黒颯のエレティコ ~忘れ去られた神の力で凌辱シナリオをぶっ壊す~ 作:サイリウム(夕宙リウム)
「えー、では。リロコ公爵が倒れてしまったので、一旦休憩にしよう。」
伯爵……、じゃなかった。ロリコン公爵が泡吹いて倒れた後。会議自体はそのまま進めた方が良いだろうと言うことで、彼が病室に運ばれていくのを眺めながら続行されることになった。けれど真面目にお話する空気でも無くなったのは確か。お茶休憩を少し挟んだ後に、再開する運びである。
(それにしても。)
多分、多分これでアイツがもうちょっかいを掛けてくることはないとは思うんだけど……。なんかすごーく嫌な予感というか、とんでもないミスをしでかしてしまったかのような気がするのはなんでなんだろ。おかしい、ティアラちゃんの計算では完全に脳破壊を為せたはずなのに……。なんでこう、悪寒がするんだ?
何か見落としてる? 忘れている? いやでも原作知識はまだちゃんと覚えている。ロリコン関連のイベントや王国関連は何かあった時のために思い出していたし、ロリコンのキャラ設定も掴み損ねていることはないはず。完全に地雷を踏んで破壊出来た。そう断言できる。
確かに私が色々原作からかけ離れた動きをしていることは事実だ、それによって何か理解できない様なイベントが起こってもおかしくないハズ。けれどあのロリコンのような無駄に自我の強いキャラの精神は、そう簡単に変わるわけがない。アユティナ様の神秘に何故か耐えたあの男が、偶発的に起きたイベントでその根幹ともいえる性癖を変化させたなど、考えられない。
……となると、ロリコン以外?
(……ダメだ。さっぱりわからん。)
最上級職に成ったのに依然としてLUK0な事が響いているのだろうか、なんて考えながら身震いしていると、隣に座っていたエレナのパパ。ゲリュオン公爵さんが小声で私に話しかけてくる。それまで考えていたことを一旦脇に置きながら、彼に向き直る。
「……なぁ、ティア。いやティアラ殿。今の話は本当か?」
「あ、うん。大体。嘘もあるけど。」
「そうか……。言っておくがエレナは渡さんからな。」
あはは! 解ってるっての。というかパパさんも自由恋愛推奨派でしょ? 昔そっちでお世話になってた時聞いたよ。縁談とかは組む可能性はあるけど、最終的な決定権は本人にある。けど“子爵家の娘”という役割で自分を律していた当時のエレナじゃ何も考えずに受け入れちゃうだろうから、許嫁の話とかもあったけど全部断ってた、って。だからエレナが望んで問題がなさそうだったら、普通にゴーサイン出すつもりなんでしょ?
まぁ確かに私とエレナは、仲のいい友達だけど……。残念ながらそういう関係じゃない。
ねぇ? でしょエレナ。
「きゅ、急に振ってくるわね……。えぇ、そうね。まぁ仲が良いのは認めるし、貴女は私のライバル。そこは間違っていないけど、恋愛感情とかそういうのはちょっとまだ解らないわ。だから、貴女がそれでいいのなら、これまで通り、って感じかしらね。何も変わらないわ。」
「だよね、ありがとエレナ。私も同じ気持ち。」
ぱっと立ち上がりながら彼女と拳を合わせる。もしかしたら今後色々変わってくるのかもしれないが、いまはlikeの関係。loveじゃない。というかまだお互い8歳だし、エレナって異性愛者っぽいからね……。だから“そういう”のじゃないんです。
そんな私たちを見て、一瞬だけ安堵するゲリュオンパパと。不思議そうにするナディママ。……なんで不思議そうにしてるので?
「ん、いや。別にくっついてもいいのになー、と。お前なら安心して……、はちょっと無理だが預けるに値する人間ではあるからな。姉上の孫というのもポイントが高いし、今じゃ家柄も十二分。ちと跡継ぎ、子供はどうするのかという問題があるが、それだけだろう。……だめなのか、ゲリュ。」
「いやダメでしょナディ。こういうのは本人たちで決めるものだし。」
「それもそうか。すまん、忘れてくれ。」
若干口調を崩したゲリュオン公爵に窘められ、口を閉じるナディさん。
いやナディさんや……。え? ペガサスナイト同士だと結構ある話? 戦場で女同士で固まってるから自然と関係性は深まるし、命を預け合うから友情が超える時もあるし、死に面したせいで本能が刺激されるせいか一線を越えてるもの結構いて、実際今の天馬騎士団にも成立してるのが何組かいる?
……あ~、だから私が女性愛者って言ってもそこまで驚いてなかったのね。あと最後のは聞かなかったことにしとく。それ絶対本人たち隠してる奴でしょ?
「まぁ戦場に居るとな、どうしてもタガが外れる時もある。方向性は人によって違うが……、新兵は特に多い。お前たちはまだ経験が浅く子供だから知らなくてもいいが、とりあえず何を見たとしても否定してやるなよ。あと自分から近づかんようにな。」
「「はーい。」」
まぁちょっと話が脱線しましたけど……。席に戻りながら、エレナのパパに向かってふざけながら言葉を紡ぐ。
「というわけで……、だから変な心配しなくていいよ、おとーさん?」
「ならその呼び方をやめなさい。“お義父さん”に成っているだろうが。……ともかく、気を付けることだ。君はこの国に現れた新しい公爵家。私たちのように元の基盤を持っていない存在だ。取り込めるかもしれないと思い、声を掛けてくる者は多いだろう。」
あ~、やっぱり?
まだ決まってないみたいなんだけど、おそらく私が任されることになる領地ってのは、五大臣の誰かが持っていたものに成るだろう。王家とか私と親交のある家がある程度人員を貸してくれそうなものだが、それだけですべてをまかなえるとは思わない。現地でスカウトしたり、更に他の家から人を借りる必要がある。
やろうと思えば五大臣たちが持っていた家臣団をそのまま引き抜くってのもありだとは思うが……、ちょっと色々問題が出てきそうだからね。というわけで私の下にあるポストは、かなりの虫食い状態。それを狙って他の貴族が暗躍を仕掛けてくる可能性は大いにあるだろう。
「君が“ソレ”を公表せずにいれば、縁談だけでなく男を送り込んでくる。公表したとしても、送り込まれてくる人間の性別が変わるだけだ。気に入られれば婚姻関係、もしくは養子扱いしてもらえるかもしれない。公爵という位と君が抱える力、それを考えればかなりの数になる。……実際、君に話しかけるため結構な人数がまだこの王宮に止まっているはずだ。」
「やっぱそうだよね……、ありがとう。」
「構わんとも、娘の友人だからな。なに、困ったことがあればいつでも頼ってくれて構わない。信用できそうな者と、害にしかならなそうな者。すでに仕分けは終わっている。こちらもかなり人手不足になりそうだが、何人か送ろう。」
わーぉ。さっすがエレナのパパ。すっごい助かる……!
んじゃ困ったときは頼らせてもらうね!
「……そろそろ、再開させて頂いても良いでしょうか、使徒様。」
「あ、ごめん。私待ちだった? 悪いねフェルナンド。もう大丈夫。」
彼にそう謝りながら、会議を再開してもらう。……あれ? 今第二王子のこと呼び捨てにしたけど何も咎められないどころか、なんか本人から喜ばれたような感覚があったな……。まぁいいや。ここにいる人知り合いばっかだし、他の貴族の前でそうしなきゃ別にいいや。
んじゃ、再開してちょ!
「それで、次の話題だが……。私以外の王族をどうするのか、についてだ。以前私がマンティスと計画について詰めていた際は、“五大臣の完全な排除が為せなかった時に備え、その身柄を全て確保し内々に処理すべきだ”ということを考えていた。だが……。」
そう私たちに説明しながら、一瞬だけ国王。彼の父親に顔を向ける第二王子。
……継承のことを考えると、敵対する相手を減らしておきたいという気持ちは解る。第二王子が王を継ぐことを受け入れられる王族もいるだろうが、後ろ盾がいなくなった後も依然として王座を狙う王族も、いるにはいるだろう。王家が弱体化しているのは確かだ、五大臣亡き今、後ろ盾に立候補する貴族がいないとは言い切れない。
新たに即位した王が急死した場合どうするのか、という問題は出てくるだろうが、処理しておいた方が手っ取り早い。
けれど現国王、フェルナンドの父はそれを望まないだろう。処理してしまえば確実にすべての責任を勝手に背負い込んでしまい、潰れてしまう。息子も、それは望まない。
「使徒様、オリアナ殿。ナディーン殿、エレナ殿のおかげで全員の捕縛と処理が完了し、王宮外で動かしていた別動隊もその確保を完了している。こちらが把握しきれていない庶子などもいるだろうが……。すでにもう血を流す必要はない、と考えている。」
「では、どのように処理致しますかな、殿下。」
「……歯向かうのならば幽閉。こちらに着くのであれば、臣として力を振るってもらうつもりだ。もちろんこれ以上の諍いを避けるために、継承権は手放してもらうことになるだろうが。」
元宰相、そして今後宰相に返り咲くであろうマンティスの問いにそう答える王子。王子の後ろにいる国王も、少し安堵しているような雰囲気を醸し出している。ん~、まぁティアラちゃんとしても問題はないかな? 家族の問題だろうし、あんまり首突っ込むのもねー。
「ティアラちゃんは問題なしー。必要なら“教え”でも“武力”でも貸してあげるから言ってね。あ、でも幽閉先にするってのはご勘弁。うちの『政治に関わり過ぎない』ってスタンスもあるしねー。」
「へスぺリベスも同じく。子爵家から公爵家への急拡大のため当分は領内に専念させて頂きたい。陛下や殿下の頼みとなれば臣下として受け入れはしますが、幽閉先としてはあまり良い場所ではないでしょう。力を持つ我らが、王族を抱えるのはあまりよろしくないかと考えます。」
必要なら手を貸すという私に、政治的な面から意見をいうエレナのパパ。まぁ確かに、私たちは武力タイプで、マンティスやロリコンが政治タイプって感じだもんねー。力持ってる奴が王族抱えちゃたらそれはもう、ね? 反乱とかいつでもできるようになっちゃうわけだし、王家の力が低下している今、余計なことはしない方が良いだろう。
「感謝する。……とりあえず弟や妹たちには、王宮の牢に入ってもらうつもりだ。他の貴族たちに納得してもらうためにも、そういうパフォーマンスは必要だろう。その後私自ら彼らの説得を行っていくつもりだ。……これでよろしいでしょうか、陛下。」
「あぁ。」
ゆっくりと頷きながら、小さく答える国王。……牢獄入りだけど、まぁ王宮の中にあるのなら顔を合わせに行くことぐらい出来るだろう。たぶん王族だから牢獄って言ってもかなりマシな環境用意してもらえるだろうし……。とりあえず王族に関してはそんなもん……。あ、忘れてた。
「そういえばマンティスちゃんさ。第二王女のイザベルはどうするの? たしかそっちが確保してたんだよね?」
「ちゃ、ちゃん……? あ、あぁ。確かに使徒殿のいう通り、こちらで保護している。五大臣を確保したことで少し王都の裏社会で騒ぎが起きている故、それを鎮圧し治安を確保した後こちらに戻って頂く予定だったが……。」
「やっぱり? んじゃその役目ティアラちゃんに任せてくれない?」
ここにいる人の大半は知らないだろうが……。私の故郷であるペブル村にはイザベルが住んでいた。狂ってしまった王から逃れるために、ベルと名前を変えてだけどね? まぁ同じ村に住む子供だったから、一緒に遊ぶくらいの仲ではあったのだ。もちろんベルとしては主人公くんと遊ぶ方が楽しかっただろうけど、女の子の付き合いってのもあったしねー。
まだ3年しか経ってないし、あっちも顔覚えてるでしょ。……うん? そう言えばまだあれから3年ちょっとしか経ってないのか。……色々ヤバいな。
っと、まぁそれは置いておきまして。
「実はちょっと顔見知りでさ。隠れてる場所も解るし、会いに行くついでに連れてきてもいい? 治安の悪さとかも、私の傍なら関係ないようなものだしさ。」
◇◆◇◆◇
「ティアラ、なんかあんのか?」
「? 何かってなに?」
主要メンバーを集めての会議。それ終わりの帰り道でオリアナさんから声を掛けられる。
帰り道の先導をしてくれるメイドさんが、“あの”メイドさんだから近くに誰もいない道を選んでくれているけど……。どうしたの? というかあの後、色々ややこしい話とかが多すぎてぱっと案件が出てこないんですけど。公爵様ってこんなにやる事多かったの? もう爵位捨てたくなってきた……。
「あぁ、すまん。第二王女の話だ。お前がわざわざ口を挟むってことは何かあるのか、と思ってな。エレナが言ってたレベリングの話も断って出発することにしただろう?」
「その話ね。うーん、なんというか。何かあるというよりも、起きるかもしれないってのが理由になるかな。」
会議中何度かティアラちゃんのせいで脱線というか、貴族社会とかの常識を知らなかったせいで解説をエレナパパとかから受けてたのだが、その過程でちょっとエレナとダンジョン巡りの話になった。エレナが一回家に帰ったのは確かなようだが、どうやら本人はまだ家出継続中のつもりだったようで……。王都でのあれこれが終われば、即座に迷宮に行ってレベリングに励む予定なのだという。
正直、私もそれに参加したかった、けれど今回はお断りさせていただき、第二王女のお迎えを優先させてもらった形だ。確かに普段の私なら『王族? なにそれ食べたら美味しいの? それとも経験値が美味しい?』という感じなまでに興味がないのだが、彼女は別だ。
「なんかもう私が荒らし過ぎたせいで、頼りになるのかならないのか解んないけどさ……。私の知る未来じゃね? あの子輸送中に行方不明になるの。」
「ほーん。」
原作のイザベル第二王女殿下は、主人公よりも少し早くに王都に向かって出発する。原作ではすでに帝国が王国内部に侵入しており、亡国寸前。けれど王国軍は五大臣のせいでまともに機能していない、という状況である。
これを憂いた殿下は護衛の兵士や、お世話になっていた教会の頼れる知人たちを引き連れて王都に向かうんだけど……。
「普通に、全滅するんだよね。盗賊相手に。」
「……なんか強いのでもいたのか?」
「ちょっとだけね? 昔のオリアナさんの半分くらいの強さ。」
護衛は全員殺され、教会の者たちも死ぬか慰み者。捕まった王女だけは何とか逃げ延びるんだけど……、逃げ延びた先で捕まって娼館落ち。まぁ最終的に力を手に入れて自分を貶めた奴全員ブチ殺しながら王都に向かって、主人公と再会するんだけど……。まぁよくあるR18展開ね。胸糞なタイプの奴。
「そこまで仲良かったわけではないけど……、知人がそんな目に遭う可能性があるのに、放っておくのは寝覚めが悪いでしょ? 確かに7年くらい早いけど、何が起きるか解らない。だったらもう自分で見に行った方が良いよなぁ、って。」
「なるほどなぁ。まぁ確かに、それなら迎えに行った方がいいか。」
一応最初のころの私の計画では、その王女が娼館落ちする直前で介入。付近の盗賊で経験値稼ぎをさせながらレベルを上げて、仇の盗賊を撃破。そのまま王都に送り、その後は故郷を出発したであろう主人公たちを後ろから見守るか、合流するっていうつもりではあった。
けどまぁ……。私が帝国を殴り過ぎたせいであいつらはもう攻め込んできそうにないし。王国の腐敗の原因であった五大臣は処理済みだ。もし帝国が攻めてきても王国軍はちゃんと機能するだろうし、そもそもティアラちゃんがこちらにいる以上、どんな大軍相手だろうと1日で処理できる。
前提が崩壊してるし、そもそも王女が出発するのは今から7年後。どんなバタフライエフェクトが起きるかわかない、ってことでね?
「あー。でもこうなったら、もう全部壊しちゃおっかな。」
「……何するんだ?」
「いや、早いけどちょっと里帰りもしちゃおっかな、って。」
正直言ってすでに、“私から見れば”主人公の存在価値はない。
神秘という力を手に入れた以上。主人公の専用ジョブである『勇者』の特殊スキル効果。“神秘特攻”は必要なくなってしまっている。アレは確かに人の力のみで、神秘を扱う者を打ち破ることが出来るが……、アユティナ様の力をお借り出来る私がいる以上、主人公はいらない子。
それに帝国が攻め込んでこない、もしくは王国軍で対処できるのならば、原作のように貴族たちが連合軍を組織することもないだろうし、その連合軍が過去の英雄であるリッテル。主人公の祖父に助けを求めることもない。つまり、主人公が村を出る理由がなくなるのだ。
私のせいで原作が始まらない状況に成ってしまっている……。まぁそれは別にいいんだけど、第二王女のイザベルからすれば思い焦がれた相手と再会できないのは苦しいだろう。主人公も会いたがってるはずだし。
(だからま。メインヒロインを送り届けたら主人公もついでに拉致して、王都に放り込もうかなーって。)
その後どうなるかは彼ら次第だが、一応友人だ。それぐらいの義理は果たしてやるべきだろう。第二王子がいる以上、原作であった彼らが統治者となる未来は来ないだろうし、その詫びという側面もある。
勿論主人公の拉致だけでなく、他にも色々やるつもりだ。
「両親が心配してるだろうから顔見せておきたいし、オリアナさんも紹介したい。放置してたからPOPした盗賊の処理もしなきゃだし、アユティナ様の像があるからその手入れ。フアナの様子も見ておきたいし……。あ、そう言えばリッテルのお爺ちゃんに言ってたこと『私が全部何とかできそうだから大丈夫です』って撤回しとかないとな。」
「色々やるつもりだな……。まぁいい、最初の“お迎え”はまぁ楽な仕事だろうが、その後の“帰省”はちと大変、と言ったところか。手土産用意しとかないとな……。」
そんなことを言いながら歩くオリアナさんを眺めながら、王宮の中を歩く。さっきの会話内容を聞いていたのか、ちょっと先導してくれるメイドさんの視線がチラチラと刺さってくるけど……、オフレコでお願いね♡
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また誤字報告いつも大変お世話になっております。