シグーを撃退した後、マリューの案内のもとにマリエ達はアークエンジェルにいた
「ラミアス大尉!」
ストライクから降りたマリエ達に駆け寄ってきたのは地球軍の人達で、先頭にいた女性を見てマリューは嬉しそうに顔を和らげた
「バジルール少尉!」
「ご無事で何よりでありました!」
「あなた達こそよくアークエンジェルを。おかげで助かったわ」
すると、コックピットが開き、中からキラが降りてくると地球軍の人達は戸惑った様子でざわつき始めた
「キラ!」
『大丈夫?疲れてない?』
「あはは…流石に疲れたかな」
「ラミアス大尉これは…?」
「その…」
マリューはどう説明したらいいのかと悩んでいると、パイロットスーツ姿の金髪の男性がやって来た
「話の途中ですまないがちょっといいかい?」
「貴方は?」
「地球軍、第7機動艦隊所属ムウ・ラ・フラガ大尉。よろしく」
「第2宙域、第5特務師団所属マリュー・ラミアス大尉です」
「同じく、ナタル・バジルール少尉であります」
3人がお互いに名乗り終わるとフラガは乗艦許可を貰いたいと話し始めた
「それにしても凄かったな!ザフトのMSを2機もやっつけちゃうなんて!」
「そうね!キラは私達の命の恩人よ!」
「そんな。僕はただ皆を守らなきゃって…」
乗艦許可をマリューにもらったフラガは子供達に目を向ける
「んで…あれは?」
「ご覧の通り、民間人の少年です。襲撃を受けた時なぜか工場区に居て私がGに乗せました。キラ・ヤマトと言います」
「ふ〜ん」
興味ありげな視線をキラに向けるフウガにマリューはキラを庇うようにキラがストライクに乗ってジンを撃退してくれた事を話す。ナタル達はただの民間人が最新型のMSを操縦しザフトのMSを撃退するという普通ではあり得ない話に信じられないという顔をする
その話を聞いたフラガはゆっくりと子供達の方へ歩いて行く。それに気づいたマリエ達は会話を止め、自分達に近づいてくるムウ達を警戒する
「…君、コーディネイターだろう?」
「なッ」
「…はい」
フラガの言葉に周りは息を呑み、キラがそれを認めた瞬間、周りの兵がキラに向けて銃を構えた
「なっ、何なんだよそれは!」
『やめてください!!キラは確かにコーディネイターですけど、彼はザフトじゃない!ただの民間人です!』
「トール、マリエ…」
キラに助けてもらったんだもん!今度は私達がキラを助けなきゃ!
マリエとトールは咄嗟にキラを庇うように立ち、兵を睨むとマリューが前に出て銃を下ろすように命令した
「ラミアス大尉これは一体…」
「そう驚く事もないでしょう?ヘリオポリスは中立国のコロニーですもの。戦渦に巻き込まれるのが嫌でここに移ったコーディネイターがいたとしても不思議じゃないわ。違う?キラ君」
「ええ、まぁ…僕は1世代目のコーディネイターですから」
俯きながら呟くように言うキラ
1世代目のコーディネイターとはナチュラルの両親からコーディネイターが生まれた子の事を指すらしい
その解答にフラガは首に手を当て、すまんすまんと誤った
「とんだ騒ぎにしちまって。俺はただ聞きたかっただけなんだよね。ここに来るまでの道中、これのパイロットになるはずだった連中のシュミレーションを結構見てきたが奴ららのろくさ動かすにも四苦八苦してたぜ」
「……」
フラガの言葉に思うところがある人達は複雑そうな顔をしていた
それからマリエ達はクルーに案内され艦内の居住区にある部屋で休む事になった
『どうなっちゃうんだろうね。私達』
「うん…」
「さ、流石にザフトがヘリオポリスからいなくなれば俺達を解放してくれるよな?」
「だといいけど。さっきの人達はまたザフトが攻めて来るような話してたし暫くは此処にいなきゃだろ」
「…お母さん達大丈夫かな」
『……』
お母さん、か…。私の両親はどんな人だったんだろう
記憶のないマリエには自分の両親がどんな人だったのか全く想像もつかない。危ない目にあっていないか心配してくれる人?それとも自分の子に愛情をもたない冷たい人?生きているのかもわからない両親
私はいつか自分の家族について知る日がくるのだろうか…
物思いにふけていると部屋の扉が開きマリューさんが入って来た
「キラ君、ちょっといい?」
「なんですか?」
何だか嫌な予感がする
「申し訳ないのだけど、あなたにはまたストライクに乗って欲しいの」
「えっ」
どうやら先程フラガが言っていた通り、ザフトがまた攻めに来るらしい。奪い損ねたストライクを捕縛、あるいは破壊する為に。それを阻止する為にジンを撃退したキラにまたストライクに乗って戦ってもらいたいそうだ
『キラをコーディネイターと戦わせるつもりなの!?』
「そうなるわね…」
申し訳なさそうな顔をするマリューに思わず拳をきつく握る
酷い…キラに同胞と戦えだなんて。そんなの誰だって嫌がるに決まってるのにッ
「お断りします!僕達をもうこれ以上戦争になんか巻き込まないで下さい!」
「キラ君…」
「あなたの言った事は正しいのかも知れない。僕達の外の世界は戦争をしているんだって。でも僕らはそれが嫌でッ、戦いが嫌で中立のここを選んだんだ!それを__」
〈ラミアス大尉!ラミアス大尉!至急ブリッジへ!〉
キラの言葉を遮るようにフラガから通信が入る
〈MSが来るぞ!早く上がって指揮をとれ!君が艦長だ!
〉
「私が!?」
艦長という言葉に驚いていると同じく驚いた様子のマリューが聞き返す
〈先任大尉は俺だがこの艦の事はわからん〉
「…分かりました。ではアークエンジェル発進準備。総員第一戦闘配備。大尉のモビルアーマは?〉
〈駄目だ!出られん〉
「ではフラガ大尉にはCICをお願いします。…聞いての通りよ。また戦闘になるわ。シェルターはレベル9で今はあなた達を降ろしてあげることもできない。どうにかこれを乗り切ってヘリオポリスから脱出することができれば…」
「卑怯だ!貴方達は!そしてこの艦にはMSはあれしかなくて今扱えるのは僕だけだって言うんでしょ!?」
怒りや悔しさ、悲しみが混じったような複雑な顔をしたキラは悲痛な声でそう叫んだ
『キラ…』
他に、キラがストライクに乗らずに済む方法はないの?こんなキラを見るのは初めてで胸が苦しくなる。私はキラに笑顔でいて欲しいのに…
「…わかりました。乗ればいいんでしょう」
「ありがとう」
俯くキラはマリューの後を追うように格納庫へ向かっていく。そんな彼の背中を見つめることしかできない自分達
____見つめることしかできない?違う。嫌だ、いかないでキラ。わたし、私は!!
ずっと握っていた拳に更に力を入れてマリエはキラを呼び止める
『キラっ!!』
「!!…マリエ?」
振り向いてくれたキラに駆け寄り彼の手をギュッと両手で包む
『私、キラにMSに乗ってほしくない…』
「!」
「貴女っ、何言って…」
「ちょ、マリエ!?」
マリエの言葉にどよめくマリューやトール達を無視して言葉を続ける
『だってMSと戦うんでしょ!?この艦にいる私達よりも命の危険があることなんだよ!?キラは軍人でもないッ、16歳の子供なの!いくらキラの操縦が凄くても、いくら頑丈な装甲をつけていたって負けたらッ…()死んじゃうかも知れないんだよ…?』
ぽたぽたと溢れる涙を隠すように俯く
「それは…」
何も言い返せないのかマリューは言葉を詰まらせ、トール達はそこまで理解していなかったのか、事の深刻さに気づいて顔を青ざめる
「そう、だよね。パイロットってその危険もあるよね…」
「けどっ!キラが乗らなかったら俺達っ」
「おい、カズイ!お前がキラの立場だったら簡単に乗れるのかよ?パイロットになれば死ぬ可能性もあるし、その逆の可能性だってあるんだぞ?」
「!!」
カズイはサイの言葉の意味を察し更に顔を青ざめる
逆の可能性__それはキラが相手を殺してしまう可能性だ。軍の訓練を何も受けていない民間人のキラは人を殺せない。もし殺してしまったら、心優しいキラは罪悪感に押し潰されてしまうだろう
キラに人を殺させたくない。だからマリエはキラがストライクに乗るのは嫌だった
ふと、握っていたマリエの手にもう片方の手が重ねられ、顔を上げると先程までの悲痛な顔から真剣な様子のキラがマリエを見つめていた
「___僕、乗るよ」
『キラ…』
「確かに乗るのは凄く怖いよ。死ぬかも知れないし、相手を殺しちゃうかも知れない。僕にはそんな覚悟はとても出来ないけれど…でも、大切な友達を守ってみせるって覚悟は決めた!」
目を見開くマリエ達にキラは優しく微笑む
「僕を心配してくれたんだよね?すごく嬉しかった。ああ、僕をこんなにも大切に思ってくれる友達が出来たんだって。僕はそんな大切な友人を守りたいって思った。その為なら僕はザフトと戦える!」
キラの決意を見てマリエはもう彼を止められないと感じた。勇気を出してくれたキラをそれでも止めるなんて、それは単なる自分の我儘になってしまう
こんなところで彼を困らせたくなかった。だから…
『なら、信じる。キラが無事に帰って来ることを』
首にかけてあるペンダントを外しキラに差し出す
「これは?」
『私の大切なもの。無事な姿でこれを返しに来て。私は此処で貴方の無事を祈ってるから』
「マリエ…うん、行って来る」
ペンダントを受け取ったキラは格納庫へ向かう。今度は彼の無事を祈りながらその背中を見送った
ストライクのコックピットに入ったキラは発進準備が整うのを待つ
「今度は武器を使うの気をつけないと…」
またヘリオポリスを壊したら大変だ。心を落ち着かせるように深呼吸してからマリエからもらったペンダントを見る
これがマリエの大切なものか
青のジュエリーがついたロケットペンダント。確かこれに写真とかを入れるんだよね
悪いなと思いながらも中が気になりペンダントを開く
「これって…」
ペンダントにはマリエがキラに連れられて初めてカトウ教授のラボにやって来た日に撮った写真が入っていた。記憶がない自分に思い悩んでいたマリエに"ならこれから思い出を沢山作ればいい"と、1番初めの思い出にと撮った写真
「マリエ…」
ぎゅっと願いを込めるようにペンダントを強く握ってから首にかける
「守ろう。絶対に」
大切な人達を