私はまた、真っ暗な世界に居た。
でも、さっきとは違う。
目を凝らせば、数メートル先くらいは見えた。
……あ、あそこに、何かいる……
先程から、しくしくと泣いているのは、あそこから聞こえてくるようだ。
ゆっくりと、泣いている所にまで、私は近づく。
きっと暗くて怖がっているのだろう。
私は声をかけようと、その子の肩に手を置く。
「大丈夫?」
そう声をかけようとしたのに、その声は私の上の方から聞こえた。
え?、と思い、私は声がした上の方を見ようと、顔をあげた。
あげたと同時に、また辺りに色が戻る。
「リョウコ、大丈夫か?」
私は固まっていた。
この状況を把握するために。
今、私は、雪代さんに膝枕をされています。
逆光で表情はよくわからないけど、雪代さんの顔がそこにある。
私が目をパチクリさせていると、
「あぁ、よかった」
と、安堵した雪代さんの声が聞こえた。
「わ、私……なんで寝て……!」
慌てて飛び起きようとした時、背中に鈍い痛みが走り、思わず、うっ、と声を漏らしてしまい、半起き状態でまたも私は固まった。
「無理はしない方が良い。もうしばらく、このままで大丈夫だ」
半分起きたままの私の背中を、雪代さんが擦ってくれる。
私は赤面しつつ、もう一度、雪代さんの膝の上に頭を戻した。
「特訓中に、私の爆撃をもろにくらって吹っ飛んで、背中から落ちたんだよ」
記憶はないけれど、どうやらこの痛みと言い、そうらしい。
「少し落ち着いたら、今日のところは、ここまでにして部屋に戻って……」
「あー! 見つけたモシュよー!」
雪代さんが話している途中で、遠くの方から円盤型の物体が飛んできているのが見えた。それも、物凄いスピードで。
「こんな所にいたモシュねー!」
円盤は私達の前で、キキーッ、と止まり、人型へと変形して喋った。
「モシュネちゃん? どうしたの?」
「どうしたもこうしたも……アレ? そっちこそ、どうして寝てるモシュか?」
私は、あはは、と苦笑いした。
「それは……気にするな。それより、そんなに慌ててどうしたんだい? 何か用があるんだろ?」
「あぁ! そうモシュた!」
と、モシュネちゃんは、ハッとした様子で右手を突き上げ
「じゃーん! これをみるモシュー!」
モシュネちゃんが掲げたその右手には、キラリと虹色に光る何かがあった。
「ほらほら、イフメモカモシュよ~」
ぐふふ、と怪しく笑いながら、モシュネちゃんは言う。
「これで戦力アップ間違いないモシュ! よかったモシュね、リョウコちゃん!」
しばらくの沈黙の後、
「え!? 私!? 私のなの!?」
と大声を出してしまった。
いきなりの大声で、雪代さんの膝が、ビクッとなったのがわかる。
「マリさんかリョウコちゃんのじゃなきゃ、ここまで来ないモシュよ。ほら、セットしてみるモシュ!」
私は、ゆっくりと起き上がる。
雪代さんは、大丈夫かい?、と聞くけれど、私のアルティメットレア。
それも、イフと言う物を目の当たりにしたら、その痛みは忘れられるものだった。
セットすると、すぐに衣装が変わり、白を貴重とした、なんとも宇宙戦士のような、サイバーチックな服装になった。
武器を手に取ってみると、今までの銃がまるで玩具だったのだろうか、と言う程の天と地の差。
ずっしりと重量感があり、持ち上げるのもやっと。
「その武器で、試しにあそこにいる訓練用・サンドバッグオブリを連射してみると良いモシュよ!」
モシュネちゃんは、サンドバッグに模しているオブリを見てやる。
「よーし! 私、やっちゃうよ!」
ノリノリで私は銃を持ち直し、右手の銃の引き金をひいた。
パンッ、と一発打つ度に、腕が引きちぎられるのではないか、と言う程の痛みと反動があった。
その勢いが強烈すぎて、次に準備していた左手の銃の引き金がひけない。
「んー? どうしたモシュかー?」
動かなくなった私を見て、モシュネちゃんは声をかけた。
私は、ハッとして、モシュネちゃんと近くにいる雪代さんに目をやる。
「う、ううん、なんでもない……あまりにも凄すぎて、びっくりしちゃっただけ!」
「そうモシュか。ならよかったモシュ」
モシュネちゃんは、ふわふわと宙に浮いたまま、腕を組み続ける。
「せっかく強いメモカをみつけても、それが扱えなかったら、宝の持ち腐れになるモシュからねー。隊長さんも、がっかりしちゃうモシュ」
何かが、私の中に突き刺さった。
大好きな隊長さんを、がっかりさせちゃいけない。
ましてや、イフメモカと言う強力な代物を、持ち腐れできない。
私は、ギュッと銃を握りしめる。
「よーし、行くよー!」
私は、止まってしまった銃を交互に打つ動作ーーつまり、連射をしてみる。
反動で吹っ飛んだ腕を元の位置に直して、ましてや、今までとは別格の重い銃をきちんと標的めがけて放つなど、今の私には難しくって、的のオブリに中々当たらない。ただの乱射。
「これは……まだまだ訓練が必要モシュね……そのメモカは、まぁ、預けておくモシュよ」
私は、ゼェハァと息をあげていると、モシュネちゃんは寂しそうにそう言った。
「ま、待って! モシュネちゃん!」
私は、乱れた呼吸を整えるようにして、その場を立ち去ろうとしているモシュネちゃんを引き留める。
「何モシュかー?」
「ス、スタメンは無理にしても……今日から始まるレイド戦で、私、アシストとかには入れないかな……?」
「え?」
「え?」
モシュネちゃんと雪代さんが、ほぼ同時に声を溢した。
雪代さんに関しては、目を丸くしている。
「せっかくこんなに強いメモカを手に入れたんだもの。アタックだって、それなりに上がってると思うんだ。それに……それに……」
ちょっとでも、隊長さんの近くにいたいから。
いつも気にしてくれる隊長さんの側にいて、力になりたいから……
「それにね、隊長さん、私に五つもアビリティをつけてくれてるんだよ?」
モシュネちゃんは、腕組のまま、しばらく地面に目を落としていた。
「確かに、隊長さんがリョウコちゃんがお気に入りなのはわかってるモシュ……」
それから私に向き直る
「こればっかりは、モシュネじゃなくて、隊長さんが決めることモシュから、一度隊長さんの所に行ってみるモシュか?」
私は、自分でもわかるくらい、表情がパァッと明るくなる。
「うん! 私、行く!」
「お、おい、リョウコ……」
雪代さんは困った顔で声をかける
「大丈夫なのか? どうみても攻撃中のリョウコの顔、辛そうだったよ」
う、と私は一拍おいてしまったが、にこっと笑って見せる。
「平気平気! 心配しなくて大丈夫だよ! 数をこなせば馴染むと思うし!」
私は雪代さんに手を振って、訓練場を後にする。
うん、大丈夫、これで私はフツーから脱却できるし、隊長さんからも一目置いて貰えるし。
何回もこのメモカを使って戦えば馴れるはずだし……うん、私は大丈夫。
そう言い聞かせて。