黒颯のエレティコ ~忘れ去られた神の力で凌辱シナリオをぶっ壊す~ 作:サイリウム(夕宙リウム)
昨日投稿できず、申し訳ございません。
お詫びに本日は2回投稿予定です。次はいつも通り17時になります。
ティアラが王都にて帝国からの侵攻の報を受ける少し前。
ちょうど彼女がフアナに確保され、どう足掻いても逃げられないのなら、もう自分から人生の墓場に飛び込んでやろう。でも覚悟があったとしても叫びたいものは叫びたい。私らまだ8つだよ!? という声にならない叫びをあげていたころ……。
彼女のライバルである“エレナ”は、迷宮都市へと来ていた。
(まだ上級職に上がったばかり、諸侯会議前にあった討伐じゃ全然経験値を稼げなかったし……。出来るだけ早く、私も最上級職に成らないと。おいて行かれちゃう。)
王国教会との戦いにて、重傷を負いながらもなんとか敵使徒を討伐することが出来たエレナだったが、その時にはもうティアラが使徒として覚醒し、最上級職へと至っていた。そして彼女はアユティナ神の助けを借りたと言えど、神殺しを為してしまったのだ。
ほぼ無傷で神を消し飛ばしたティアラと、使徒ごときで手古摺ってしまった私。エレナがそれに対し強い想いを抱くのは自然のことであり、どうにかしてティアラの隣に立とうと。ライバルとして認めさせるためにも、レベル上げにこの迷宮都市までやって来たのであった。
(幸い最適な装備も頂いたし、手伝ってくれる人もいる。……あの子の成長速度は異常だ、一瞬止まったと思えば一気に跳ね上がったり、普通に時間の経過とともに強くなることもある。だからこそ、一度追い抜かし、突き放す。)
諸侯会議の際に、ティアラと『専用武器いいよねー』という会話をしていた彼女。その次の日の夢枕にアユティナ本人が『武器欲しいんだったら作るけど、どうするー?』と尋ねて来たのだが、エレナはそれに対して少し考えた後、『一旦待ってほしい』という返答を返した。
確かに専用武器は憧れるが、いまだ自身は成長途中。それに【神槍オリンディクス】の様な武器を渡されても、今の自身では振り回されてしまう気がしたのだ。だからこそエレナは、神に対して違うモノを要求したのである。
『取得経験値が増える様な神器、ありますか?』
『お! 見る目あるねぇ。もちろん用意してるよ? 最上級職に至るための装備だから到達しちゃえば使えなくなるし、そもステータス上昇率アップの【成長の宝珠】とは併用できなかったからティアラちゃんは使わなかった奴だけど……。はいこれ。』
そんなアユティナから受け取った装備品である、【孵化の宝珠】を首から下げるエレナ。この装備の効果としては、『自身が最上級職でない時、取得経験値を10倍にする』というもの。ティアラの様な爆速周回が出来ないエレナにとっては、今一番欲しい装備品だった。
更に今の彼女は、一人ではない。つい先日まで家出状態であり、実家の子爵家からの支援を十全に受けられない彼女だったが、エレナの母であるナディーンが『なら私も家出しよう』とかいうよく解らないことを言い始めたため、父が折れ『迷宮都市への家出』が『迷宮都市への公務』へと早変わり。
子爵家が公爵家に拡大したことで発生した雑務を全て父に放り投げ、母とそれに率いられた天馬騎士団たちと、彼女はダンジョン攻略兼レベリングに挑むことになったのである。
「ママ、お願い。」
「あぁ、解っているとも。基本私は後ろから見ているだけだ。何かあった時は助けるが……、存分にやれ。」
「ありがとう。」
そんなこんなで始まったエレナによるダンジョン攻略。
以前ティアラとレベリングをしていた時に、大体の構造と出てくる敵については教えてもらっていた。だからこそ効率的に、どんどんと吐き出す経験値の多い、深層へと潜っていく。
確かにエレナ一人だけではどこかで躓いていただろうが……、今は違う。人類の中で五指に入る強さを持ち、同時に最速の名をほしいままにするナディーン。そして彼女が率いる天馬騎士団は全員が上級職であり、同時にティアラと共にレベリングをしたり【成長の宝珠】を貸してもらい一気にステを跳ね上げた者たちである。
もしこの強さを持った状態で先の帝国との戦いまで巻き戻ったとすれば、彼女たちだけで帝国軍を全て殲滅できてもおかしくないという最強の軍団。そんなものがバックについていれば、レベリングなんか簡単だ。
(……怖いぐらいスイスイ進むわね。)
時にティアラから貸し出された【アダマントの槍】を振るい、途中DEFの高い敵に出くわした際は、貴族の身分と権力を使って作らせた特大のモーニングスターを振るって撲殺し、単純に強い敵には母や騎士団の力を借りながらレベルを上げ、より奥へと進んでいく。
自然とエレナだけでなく、騎士団と母のレベルも上がって行き、どんどんと強くなっていった彼女たちは……。
「……なんか気が付いたら最後まで来ちゃった。」
彼女たちの目の前にある、なんかすごそうな扉。まるでこの先ラスボスが待ってるかのような、すごい奴である。
ティアラ本人は気にしていなかったのだが、実は彼女。以前のレベリングの際にオリアナとナディと共に、それまでの人類の最高到達点である70階層を越え、80階層に到達していた。けれどこれ以上進むとちょっと周回のスピードが遅くなり、経験値効率が悪くなるためそこで止めていたのだが……。エレナは進んじゃった。だって下に行くほど経験値多いって聞いたんだもん……。
んで進んでいたら、最下層。ティアラの話では、神に匹敵するという『暗黒竜』がここに控えているという話だったが……。
「ティアラから弱点とか聞いているんだろ?」
「うん。なんか竜の体のいたるところにある黒い目をぶっ叩けばいいって言ってた。」
「ならよし。戦い方が解っているのなら攻撃だ。何、苦戦したら撤退すればいい話よ。」
ティアラからの情報があったとはいえ、“神にも匹敵する”という前情報に全く怯えず直進する親子。流石に部下の騎士団たちはちょっと引いていたが、自分たちの主が進むのなら行くしかない。
覚悟を決めて、眼前の扉を開ける。
「ッ! あれは……!」
瞬間、彼女たちを包み込むのは邪悪な気配。扉が開かれるのと同時に動き出した暗黒竜が目を見開き、その場にいる侵入者たちの姿を“写し取って”いく。そして竜の周りに生み出されていくのは、彼女たちと瓜二つの影法師たち。顔に表情はなく、目玉はくり抜かれ虚空が見えるのみ。けれどその生み出された存在が、“自分たちと力量が同じ”ことは感覚で理解できた。
(自分を打ち倒し、同時に竜も倒せ。……やってやる!)
そう考えながら、槍を構えるエレナ。
彼女の戦いが、今。始まる。
◇◆◇◆◇
はーい! こちら実況のアユティナでーす。ではではダンジョン最終戦。なぜかティアラちゃんのいないところでかなり大きな戦いをしていますが……。今彼女、裏でフアナちゃんに襲われてるからね。仕方ないね。……流石に可哀想だから逃走経路のルート出してあげて、っと。エレナちゃんの戦いに移っていきましょう。ちょっとダイジェスト気味なのは許してね?
あ、結果としてはエレナちゃん大勝利! そして超強化! で終わるから安心してもらって大丈夫!
にしてもこのダンジョン、誰が作ったんだろうね? いやまぁ私がお婆ちゃんからこの世界を貰う前からあったっぽいから、お婆ちゃんが作ったんだろうけど……。いやはや、ネーミングセンス終わってるよね。この暗黒竜もさ、名前「餡子喰う竜」だよ? なんかもうふざけてるとかそういうの飛び越えてるよね。
まぁあの人の権能と性格的に、そういうのになっちゃうのも仕方ないのかもしれないけど……。
っと、エレナちゃんも私の大切な信者の一人、余計なことを考えずにちゃーんとその活躍を見ていきましょ! ……あ、ティアラちゃん捕まってる。
というわけで第1ターン。
両陣営の配置も鏡合わせになるみたいで、両者ともに中央を開けて左右に200ずつの空騎士を配置した感じだね。んで中央にいるのがエレナ&ナディーン VS 影法師×2+暗黒竜って感じかな?
この影法師、さっきの説明にもあったけど装備以外のすべてをコピーして来る結構凶悪な奴でね? そこにいろんな全体攻撃をして来る暗黒竜もいるから結構難しいステージみたい。
次、第2ターン。
一番速いナディーンとその影がステージ中央で接敵し、戦闘開始。そしてそれに少し遅れてエレナも自分の影法師と接敵。その後左右両陣もぶつかるって感じかな。一応敵側の指揮レベルはそれなりで、もう熟練になった天馬騎士団の子たちなら時間さえかければ無傷で突破できそうな感じだったんだけど……。
ターン終了時に放たれる、暗黒竜のブレス。
これが面倒でね? 影法師の体をすり抜けるタイプの全体攻撃なのよ。つまり視認性も悪い上に、威力が高いクソ攻撃。結構鍛えてるから騎士団の子たちも一撃じゃ死なないけど、一回でも喰らえば戦闘不能になっちゃう。ラスダンだから仕方ないとは言え、ちょっとチートだよね。
実際この攻撃で20人くらいが巻き込まれちゃって、傷ついた味方を逃がすために同数。つまり40人がここで離脱しちゃってる。幾ら指揮の差があっても、毎ターンブレスっていう全体攻撃が飛んでくる以上、出来るだけ早く敵の数を減らした方がいい状況。
次、第3ターン。
ナディーンとエレナ。味方の首脳陣が相手のブレスの凶悪さを理解して、このままだと押し切られちゃうと判断。そのためナディーンが影法師たちを相手している間に、エレナが離脱して押し込まれそうなところを詰めていく戦法に変更。
これが功を奏して、どんどんと騎士団の影法師を倒していくエレナちゃん。これまでのレベリングもあって前よりも格段に強くなってるし、何よりこの影法師の経験値って結構おいしいみたいで。レベルもどんどんと上げながら倒していく。うんうん、いい成長。
けどナディーンさんの方はやっぱり苦戦してるみたいで、自分の相手はそうだけど自分の娘の顔をした存在を倒すのに結構ためらいが出ちゃってるみたい。聖戦の時にエレナちゃんが大けがを負ったのが結構後に引いてるのもあるみたいだし、影法師とはいえど自分の子供に槍を突き付けるなんて、って考えちゃったみたい。
それが悪い方に転がっちゃって……、影法師のエレナを倒し切れる隙があったのに、見逃してしまう。そして敵を見逃してしまった自分に動揺したところに……、暗黒竜のブレスが飛んできた。
次、第4ターン。
自分の母親がブレスに飲み込まれたのを見て動揺しちゃうエレナだったけど、即座にナディーンが槍を振るいながらブレスを吹き飛ばす。そして即座に攻撃に転じ、自身の影法師の右腕を切り飛ばした。
このブレス、確かにレベリング前の彼女だったら致命傷だけど、今の彼女なら耐えれたし、吹き飛ばせた。そのまま戦闘に移ることも可能。だけどかなりのダメージだったのは確かみたいで、鎧はボロボロで肌も見えてしまっている。もしもう一度喰らったとしても死にはしないだろうけど、その後の戦闘続行は難しい、って感じだろうね。
自分の親で、師でもある。この中で一番母を理解していたエレナは、すぐに行動を起こし、さっきまで行っていた雑兵狩りを再開。二回目のブレスは騎士団の方にも飛んでいて、さっきよりも数も減っちゃったけど、上手く連携。ちょうどこのターンで影法師の騎士団の殲滅に成功する。
勿論その過程で味方側の騎士団に怪我人が出ちゃったけど、死人はなし。このままナディーンへの支援や、暗黒竜の攻略に入ろうというところで……。
竜が本気を出してきた。
ブレスと同時に【黒杭の魔法】ってのを使用して、同時全体攻撃。しかもこの杭の魔法が騎乗&飛行系のユニットに特攻が入るやつで……。騎士団の大半がここで脱落。エレナは何とか避けることが出来たけど、ナディーンが自身の影法師を撃破したところを狙われて、攻撃を喰らってしまう。
そのまま落馬してしまう、ナディーン。
次、第5ターン。
その隙を突いて攻撃しようとする自身の影法師を止めるため、動き出すエレナちゃん。何とか影法師の槍とナディの間に滑り込むことが出来たけど、体勢が悪く少し押し込まれてしまう。このままだと、槍がずれてその切っ先がナディーンの腹部に。
けれど一瞬でも時間が出来たのは確か。ナディーンの速度なら十分その場から脱し、攻撃に転じることが出来たけれど……。今ここで逃げれば、おそらく体勢を崩したエレナが攻撃を受ける。
故に、その肉体で影法師の攻撃を受け止め……、突き刺さった槍を握り、固定。
エレナもすでに戦場を経験した子、即座に姿勢を立て直し、攻撃に転じることで影法師の首を刎ねる。すぐに母に駆け寄ろうとするエレナだったが、背中に感じる、母の魔力の起こり。そしてその直後に自身の顔横を通り抜けていくのは、母が魔力を込めて投擲した槍だった。
その行く先は、同様にブレスを放とうとしていた暗黒竜の脳天。
ひるみ、その攻撃が止まり、生まれる隙。
エレナの鼓膜を振るわす、母の「いけ」という声。
最後、第6ターン。
弾かれたように動き出すエレナと、彼女のペガサス。脳天に槍が突き刺さったとはいえ相手はドラゴン。残り自分だけとなった今、何もせず死を待つほど愚かではない。すぐに体勢を立て直し、先ほど放った『黒杭の魔法』とブレス。そして『黒炎の魔法』を多数射出し、距離を詰めてくるエレナを落そうとする。
けれどそのすべてを避け切り、接近。
槍を振るい、暗黒竜の鱗に弾かれながらも。なんども、なんども打ち込む。
そしてついに見えた、勝機。
自身のペガサスから飛び降りたエレナが自身の騎馬に出した指示は、突進。馬と竜では体重差が違う。けれど少し崩れた体勢をより大きくずらすことなら、出来る。ブレスの瞬間を崩された竜の口に、自身の魔力すべてを込めて槍を投げ込むエレナ。そして跳躍し、手を伸ばすのは母が脳天に打ち込んだ槍。
それを強く押し込み……、その脳髄を、破壊する。
さらに、そしてこれで……。エレナのレベルは30。そ、天馬騎士の30だから、最上級職への切符を手に入れたってわけだ。んじゃ、ちょっと準備してきますねー。
◇◆◇◆◇
「はぁ、はぁ、はぁ。……や、やった?」
自分の足元に見える、黒龍の死体。脳を完全に潰し切った。これで死んでなければ、何かの化け物。そう思ったが、そう言えば自分の周りにもっとバケモノらしい化け物がいたことを思い出し、ママの槍を引き抜き、もう一度突き刺しておく。……うん。流石に死んでるはず。あ、そうだママ!
振り返ってみてみれば、嬉しそうな笑みを浮かべながら、こちらに向かって手を振ってくれている母。思いっきり腹部が切り裂かれているというか、内臓がやられているというか、出血が凄いけど……。すぐ後ろに救護担当の兵が走ってきてくれている。何か大事につながることは、無いだろう。
「よ、よかった。……あ、さっきの感覚。もしかして。」
自分にはティアラの様な自身の能力を数値化して見れるような能力は持っていない。けれどさっき感じた自身の限界がさらに奥に伸びる様な感覚。上級職に上がってから29回目の出来事。つまりこれは……。
【そ、おめでとうエレナちゃん。ダンジョン完クリでLv30とか運いいねぇ。アユティナ様もびっくり。……正直その運、ティアラちゃんに分けてあげられないかな?】
「……またティアラになんかあったんですか?」
【うん。今幼馴染の女の子に、性的に襲われ……。あ、脱出した。頑張れティアラちゃん! まだ逃げられるぞ!】
……マジで何やってんのティアラ!? え、というかそれほんとなら今すぐ助けに行った方が良いんじゃ? そもアイツが一度でも捕まるってことはもう女神級の強さの持ち主のはず。さっきの戦闘でみんなかなりやられちゃってるけど、すぐに回復して向かわないと!
【あ、一応その幼馴染の子ね? 婚約者だから一応大丈夫ではあるのよ。ただ両方とも8つだからそういうのダメだよね、ってティアラちゃんが言ってたら幼馴染の子が切れちゃって、って感じ。嘘から出た実ってやつだねー。】
「とりあえず事件性はない、ってことですか? というかあの嘘ほんとになっちゃったんだ。」
【そゆこと。まぁマジでヤバくなったらこっちで手を貸すからね~。……っと、待たせてごめんね。今は君の番だ。】
アユティナ神がそう言った瞬間、私を包み込むように空から光の柱が下りてくる。……これは、戦場で見たティアラと同じ。最上級職へと転職する時の、光。やっと、やっと追いつける。
【んじゃぁ早速エレナちゃんもルフトクロンに……、ん? うわなっつ。え、というかエレナちゃん、君ヴァーちゃんの子孫だったの? え、ごめんちょっと魂見せて? うわ、ほんとだ……。すご。】
「……え、なんの話ですか?」
【あ、いや。ごめんね? 実は昔凄い才能ある子がいてさ。わざわざその子のために新しい最上級職作ったのよ。んでその子の子孫だけ転職できるようにしてたの。いや~、それがエレナちゃんの一族だったとは。道理でペガサス乗ってるわけだよ。】
なんでも神によると、今から大体2万年前ほどの話で、神の御婆様からこの世界を引き継いだ時に神と一緒に暴れ回った人間の名が、ヴァルパラというらしい。当時はその御婆様が色々と遊び過ぎたせいで、今のティアラですら赤子レベルなほどに凶悪な生物が跋扈しており、人間は震えて暮らすしかなかったという。
そんな時に現れたのが私の祖先にあたるヴァルパラで、そんなバケモノたちを拳一つで叩きのめし、最終的に全て殲滅してしまったそうだ。その強さと成長曲線のえぐさにほれ込んだ神は、その名を職業の名とし、世界に組み込んだのだという。かなり昔だから普通血が薄れてなきゃおかしいらしいけど……、特段私がそのヴァルなんとかさんの血というか、影響を強く残しているみたいだった。
【いいよ~、『ヴァルパラ』。最上級職の特殊職。天馬騎士の派生でちょっとピーキーだけど強いよこれは。うんうん、アユティナ様すっごいおススメ。レベル上げれば確実にティアラちゃんに追いつけるぞ!】
「ほんとですか!」
【ほんとほんと、アユティナ様嘘つかない。】
「じゃ、じゃあそれでお願いします!!!」
私がそう願うと、さっきまで私を包み込んでいた光がより輝きを増していく。
これが、神秘の光。肉体が分解され、再構成されていく。けれどそこに痛みはなく、あるのはより頂点へと駆け上がれるという確信だけ。……正直、先祖がどうとかそう言うのは気にしない。2万年前って言われても、歴史も残ってないレベルで前だ。ならばもう私には、関係のない話。
私が私であるために。アイツ、ティアラの横に立つために。ライバルであり続けるために。
同じ力で追いつくってのもいいけれど……、確かに、少々面白味がない。
あの子と違うルートをたどって、私だけの道を切り開いて、超えてやる。
「…………うん、体が軽い。」
ゆっくりと掌を握り締め、体を確認する。肉体から魔力という魔力が無くなったような感覚があるが……、それ以上に、活力がすべてを塗りつぶしている。
【うん、いいね! ティアラちゃんが黒なら、エレナちゃんは白! それに合わせて鎧も新調して、っと! それに嬉しいから前言ってた専用武器も付けちゃう!】
一瞬でそれまで来ていた鎧は空気へと溶けていき、新しく装着されていくのは真っ白な鎧。ティアラの無駄に体の中心線や腹部を晒す様な服装ではなく、全身を覆うタイプの鎧だ。……でもこれ体のラインかなりきっちり出ますよね?
そう考えていると、眼前に現れる一本の槍。鎧同様に真っ白な存在で、柄と刃の間に蒼い巨大な宝石が埋め込まれている。
【その槍の名前は『終槍ディフェクト』。ヴァーちゃんが昔使ってた奴ね? 与えたダメージ分HP吸収するって奴。今のエレナちゃんの体からは魔力が無くなっちゃってるんだけど、その代わり高効率でHPを与ダメージに変換できるの。んでこの槍があれば、実質ノーリスクでクソ強い攻撃打てるんだよね。ま、後は自分で頑張ってみて! 応援してるよ~!】
「あ、はい。」
エレナ ヴァルパラ Lv1(前回空騎士Lv18)
HP (体力)80(35)
MP (魔力) 0(21)
ATK(攻撃)70(30)
DEF(防御)50(25)
INT(魔攻) 0(11)
RES(魔防)25(19)
AGI(素早)60(32)
LUK(幸運)33(15)
MOV(移動)15
ティアラの『ルフトクロン』の様な愛馬と融合や魔法能力を排除し、そのすべてを身体能力の向上に使用した最上級職の派生型『ヴァルパラ』。他の最上級職のような黒を基調とした服装ではなく、天馬騎士がそのまま進化したような“白”を基調とした装備になっている。MPの代わりにHPを使用することで魔法の様な現象を起こすことが可能。騎手が騎乗することで騎馬の能力が向上するため、ルフトクロンよりも素早く、また多く移動ができるようになっている。転職時の底上げが非常に高く、そもそものステータスが高かったエレナでさえ底上げの対象になった(LUK以外)。HP回復、もしくは吸収系の武器を持てば軽く一騎当千を超えるだろう。
【終槍ディフェクト】
ATK+18
HP完全吸収
HP吸収最低保証5
状態異常無効
アユティナ神の新任時代、別に命じられたわけでもなく、ただ強者と戦いたかったという気持ちだけで人類以外の生命体(ノーマル人類を1とした時、それ以外の平均300)を殲滅しきった戦乙女が使用していた槍。ティアラの持つオリンディクスと同様に、HPをつぎ込めばつぎ込んだ分だけ強化される。そしてその分吸収するのでクソ強い。
(ヘイカによるアンデッドブートキャンプ終了後)
ティアラ ルフトクロン Lv5→10
HP (体力)58→62
MP (魔力)40→45
ATK(攻撃)44→45
DEF(防御)32→33
INT(魔攻)45→46
RES(魔防)42→44
AGI(素早)47→50
LUK(幸運) 0
MOV(移動)12
タイタンとの同調率などが向上しており(タイタンからティアラへの同情)、最大でALL+30までステの向上が可能である。ただしかなりブレがあるようで、平均して出せるのは+10、調子が良くても+15程度の様だ。ティアラのやる気と覚悟がタイタンと同一の場合にこそ+30になると思われる。また神秘やオリンディクスなどによるバフもあるため、まだ向上の余地が残っている。
なおLUKだけは微動だにせず、何をしようとも0。
(かなり危うかったが、貞操は一応守り抜いた。)
フアナ マギフェーダ Lv1→10
HP (体力)45→48
MP (魔力)83→90
ATK(攻撃)17→18
DEF(防御)29→30
INT(魔攻)67→72
RES(魔防)62→66
AGI(素早)39→43
LUK(幸運)51→55
MOV(移動) 7
全体的に大幅な向上を果たしている。彼女がアユティナから受け取った指環、その神器に込められていた“セーフティ”を勝手に解除して強化しているため、際限なくMPを溜め込むことが出来るようになっている。(事後報告にはなったが、アユティナから許可は出ている)そのため発動までに時間が掛かるが、単純な“破壊力”に関すると彼女がこの大陸の次点(トップはヘイカ)。
後衛職の弱点である近接戦に関してはまだ問題点が残っているようだが、ティアラやエレナ級の相手出ない限りはそうそう破られることはない。というか普通なら近づけない。
(かなり惜しかったが、失敗を糧に対策を用意済み。次はない。)
〇総評
ティアラがLUK以外バランス型、エレナが物理攻撃特化型、フアナが魔法攻撃特化型として完成し始めている。総合的な戦闘能力で言えば“空間”などの能力も合わせればティアラが一歩優位だが、そもエレナが射程距離まで近づき全力をぶち込めばティアラもフアナも耐えることが出来ず、フアナにある程度準備する時間を与えてしまえば誰も止められない。全員が全員を殺し得る力関係となっている。
ちなみに裏で大人たち、オリアナやナディーンもレベリングを“完了”しており、肉体を最盛期まで持って行く方法を入手している。そのため三人が喧嘩し始めても、世界が崩壊する前に止めること自体は可能。アユティナからすればみんな成長して進化しているのでニコニコである。
これにて本章『原作開始前:崩壊編』を終了させて頂きます。次回からは新章、『原作崩壊後:神魔の覚醒』を開始していく予定です。もうしばらくお付き合いくださいませ。