普通でいい   作:喜村幸輝

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二話

 私はまた、真っ暗な世界に居た。

 でも、さっきとは違う。

 目を凝らせば、数メートル先くらいは見えた。

 

 ……あ、あそこに、何かいる……

 

 先程から、しくしくと泣いているのは、あそこから聞こえてくるようだ。

 ゆっくりと、泣いている所にまで、私は近づく。

 きっと暗くて怖がっているのだろう。

 私は声をかけようと、その子の肩に手を置く。

 

「大丈夫?」

 

 そう声をかけようとしたのに、その声は私の上の方から聞こえた。

 え?、と思い、私は声がした上の方を見ようと、顔をあげた。

 

 

 

 

 あげたと同時に、また辺りに色が戻る。

 

「リョウコ、大丈夫か?」

 

 私は固まっていた。

 この状況を把握するために。

 今、私は、雪代さんに膝枕をされています。

 逆光で表情はよくわからないけど、雪代さんの顔がそこにある。

 

 私が目をパチクリさせていると、

「あぁ、よかった」

と、安堵した雪代さんの声が聞こえた。

 

「わ、私……なんで寝て……!」

 

 慌てて飛び起きようとした時、背中に鈍い痛みが走り、思わず、うっ、と声を漏らしてしまい、半起き状態でまたも私は固まった。

 

「無理はしない方が良い。もうしばらく、このままで大丈夫だ」

 

 半分起きたままの私の背中を、雪代さんが擦ってくれる。

 私は赤面しつつ、もう一度、雪代さんの膝の上に頭を戻した。

 

「特訓中に、私の爆撃をもろにくらって吹っ飛んで、背中から落ちたんだよ」

 

 記憶はないけれど、どうやらこの痛みと言い、そうらしい。

 

「少し落ち着いたら、今日のところは、ここまでにして部屋に戻って……」

「あー! 見つけたモシュよー!」

 

 雪代さんが話している途中で、遠くの方から円盤型の物体が飛んできているのが見えた。それも、物凄いスピードで。

 

「こんな所にいたモシュねー!」

 

 円盤は私達の前で、キキーッ、と止まり、人型へと変形して喋った。

 

「モシュネちゃん? どうしたの?」

「どうしたもこうしたも……アレ? そっちこそ、どうして寝てるモシュか?」

 

 私は、あはは、と苦笑いした。

 

「それは……気にするな。それより、そんなに慌ててどうしたんだい? 何か用があるんだろ?」

「あぁ! そうモシュた!」

と、モシュネちゃんは、ハッとした様子で右手を突き上げ

「じゃーん! これをみるモシュー!」

 

 モシュネちゃんが掲げたその右手には、キラリと虹色に光る何かがあった。

 

「ほらほら、イフメモカモシュよ~」

 

 ぐふふ、と怪しく笑いながら、モシュネちゃんは言う。

 

「これで戦力アップ間違いないモシュ! よかったモシュね、リョウコちゃん!」

 

 しばらくの沈黙の後、

「え!? 私!? 私のなの!?」

と大声を出してしまった。

 いきなりの大声で、雪代さんの膝が、ビクッとなったのがわかる。

 

「マリさんかリョウコちゃんのじゃなきゃ、ここまで来ないモシュよ。ほら、セットしてみるモシュ!」

 

 私は、ゆっくりと起き上がる。

 雪代さんは、大丈夫かい?、と聞くけれど、私のアルティメットレア。

 それも、イフと言う物を目の当たりにしたら、その痛みは忘れられるものだった。

 セットすると、すぐに衣装が変わり、白を貴重とした、なんとも宇宙戦士のような、サイバーチックな服装になった。

 武器を手に取ってみると、今までの銃がまるで玩具だったのだろうか、と言う程の天と地の差。

 ずっしりと重量感があり、持ち上げるのもやっと。

 

「その武器で、試しにあそこにいる訓練用・サンドバッグオブリを連射してみると良いモシュよ!」

 

 モシュネちゃんは、サンドバッグに模しているオブリを見てやる。

 

「よーし! 私、やっちゃうよ!」

 

 ノリノリで私は銃を持ち直し、右手の銃の引き金をひいた。

 パンッ、と一発打つ度に、腕が引きちぎられるのではないか、と言う程の痛みと反動があった。

 その勢いが強烈すぎて、次に準備していた左手の銃の引き金がひけない。

 

「んー? どうしたモシュかー?」

 

 動かなくなった私を見て、モシュネちゃんは声をかけた。

 私は、ハッとして、モシュネちゃんと近くにいる雪代さんに目をやる。

 

「う、ううん、なんでもない……あまりにも凄すぎて、びっくりしちゃっただけ!」

「そうモシュか。ならよかったモシュ」

 

 モシュネちゃんは、ふわふわと宙に浮いたまま、腕を組み続ける。

 

「せっかく強いメモカをみつけても、それが扱えなかったら、宝の持ち腐れになるモシュからねー。隊長さんも、がっかりしちゃうモシュ」

 

 何かが、私の中に突き刺さった。

 大好きな隊長さんを、がっかりさせちゃいけない。

ましてや、イフメモカと言う強力な代物を、持ち腐れできない。

 私は、ギュッと銃を握りしめる。

 

「よーし、行くよー!」

 

 私は、止まってしまった銃を交互に打つ動作ーーつまり、連射をしてみる。

 反動で吹っ飛んだ腕を元の位置に直して、ましてや、今までとは別格の重い銃をきちんと標的めがけて放つなど、今の私には難しくって、的のオブリに中々当たらない。ただの乱射。

 

「これは……まだまだ訓練が必要モシュね……そのメモカは、まぁ、預けておくモシュよ」

 

 私は、ゼェハァと息をあげていると、モシュネちゃんは寂しそうにそう言った。

 

「ま、待って! モシュネちゃん!」

 

 私は、乱れた呼吸を整えるようにして、その場を立ち去ろうとしているモシュネちゃんを引き留める。

 

「何モシュかー?」

「ス、スタメンは無理にしても……今日から始まるレイド戦で、私、アシストとかには入れないかな……?」

「え?」

「え?」

 

 モシュネちゃんと雪代さんが、ほぼ同時に声を溢した。

 雪代さんに関しては、目を丸くしている。

 

「せっかくこんなに強いメモカを手に入れたんだもの。アタックだって、それなりに上がってると思うんだ。それに……それに……」

 

 ちょっとでも、隊長さんの近くにいたいから。

 いつも気にしてくれる隊長さんの側にいて、力になりたいから……

 

「それにね、隊長さん、私に五つもアビリティをつけてくれてるんだよ?」

 

 モシュネちゃんは、腕組のまま、しばらく地面に目を落としていた。

 

「確かに、隊長さんがリョウコちゃんがお気に入りなのはわかってるモシュ……」

それから私に向き直る

「こればっかりは、モシュネじゃなくて、隊長さんが決めることモシュから、一度隊長さんの所に行ってみるモシュか?」

 

 私は、自分でもわかるくらい、表情がパァッと明るくなる。

 

「うん! 私、行く!」

「お、おい、リョウコ……」

雪代さんは困った顔で声をかける

「大丈夫なのか? どうみても攻撃中のリョウコの顔、辛そうだったよ」

 

 う、と私は一拍おいてしまったが、にこっと笑って見せる。

 

「平気平気! 心配しなくて大丈夫だよ! 数をこなせば馴染むと思うし!」

 

 私は雪代さんに手を振って、訓練場を後にする。

 うん、大丈夫、これで私はフツーから脱却できるし、隊長さんからも一目置いて貰えるし。

 何回もこのメモカを使って戦えば馴れるはずだし……うん、私は大丈夫。

 そう言い聞かせて。

 

 

 

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