

 

 






次回はエレナと姉妹ちゃんたちの視点になります。

あとなんか王都の墳墓で地響きが起きているようですが……、なんでしょうね?


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