TS魔法少女ミスティレインボー   作:羽黒楓

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第十二話 助けに行こうぜ

 ココはそれを見て猫耳をピクピクさせながら、

 

「おほほほほほほっ! おほほほほほほっ! ほら、ほら、ほらねっ! 次はあなたの番ですわ!! 悪辣な宿屋の主人! よくも! よくも! よくも!」

「ま、待て……」

「天使様は待ちませんわ! そぉれ☆! 指☆! ぽっきん☆!」

 

 バキバキバキィ!!!

 宿屋の主人の右指全部が逆方向に曲がる。ムチが地面に落ちる。

 

「おおおおおおぉぉおお!?」

 

 自分の指を信じられない、というような顔で見る宿屋の主人。

 いやまじでこれ、なにが起こっているんだ?

 

「くそっ! なにが天使だ、奇跡だ! ただの魔術だろ? 来い、わがモンスターよ!」

 

 若い男が叫んだ。

 すると、建物の陰から巨大な蛇が姿を現した。

 

「テイマーか! モンスターの使役の術です。やっかいですよ」

 

 アマリアが教えてくれる。

 だがココのいきおいは止まらない。

 

「おっほほほほほほ! 蛇のモンスターがどうしたというのですの、そぉれ、指……あれ、蛇には指がありませんわね……」

 

 ココのいきおいが止まった。

 なにがなんだかわからんが、いいよ、俺がやってやる、こんな蛇のモンスターなんて一撃だ。

 俺はレインボークリスタルロッドを振りかぶり、叫んだ。

 

「ラブリーハートスパーク! 私の心の輝きでぇ~! あなたを救っちゃう! レインボーピュアシャワー!!」

 

 ロッドを振り下ろすと、しゅわり~ん! という音ともに巨大な蛇のモンスターが光に包まれ、その光が消えると蛇は地面をのたうち回るミミズに変わっていた。

 

「な……っ! 貴様!」

 

 剣を抜いた剣士らしき男が俺に襲い掛かってくる。

 だが、魔法少女は格闘戦もできるのだ。

 俺の身体は格闘術とか習ったこともないのに剣士が繰り出す攻撃をいとも簡単にかわしていく。

 そして剣士の懐に入ると、

 

「たぁぁぁぁぁっ!」

 

 とその腹にパンチを数十発叩き込んだ。

 

「うぐぅ……」

 

 うめいて倒れる剣士。

 向こうの方で、魔術師らしき男が手の平を俺に向けて何か魔術を放とうとしているが。

 

「げぼぼぼぼぼぉ~~~~!!」

 

 アマリアが口から水流を吐き出した。

 手加減はしていたみたいでゾルンバードみたいに粉みじんになる、ってことはなかったが、数メートルはふっとばされて馬小屋の柱にたたきつけられ、そのまま失神した。

 指を折られた宿屋の主人と剣士、そして失神している魔術師、テイマーともう一人の剣士は戦意喪失してその場にへたりこんでいる。

 ココは俺の足元にひざまずくと、

 

「おほほほほほっ! 天使様のお力ですわぁ! 天使様……天使様! お待ちもうしあげておりました! どんなつらいことがあってもきっと神様が天使様をおつかわしになると、そう信じていたのです! 天使様、天使様……」

 

 そして俺の土で汚れたブーツに口づけをするココ。

 

「んちゅ、んちゅう……」

 

 もうこのまま俺のブーツをなめまわしそうな激しさでキスしまくってる。猫耳がピクピクしているのが見えた。長いしっぽを嬉しそうにうねうねと動かしている。

 

「おい、もうやめろ……」

「あ、はい……。失礼いたしましたわ、天使様」

 

 俺は宿屋の主人たちを見る。

 

「で、どういうことだ……?」

「……す、すみません、女ばかりだったんでつい……」

 

 主人が恐怖で震える声で言う。

 そこにココが口を挟んだ。

 

「満室だというのは嘘ですわ! こんな辺鄙な村の宿がそうそう満室になどならないですわ! 女性だけの旅人がきたらこうして人通りのまったくない馬小屋に泊まらせて襲い、縛り上げてそのまま馬で魔族のいる山まで運ぶのですわ! 宿の酒場には朝まで誰かしら飲んでいることがありますから、宿に泊まらせてそれをやると人目につきますので、わざと馬小屋に泊まらせるのですわ!」

 

「魔族ってのはなんだ?」

 

「あら、さすが聖なる天使様、卑しき魔族についてご存じないのですね。人間と意思疎通のできるモンスターをそう呼んでいるのですわ。いわゆるオークやコボルドやゴブリンどもですわ、あいつらは人間とは相いれない価値観を持って山の奥に集団で住んでいるのですわ。ここの山にいるのはオークです、豚の化け物で人間の女の肉を好んで食べるのです……。昨日も同じ手で女性ばかりのグループを山に運んでましたわ……。私は、私は……もう我慢できなくて……」

 

 それで危険を俺たちに教えてくれたっていうことか。

 奴隷なのにお嬢様口調とか、正直どうかしている娘だと思っていたけど、芯はしっかりしている子のようだ。

 っていうか、昨日か……。

 

「もう、間に合わないかな……?」

 

 俺が呟くと、リリーが聞く。

 

「なにがじゃー?」

「昨日さらわれたという女性のグループだ。もう、オークどもに食われちまっているか?」

 

 そこにアマリアが答える。

 

「いいえ、やつらの習性として、人間を捕獲してからしばらく肥育します。そしてお祭りとか結婚とかのイベントのときにそれをしめて食べるのです」

「じゃあまだ……?」

「はい、生きている可能性はありますね」

 

 しかし、人間を食うモンスターか……。

 それも、知能が高くてコミュニケーションまで可能?

 

「なんでそんなやつらのさばらせてんだ?」

「王国は広く、深い森や高い山のすみずみまで兵を派遣することはできません。たくさんいる魔獣や魔族を殲滅するなど、とてもとても……。もちろん、要請に応じて中央の兵が派遣されることもありますが、基本的には地方の自衛にまかせているというのが現状です。軍勢をなしてこちらの村へ襲ってくる、ということもなくはないですが多くはありませんし、基本的には年に数度、旅人などを襲ってはさらっていくのですが、国家として極めて重大な脅威、とまではいかないのが現実ですね。地方によってはほぼ撲滅に成功した地方もあるにはありますが、この辺りは貴族荘園のような場所で、派兵して魔獣を滅ぼすほどのやる気も実力も領主にはないのでしょうね」

 

 なるほどね。

 まあそりゃなあ。

 日本だって畑の作物を食ったりする鹿とかイノシシとかの害獣いるけど、予算も足りないし全然駆除しきれてなかったりする。

 猟師って基本それだけでは食えないほどの収入しかなくて、熊とか駆除しきれないから地方自治体が銃弾の費用を負担するとかいうニュースを見たこともあるしなあ。

 それと同じようなもんか、人間の被害がでてるけど、時代的な人権意識からするとそう重大な事件でもないのかもしれない。

 とにかくだ。

 

「じゃあ、おそらく生きているんだな? ……助けに行こうぜ」

 

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