これはガンダムに愛された少女の物語   作:ロボっピ

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10話 分かたれた道

アークエンジェルに帰還したキラは自分より早く帰還した筈のフラガを探していた

 

「急いでくれよ。これで終わったって訳じゃないからな」

 

「分かってまさぁ。しっかし、疫病神なんじゃないですかねぇ、この船は」

 

「クルーゼの方だろ?そりゃ…」

 

マードックと話しているフラガを見つけると急足で近づき、複雑な感情のまま詰め寄る

 

「どういうことですか!?」

 

「どうもこうも…聞いたろ?そういう事さ」

 

「あの子を人質にとって脅して、そうやって逃げるのが地球軍って軍隊なんですか!?」

 

そう怒鳴るとフラガは溜息を吐いてから此方を振り返る

 

「っ!」

 

振り返ったフラガは鋭い視線をキラに向けており、その視線を受けたキラは思わず息を呑んだ

 

「そういう情けねぇことしか出来ねぇのは俺達が弱いからだろ?俺にもお前にも、艦長や副長を非難する権利はねぇよ」

 

フラガに"弱い"と言われ、ショックを受けて動けないキラ

 

確かに自分はコーディネイターで、あの機体の操縦が出来るからと言って、軍人として訓練を受けてきたアスランやザフトの兵士達とは違い、戦いに関しては素人だ

 

圧倒的に戦闘の経験が足りてない

 

僕は何でも守れるって、自分が強いって…勘違いしてた

 

「ごめん、フレイ…」

 

あの時、早く助けに行かなければならないという焦りと、少しでもフレイを安心させたい気持ちで言った言葉

 

"…大丈夫だよ。僕達が助けるから大丈夫"

 

「やっぱり、"大丈夫"だなんて無責任な言葉っ、言っちゃ駄目だったんだッ!」

 

誰もいない廊下でキラは蹲って涙を流した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから、暫くして気持ちが落ち着いたキラは自分より酷い状態であろうフレイの様子を伺いに医務室に向かっていた

 

「__いやぁぁぁぁっ!!」

 

医務室の方からフレイの大きな悲鳴が聞こえ、急いで駆け寄ると、サイの胸の中で泣き崩れるフレイとそれを少し離れた場所で見守るマリエ達の姿があった

 

「嘘よ!そんなの嘘よぉっ!!」

 

「フレイ…」

 

何と言葉をかければいいか分からず、彼女の名を呼ぶとフレイはバッと振り向きキラを睨みつけた

 

「嘘つきっ!」

 

「っ!」

 

「約束したのに…大丈夫って言ったのにっ!"僕達が助けるから大丈夫"だって!」

 

そう、フレイの言う通りだ。僕があんな事言わなければフレイはここまで傷つかずに済んだ

 

「なんでパパの船を守ってくれなかったの!?なんであいつらをやっつけてくれなかったのよッ!!」

 

自分の力量を量れなかった僕が悪いんだ

 

『ちょっと、流石に言い過ぎ』

 

「そうよフレイ!キラだって必死に…」

 

「あんた、自分もコーディネイターだからって本気で戦ってないんでしょッ!?」

 

フレイの放ったその言葉が鋭いナイフの様にキラの胸に突き刺さった

 

違う…僕は、僕は本気でアスランと!

 

「っ、」

 

耐え切れなくなったキラはその場から逃げ出した

 

自分を引き止める声を無視して誰もいない場所へ___

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『キラっ!!』

 

マリエが医務室から出ていくキラを呼び止めるが、キラは一度も振り返ることなく走り去ってしまい、伸ばしていた手をゆっくり下ろす

 

走り去って行く時に一瞬見えたキラの横顔を思い出して、マリエはぐっとキツく拳を握りしめた

 

『_______キラが本気で戦ってなかったら私達はとっくに死んでるよ』

 

怒りを必死に堪えて、絞り出した言葉に皆が此方に顔を向る

 

『今までだって、機体を動かせるからって理由で民間人だったキラが戦場で必死に戦って私達を守ってくれたんだよ!?なのにアンタはキラに感謝するどころか、キラに酷い言葉ばかり言って!アンタの言葉でキラがいつもどれだけ傷ついているのか分かってるの!?』

 

「ちょ、マリエ!?やめなって!」

 

「そうだよ。僕もさっきのは言い過ぎだとは思うけど、今はさ…」

 

「フレイはお父さんが亡くなってショックを受けているんだ。お互い落ち着いてからまた話し合おう?な?」

 

フレイに怒りをぶつけるマリエに、ミリアリア、カズイ、サイの3人は今は止そうとマリエを必死に宥める

 

どうして皆はコイツを庇うの?

 

確かに家族を失ったのはショックだろうけど、だからって何を言ってもいいの?誰かを傷つけてもいいの…?

 

何故ミリアリア達がフレイを庇うのか理解できないマリエは不満気に彼等を見ていると、フレイが口を開いた

 

「キラ、キラって…そうよね、あんたにはキラしかいないものね?」

 

「フレイ?」

 

「親のいないあんたが!家族を知らないあんたが!私の気持ちなんて分かる筈ないわよね!!」

 

『………知ってたの』

 

「ええ、知ってたわよ!記憶喪失の転入生ってガレッジでは有名だったもの!きっと親があんたの前に姿を現さないのは、あんたを捨てたからなんじゃないの!?」

 

「フレイッ!なんて事言うんだ!」

 

「サイ!だって、何で私がいつも悪者みたいな言い方されなきゃいけないのよ!」

 

今まで感じていた不満を全てぶち撒ける勢いでマリエに言い放つフレイ

 

サイは言ってはいけない事を口にしたフレイを叱るが、その言葉は怒りに支配された彼女には届かず、まだ言い足りないと言わんばかりにマリエを睨みつけていた

 

『もういい…』

 

そんなフレイを静かに見つめていたマリエはゆっくり目を閉じ、何か切り替える様に目を開くと無表情のまま、そう言った

 

「何?本当のこと言われて逃げるの?」

 

確かに、フレイ・アルスターの言う通り自分は親に捨てられたのかもしれない。事故で記憶を失ったあの日から私の両親と名乗る人は一度も見舞いに来たことはなかった

 

そして私にはマリエという名しかなく、血縁者に繋がる姓はない

 

例え、自分と一緒に事故に巻き込まれて亡くなっていたのだとしてもそれをあの看護師が伝えないのは不自然だ

 

_____きっと、記憶を失う前から私は一人だったんだ

 

 

 

 

『確かに私にはキラしかいない。キラは私に居場所をくれて、記憶がなくて不安だった私の手を引いて前に進む事を教えてくれた一番大切な存在だから』

 

だから…今はこんなことをしてる場合じゃない

 

キラの側に駆け寄って、キラがしてくれた様に彼を支えてあげたい

 

それが私に出来る恩返しでもあるから

 

『人を嘲ることしかできない貴女の相手をしてる暇はないの』

 

「なっ」

 

彼等に背を向け、医務室を出ようとしたところでチラッとフレイ・アルスターに寄り添うミリアリア達を見る

 

あんなにもフレイに酷い事を言われたキラを呼び止めるどころか追いかけようともしなかったミリアリア達に、本当は心の奥底でキラを__いや、コーディネイターを気味悪がっていることをマリエは察してしまった

 

『ミリアリア達の気持ちは大体理解出来た。だから着いてこなくていい…。キラは私が何とかする』

 

 

 

 

 

 

 

 

キラは思いの外早く見つかった。展望デッキ辺りを通った時、彼の泣く声が聞こえたのだ

 

キラの悔しそうに泣く姿にマリエはゆっくりとキラに近づき、背後からそっと抱きしめた

 

『また泣いてる。キラは私が思っていたより泣き虫なんだね』

 

「…何、マリエ。揶揄いに来たのなら_」

 

『私はね、キラがイージスと戦ってる姿をずっと見てたからわかるよ。あの時キラは本気で戦ってた』

 

「!」

 

言葉を交わす暇もないくらいにお互い本気で戦っていたのだ。決して幼馴染だから、親友だからという理由で手加減等せず、お互い守りたいものの為に全力で戦っていた

 

『もう、誰かに何を言われても気にしなくていい。私がキラの側にいる!キラの帰って来る場所になる…だから、これからは私の元に帰って来て』

 

本当は私達5人がキラの帰る場所にしたかった。初めの頃の様に5人で「おかえり」って帰ってきたキラを迎え入れてあげたかった

 

けど、関係に亀裂が入ってしまった今ではそれはもう出来ないから

 

今まで彼等と楽しく過ごしてきた記憶と、先程の出来事を思い出し、何だか彼等に裏切られた気がしてマリエの目から涙が溢れた

 

『ごめんね、キラの居場所…ちゃんと作ってあげられなかったっ…』

 

涙を流し自分に謝るマリエ。それまで話を黙って聞いていたキラはマリエの方に振り返ると、先程まで彼女が自分にしてくれていたようにそっと優しく抱きしめた

 

「大丈夫。君の気持ちは十分伝わってきたから」

 

「僕の為に色々考えてくれてありがとう」そう言ってキラはマリエに笑いかける

 

『キラ…』

 

マリエ達は暫くお互いを見つめ合い、そして目を閉じて唇を重ねた

 

 

 

 

 

「……」

 

〈テヤンデイ!テヤンデイ!〉

 

「こらピンクちゃん、しぃ」

 

少し離れた場所で深い口付けを交わす2人を見ていたラクスは悲しげな表情を浮かべたまま飛び跳ねるハロをギュッと抱きしめる

 

「マリエちゃん…」

 

〈ラクスー?〉

 

「いえ、なんでもありません。部屋に戻りましょ」

 

〈ハロ!ハロー!〉

 

自分の想いは叶わない。そう悟ったラクスは2人に背を向け、静かにその場を離れていった

 

 

 

 

 

 

 

 

キラと交わす2度目のキスは1度目の時よりもずっと長かった

 

 

 

『……んっ…』

 

「…ふっ………ん…」

 

キスに慣れてない為、息継ぎが上手く出来ないマリエは息苦しさに限界を感じ口を離すとお互いに繋がる唾液の糸がぷつりと切れた

 

はぁはぁ、と荒い呼吸をしながらそれを見ていたマリエは顔を赤くする

 

「……場所を変えよう」

 

息を切らすマリエとは反対に平然としているキラはマリエの手を引き、誰もいない仮眠室に連れて行くとそのままマリエを優しくベットに押し倒した

 

「マリエ…」

 

『うん…』

 

服に手を掛けるキラを受け入れるように首の後ろに手を回す

 

 

 

どうか、心優しき彼に少しでも安らぎを

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