アークエンジェルに向かって来る4機のMS。それはザフトがヘリオポリスから奪取したストライクと同じガンダムだった
『キラ!そっちにX303、イージスが向かってる!気をつけて』
〈っ!(イージスって事は…アスラン!?)……わかった!〉
マリエから親友であるアスランの機体が此方に迫って来ているのを知り、キラは戸惑いながらもサーベルを抜く
僕は…アスランと戦えるのか?
幼い頃、月でずっと一緒に家族同然のように過ごして来た親友に僕は…
正面のモニターにイージスの姿が映り、武器を構える
〈キラ!〉
〈アスラン!〉
〈やめろ!剣を引け、キラ!僕達は敵じゃない。そうだろう?なぜ僕達が戦わなくちゃならない?同じコーディネイターのお前がなぜ僕達と戦わなくちゃならないんだ!〉
自分と同じように戦うつもりはないのか、イジースは武器を構えた状態のまま何もしてこないのを見てキラは安堵する
アスランも僕と同じで戦いたくないんだ!
〈お前がなぜ地球軍にいる?なぜナチュラルの味方をするんだ!〉
〈僕は地球軍じゃない!けど、あの艦には仲間が…友達が乗っているんだ!〉
キラの脳裏にミリアリアやトール、サイとカズイそしてマリエの姿が浮かび上がり強く操縦レバーを握りしめる
〈君こそなんでザフトになんかッ!なんで戦争したりするんだ!〉
〈っ!〉
〈戦争なんか嫌だって君だって言ってたじゃないか!その君がどうしてヘリオポリスをッ!〉
キラの悲痛な叫びにイージスのパイロット、アスランは堪える様に呟く
〈…状況も分からぬナチュラル共が、こんなもの造るからッ〉
〈ヘリオポリスは中立だ!僕だって、なのに!〉
そんな2機の動きをモリターで見ていたマリエは首を傾げる
『ストライクとイージス、さっきから全く動く様子がないみたいだけど、どうしたのかな?』
こんな状況で相手と話し合いでもしてるのかと思った時、キラが言っていたことを思い出した
"ザフトには戦いたくない相手がいるんだ"
『もしかして…』
イージスのパイロットがその戦いたくない相手?
そう思った時、此方に向かって来ていた3機の内の1機がストライクの方へと移動しているのを察知し、急いでインカムのボタンを押しキラに伝える
『キラ!そっちにもう1機行った!』
〈わかった!……X102、デュエル?じゃあこれも!?〉
送られて来た相手の機体のデータに驚きながらキラはデュエルがいる方へ武器を構える
〈何をもたもたやっている!アスラン!〉
〈イザークか!?〉
相手がアスランじゃないならっ!!
デュエルからの攻撃を躱しながら自分もデュエルに攻撃を仕掛ける
アスランとは違い、本気で自分を殺しにかかって来ているデュエルにキラは恐怖を感じながらビームサーベルとライフルで対抗するが素早く動くデュエルに全く当たらない
〈くそっ!〉
思わず舌打ちをしそうになった時、マリエと繋がっている通信から彼女の悲鳴が聞こえてきた
『きゃあああっ』
〈どうしたのマリエ!?〉
『…ご、ごめん!ブリッツとバスターから攻撃をくらったみたいで衝撃が凄くて』
アークエンジェルも何とか2機とやり合っているみたいだが、油断は出来ない。
助けに行きたいけど、今は目の前の相手を倒さないと!何とか耐えてくれ!
『キラ、落ち着いて!そんなに撃ち続けたらエネルギーが!』
〈わかってる!けどっ〉
目の前に立つ4機のMSを見てキラは冷や汗をかく
1機相手に2人がかりで戦っているにも関わらず、中々決着がつかない事に痺れを切らしたのか、バスターとブリッツは標的をアークエンジェルからストライクに変えた為、現在キラは4機を相手に戦っていた
アスランが乗るイージスから攻撃は来ないものの、残る3機の攻撃を防ぐ事で精一杯。此方に近づけないようにライフルを撃っているがそれも時間の問題だ
まだなのかッ!あとどれくらい時間を稼げばいいんだ!?
フラガ大尉!!!
『__キラ、聞こえる?』
マリエ?
『フラガさんが作戦成功したみたい!帰還して!』
〈!!__了解!〉
キラが帰還信号を出しているアークエンジェルの元へ戻ろうとした時
〈帰還信号?させるかよ!!〉
デュエルがストライクの行手を阻むように立ち塞がった
どうして!?相手だって母艦を襲われたんだ。撤退命令が出されている筈なのにっ!
〈そこを退いてくれ!!〉
『マ…艦長!ストライクが敵に囲まれてます!エネルギーの残量も残りわずかで、かなり危険な状態です!』
「何ですって!?援護して!」
ストライクが帰還出来ない状況にいる事をマリューに伝えると、すぐに援護するよう指示を出したが、この混戦の中、援護射撃を行えばストライクにも当たってしまう為出来ないとナタルに止められてしまう
「ストライクとの距離開きます!」
ここままじゃキラはッ!
「ッ、フラガ大尉に連絡を!」
「はいっ!!」
キラ…どうか無事でいて!
〈どいてくれぇ!!!〉
〈ハアァーー!!〉
全く退く様子のないデュエル達にキラは焦りが募る
どうする?どうすればいい!?このままじゃ僕はっ!
するとモニター下にあるメーターから警告音が鳴り、目を向けるとエネルギー切れと表示されていた
〈パワー切れ!?しまった!装甲が!!〉
フェイズシフトが解かれ、色が落ちていくストライクにデュエルは好機とばかりにトドメを刺そうとサーベルを振り上げる
〈もらったぁ!!〉
〈っ!!〉
もう駄目だっ、と目を閉じた時だった。体当たりされる様な衝撃を受けたものの、それ以降はなんの痛みも衝撃もなく不思議に思い目を開けると機体を変形させたイージスに捕まっていた
〈アス、ラン…?〉
助けてくれたのか?
〈何をするアスラン!!〉
〈この機体、捕獲する!〉
〈命令は撃破だぞ!?勝手な事をするな!〉
〈捕獲できるものならその方がいい。撤退する!〉
〈アスラン!!〉
コックピット内に鳴り響く警告音。そしてアスランと繋がっている通信から聞こえる男の怒鳴り声。今何が起きているのかわからないキラは混乱するしかなかった
『キラ、キラっ!!応答して!』
「駄目です!パイロットとの通信が途絶えました!」
どうしよう、どうしよう!?このままじゃキラがザフトに連れていかれちゃう!?例え同じコーディネイターでもザフト兵を殺してしまったんだ。何をされるかわからない。最悪の場合殺されて___
『そんなの駄目っ!!』
「マリエ!?」
突然、叫び出したマリエに隣に座っているミリアリアが驚いている。だけどそんなの気にせずにマリエはキラに何度も呼びかけた
途中誰かが何か話していたけど自分の耳には入ってこなくてミリアリアに肩を掴まれるまでマリエはひたすらキラを呼び続けていたと思う
「落ち着きなさいよ、マリエ!!!」
『ミリ、アリア…でも、キラが』
「今、フラガ大尉が助けに行ってる!」
『フラガ、さんが…』
「私達が今やる事はキラに呼びかけることじゃなくてキラを助けることでしょ!?」
キラを助ける…
ミリアリアの言葉にマリエは正気を取り戻す
そう、だよね。私は今やれる事をやらなくちゃ。その為に私はこのブリッジにいるんだから
キラを助ける、それが今私にできる事
『ごめんねミリアリア。ありがとう』
「フラガ大尉の案で今はストライクにランチャーを装備させるのに射出準備をしてるの。キラと連絡が取れないならそっちを手伝ってくれる?」
『うんっ!』
涙を拭い、もう一度ミリアリアにお礼を言ってからマリエは止まっていた手を動かした
その後、フラガの助けによりランチャーの装備を装着する事に成功したストライクはアグニを使い、敵を追い払った事で無事にアークエンジェルに帰還する事が出来た
その様子をモニター越しで見ていたマリエはほっと胸をなでおろし、耳につけていたインカムを外す
「行ってくれば?キラの所に」
『え?』
隣で同じようにインカムを外しながらそう言ってきたミリアリア
『でも、みんなは?』
「私達は後から行くから。…多分、キラが今1番来て欲しいって思ってる相手はマリエだと思うんだよね」
『そう、なのかな?』
そうだと嬉しいけど…
脳裏にチラつく赤毛の少女。俯きそうになるマリエにミリアリアは気合を入れるように背中を叩いた
「ほらっ、暗い顔してないで行った行った!!」
『う、うんっ!』
何だか今日はミリアリアに励ましてもらってばっかりだなぁ。…ミリアリアと友達になれて本当によかった
心の底からそう思いながらマリエは彼女に背中を押され、格納庫へ走り出した
格納庫に着くとストライクのコクピットの周りに人集りが出来ていた
どうしたんだろう?
人集りに近づくと顔見知りのフラガがいるのを発見し、彼に声をかける
『あの、どうしたんですか?』
「ん?ああ嬢ちゃんか。俺も今聞いたばかりなんだが、坊主がコックピットから出てこないんだと」
『キラが?』
「何度も呼びかけても応答もしないんですぜ?」
一体どうしたんだろう?中で気を失っているとか?
「嬢ちゃんからも呼びかけてくれねぇか?このままじゃ機体を直せぇねんだ」
『わかりました』
マードックの言葉に頷くとコックピットの前に出る
『キラ、大丈夫?』
声をかけても反応がない。マードックさん達の言う通りだ
「反応なしか。こっちから開けるしかないな。ちょっと待ってな、そこの解除キーを__」
『キラ、マリエだよ。開けてくれないかな?』
そう言いながらコンコンっとノックをすると、ガチャっと音を立てハッチが開いた
『開いた』
「ちょ、嬢ちゃん今どうやって開けたんだ!?俺はまだ何もいじくってねぇぞ!?」
『?ノックしただけです』
「いや、ノックしただけって…」
信じられないという顔でマリエを見るフラガ達に首を傾げる
『いや、本当ですって。皆さんも見てたでしょ?あ、もしかしたらキラが開けてくれたのかも。…………キラ?』
開いたコックピットの中を見るとそこには目を見開き、操縦レバーを握りしめたまま微動だにしないキラの姿があった
『キラ…』
あんな事があったんだもん。怖かったよね
ハッチが開いている事や、マリエが目の前にいる事にも気づいていない状態のキラにゆっくり近づき、そっと彼の頭を抱きしめた
『お疲れ様、キラ。ありがとう私達を守ってくれて。キラのおかげで私達は皆無事だよ。もう、戦いは終わったんだよ』
「あ…」
ようやく顔を上げたキラに優しく微笑むとゆっくり操縦レバーから指を外していく
『キラが無事で本当に良かったッ…!』
「マリエ…」
溢れ出しそうな涙を必死に堪え、精一杯の笑顔で帰ってきたキラに1番伝えたかった言葉を言う
『おかえりなさい、キラ』