紲星重工の奮闘   作:島田愛里寿

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プロローグ

A.S.122

 

 

数多の企業が宇宙へ進出し、巨大な経済圏を構築する時代。

 

 

 

 

紲星重工

 

 

この名前を持つ企業が地球に存在していた。

 

紲星重工は創立から五年ほどしか経過していないにも関わらず、地球圏では一~二位を争うほどの急成長を果たしている。

 

 

おまけに社長は齢十五歳である。つまり、十歳の時に会社の社長に就任してここまで急拡大させたのだ。

 

 

その手腕には多くのスペーシアン系経営者が注目していたが同時に嫌っていた。

 

 

 

なんせ彼女はスペーシアンから見れば異常なほどにアーシアンに友好的かつ同じ人として扱うのだ。

 

 

 

地球圏 地球 日本 旧東京 現紲星重工本社 社長室

 

 

「ふぁ~。もぐもぐ♪」

 

そんな紲星重工社長室では社長であるあかりがあくびをしつつハンバーガーを食べながら新製品の提言書や報告書を読んで決裁書にサインをしていた。

 

 

「相変わらずですね…。あなたは」

 

 

「あ、ゆかりさん!おはようございます!」

 

 

そんな彼女にあきれつつもいつものことかとあきらめながら紫色の髪をした少女が入ってきた。

 

 

あかりの右腕と称されている結月ゆかりである。

 

 

「相も変わらず食事に細かいくせに場所を構わずに食べる癖、なんとかしたほうがいいですよ?そんなんだから他社の経営陣から疎まれるんです」

 

 

「ふん!あんな宇宙にいることが優秀さの表れなんてほざいている大馬鹿共の評価なんてどうでもいいですよ~だ!」

 

 

実のところ、彼女紲星あかりは親が二人ともスペーシアンの純スペーシアンなのだがあかり自身しか知らない秘密が関係していてスペーシアンにありがちなアーシアン蔑視思想は持ち合わせていない。

 

 

「はぁ~、‥‥まぁそれがあなたらしさでもありますけどね。あ、そうそう。第四十五工場の製造ラインにトラブルが発生したとかでモビルワーカー一型の生産に少々遅れが…」

 

 

「そうですか…。う~ん、なら第五十八工場と第二十三工場に生産ノルマを少し増やしてもらいましょうか。にしてもどんだけあれ注文が来てるんですかね?もう総生産数二百万機超えてますよね?」

 

 

・モビルワーカー一型*1

 

紲星重工一の売れ筋商品。輸送型として車体後部が軽トラのように荷台となっているのが標準型となっているがほかにも戦闘型やクレーン型、宇宙戦用型、宇宙作業用型等様々な型が存在している多用途汎用車両。実は紲星重工においてはじめてすべて自社で設計・生産された記念すべき車両なのだが原付バイクのスーパーカブのごとく現場から愛され求められ続けている関係でたった五年で総生産数二百万機を超えていたのだ。しかもまだ注文が相次いでいる。

 

<武装型装備>

 

・30㎜機関砲×2もしくは多連装ミサイルポット×2

 

 

とはいえ基本MSには勝てないので裏方要員として扱われているのだが水素エンジンで稼働するので水さえあれば基本運用できるという利便性と現在まともな水がない地域もあるという理由から電池式のタイプも用意していたという多様性も相まってこれほどの生産が行われているのだが‥‥。

 

 

「それにジムB型もすごい売れ行きです」

 

「いやどうしましょうかね?ほんと」

 

と、そんな自社の自慢の商品兼頭を抱える問題に二人が悩んでいると…

 

 

「お待たせしました~♪」

 

 

と黄緑の服に緑色のヘッドホンを付けた見た目仕事ができそうなOL風な女性が入ってきた。

 

彼女は京町セイカである。あかりの左腕である。

 

 

「新型モビルワーカーの試作ができました!そして宇宙用のモビルポットの開発も終了しましたよ!」

 

 

「‥‥相変わらずタイミングがいいんだが悪いんだが」はぁ~

 

 

「ええ!?今回は何もしてませんよ!!」

 

 

「ってことは何かやらかした自覚あるんじゃないですか」

 

 

なお彼女、あかりの両親が経営する大会社の社員だったのだがかなりのドジっ子で本社開発部にいた時にさんざんやらかして紆余曲折あってあかりのそばにいる人物なのだ。

 

経歴を知っていたらゆかりじゃなくても警戒する。

 

 

セイカとゆかりが言い合っている最中‥‥。

 

 

「大変やで!あかり!!」

 

 

「お姉ちゃん!社長ってつけて呼んで!?」

 

 

赤髪と青髪の姉妹が飛び込んできた。彼女たちは琴葉姉妹である。

 

 

「またアーシアン系の就職希望者や!今度は一万を超えとるで!!」

 

 

「えっと…難民キャンプ管理局からも同じ報告です…。こっちは五千を超えてます」(-_-;)

 

 

「‥‥え、えっと。どうしようか?」

 

 

この報告にはあかりはおろか言い合っていたセイカとゆかりも唖然としていた。

 

 

これが紲星重工最大の問題。他社では考えられないほどにアーシアンに優しい経営方針の関係で他社の管理地区から逃げ出してまで就職を希望したり紲星重工管理地区の街に住みたいというアーシアン系の人々が後を絶たないのだ。

 

 

おかげで管轄域がすぐに定員オーバーとなってしまい、宇宙議会連合に頭を下げまくって管轄域を拡大させて工場なども増設して何とかなったと思ったらすぐにまた定員オーバーになるという悪循環に紲星重工は陥っているのだ。

 

 

しかも元々の管轄域は旧東京エリアのみだったのにいつの間にか関東圏一帯にまで広がり、つい先日何とか頭を下げまくって旧東北一帯と中部地方一帯を管轄域にしてもらったのにこの調子ではまた定員オーバーになってしまいそのうち旧日本エリア全域を管轄域にしなくてはならなくなってしまう。

 

 

「と、とにかく一応就職センターに向かわせてあげて?下手に断ると暴動になっちゃいそうだし…」

 

 

「居住地でも一応地域ごとに分けさせましょう。以前のように揉め事を起こされてはかないません」

 

 

「そうだね。セイカさんお願いします」

 

 

「はっはい!!」

 

 

そうして各部門ごとに慌てて対処に当たっていた矢先…。

 

 

 

「あの~、あかり社長。ちょっとよろしいでしょうか?」

 

社長室にある男性社員が入ってきて…

 

「ん?どうしたんですか??」

 

 

「ご実家から手紙です。どうもあかり社長がメールを着信拒否にしているので手紙で送って来たのかと…」

 

 

「ああ、そうでしたね。ご苦労様です、でなになに…?」

 

 

そこには…

 

 

 

『最近好き勝手やってるせいで本社の威厳が地に落ちてるから再勉強もかねてアスティカシア高等専門学園への入学しろ。手続きなんかは済ましておいたから異論は認めん』

 

 

とあった。

 

 

 

「はぁぁぁぁ!?」

 

 

あかりとしてはこのくそ忙しいときに面倒ごとしかおこさない親とは絶縁しようかとも思っていたのだが勝手に手続きを済まされてしまっては行くしかない。

 

 

とにかく向こうで学業と社長業務の兼任が決定した瞬間であった。

 

 

 

これは水星の魔女の世界でスペーシアンでありながらアーシアンに寄り添う思想の元、孤軍奮闘する一人の少女の物語である。

*1
見た目はCGS/鉄華団モビルワーカー

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