黒颯のエレティコ ~忘れ去られた神の力で凌辱シナリオをぶっ壊す~ 作:サイリウム(夕宙リウム)
「団長ッ!」
「高度そのまま! 相手を攪乱しろ! 空中での数はこちらの方が上だ!」
部下のフォローに入りながら、空に上がって来た教会所属であろう天馬騎士を地上へと叩き落す。ティアラが降らせている槍の雨を抜け、そして姉上に見逃された実力も運もある存在。乗っていた天馬の質からも、愛を以て乗りこなしていたことが見て取れた。だがここは戦場であり、相手を思う時間などありはしない。
(すでに王国の教会から手を引いた身ではあるが……。戦後はそちらの信じる教えに則り、供養させてもらう。)
そう考え自己の中で区切りを付けながら、部下たちに指示を出す。この“槍”の中、空中に上がって来れるだけかなりの熟練者だ。何度か戦場に出たとは言えまだ実戦経験が足りない今の騎士団では、同数での戦いは避けなければいけない。幸いなことに、そもそも相手が持つ航空戦力は少数であり、同時にその大部分がティアラによって大地の上で死亡している。
部下たちに小隊単位でことに当たるよう指示を出そうとした瞬間……。槍の雨を通り抜け、こちらに飛来する物体。
「ッ!」
「へぇ、その髪色からして。今のへスぺリベスかぃ? 覚悟決まってるねぇ。」
「団長!」
自身の愛馬、ペガサスを翔けさせようとしたが、それでは間に合わない。故に相棒から飛び降り、空中でお互いの足裏を合わせる。彼女が後ろ足で全力で私の脚を蹴り上げ、加速。そのまま敵と自身の部下の間に入り込み、相手の攻撃を自身の槍で受けるが……、酷く重い。
背後にいる部下に背を預けながら、鍔迫り合いをする相手の顔を除いてみれば……。想定通り、白く光っている。ティアラが優先的に排除しようとした“使徒”という存在だろう。すでに多くの情報が失伝してしまっているが、私の一族は女の遺伝子が強く髪色も私や娘のように赤いものを持つ者が多いと聞く。……わざわざ我らが伝来の地の名を言ったということは、過去の一族を知るもの、か。
「ッ! 散開ッ!」
視界の端で私を蹴り飛ばしてくれた自身の愛馬がこちらに向かって飛んできてくれているのを確認した瞬間、眼前にいる敵使徒の後ろ。遠く離れた場所で暴れ続けるティアラと目が合う。そしてその口元が、歪んだ。
即座にあの神から賜った【アダマントの槍】に魔力を流し、全力で敵使徒を押し飛ばす。同時に周囲にいた部下たちには、離れるように指示。そして敵と我らの距離が十分に開いた瞬間……。我らの理解を超えた“鳥籠”が生成される。
敵の360度に展開される“空間”と呼ばれる別世界と繋がった門たち。そこから音の速さを超えて投げ込まれていくのは、神秘を込めた【鋼の槍】。
(幸運の宝珠、というのか? 私は普通に使えたのだが何故か弾かれキレ散らかしたアイツが、怒り狂いながら槍に神秘を込めていたのを覚えている。それが私に向けて放たれないことは理解していたが、それでも寒気がするような存在だ。それを万を超えるほど撃ち込まれたとなれば、“常人”ならば耐えきれるわけ……。)
私がそう考えたその時。先ほど攻撃を受け止めてやり、現在私をペガサスの後ろに乗せてくれた部下が、声を漏らす。
ティアラが生成したはずの致死の“鳥籠”から、光が漏れ始める。敵使徒が纏っていたあの光と同種のもの。過去の私であれば神秘的に感じていたかもしれないが、今の私からすれば少々目障りな光。それが一瞬にして広がって行き、槍たちを埋め尽くしていく。おそらく質量を持った光。
撃ち出された槍を押し止め、押し返し、消し飛ばす。空に浮かぶ光球の中から現れたのは……、ほぼ無傷の、使徒。
「だ、団長ぉ……!」
「何、心配するな。ここまですまないな。」
実戦経験の少なさからか、それとも心のどこかでまだあの女神を信仰していたのか、その真意は解らないが泣きそうな声を上げるまだ若い部下の肩を叩きながら、彼女のペガサスの背から飛び降りる。ちょうど飛んだ地点には私の愛馬が待っており、その背を撫でてやりながら飛んできてくれたことに感謝を示しておく。
「大隊長ッ!」
「はっ! ここに!」
「全体の指揮を一時委譲する! 距離を取れ、邪魔だ!」
「了解ッ!」
血気盛んに飛び込んでしまう者がいてもおかしくはない。故に少しキツイ言葉を使い、部下に指揮を任せながら離させる。一旦後方に下がることを選択した彼女たちを眺めながら、視線を敵使徒と同じ位置へ。眼前の使徒、その背後の遠くから敵本陣に向かって槍の雨を降らせているティアラは一瞬だけこちらを覗き込んでいたが……、首を縦に振り救援は不要と意志を伝える。
「よかったのかぃ、へスぺリベス。あの気味の悪いガキに助けを求めなくて。」
「構わないとも、私一人で十分だ。」
嘲笑を浮かべる敵使徒、いや同じ天馬騎士に対し槍を構え。愛馬の手綱を握る。使徒という存在は、その身に神秘を宿すほどに他の神を信じる者に対してより敏感になると弟子である彼女から話を聞いた。故に私の信仰が今、王国の神にないことなどこの者は理解しているのだろう。……だが、同じ“職”を選んだ者同士。槍を構えた以上言葉はいらない。
「「勝負」」
ほぼ同時にペガサスを駆る。……愛馬の性能は圧倒的に私の方が上。より強いものを掛け合わせてきた血統知識の結晶が我が領のペガサスだ。過去の騎馬に負けていれば話にならない。けれど騎手の腕は……。
「ッ!」
「手ぇ、抜いてんじゃねぇぞォ!」
多少あちらの方が上、といったレベルか。神秘の守りのせいで攻撃効果が薄く、バフが乗っている。単純に勝負するならば、多少時間が掛かってしまうだろう。
(けれど……ッ!)
私だって、姉上の妹で、あの子の師だ。二人に恥じるような戦いはできない。
(それに、いわばこの戦いは“教え”を切り替えた後の初戦。下手な戦績では手を抜いたのかと疑われてしまいそうだからな……! 力を授けられた手前。“使徒”程度、二桁ぐらいは倒しておかねばなるまいッ!)
即座にペガサスを反転させ、より上空へ。天馬騎士同士の戦いは高さの勝負。それは古来より何も変わっていない。敵も同様に速度を上げ、上昇し始める。けれど……ッ!
即座に上昇を押し止め、反転。敵使徒の頭上に落ちるように急降下を開始する。
「ッ! 血迷ったかッ!」
あぁ、普通はそう考えるだろう。落下するにも敵との距離が足りず、速度も足りない。つまりそれは破壊力の低下を意味する。空中で踏ん張る事の出来ない私たちは、速度を以てその代わりとしなければならない。威力が足らなければ、相手に切り殺される。
何もかも足りない私たちに、敵の槍が騎馬ごと貫こうと突き出される。
「だが、それも過去の話だ。」
「なッ!」
愛馬から敢えて落馬し、その攻撃を空中で避ける。そして自然とこの手は、敵の両肩へ。
全力を以て肩の鎧を掴み、そのままペガサスから引きはがし、私同様空中に放り投げる。本来であれば互いのペガサスが自分の主人を確保するために動き出すのであろうが……。私の相棒は、あちらのペガサスの翼に噛みつき根元からそれを引き抜こうとしている。まぁつまり、互いに助けは来ないと言うことだ。
「ッ! イカれてるのかお前ッ!」
「あぁ、そうだとも。恥ずかしいことに弟子から教わったのだがね……。」
至る所に死が溢れている空中では、常に冷静でいなければならない。一瞬の気のゆるみが高所からの落下を意味し、一度落ちてしまったものは誰も助からない。それが私の信じる物で、これまでの定説だった。けれどあの子、姉上の孫は……。冷静でありながら、狂って見せた。
心の芯は酷く冷え切っているというのに、常人では考えも付けないことを戦術に組み込み、それを誰よりも早く、誰よりも冷静に実行して見せた。死の恐怖など狂気で打ちこわし、ただ眼前の敵を打ち倒すためだけに槍を振るう。
まぁ早い話、イカれた奴の方が強い。
空中に無理矢理回転し、両手で槍を掴みながら使徒に打ち込む。見え見えの攻撃だ、受け止められるが……、この場所では勢いを殺すものなど何一つない。より落下する速度が、上がる。だが、足りない。ティアラであればここから立て直し私を殺してくるだろう。同じ使徒というのならば、より速度を。何もできないまま地上に叩き落す。
空を“蹴り”、彼女に急接近する。
「ティアラが言うには、すでに私の速度は人を超えたらしくてね……。おかげさまでこんなことが出来るようになった。試験運転も兼ねているが、楽しんでくれたまえよッ!!!」
一閃。受け止められるが奴の胴体を足場にし、更に押し込む。そしてより落下速度を上げた彼女を追うため空気を蹴り上げよりこちらも落下速度を上げる。切る、落とす、蹴る、落ちる、武器を飛ばす、落とす、蹴る、落ちる。落ちる、落ちる、落とす。
空気を蹴り、速度を上げ、足場としながら連撃を叩き込んでいく。
先ほどの光球を撃つ隙もないほどに、ティアラの“鳥籠”の槍たちよりも速く、強く、打ち込む。神秘でその身を纏おうとも、すべてのダメージを防げるわけではない。一撃一撃に全力を込めながら、それを連続で叩き込んでいく。神であろうとも、使徒であろうとも、積み重ねた者には誰も勝てない。
「ではな。もし機会があれば過去の我らのことでも教えてくれ。」
「ッ!!!」
何か言おうとした使徒に、全力で槍を叩き込む。すでに互いの速度は音を超えている。故に何を言おうとしていたのかは全く解らなかったが……、かまわない。瞬きよりも早く眼前にいたはずの存在が地面に叩きつけられ、巨大な大穴を開けながらその肉体が爆散する。
っと、私も速度を緩めなければ同じ末路をたどってしまう。
槍を軽く振るい空気の形を変えながら足場とし、徐々に速度を落としながら地面へと降り立つ。未だ習熟途中の技術であるため完全に威力を殺し切ることはできなかったが……、地面を転がりながら威力を殺すことで無傷で地上に降りることが出来た。
そしてその数秒後。大きく翼を羽ばたかせながら私の横に降り立つ、私のペガサス。
「すまない、出迎えありがとう。」
口に付着した血と、視界の端に見える片翼を失い地面へと落下し始めている一頭のペガサス。心の優しいこの子だ、同族をあぁするのは少し心苦しいものがあっただろう。懐に入れている補給用の固めた黒砂糖を彼女の口に放りこんでやりながらその背に飛び乗る。
「さぁ、まだ一体だ。ティアラにも姉上にも負けぬよう、もう少し狩りに行くぞ。……付き合ってくれるか?」
「プル。」
「ふっ、確かにそうだな。……気張っていくぞッ!!!」
◇◆◇◆◇
「第三小隊下がれ! 代わりに第二小隊前へ! ソーレは補助に徹しろッ! ルーナは第五小隊と左から上がれッ! ッチ! 弓なんかで狙ってくんじゃないわよッ! 死ねッ!」
ティアラから任された地上部隊。よくわからない髪型をした男たちに指示を出しながら、教会の聖騎士たちとぶつかる。少し前の私たちなら勝てるか怪しい所だったけれど……、あの二か月は決して嘘はつかない。レベルを上げ、力を体になじませ、今できる最大を追求し続ける日々!
それが今、確実に実を結んでいる。
後方から私を狙ってきた弓兵の矢を愛槍ではじき返し、背負っていた手槍を投げつける。未だに仕組みが理解できないティアラの“射出”よりはだいぶ遅いけど、敵弓兵の顔に吸い込まれるように放たれたそれは確実にその脳漿を爆裂させる。
「第一小隊前へ! 私が道を開ける、遅れるなッ!」
「「「応ッ!!!」」」
野郎ども、と言えばいいのか。彼らの声を背中で聞きながら敵軍中央へと押し入る。こちらは50で、あちらは軽く数えても500程度。敵軍とこちらが近すぎたせいでティアラの射出から逃れてしまった雑兵たちだ。まぁ雑兵と言っても上級職を含む教会の熟練兵だけど……。
(私にとっては良い経験値ッ! 行くわよ相棒ッ!)
自身の愛馬にそう呼びかけながら、敵兵たちを切り刻んでいく。私はティアラに追いつかないといけない。だからこそ上級職に上がれるレベルに到達しているが、未だ下級職で止まっている。焦ってここで転職すれば能力が向上する機会を大量に失うことになってしまう、焦らず着実に追いつくために、上限に達するまで転職は行わない。……けれど私が今、『ティアラに負けている』というのは避けようがない事実なのだ。
「いつの間にか開いてしまった差だけど……、今日で可能な限り埋める! だから私に殺されろッ『蒼月』ッ!」
槍に蒼い光を纏わせ、そのまま斬撃を飛ばし敵兵を切り刻む。
そして後ろからついてきた小隊が私の討ち漏らした兵を刈り取っていく。ティアラから預けられたこの兵たちは髪型こそ変だが、その実力は飛び抜けている。なんて言ったって全員が“上級職”の猛者たちだ。反応も良いし、いい兵であるのが肌で感じられる。……髪型は変だけど!
「ソーレッ! ルーナッ!」
「「はいッ!」」
敵軍が正面から突っ込んだ私たち第一小隊を包囲しようと動き出した。
このまま突っ切ることもできるけど、それだと自軍の被害が大きくなってしまう。ただでさえ預かっている兵だ。一人でも亡くしてしまえばあの子に合わす顔がない。今は仮面で顔を隠しているし、名前も隠して『隊長』と呼んでもらっているが……。ここで完全勝利が出来なければ、一族の名が廃る!
私がもう一度正面に向かって『蒼月』を放った瞬間。左右両側から行動していた姉妹が声を上げる。
【白燕】と【黒燕】。刀身が薄く軽量である二振りの剣。軽さ故打ち合いには向かないが、その切り味とオリアナさんに扱かれた二人の剣術が合わされば……。上級職だらけの聖騎士相手でも、十二分に通用する。そして私が手ずから教えてあげた魔力操作も合わせれば……。
二人が持つ剣が白く、そして黒く光り始める。
(あの剣は兄弟。いえ姉妹剣。互いが互いを補い合ってこそ能力を発揮する。本来は二刀流での運用を考えられていたんだろうけど……。姉妹だからこそ今の攻撃が成る。)
姉であるソーレの持つ【白燕】が白く光り、そして同時に剣に重なる様に黒い魔力の刀身が浮かび上がる。妹のルーナが持つ【黒燕】も同様に黒く光る刀身に重なる様に、白い魔力の刀身が浮かぶ。姉妹という生まれと、対になって使われるために生み出された剣。互いが互いを同調し、一度の攻撃で、二度の斬撃が放たれる。
「「ㇱ!」」
彼女たちの師であるオリアナの教え通り、息を吐き出しながら放たれたそれは、確実に敵兵たちを貫いていく。私が開けた縦の一閃と、姉妹が開けた横の一閃。戦況はかなりこちらに傾いた。
「ソーレ! 第二、第三小隊と共に2時方向の敵殲滅! ルーナは第四、第五小隊で11時を!」
「「了解ッ!」」
「私たちは残りをやるわよ! 第一小隊前へ……、止まれッ!!!」
肌で感じた殺気、ほぼ反射的に声を上げ魔力を無理矢理叩き起こし槍に乗せる。そして瞬間目の前に現れた巨大な斬撃を打ち消すように、こちらも放つ。敵の白い光と、私の蒼い光。一瞬だけ拮抗したが、押されてしまっている。一発だけでは抑えきれないと判断した私は即座に二発目を放ち……、敵の光を消し飛ばす。
斬撃を消し飛ばした私の『蒼月』はそのまま敵へと殺到するが、すでに威力は残っていなかったのだろう。軽く剣を振られ、消し飛ばされてしまう。
(光を纏う存在……、“使徒”ッ!)
「……貴公は、異教徒ではないな。なぜそちらにいるのだ仮面の少女よ。」
そう話しかけてくるのは剣を持った若い男。今代の使徒以外は全員過去のすでに死んだ存在と聞いていたけれど……、思ったより若い。若くして死んだか、それとも全盛期の体で復活してるのか! どっちでもいいけど敵は敵! 可能ならば一人で突っ込みたいところだけど……。流石に力量差が解らない程私は馬鹿じゃない。時間稼ぎのために、会話に乗る。
「友がいる以外に理由があると思う? もしかして“使徒”様は友情も理解できないのかしら!」
「……ならば再度問おう。なぜ友を引き留めなかった? 我らが女神こそ真なる神。得体の知れぬ神など信仰すべきではないと説得すべきだろう。」
「へー。一度死んだ人間が生き返って喋ってる。そんな無法を許してる神が正しいと?」
「そうだ。」
ッ!
人の命は一人一つ。そんな簡単なルールを勝手に破っている存在など、気持ち悪い以外の何物でもない!
それが神の奇跡というならば、なぜ私の知る人は死んだまま帰ってこないのか! 幼き頃に遊んでもらった人! 槍の持ち方を教えてもらった人! ペガサスの育て方を教えてもらった人! 天馬騎士団として戦場に出たその全員が! 3年前の戦で母を守るために死んだ! 人を生き返らせる力があるなら私の大事な人も返せ!
私だけじゃない! もっと多くの人が戦争で大事な人を失ってる! これは昔からずっと同じはず! そんなこと誰でも理解できるはずなのに、なんでお前は生き返っているッ!
「そもそも。今の教会を好き勝手にさせている女神自体、何をどう信じろって言うんです。人を導く貴族たちが信仰を持ちながらも教会を排除するために動こうとした! なのに神は動かないどころか、その動きを止めようとしている! 人の心の導き手であるはずの教会が金や権力に溺れているというのに、それを守ろうとする存在! そんなもの神じゃないでしょ!」
「……理解できない話ではない。だが神に歯向かうこと、それ自体が大罪なのだ。」
「エ……、隊長さんっ!」
「遅れました!」
そう言葉を交わしていると、背後から馴染みある声。私の本名の方を言いそうになった妹のルーナと、姉のソーレが合流する。
「これで、3対1。貴方の方が格上なんです。こっちは数で押させてもらいますけど……。いいですよねッ!」
「……受けて立とう。故あって名は明かせぬ。しかし女神の使徒として……、勝負。」
◇◆◇◆◇
「タイタンッ! スパイラル行くよ!」
「プッ!」
戦場全体を把握しながら、同時に急降下を開始。空中に上がって来た使徒3名を纏めて串刺しにし、光に返してやる。あー、もうッ! 経験値は美味しんだけど数が多いッ! Lv29にはなったけど、最上級職にはまだ一つ足りないし! なぜかLUKは宝玉使っても一つも上がらんし! むしゃくしゃするー! ヤケの【鋼の槍】万本落としだーッ! 串刺しになっちゃえーッ!!!
少々乱雑に放たれた槍たちは地面を耕していき、大地にまだ残っていた王国教会の天幕や兵士たち、そして使徒たちを丸ごと地面へと突き刺していく。そしてまだ生き残っている奴を再度ロックオンし、射出。人は血をまき散らしながら死に、使徒は血を流しながらも最終的には光となって消えていく。
(一度倒したはずの顔がまたあった……。残機いくらあるんだよ! こっちもこっちで空間把握で一杯一杯なのに、殺しても殺しても出てくる! しかも士気が全く崩壊しないッ!)
幾ら神秘で脳の耐久性と処理速度を上げたとしても、限界がある。この広い戦場全体に槍を降らせながら敵使徒の殲滅に、オリアナさんやナディさんのサポート。そしてマンティス派の兵たちに被害が出過ぎないよう適宜教会の聖騎士団に攻撃。フレンドリーファイアをしないように動き回っているせいで、余裕が全くない。
あっちは死んでも大丈夫な所為かどんどん使徒がやってくるし……! オリアナさんやナディさんが適宜狩ってくれているけど、留まる気配がない。
それに何度も何度も殺していると言うのに、どんどんと士気が上がって行っている。通常の雑兵程度ならまだどうにでもなるのだが、使徒がやる気マックスで出てくるとやはり手古摺ってしまう。これが狂信者との戦いか……!
(それに、戦えば戦うほどバレていく。戦法も戦術も、一度死んだ術には対策を持って来てやがる。今はまだ火力で押し込めているけれど、厄介極まりないッ!)
こんな状況の前で、こっちだって指をくわえて待っている、なんてことはしない。相手がどこから出現しているのかってのは空から戦場を眺めていればすぐにわかる。王国教会の本陣に存在する巨大な天幕。そこから使徒たちは復活し、おそらく『賢者』か『司教』の後方職に転移で飛ばされて戦場に出ている。
隙を見つけて適宜敵本陣に向かって“射出”を放っているのだが……。おそらく女神本人が掛けた防壁でも作用しているのだろう。神秘を混ぜた【鋼の槍】も、神秘付き石材も、疑似メテオも溶岩も全く効かない。
しかも本陣の守りに滅茶苦茶強そうな使徒が付いているし、私が発射した槍をそのまま掴んで投げ返してくるような奴がいた。まだギリギリ視認できる速度だったから空中で回収することが出来たけど……。あの強いのがいる限り、本陣を破壊することは難しいだろう。
(そっちに向かったオリアナさんのサポートに行くか? いやでも、その間戦場に散らばった使徒の相手をする奴がいなくなる。いくら広範囲を見れるとは言え限界があるし……。)
「ッ! 来たか。」
鼓膜を揺らすのは、羽ばたきの音。そしてより肌で感じられる、女神『ミサガナ』の気配。
(今代の使徒、ってやつか?)
背に白い翼を生やし私の前に浮かび上がってくるのは、白い絹のような髪を持つ男。背に王国教会の紋章、正確に言えばあのクソ女神の紋章を背負った使徒。確かに顔も庇護欲をそそるような感じで整っていて、自身の知るあのクソ女神に気に入られそうな顔をしている。けれどやはり互いに仕える神が、嫌悪しあっているのだろう。こいつを同じ“生き物”として見れない。
こちらも背中に刻んでいただいたアユティナ様の紋章を顕現させ、相対する。
「王国教会の旗を掲げておきながら奇襲とは……。私たちの知らない神を信仰なされているようですが、礼儀も知らぬ愚か者の様ですね。今ならまだ慈悲を以て殺して差し上げましょう。神の威光の前に這いつくばる準備はできていますか?」
「はッ! 礼儀? お前らがそれを言うなんて面白いねぇ! アユティナ様をこの世界から叩き出しておきながら! 延々と人を食い物にし続ける奴に仕える愚物が言うことは違うねぇ! 腹が捩れて死んでしまいそう! あははッ!!!」
「ならそのまま天に召されてはいかがでしょう?」
そう奴が言った瞬間、“空間”を開き神秘を込めた【鋼の槍】を射出する。しかし私が空間を開いたのと同時に眼前の愚物が障壁を展開し、私と槍たちを全て受け止めてしまう。勢いをなくし、そのまま地面に落ちていく愛槍たちを回収しながら、互いに互いを嘲笑する笑みを浮かべる。
「会話の途中に攻撃をするとは……、お里がしれますね。貴女が信じる神というのも、そもそも神かどうか怪しいものです。」
「おっと、盗人を神と崇める奴にそんなことを言われるなんて。今日は厄日だねぇ。」
私が盗人といった瞬間、愚物の体の周辺に光球が生成され、私に投射されていく。速度威力共に十分なのだろうが……。私に視認できる遠距離攻撃は効くわけがない。全て“空間”で受け止め、収納してやる。そして私に放ったはずの攻撃を纏めて奴に返してやるが……。自分の攻撃でダメージを喰らうほど愚かではないのだろう。すべての光弾を難なく受け止め、吸収する。
「神への侮辱、万死に値します。せめてもの情けです。この世で体験できるすべての痛みを教え、神の許へ送って差し上げましょう。」
「悪いけど、私事実しか言ってないんだよね。この世界を元の持ち主に戻し、人をあるべき姿に戻す。……邪魔するんだったら悪いけど、死んでもらうからね?」
全身に魔力と神秘を高速で巡らせる愚物、そしてそれに対するように私も【オリンディクス】を構え直し、アユティナ様から頂いた神秘を充填させる。さぁさぁ、神々よ。ご照覧あれ。貴方が信じてくれたこの身が怨敵の使い魔を消し飛ばす様を、お前が可愛がっていたおもちゃが無残に壊される様を。
「「殺す」」
ナディーン 天馬騎士 Lv8→15
HP (体力)52→65
MP (魔力)48→61
ATK(攻撃)29→40
DEF(防御)27→38
INT(魔攻)29→40
RES(魔防)32→44
AGI(素早)40→55
LUK(幸運)11→26
MOV(移動)5(8)
ティアラの“お願い”により大盤振る舞いしてしまったアユティナ神により、レベリングだけでなく成長の宝珠による強化まで受けてしまったナディーン、流石にここまでされてしまえば信仰を変えざるを得ず、アユティナ神を信仰することになったが、まだ公表はしていない。AGIがすでに人類の限界を超えており、ペガサスとの連携力強化。また身体能力の向上により、短時間ではあるが単身での空中機動が可能になった。
エレナ 空騎士 Lv3→18
HP (体力)24→35
MP (魔力)15→21
ATK(攻撃)19→30
DEF(防御)15→25
INT(魔攻) 6→11
RES(魔防)10→19
AGI(素早)20→32
LUK(幸運) 7→15
MOV(移動)4(7)
圧倒的な成長率のみでここまでたどり着いたエレナ。まだ改宗を行っていないため、母の様な成長の宝玉による強化は受けていない。しかしいずれ改宗するであろうし、その時に強化を受けると思われる。すでに部分的にではあるが“レベリング+強化”を受ける前の母を追い越しており、このままだととんでもない存在になってしまうだろう。父や母から受け継いだ指揮官としての才能を開花させ、部下を背中で率い、姉妹と協力しながら戦う。
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また誤字報告いつも大変お世話になっております。