VRMMOなら友達ができると錯覚していた奴   作:不知火勇翔

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喫茶『男の花園』

 ネットで軽く検索したところ、街区の隅にある喫茶『男の花園』という店はあまりの過疎り度のあまり店主や客が全員顔見知りらしく、謎の連帯感があって非常に良き隣人が得られるらしい。

 

 

 この店なら陰キャな僕でも優しく接してくれるのでは?

 

 

 そう思った僕は、ログインしてすぐにその店の分厚い扉を叩いた。

 

 

「は~い」

 

 

 中から陽気なお姉さんの声が聞こえてきたので、扉を開けて店内に入ろうとして、・・・・そこで僕は足を止めた。というか止めるしかなかった。

 

 

 さて。皆さんは本物のオカマというものを自分の目で見たことがあるだろうか。

 オカマという存在を知識だけ知っていて、知ったつもりになっていないだろうか。

 ここで問いたいのは、そう。

 

 

 オカマとは何か。

 

 

「うぇ、うぁえあ・・・・・・・・」

「いらっしゃい。座るならカウンターだけにしてね。テーブルは全部予約済みだから」

 

 

 店内は『未知』で一杯だった。

 まず視界に入るのはピンク色の照明、そしてケバい化粧をしたガタイの良い男達。次に目に入るのはピンクで統一されたインテリアの数々。そして壁にはムサい男達の集合写真、いや集合体のポスター。

 

 

 初めて見る、初めて感じる『未知』。

 知識と現実が、僕の中でようやっと融合した。

 

 

「?何してるの?早く座りなさいよ」

 

 

 店主さん、なのだろうか。カウンターの奥に立ってカクテルをシャカシャカしていたオッサンAが、扉を開けたまま固まる僕に声をかけてきた。

 

 

「え、いや、その・・・・」

 

 

「ここに流れ着く野郎ってのは一様に何か抱えてんのよ。アンタもなんでしょ?話してみなさい」

 

 

「その・・・・あの・・・・」

 

 

 結構です、という言葉は口がつっかえて出てこなかった。なんだか厚意を無碍にするようで気が引けるのもあるが、何よりも未知の存在に対する好奇心が僕の中で大騒ぎしていた。

 

 

「ここはバーであり喫茶。アンタみたいなのが休める場所でなきゃ存在する価値がない。そういう所よ。早く入りなさい」

 

 

 結局僕はその言葉を断れず、渋々ながらも店内に入るしかなかった。

 

 

★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆

 

 

 

 私は弟が大好きだ。

 

 

 だから可愛い弟を性的な目で見ていた義父には本気で殺意を覚えた。弟に色目を使う同級生には裏で折檻した。弟が怪我をした時には自分の無能を呪った。

 

 

 弟がニコッと笑っただけで私は頭がフニャフニャするし、弟と話してるだけで私は全てがムクワれた気がする。

 

 

 それぐらい好きだからこそ、私は変な店に入って行く弟をただ黙って見ていることしかできなかった。

 

 

「え・・・・・・・・え・・・・・・・・??」

 

 

 店の入口に立てかけられた看板には、『男の花園』という文字。

 

 

「えぇええ・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

 

 お姉ちゃん、流石にその性癖だけは許せないんだけど。

 勘違い、だよね?勘違いだよね?勘違いじゃなかったら私は本気で女を教え込・・・・・・・・ゲフンゲフン。

 

 

 とにかくこのままでは沙耶が染まってしまう。このまま沙耶が男色にのめり込んで『私を捨て』・・・・・・・。

 

 

 

「あの、V-tuberの『内野ルナ』さんですよね?」

 

 

 

 ・・・・・・・・私は一秒でも早く私がお姉ちゃんだと沙耶に気づいてもらうために、アバターはV-tuberのガワをそのまま採用した。それがまさか『こんなカタチ』で障害となるとは・・・・。

 

 

「えっと、その・・・・・・・・変な店に入ろうとしてたように、その、見えたんですけど・・・・視聴者に背いて浮気でも・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 私は人生で初めて弟を呪った。

 

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