黒颯のエレティコ ~忘れ去られた神の力で凌辱シナリオをぶっ壊す~   作:サイリウム(夕宙リウム)

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90:処しましょ

 

 

「オリアナ殿、こちらです。」

 

「……あぁ。」

 

 

さて、あっちからわざわざ“お話”をしに来てくれたわけだが……。

 

パーティ会場であった場所から少し離れた場所、王宮内にある一室に私は案内された。どうやらあちらさんは人目のない所で話したいらしく、わざわざ部屋を取っていたようだった。まぁこちらとしても“人目”のない場所の方が好都合だ、少し決行時間には早いかもしれないがこの密室ならば発見が遅くなるだろう。何が起きても、本筋から離れることはない。

 

 

「そちらへどうぞ、おかけください。」

 

 

ミューターの指示に従い、ほんの少しだけ足音を立てながら、無造作に座る。

 

……天井裏に2,3人。隣の部屋に結構な人数。プラスして廊下側に2人ほど配置してるな。よく訓練されているのか殺気は感じないが、ちと腰が引けている感じもする。まぁ万全であろうと、警戒すべき相手など一人もいないだろうが。

 

 

(……考えてみれば、今の王国最強は私か。そりゃビビるよな。)

 

 

教会との一戦はあのロリコン野郎が動いたせいか、そこまで情報の拡散が行われていない。だが帝国との戦いについては戦勝を民に理解させるためにも大規模に公表されていたことは知っている。実際、王都にいる間は名前出すだけでかなり騒がれた。

 

帝国との戦いはあちらにも多大な被害を出すことが出来たが。王国側の私たち側以外の強者は全員が死亡した戦いでもある、言ってしまえばかなりの失態、それを覆い隠すために敵の強さや私たちの強さを拡大解釈して広めているのは考えられる話だった。実際王都の中で『黒騎士を持ち上げて腹から引き裂いたってほんとですか!?』って聞かれたしな。

 

今なら出来なくもないだろうが、まぁ思いっきり嘘だ。まぁもちろんその真偽についてしっかりと調査をしている奴もいるだろうが……。

 

 

(裏にいるような奴。今みたいにわざわざ天井裏に隠れる様な奴らなら、教会との戦いを部分的に知っててもおかしくはねぇ。私の『紅の滅槍(グングニル)』とか、神秘の膜とかな。)

 

 

ま、そんな情報を抱えていれば相対するのも馬鹿らしいって考えるだろ。正直ティアラと会う前の私なら普通に避けるし、戦闘の可能性があるのなら先に顔を繋いで見逃されるような状況を作るだろう。けどそう言った接触が今までなかったって言うことは……、これが“顔繋ぎ”なんだろうな。

 

そんなことを考えながら、鼻歌を歌い部屋に備え付けてあった茶道具を弄り始めるミューターを眺める。

 

 

「流石王宮ですな、良い茶葉がそろっているようで。してオリアナ殿、何かお好みはありますかな?」

 

「ねぇよ。こっちは孫との時間削られてんだ、話は手短にしろ。」

 

「おぉ、これは失礼を。」

 

 

こいつと私の身分の差は、公爵と平民。

 

まぁ爵位だけ考えれば口調を整えるべきはこちらなんだろうが……、眼前の男からはまだ余裕というか、力量差を理解できていない様な雰囲気が感じられる。確かに今の私は武器を持っていないが、やろうと思えば噂通り腹から引き裂いてやれるのをコイツは理解できているのだろうか。

 

気安く謝罪の言葉を口にしながら、私の対面に座る彼。そして直後、ミューターは深く頭を下げた。

 

……その首、切り落としてやろうか?

 

 

「この度は謝罪が遅れ、大変申し訳ございませぬ。また自身の部下の不始末を、謝罪いたします。」

 

「……悪いね。最近年のせいか、ちと記憶力に自身がねぇんだ。何の話をしている?」

 

「……貴殿の、ご子息のことです。」

 

 

一瞬沸き上がりそうになった殺意を無理矢理押し込め、平静を装う。まだ、早い。

 

 

「貴殿のご子息、そしてご主人が不慮の事故で亡くなられたと言うことは耳にしておりました。けれど当時は何も真意に気が付かず……。先の戦でまた貴殿の名をお聞きしたとき再度調査を行ったのですが、自身の部下であるポテンマスが、その事故に関わっていたことが発覚致しました。故に……。」

 

 

そう言いながら、机の下に置いてあったのであろう木箱を取り出し、私の目の前で封を開ける。……そこには、私の息子を殺したのであろう実行犯の一人、ポテンマスの首があった。直前まで藻掻き逃げ延びようとしたのだろう、切断面が汚く、その顔も醜く歪んでいる。

 

 

「まことに勝手ながら、こちらでケジメを付けさせて頂きました。……お納めください。」

 

 

 

……。

 

 

 

「私の孫、お前も見ただろ?」

 

「は、はぁ。確かにご挨拶させて頂きました。」

 

「あいつな? 私と血の繋がりはねぇんだ。拾ったっていう訳ではないんだが……。まぁ“お婆ちゃん”って呼んでくれるから、孫として扱ってやってんのよ。勘違いしてる奴もいるようだが……、アイツは息子の子じゃねぇ。」

 

「……そうでしたか。」

 

「だからまぁどこでどんな教育受けてたのかは知らねぇが、まぁ私が知らない言葉とかも知ってんのよ? 知ってるか? 『トカゲのしっぽ切り』っていうの。」

 

 

一瞬だけ姿勢がブレたミューターの真ん前で、ポテンマスの首ごと机を脚で叩き割る。

 

 

「わりぃが、こっちは全部わかってんだよ。確かにポテンマスは私の息子を殺した。だが夫は殺してねぇ。……お前が処理したんだろ? あ?」

 

「そ、そのようなことは!」

 

「しらばっくれんじゃねぇッ!」

 

 

顎をかち上げ、その体を宙に浮かす、同時に殺さぬよう注意しながらその腹部を殴りつけ、壁に叩きつける。少し力を込めすぎてしまったのだろう。一瞬にして壁が貫かれ、兵たちが詰めていただろう部屋まで吹き飛ばされるミューター。そんな彼は口から血を吐いており、醜態をさらしている。

 

 

「おい、“おまえら”。今日は気分が酷く良い、何も見なかったことにして帰るなら、見逃してやる。お前らにも家族はいるだろう? どうせ私に手を出した時点で、そこに転がっている奴も、それ以外の奴も死ぬんだ。ほらさっさと散れ。」

 

「ッ! お前たち、やれッ!」

 

 

血を吐きながらもそう叫ぶ奴の言葉に即座に反応できたのは天井裏にいた一人だけ。上が崩壊し、私の真後ろに飛び降りてくる黒ずくめの男。流れる様な動きで、毒塗りであろうナイフを私に突き立てようとする。

 

けれど今の私にとっては、そんなもの児戯に過ぎない。鎧の隙間に突き立てようとしたナイフを素手でつかみ、握りつぶす。ティアラが言うには私の肉体強度は人を超え始めてるみたいでな? そんじょそこらの刃物じゃ皮膚すら切れんのよ。

 

 

「ッ!」

 

「一回だけなら見逃してやってもいいが……、どうする? まだやるのか?」

 

 

どうやら暗殺者の返答はイエスだったようで、無言で次の攻撃。おそらく懐に忍ばせてあったのであろう次のナイフを私に叩き込もうとする。見逃してやったのに、まだ殺しに来ようとしている。ならばこちらも、それ相応の対応をさせてもらうしかないだろう。

 

相手が動くよりも速く、軽くその両腕を叩いてやる。耳を鳴らす爆発音とともに敵の腕が弾け飛び、何もできなくなった。そしておそらく痛みで気絶してしまったのだろうその首根っこを掴み……、見せつけるように、軽く持ち上げる。

 

 

「最後だ。消えろ。」

 

 

これ以上邪魔をするのなら、全員殺す。その意思を伝えるように……、引きちぎる。

 

地面にまき散らされるのは、血と臓物。もう必要のなくなった残りを地面に投げ捨てれば、より血の海が深くなってしまった。むせかえるような、血の匂い。戦場で何度も感じたはずのそれが、酷く鮮明に思えてしまう。

 

 

 

「ひ、ヒィィィ!!!」

 

「お、おい! 待て! 待つんだお前たち!」

 

 

 

誰かの悲鳴と共に、一斉に動き出す兵たち。そんな一目散に逃げていく自身の護衛達を呼び止めようとするミューターだったが、誰一人として止まらない。みっともなく逃げる兵たちを見送れば、残るのは私と奴だけ。

 

 

「さて、話の続きをしようか。お前から誘ったんだろう? 満足するまで付き合えるよな? うん?」

 

「な、な何が! 何が欲しい! 金か!? 地位か!? 土地か!? なんでも、なんでも用意して見せるっ! だから、だから!」

 

「今はもうひっくり返っちまったが、私が愛した男はな? 私より強くて、同時に頭の回転も早かったんだよ。それに人望もあったからよ……。まぁどこから命令が出て、誰があの場所にいて、何で息子が死んだのか、って理由ぐらい簡単に解ったんだ。」

 

 

恐怖のせいか立ち上がれず、みっともない声と要りもしないモノを好きなだけくれてやると命乞いする愚物。何の面白味もない答えしかしないそいつの右足を、踏み潰す。

 

鼓膜を震わす、聞くに堪えない悲鳴。

 

 

「首謀者がさっきの首だけで、裏でお前が手を引いてたってことも。すぐに解ってたんだよ。だがもう当時の王は狂ってた。証拠を集めようにも無視されるどころか、こっちに被害が及ぶ可能性が高い。だから一旦、断念した。……そして同時に、お前らもアイツが嗅ぎまわってたことを知ったんだろ?」

 

「し、知らない! やってない!」

 

「みっともねぇ。」

 

 

未だ認めない愚物の左足を、叩き潰す。

 

 

「お前のせいで息子も夫も死んだ、その心労が祟って身籠っていた義理の娘も死んだ。お前のせいで私ら家族はなーんにも残ってねぇ。空っぽだ? 理解できるか? お前を殺しても誰も帰ってこねぇんだ。解るか? 解らねぇよなぁ?」

 

「たしゅ、たしゅけ」

 

「おーそうか、痛いか、解るわぁ、だったら助けてやろう。右か、左か? あぁ、両方か。気前がいいねぇ。」

 

 

泣き言を喚くその口を閉じさせるように、残った両腕も叩き潰してやる。鼓膜を震わせていた悲鳴の大きさも大分小さくなってしまったし、同時に血も流させ過ぎた。ティアラから持たされた傷薬や魔法薬なんかもあるが……、こんな奴に使う価値なんかないだろう。

 

 

「し、しにたく、しにたく」

 

「うんうん、そうか。そうだろうな。お前に殺されたあの子も、アイツも、そう思っただろうよ。……もうお前の泣き言は聞き飽きた。さっさと死ね。」

 

「や、やめ!」

 

 

軽く足でその顎を蹴り上げ、残った胴体を打ち上げる。

 

 

「一生黙ってろ。」

 

 

その何のガードもされていない腹に……、全力の蹴りを、叩き込む。

 

瞬間、壁に生み出されるのは、大きく広がった血痕。すべてが、無に帰した。

 

 

 

 

 

(終い、か。)

 

 

 

 

 

足元に落ちてあった、おそらくさっきの護衛達の誰かが持っていたのだろう煙草を手に取り、火を付ける。

 

昔はよくやっていたが、子供が出来た時にはやめた。そもそも夫は吸わなかったし、子育てには何かと金がかかる。健康を害す上に、嗜好品と言うこともあってその後も手を出すことはなかった。一度辞めたっきりでそれまでだったが……、今は無性にこれが恋しい。

 

吸い方も忘れてしまったそれを、肺に送り込み……、吐き出す。

 

 

「……はは、不味いなぁ。」

 

 

 

 

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

「ティアラ、今なんか揺れなかった?」

 

「あー、うん。揺れたねぇ。」

 

 

戻って来たエレナと言葉を交わしながら、グラスに口を付ける。

 

色々と不安はあるのだが……、今私がオリアナさんの所に行くのは、ダメだろう。絶対にこの後顔を合わせるべきではあるのだが、今はまだ時間が必要なはずだ。一応アユティナ様も見てるって言ってくれてたわけだし、私は私の仕事を終わらせることにしよう。

 

その後にちゃんと顔を合わせて、話をする。今後のもーっと楽しいことを、いっぱい。だからこそ今は、一旦思考の端に置いておくことにしよう。

 

 

「まぁ宴だし、誰か飲み過ぎて倒れちゃったんじゃないの?」

 

「……じゃあそういう事にしといてあげるわ。」

 

 

何となく気が付いたのであろうエレナは、私にそう言いながら、運んできてもらった料理を口に運んでいく。一瞬感謝の言葉を口にしようとしたが、それをすれば彼女の気遣いを無駄にしてしまうのだろう。持っていたグラスの中身を飲み干し、他の話題を探すため頭を回す。もっとこう、どうでもいい話がいい。

 

……にしてもエレナ色々と食べ過ぎじゃない? この後“運動する”つもりなんでしょ? 途中で気持ち悪くなったりしないの?

 

 

「この程度じゃ何でもないわ。体の作りがそもそも違うもの。というか逆に聞きたいんだけど、貴女あれだけで足りるの? 全然食べてなかったけど。」

 

「いや足りてるわけじゃないんだけど……。」

 

 

この後待っているのは、五大臣のお掃除。いやそもそもマンティスさんは企画側だし、ミューターは今オリアナさんが処理してるだろうから正確には三大臣。その戦いが待っている。まぁ相手に強い人はいないし、やろうと思えば“空間”からの“射出”だけで全て終わらせることが出来るだろう。

 

けれど私の体質的に、食べた後に動いちゃうと気持ち悪くなって戻しちゃうのだ。そもそもこの体は虚弱体質そのものだし、幾ら無理矢理改造&レベルアップしても、そもそもはあまり変えることが出来ていない。前衛職にしたら食事量も少ない方だし、ある程度頑丈になったとはいえ急に体調を崩すこともまぁある。

 

アユティナ様の奇跡や、神秘を体に循環させることで回復こそ可能ではあるのだが、しんどさが解消されるわけではないので、戦前とかは結構気を付けないといけないんだよね。

 

 

「でも、これでも結構改善した方なんだよ? オリアナさんとかに無理矢理ご飯詰められて胃の容量大きくしたりとか、体質改善のために食事気を付けたりとか……。もう昔みたいに“こけただけで死ぬ”にはならないけどやっぱねぇ。」

 

「難儀な体よねぇ。」

 

 

ほんとにねぇ、まぁ原作じゃパン一つと牛乳一杯を前にして『ごめん、もうこれ以上は食べられないかな……』って謝りながら主人公に食べてもらうみたいなイベントがあったのが、このティアラちゃんですからね。それを考えると大分進化した方ですよ。

 

しかもティアラちゃん成長期まだ残してますし~! 原作じゃ『胸はある方だけど若干病的で触れたら壊れそう』な私だったとしても、今のティアラちゃんが順当に成長すれば、そりゃもうナイスバディですよ! 道行く人全員を蕩けさせちゃうナイスレディ! あ、物理的に溶けたいなら溶岩貸してあげるから言ってね?

 

(ま、依然として男は恋愛対象に見れないけど~。)

 

「あ、ティアラ。もしかしてあの人が?」

 

「ん? あぁ、そうそう。あの人が第二王子ね。わざわざ出て来たってことは、そろそろか。」

 

「ふふ! ようやくね!」

 

 

皿に乗っていた料理を一気に口の中に放り込み、近くを通りかかったボーイさんに皿を渡すエレナ。そんな彼女の口端についていたソースを空間に入れてあったハンカチで拭いてやりながら、壇上に登る第二王子を眺める。

 

そして彼の後ろにはかなり顔色の悪そうな国王陛下が続いており、息子に手を借りながら壇上に設置されてあった玉座へと腰かけている。

 

周囲を見渡してみると自然と全員が王たちの方へ視線を向けており、全員がその言葉に耳を傾けようとしているね。原作で見たシーンだと王が壇上に立ったとしても大半がそれを無視するという描写があって、すでに権力が王ではなく五大臣に集まっている、なんてことが解る様になっていたけど……。まだそこまでは行っていない、って感じか。

 

 

「あ、そういやティアラ。」

 

「え、何? 今王子様演説始めちゃってるけど。」

 

「いいでしょどうせ茶番なんだし。」

 

 

急に口を耳に近づけて来たと思ったら、出て来たのはそんな言葉。いや良いのそんな感じで……、一応あっち次期国王陛下ですぜ? え、どうせパワーで押したら誰も勝てない? 確かに。

 

 

「王が崇められるのって結局は“どれだけ強者を抱え込めるか”って一点なのよ。どんな権威も単純な力量には劣るわ。王家が金山とかミスリル・アダマントの鉱山を独占してるのは強者に相応の報酬を支払うためなの。……それで、今王国にいる強者誰かしら?」

 

「私でしょ、お婆ちゃんでしょ、ナディママでしょ、クソでしょ。後は……、もうちょっとでエレナ?」

 

「クソ……? 誰かしら。まぁいいわ。そゆこと、早い話私たち子爵家は二人の強者を持っているの。対して王家は先の戦争で全滅しちゃったらしいから、0名。ティアラもオリアナさんも、王家か私達かって言えば、私達を取るでしょう?」

 

「確かに。」

 

 

つまり強者が4名。周囲からの反発とカもあるだろうから王家を立てる姿勢は続けるけど、実際は私たち一強の時代なのよ、と続けるエレナ。あぁ、なるほど。だからこそさっきエレナのパパに話しかけてきてる人がクソ多かった、ってことなのね。

 

しかも今日で五大臣たちの排除も終わる事だから……、もうすでに今後のパワーバランスは決まってるようなもの。エレナのパパもマンティスさんも王を立てはするだろうから厄介なことが起きることはないだろうけど、実質的な発言権が一番高いのはエレナたち、ってことになるわけだね。

 

 

「そゆこと。まぁパパもママも私も、必要以上の争いは望まないし、自分たちの領地を守るためにも王国には強いままでいて欲しい。だからそう変なことはしないわ。ケドまぁこれぐらいは、ね? それに私たち子供なわけだし。」

 

「わぁお、頭いい!」

 

 

非常に悪そうな顔をするエレナに、合わせる私。

 

私たちは未だ十に満たない子供。ロリコンの伯爵に常に狙われるっていうとんでもないデメリットはあるが、子供だから難しいこと解りません! だから遊んでました! という言い訳を使うことが出来るのだ! (なおオリアナさんやナディママには通用しないので、後で怒られはする。実際咎める様な視線をナディママからもらってるし。)

 

 

「だから次期陛下が話していても別にいいのよ、戦勝と皆の奮闘への感謝みたいなコト演説してるみたいだけど、そも茶番なんだし。……んでティアラ。アレかしてよアレ。【オリンディクス】。」

 

「え、あの子?」

 

「そ。せっかく暴れ回るんですもの。だったら一番いいものを使いたいってのは解るでしょう? 無理ならいいけど、良かったら貸してくれない?」

 

 

武人としての性なのか、最上級の武器に興味があるようで、出来たら使わせてほしいと言って来る彼女。

 

別にエレナであれば変なことはしないだろうし、うまく使いこなしてくれるだろうから貸してもいいんだけど……。今ちょっとあの子空間で調整中でさ。誰かに貸すどころかちょっと私でも使うのが危ないような状態なんだよね。

 

 

「そうなの?」

 

「うん。このまえクソ女神ぶっ殺したでしょ? その時アユティナ様の力を借りてかなりの神秘をあの子に注ぎ込んだんだけどさ……。ちょっと気合入れて込めすぎちゃったせいで、最悪使用者が爆散するんだよね。」

 

「え。」

 

 

アユティナ様と合体した私、アユティアラちゃん状態で神秘を詰め込んだ【神槍オリンディクス】。神秘を溜め込んだだけ攻撃力が上昇し、同時に神秘の外部電池みたいな使い方が出来るようになったこの子なのだが……。ちょっと神秘を込めすぎてしまったため、今の私があの子から神秘を引き出そうとした瞬間、その神秘量に耐えきれず体が爆散しそうになってしまったのだ。

 

そのため現在空間内で神秘の放出を実行中。けれど何かの弾みで使用者に神秘を流し込んでしまう状態である事は変わりないので……。なのでもうちょっとだけ待ってね、という感じなのだ。

 

 

「私であと3日、エレナが問題なく使えるようになるには半月ぐらい要りそうだから……。他ので勘弁してくれる? あ、ほら。これなんかどう? オリアナさんの槍のスペアとしてもらった【アダマントの槍】。オリンディクスに籠ってた神秘をちょっと込めてるから、普通のよりいい槍だよ。」

 

「へー。ちょっと振らせて? ……思ったより重くないのね。いいわ。でも騎乗する時はもうちょっと軽い方が楽かも。」

 

「となるとランク下げてミスリルかな? でも攻撃力も神秘許容量も下がっちゃうし……。いっそのこと専用武器でもアユティナ様にお願いしてみる?」

 

「え、そういうのも出来るの?」

 

 

うん。アユティナ様がね? 『さすがに本職には劣るけどオリンディクスから一段階ぐらい下がったのなら私でも作れるよ。最悪交友のある鍛冶の神にお願いしても良いし、私の宝物庫から良いの見繕ってもいいし』って言ってたから。ある程度の見返りは求められるだろうけど、エレナなら大丈夫じゃない? 確か改宗自体はしたけどまだ加護とかは何も受け取ってはいないんだよね?

 

 

「えぇ、そうね。……今度またあの方の元に送ってくれる? ちょっとお願いしに行って来るわ。今日はこれでやってみるけど、自分だけの専用武器って憧れるものね。」

 

「わかるー!」

 

 

あ、話してたらなんかざわざわしてきましたね。お? もしかして五大臣への追及終わった? お仕事の時間? よーし、んじゃゴミ掃除始めますかー! エレナが箒係で、ティアラちゃんが塵取り係ね!

 

 

 






〇オリアナ
煙を味わった後。ティアラたちに合流するため吸殻を踏み潰して火を消そうとしたが、どこからともなく表れた王直属のメイドたちに灰皿を渡され心底驚いた。
いや確かにちと考え事してたとは言え、私が気配を察せないって相当だぞ。え、鎧の血落としてくれるのか? すまん、頼むわ。んで、二本目はいるかって? ……いや、やめとく。名残惜しいが十分楽しんださ。まだ子育てしてるんでね、悪いが匂い消しを貸してくれるか?

〇ティアラ
オリアナさんのことは心配しているが、同時に信頼もしているので先にお掃除を済ませることにした。

〇エレナ
ティアラから得た情報や、父から聞かされていた情報を合わせて大体の予測を立てている。
政治がマンティス、軍が私たち、そしてそれを束ねるのが王で、少し離れたところにいるティアラが宗教を担う。まぁそんな感じでしょうね。あ、でも私とティアラがいるんだったら多分私たちの代で帝国潰せるよね……。その後のことも考えておかなきゃ!

〇宴の会場で二人の傍にいた人たち
この子たち第二王子の話全く聞いていない上に、なんか槍振り回し始めてる……!

〇第二王子
裏でとっても頑張って演説して、逆賊の討伐を宣言。その罪状の列挙なども行っていた。
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