テラレイド。
それは野生のテラスタル化したポケモンが一定の期間以上その状態が続くと発現する周囲に影響を及ぼす現象である。活性化した自身のテラスタルエネルギーが周りの環境に影響を与え結晶化し、自分を中心とした一つの区切られた世界を創造するのだ。
テラレイド状態となったポケモンのその姿は外から見れば荒野にぽつんとある結晶で出来たかまくらのような見た目をしている。その大きさも成人男性が一人入れるかといった具合だ。
しかしその中はとてつもない広大な空間となっている。あきらかに物質の法則を無視した現象であるが、一説には活性化したテラスタルのエネルギーによって空間が歪み、このような常識外れの現象が起きているのではないかとされているのだとか。
まあ、そういった小難しい原因究明は学者さんの役目である。僕のようなものひろいおじさんにとって重要なのは、このテラレイドの中は
活性化したテラスタル現象のお陰か、この雪国で作られるかまくらにも似た場所の中にはそのテラスタルタイプであるテラピースが大量に眠っているのだ。
まさに一攫千金のチャンスである。
なので早速中に入ってお宝の回収だ!
と、そう簡単に行かないのがこのテラレイドの厄介な所である。そもこれで何のリスクも無くテラピースを手に入れる事が出来るなら、今頃はテラレイドの周辺にはポケモントレーナーが溢れ返っているだろう。
僕はそう考えながらテラレイドの入り口の手前で道具を体に装着していく。
「ヘルメット良し!ゴーグル良し!マスク良し!」
何事も事に当たるならば準備が必要だ。特にそれが身の危険が発生する可能性が少しでもあるのならば準備し過ぎる位が丁度いい。
「杭にロープの固定良し!投擲用道具と荷物入れ良し!・・・、うん。準備が出来たね」
テラレイドをの中を探索する上での唯一と言ってもよいリスク。それはこの場所を作り上げているテラスタル化したポケモンである。
例え元がおだやかな性格のポケモンであったとして、テラスタルした影響か彼らはその有り余るエネルギーに感化されて非常に攻撃的な状態となっている。
一歩でもこのテラレイドに入れば即座に中にいるポケモンと戦闘が始まると言っても過言ではない。また通常のポケモン個体と違い大幅に強化されているテラレイドポケモンには無策で挑めば大半は返り討ちにあってしまうだろう。
特に僕のような手持ちを持っていない人間からすれば猶更危険な場所なのである。
だからこそのこの小道具たちだ。僕のものひろい生活の経験を元に揃えたこの道具類は時に店で購入し、時には自分で作ったりなどして用意した。僕のものひろい生活を支えてきてくれた相棒たちだ。
つまりトレーナーにとってのポケモンが今僕が身に着けている探索用具なのだ。
さあテラレイドの探索する準備は整った。いざ、出発だ!・・・の前に僕はもう一つ保険を掛ける。
これも道具類の準備に次ぐ重要な事だ。それは即ち、テラレイド現象を起こしている中のポケモンの種類の確認である。
そもそもテラスタル化したポケモンが一定上の危険度を伴っている前程だと極論と言ってしまえることではあるが、例えば中のテラスタルしたポケモンが狂暴なドラゴンタイプのサザンドラなどよりは未進化ポケモンのハネッコだったりしてくれた方が危険度は下がる。
同じテラレイドのポケモンでもやっぱり格差と言う者は生まれてしまう。それに怖いポケモンより見た目が可愛いポケモンの方が気分的には大分楽に思えてしまうよね。
これもしょうもないように思えて結構重要な要素だ。僕みたいな根本的にポケットモンスターと言う存在を信用できない人間にとっては特にね。
「さて。この中にはどんなポケモンがいるのかな?」
テラレイドの中で形成されている世界は外とは区切られた空間だ。それはある種の独立した世界とも言える。だから突入する前に中のポケモンの種類の確認など普通は出来ないんだけどそこは工夫次第だ。幸いにして僕はこの手の問題を解決する手段を持ち合わせていた。
僕は体がテラレイドに入らないように気を付けながら自分の耳を限界まで入り口に近付ける。
「おじさんの777ッある特技が一つ。”
説明しよう!おじさんの777ッ特技とはッ、読んで字の如く数十年間ポケモンの世界で生きて来た
・・・本当にそのままだね。
今回使う”デビ〇イヤーは地獄耳”はおじさんが他の地方なんかで野宿を続けていく中、背後から野生のポケモンに襲われたり、寝ている間に襲撃を受けたりなんかしていく内にその対策として能力が向上した聴覚を使った特技である。
自慢じゃないが僕の聴覚は―正確には五感になるのだけど―常人のそれに比べるとかなり発達している。僕の聴覚はその気になれば町の混雑した場所であっても、100メートル先で落とした小銭の音や種類を聞き分ける事が出来る優れものだ。
僕はこれを活かしてテラレイドの中に侵入する前にそのポケモンの息遣いなんかを聞き取って、おおよそどの種類のポケモンがいそうだとかの予測を立てて危険度を測るのだ。
「むん!むん!むん!むん!・・・聞こえる。聞こえるぞ!この音、この息遣い!!おそらく未進化ポケモン。しかも今はお休みタイムだ!!!!!」
くわっと目を見開けた僕はテラレイド内から聞こえて来る音で、この中にいるテラスタルポケモンは現在睡眠中である事を見切った。
正直、これはとても運が良い。ともすれば隠密に徹すればほぼノーリスクで戦利品を手に入れるチャンスである。
ちなみにまったくの余談ではあるが僕の五感を元にした特技は他にもあって”
「ふっふっふ。それではぐっすりおねむの間に漁らせてもらいますか!」
こうして準備を終えた僕はこのテラレイドの中に足を踏み入れるのであった。