黒颯のエレティコ ~忘れ去られた神の力で凌辱シナリオをぶっ壊す~   作:サイリウム(夕宙リウム)

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原作崩壊後:神魔の覚醒
99:運命


 

 

時間は少し巻き戻り、帝国による王国侵攻が起きる前……。

 

帝都の教会には、数多くの信者たちが訪れていた。

 

なにせ何百年振りに、神が降臨したのである。そして神はその慈悲により、その場に訪れた信者すべてを神の贄として受け入れられることを発表していた。

 

帝国も王国同様、長きにわたる神の支配によって信仰に陰りが生まれてしまっていたが……、どこにも狂信者という者はいる。事実王国でも『これまでの神なんか死んで、新しい本物の神様来たよ?』という報により怒り狂った民や貴族が居たそうだが……、大体五大臣の時や王国所属の治安維持部隊によって処理されている。

 

けれど帝国には、ティアラはいない。神自身の号令により多数の帝国民がその身を女神へと差し出していた。

 

 

「……アユティナがちょっかいを掛けてこないってことは、これは大丈夫っぽい。……視線も感じないし、多分王国で何かやってる。」

 

「ッち! 王国はアタシの場所なのに……! ゴジケサ! もっと力送りなさいよ!」

 

「居候のくせに文句言うな。それに、私だって美味しくない家畜無理矢理食べてる。ポリシーに反してやってるの。お前も早く分身増やせ。」

 

 

そう文句を言いながら作業を進めていく神二人。

 

自身の国を失った女神ミサガナの権能は、『吸収と分身』。そしていま現在どんどんと信者を補食している帝国の女神ゴジケサの権能は、『補食と放出』。彼女たちは対アユティナという共通の目的で3000年ぶりに協力関係を結び、その神格の強化に励んでいた。

 

まずゴジケサが信者を捕食しそれをエネルギーに変換。そしてそれをミサガナに放出する。そしてミサガナは放出されたソレを吸収し、分身を作成。そしてその分身をゴジケサに捕食させることで、またエネルギーに変換し、放出させていく。

 

いわば無限にも続く強化を、彼女たちは行っていた。

 

 

(アタシの分身を喰われるのは気に食わないけど、アタシが増やさなきゃ強化は不可能。国は失ったけど、私優位の関係性。これなら、アイツを亡き者にした後も勝てる……!)

 

(居候させてるし、起点になる信者は私の。それに変換も私が握ってる。つまり私優位の契約。アユティナを食べた後は、ミサガナも食べちゃえばこの大陸全部飲み込んでも誰にも文句は言われない。……ふふ、たのしみ。)

 

 

まぁ両者ともに最終的には裏切るつもりの様だったが、協力関係を結んでいるのは確かだった。

 

けれどこの強化方法には、致命的な弱点が存在する。二人は全く気が付いていなかったが……、徐々にその神秘が、酷く濁り始めているのだ。以前アユティナが言っていたが、“神秘”というものは適切な処理を挟まなければ、十全に力を発揮できないエネルギーである。

 

人から送られる信仰も、認知の力も、吸収したり捕食したりする力も、純粋な神秘ではない。魔力が混じっていたり、人の感情が混じっていたりと、そのまま取り込んでいけば“神ではない何か”に変貌してしまう恐れを孕んでいた。普通の神であれば自身の親や親代わりになる存在からその処理方法を学び、神としての力量を高めていくのだが……。ソレを教わる前に、アユティナをこの世界から追い出した彼女たちは“処理”という手順が存在することすらも、理解していない。

 

原作における、ラスボス。両女神が合体し神ではない何かになってしまった存在という者は、その処理を怠ったまま、大陸全てを吸収し、捕食しようとした結果になった者なのであるが……。今はあまり、関係のないはなし。

 

ともかく彼らは、力こそ手に入れているのだが、いずれ滅びに繋がる行動をしてしまっているのだった。

 

 

そしてこの二人の女神たちは、もう一つ重大な過ちを起こしていた。

 

 

 

「……うん。このままいけばちょうどここにいる全部食べたら、アユティナを越えられる。」

 

「そうね、アタシも同意見よ。……ちゃんと皇帝には言ってるのよね?」

 

「もちろん。この国にある全部で、王国を攻める。ちゃんと契約通り、“全部”で。」

 

 

アユティナの正確な力量の、測り兼ねである。

 

両女神共に、自分以外の存在を見下す口のある二人だったが……。『進化と成長』の神アユティナの能力を、二人が襲撃を受けた値に固定して、考えてしまっているのだ。両者ともに、自身の神秘を濁しながらその力量を高め、襲撃時のアユティナを超える目算をしていたようだが……。

 

『進化と成長』の神であるアユティナが、成長しないわけがない。

 

まず、認知数の増加と、信者の増加。ティアラが引き込んだおっぱい宣教師メメロによって、アユティナの名は広く広まっており、同時にその信者も加速度的に増えている。信仰や認知を純粋な神秘として変換できるアユティナは、女神たちに比べその力量の上昇率が高く、すでに襲撃時よりも大きく強くなっていた。

 

そして彼女は、自身の“格”を進化させ成長させることも可能である。神秘変換効率の向上はもちろん、出力の向上や処理能力の向上。自分の信者たちがどんどんと強くなっているのを見てテンションが上がった神は、自己の向上にも余念がない。

 

まぁつまり、どう足掻いても勝てなくね……? という状態だ。

 

そしてさらに、もう一つ付け加えるとすれば……。

 

 

根本的に、“人”を舐めているという点である。

 

 

アユティナ側陣営にティアラという使徒がいることを共有している女神二人だったが、それ以外の人類に関しては戦力として考えていない。帝国の全人類をぶつければ、まぁ足止めくらいはしてくれるだろうと考えている。何せ女神にとって人は家畜。家畜がその管理者に勝てるわけがないと、本気で信じてしまっているのだ。

 

 

「そう言えばあっちの使徒の対応。お前に任せてるけど、どう考えてるのゴジケサ。」

 

「残ってた十将? 諸将? わかんないけどその人間と皇帝に私の神秘注入してあげてる。私のお腹の中にいるおもちゃも出すから、大丈夫でしょ。……ミサガナも仕事してよ?」

 

「はっ! 解ってるわよ、ちゃんとあっちに残ってるおもちゃ動かすわ。それに、まだ私の使徒が全部壊されたわけでもないしね。物資さえ用意してくれれば出せるわよ。」

 

 

そういう二人だったが……。

 

一応アユティナ側のメインユニット、人類を上げて行こう。

 

 

まず一人目。初めの信者にして寵愛を受ける使徒。ティアラ。

 

対多数に特化しており、神秘によって強化すれば一瞬で万の殲滅が可能。もちろん対強者の能力も十二分であり、タイタンと合体し神秘を扱えば止められるものはそうそういない。LUKの低さや少々他の存在に比べれば決定力に欠けそうなイメージがあるが、神と合一化が可能なため、その実力は計り知れない。

 

二人目。埒外の成長をし、大陸すらも消し飛ばせるだろう愛の人、フアナ。

 

後衛職ゆえ近づかれれば不味かったり、多少機動力に問題が有ったりと明確な弱点こそあるが、その火力は随一。“人類”という枠組みであれば頂点に位置している。さらに魔法作成能力もあるため、時間さえあればすべての状況に対応できる上、時間や空間への適性も持つゆえ暴走すれば止められない人物である。

 

三人目。ダンジョンにより最上級職に到達し、親友とは別の道に進んだ少女、エレナ。

 

まだその力を実戦で使用したことは無いが……、ステータスを見る限り、その能力は規格外。すでに人類を大きく超えており、神ですらその腕力に押し切られる可能性を秘めている。さらに上記の二人に比べまだレベルが1のため、戦場で大きく伸びる可能性もある。機動力も高いため、敵対すれば苦戦では済まないだろう。

 

四人目。保護者1、オリアナ。

 

上記子供陣が着々と力を付けているため、保護者であり数少ないストッパーである彼女も、実力を高めている。私もう若くないんだが? とよく言っているようだが、すでに肉体の衰えは成長によって塗りつぶされている。また若返り以外の奥の手を手に入れたようで、その脅威度は上記三人を超えるだろう。

 

 

五人目。保護者2、ナディーン。

 

エレナの母であり、保護者枠の二人目。実は娘のエレナに腕力で負けたことをかなり気にしており、速度だけでなく能力の全体的な向上を図り、成功している。オリアナと共に子供の目を避けてヘイカのブートキャンプに参加しており、子供たちには秘密にしているが、オリアナと同じく奥の手によって三人を超える方法を手にしている。

 

 

……とまぁ、こんな感じで。

 

 

どう足掻いても勝ち筋なんかないのである!!!

 

というわけでクソ女神たちにバレないよう監視しているアユティナ様? 何かコメントをどうぞ。

 

 

【え。そうねぇ……。まぁ私もいるし、ヘイカも何かあれば出てくる。確かに強くはなってるみたいだけど十分今の私で瞬殺できるし、ヘイカもまぁまだいけるでしょ。だからまぁ、私が出したオーダーの『壁になってあげてね?』はちゃんと実行してるみたいだし。うん。それぐらい?】

 

 

 

 

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

「はーい、というわけで今いる貴族で緊急会議しまーす。」

 

「い、いや今すぐ国境線に向かって兵を送った方が良いのでは?」

 

 

ここは王宮にある会議室。

 

ちょうどさっき到着した伝令を回復させて詳しい情報を入手した私たちは、今王都にいる貴族や有力者を集めて対策会議を図っている。けれどそこに待ったをかけるのが、王の名代であり第二王子のフェルナンド。この場にいるマンティスも、それ以外の貴族もちょっと慌てているのを見るに、今回の“こと”がどれだけ予想外で大規模だってことが解るよね。

 

 

「あぁ、うん。それなんだけどね? フアナが……。」

 

「旦那様?」

 

「…………ウチの嫁さんが転移魔法を修めていてね? 秒で現地に到着することが出来るの。もちろん距離制限も回数制限もナシ。私一人でも神さえいなければ、どれだけ入り込まれていても押し返せるし……。今は慌てて変な行動を起こすよりも、落ち着いて話を進めるべきだよね、って。」

 

 

ここにいる数人というか、実力者5人は前線にいるべき人間ではあるが……。同時に王国の上層部でもある。上はどれだけ事態が切迫していても、落ち着いて常に最適な選択をし、指示を飛ばす必要があるのだ。確かにノロノロするのは駄目だけど、変に焦ってミスっちゃうのは違うしねー。

 

というわけでここで落ち着いて、対策を練っていくべきだ。

 

 

「それに、国境線の村や町にはもう避難指示を出してるんでしょ? 次の戦に備えて、その辺りはしっかり決めてたのが功を奏したね。防衛軍も、遅延戦闘に徹してるみたいだし。」

 

「……確かに、そうだな。王の代わりとしてここにいる私が、うろたえている場合ではない、か。感謝する、公爵。」

 

「いえいえ、どういたしまして~。」

 

 

他に貴族もいるせいか、私を使徒ではなく一人の部下。公爵として扱うフェルナンド。少し慣れていないというか、申し訳なさそうにしているけれど……。まぁ国の長やるつもりなら、それぐらい慣れてもらわないとね。

 

っと、周囲の動揺も薄れて来たし、ちょっとこの場にいる奴らの再確認もしておこうか。

 

まず、一番上は第二王子。本来は国王もこの場に来るべきなんだけど、現在彼は欠席中。実は心の療養のために、リッテルや第二王女イザベル、後原作主人公のウィレムと一緒に私の故郷に旅行に行っててね? お留守なのだ。情報が届くまで時間が掛かるだろうし……、最悪戦争が終わってから話が行くことになるかも。

 

 

(フェルナンドからすれば、王不在の中で問題の対応をしなきゃいけない。名代としての評価を左右するイベントだし、踏ん張ってもらわないとね。)

 

 

んで、貴族側。現在王国に存在する4公爵の内、3公爵がここに参加している。

 

まず私。ティアラちゃん。まだ家の名前を決めてないからティアラちゃん公爵で、一応婚約者というかすでに夫人を自称しているフアナと一緒に参加中。あ、お婆ちゃんのオリアナさんも一緒に来てるよ!

 

次はマンティスのおじじ。五大臣案件が無事終わって安心したのか、最近ちょっと老けてたけど有事となり、目の張りが元に戻っている。けどまぁ彼は文官タイプだし、今回の戦争にはあんま関係ないかな。

 

んで最後はエレナのとこ。オリアナさんに用があったのか、なんか前見た時よりもクソ強くなってる気がするナディーンさんと。その娘のエレナ。……エレナも確実に強くなってるよね? なんか『完全に使いこなせるまでティアラには秘密』って言われてたからどうなったのかは知らんけど……。まぁ強くなってるならヨシ!

 

 

(それで、欠席はあのロリコン。あれから2か月以上たってるんだけど……。未だ昏睡状態。私は正直助かってるんだけど、変態でも少し不安になってくるよね……。まぁ今は置いとくけど。)

 

 

それ以外に、一応王都に詰めてた貴族や、領土関連で王都に来ていた貴族たちが集まっている。想定外の有事に向けて、みんなで頑張って行こー! って感じだね。

 

そんなことを考えていると、私同様貴族たちを見つめていたフェルナンドがゆっくりと手を上げ、全員の視線を自身に集める。そして私に向かって、口を開いた。

 

 

「帝国による侵攻。結んだ条約を反故にして進んできたという点に、敵軍に教会の者が紛れていたという報から武門、そして宗教がらみの話だと考える。故に使徒……、いや公爵。キミに任せたいのだが、頼めるか?」

 

「もちもち。いいよ王子。んじゃまぁ軽~く、情報の共有からいこうか。伝令の情報だけだから、不明点も多いけどね?」

 

 

まずだが……、敵の総数は、軽く10万を超えていると思われる。以前の侵攻は12万ほどだったが、伝令が言うにはそれよりも多い、とのことだ。正直言って、これは“すべて正規兵”と考えれば、あり得ないことだ。だってティアラちゃん前回の戦争で滅茶苦茶殺したし、私以外も殺しまわっている。

 

なのでどう考えても10万の兵力を用意することは不可能なのだ。これはつまり……、民間人もぶち込んでいるに違いない。相手側の聖職者の姿もあったと言うことから、宗教で上手く言いくるめたか、帝国のクソ女神が勝負を決めに来たのかのどちらかだろう。

 

 

「これを考えると、そこまで脅威ではないね。もちろん一般兵からすれば恐怖でしかないだろうけど、ある程度鍛えてるなら問題なし。」

 

 

前世みたいな人の実力がある程度一定の場合であれば、宗教がらみの兵。死を恐れない兵って言うのは厄介極まりない。常に死力を発揮し、前へと進み敵を殺す兵だ。怖い以外の何物でもない。けれどこの世界では、鍛えていない民兵など雑兵以下。私達みたいな上位勢なら足止めにもならない。そして多数相手なら私の“射出”で全て片が付く。

 

つまりここで考えるべきは、“対強者”になってくるだろう。

 

 

「雑兵とかの相手は今頑張ってくれてる国教軍と、今王都にいる兵。後はこの場にいるみんなの私兵。それを転移で飛ばして対応。数はこっちである程度減らすから、まぁ楽できると思うよ。んで帝国側の強者だけど……。オリアナさん」

 

「前回逃がしちまったのは、『雷切』と『慈愛』だったな。まぁあのままの実力なら、苦労しねぇだろうが……。あっちの女神が絡んでくるなら、どうなるか解らねぇな。」

 

「だね。」

 

帝国との戦いで見せた、黒騎士の暴走。あれと同じことが出来るのなら、警戒するに越したことはない。黒騎士の死体が、帝国の女神に回収されていったのはこの眼で見ている。より強化して来るのが、普通。さらに王国の女神であったミサガナが大量の使徒を投入してきたように、ゴジケサがそれをしてきてもおかしくないだろう。

 

みんなあの時に比べれば大分強くなったとはいえ……。警戒するに越したことはない。

 

 

「とりあえず……。フアナの広域魔法の準備が終わるまでは、私が全体への攻撃。帝国十将、いやもう二将か。オリアナさんもナディーンさんも戦闘経験があるんだよね?」

 

「あぁ。」

 

「任せてもらって大丈夫だぞ。」

 

「なら二人にそれを担当してもらって、エレナが遊撃。んでフアナの準備が終わったら、私も遊撃に入るって感じで行こうか。もしかしたらどこかで女神が出てくるかもしれないけど……。その時は全員で叩いて終わり。筋書きとしてはそういう感じで大丈夫?」

 

 

軽く視線をまわしてみるが……、反論はなさそうな。

 

 

「OK、じゃあこれで行こう。みんなすぐに準備お願いね? フアナは転移の準備ヨロ。」

 

 

さぁて。ちょっと予定よりは早いけれど……。女神討伐としゃれこみましょうか!

 






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