コピー本として出したものの1作です。
これを含む3本収録したコピー本でした。
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そこはただ、真っ暗だった。
手を伸ばすと、闇に融けてしまう程の暗闇。
目を開けて見ても、黒で塗りつぶされていた。
そんな空間の中、耳を澄ますと、しくしくと泣いている声が聞こえる。
私以外に、誰かいる。
でも、誰……?
なんだか聞き覚えのある声なのだけど……
私は声の主を探す為に、右も左も前も後ろもわからない、黒の中をさ迷い始めた。
トントントン、と、乾いた音が響く。
(あれ……今のは……?)
私はここで、暗闇は夢だと気が付いた。
気が付いたそこには、色があった。
いつもの私の部屋。
しばらくボーッと白い天井を見ていると、再度、夢ではなく、トントントン、と言うノックの乾いた音が鳴る。
「リョウコ、起きてるかい?」
「ゆ、雪代さん!?」
私・東雲リョウコは、扉の向こうに居るのであろう声の主・雪代マリが、私の部屋を訪ねようとしていることに慌てる。
「ちょ、ちょっと待って! まだ起きたばかりで……」
「いや、別にいいよ。イミナが朝食を作ってくれたから、キッチンに置いてある。後から食べると良い」
「あ、皆はもう食べたんですか?」
私のその問いに、雪代さんはしばし黙っていたが、答える。
「今日から、レイドオブリを倒す為に、皆出発して行ったよ」
え!?、と思わず私は声を漏らす。
私の所属している、第〇二チームーーココナッツ・ベガは、今日から始まるレイドオブリ戦のスペシャリストとして名高い。
そんな重要な戦いの時に限って、私は寝坊してしまったのか、と、私はベッドから飛び起き、枕元に置いてある、パトリという機器と、小さなメモカという物を手に取る。
「すみません! 今から急いで準備し……」
「リョウコ」
扉の向こう側から、いつも落ち着いたトーンでしか喋らない雪代さんが、少し強い声音で、私の言葉を制した。
私は、その声に固まる。
その後、雪代さんのため息が聞こえたかと思うと
「私らは、いいんだよ……」
と、寂しげなトーンで続いた。
「え、いいって……」
「私らは、アシストにも入れて貰えない……足手まといになるって事だ。今回、留守番組だっただろう?」
手に握ったメモカを見て私は、あぁ、そうだった、と思い出した。
そのメモカは……ノーマルメモカだったことを。
今までは、ココナッツ・ベガとしか動いていなかった私達。
しかし、ついこの間、私達の目の前に突如、猫ちゃんが現れた。
この猫ちゃんが、隊長さん。
それまで、ココナッツ・ベガとして行動をしていたけれど、この隊長さんが、より強いチーム……つまり、選抜チームを作って、今の私達は活動をしている。
選抜チームに入るためには、強いメモカという物が必要となる。
今、隊長さん始め、ティエラ管理官やモシュネちゃんという方々を筆頭に、メモカを探してくれて、私達を強くしてくれてる。
ただ、私の持っているメモカは、ノーマル……選抜チームに入れて貰えない強さの物だけなのです。
「そう、だったね……いつもの癖で、レイドオブリ退治に行こうと思っちゃって……私バカだねぇ」
あはは、と私は笑っていると、雪代さんが
「扉、開けて良い?」
と、聞いてきた。
私がそれを許可すると、白いジャージ姿の雪代さんがそこにいる。
「ご飯を食べてからで良いんだけど、一緒に特訓しない?」
雪代さんも、実はノーマルメモカしか持っていない。
つまり、私と同じ留守番組。
「特訓したと言って、強くなる訳じゃないけど……」
雪代さんは、フッ、と軽く笑って見せた。
私も、えへへ、と今度は笑う。
「ですよね、同じチームのハヅキさんや居吹さんやアコちんが必死に戦っている中、のほほんと過ごせないですよね」
私はメモカを発動させ、青いジャージ姿になって見せた。
「まだお腹が空いてないので、ご飯は後からいただきます。雪代さん、特訓、しましょ?」
雪代さんは、やれやれ、と言った具合に、今度は笑った。