これはガンダムに愛された少女の物語   作:ロボっピ

8 / 15
7話 宇宙の傷跡

「再度確認しました。半径5000に、敵艦の反応は捉えられません。完全にこちらをロストした模様」

 

トノムラの報告にブリッジにいるクルー達はホッと息を吐く

 

「アルテミスが上手く敵の目を眩ませてくれたってことかな?だったらそれだけは感謝しないとね」

 

「しかし…」

 

「ええ、分かっているわ。ローラシア級がロストしてくれたのは幸いだけど…こちらの問題は何一つ解決していないわ」

 

アルテミスで十分な補給を得られなかったアークエンジェルは現在、水不足に悩まされていた。クルーだけではなく多くの民間人も乗っているため、水の消費が激しく満足に水を飲むことすらできない状態になっている

 

ザフトの追っ手がいない今、マリュー達は水の補給を第一に進路を変える事に決めた

 

 

 

「これで精一杯か?もっとマシな進路は取れないのか!?」

 

「無理ですよ!あまり軌道を地球に寄せるとデブリ帯に入ってしまいます。こう進路を取れれば月軌道に上がるのも早いんですが…」

 

そう言ってモニターに新たな進路を映し出すノイマンにマリューはダメ元でこのまま突破は無理かと聞いてみるが、それも無理だと強く返される

 

「この速度を維持して突っ込んだら、この艦もデブリの仲間入りです!」

 

「そうよね…」

 

「人類が宇宙に進出して以来、撒き散らしてきたゴミの山か…確かに仲間に入りたくは…あっ、待てよ、デブリ帯か…」

 

モニターを見て何か思いついた様子のフラガはフッと笑みを浮かべる

 

「不可能を可能にする男かな?オレは」

 

 

 

 

 

 

 

『キ、キキキキキラ!?』

 

「マ、マリエ…」

 

みんなより少し遅れて食堂に向かっていたマリエは食堂の入口の前でキラとばったり遭遇していた

 

2人は驚いたようにお互いの顔を見ると、昨夜のことを思い出して顔を赤くし、すぐに顔を逸らす

 

ど、どうしよう。気まずい

 

キラのあの行動の理由を推測し、気持ちの整理をつけたとはいえ、まさかこんな直ぐに会うとは思っていなかったマリエはとても動揺していた

 

『い、いみゃからご飯?』

 

「う、うん」

 

((噛んだ…))

 

と、内心思いながらも心優しいキラはそれに触れずに遅くなった訳を話す

 

「ストライクの整備をやってたら遅くなっちゃてね。さっき終わった所なんだ」

 

『そうなんだ』

 

ど、どうしよう…昨日のキスの理由を考えてて遅くなっただなんて口が裂けても言えない!!

 

『わ、私は、寝坊しちゃって。起きたらミリアリア達がいなくて焦っちゃったよ。あはは…』

 

冷や汗をかきながら誤魔化すマリエに対し、キラは珍しいね、と軽く驚いている。疑ってはいない様子にホッとした

 

とりあえず中に入ろうかと言われ、頷いて中へ入ると食事を食べ始めているミリアリア達の姿があった

 

「あ!やっと来た、マリエ遅い!」

 

『ご、ごめんね!』

 

「キラも一緒だったのか!ストライクの整備、完了か?」

 

「うん。でもパーツ洗浄機もあまり使えないから手間ばっかりかかって参っちゃうよ」

 

食堂に入って来たマリエ達に気づいて声をかけてくれたトールとミリアリア。彼ら達と一緒に食事をしていたフレイはマリエ達を見ると嫌そうな顔で溜息を吐く

 

「フレイ!」

 

「……」

 

サイに急かされ仕方なく椅子から立ち上がると、嫌そうな顔から申し訳なさげな顔にぱっと切り替えてキラとマリエに声を掛けた

 

「あ、あの…」

 

「フレイ…」

 

『……』

 

「この間はごめんなさい!私、考え無しにあんなこと言っちゃって」

 

「あんなこと?」

 

「アルテミスで、キラがコーディネイターだって…」

 

ガルシア達に言われた言葉が過り、キラはあぁ、と思い出したように声を上げてフレイから目を逸らす

 

(嫌なこと思い出しちゃったな)

 

暗い気持ちになったその時、キラの右手に温もりを感じて驚いて横を向くと隣にいたマリエがキラの手を握っていた

 

大丈夫。そんな気持ちを込めてマリエはぎゅっと手を握る

 

(マリエ…ありがとう)

 

心の中でマリエに感謝するとキラはフレイに向き直り、自分は気にしていない事を伝える

 

「いいよ別にそんなこと。気にしてないから。本当のことだしね」

 

「そう、ありがとう…マリエも、あの時はごめんなさい!私、サイが殴られてついカッとなっちゃったの」

 

『……』

 

フレイの謝罪にどう答えるか悩むマリエ。先程のフレイの嫌そうな顔を見ていたマリエはこれが心からの謝罪ではない事に気づいていた

 

きっとこれ以上揉め事を起こさない様にサイ達が形だけでも謝れとフレイに言ったのだろう

 

 

………まぁ、フレイの気持ちも分からないわけではない。マリエがキラを守る為に彼がコーディネイターである事を隠そうとしていた様に、フレイもサイがこれ以上傷つかない様に守る為にキラの事を話したのだ

 

"想い人を守る為に"

 

もし、自分達の立場が逆だったら同じ様な事をしていたかもしれない

 

…流石に友人を売ろうとはしないが

 

『…次はないから』

 

だから、もう一度フレイをチャンスを与える事にした

 

次、またキラを傷つけたり、危険な目に合わせたら許さないと忠告も兼ねて

 

「っ!」

 

一方、ただ事実を言っただけなのに何故自分が怒られ、謝らなければならないのか理解出来ないフレイはマリエの返答にムッとするもサイが見ている為、怒りをぐっと抑える

 

「ありがとう。気をつけるわ」

 

笑みを貼りつけてマリエにそう言い、謝罪を済ませたフレイはサイの元に駆け寄り褒めてと言わんばかりに抱きつく

 

…………………やっぱり好きになれないや

 

これっぽっちも反省していない彼女に冷めた視線を向けながらマリエはそう思った

 

 

 

 

 

 

 

 

食事を済ませた後、マリューに至急ブリッジに来るようにと呼び出されたマリエ達。そこでマリューから伝えられたのは今から向かう先で補給を受けるという内容だった

 

「補給を受けられるんですか?どこで!?」

 

「受けられると言うか…まぁ、勝手に補給すると言うか…」

 

「私達は今、デブリベルトに向かっています」

 

『デブリベルト…?』

 

聞いたことのない場所の名を聞き首を傾げていると、それを知っているのかサイが驚いたように声を上げた

 

「ちょっと待って下さいよ!まさかっ…」

 

「君は勘がいいねぇ~」

 

「デブリベルトには、宇宙空間を漂う様々な物が集まっています。そこには無論、戦闘で破壊された戦艦等もあるわけで…」

 

深刻そうに説明するマリューの話を聞いて、補給の意味を理解したマリエ達は顔を青ざめる

 

「まさか、そっから補強しようって…」

 

「仕方ないだろ?そうでもしなきゃ、こっちが保たないんだから」

 

「喪われたもの達をあさり回ろうと言うんじゃないわ。ただ…ほんの少し、今私達に必要な物を分けてもらおうというだけ。生きる為にね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

デブリベルトに到着し、マリエ達は補給を行う為にポットに乗り、辺りを探索していた

 

正直気が進まないけど自分達が生きていくには必要な事なんだよね…?

 

内心そんなことを思いながら、目の前に浮かぶ沢山の艦やMSの残骸を眺める

 

〈とりあえず、損傷が少ない戦艦から見てみるぞ〉

 

〈は、はい〉

 

〈…ん?なんだあれ〉

 

別のポットに乗るチャンドラとカズイの会話を聞いていると、何かを発見したトールが声を上げる

 

『どうしたのトール?』

 

〈いや…先の方にあるのって何かなって〉

 

『先?』

 

〈艦かなって一瞬思ったけど、それにしては巨大過ぎるし〉   

 

その言葉にマリエは自分もトールが見ている方向に目を向けると確かに自分達の行先に巨大な何かがあった

 

少し遠くてよく見えないがトールの言っていたそれは確かに大きい。先に進みながらそれをよく見てみると、それの正体がわかった

 

『あれは、コロニー…?』

 

焼き払われたかの様な崩壊したコロニーがそこにはあった

 

あまりに酷い光景を目の当たりにしてマリエ達は言葉を失う

 

〈え、まさか…〉

 

〈ここって…ユニウスセブン…?〉

 

震えた声でそう呟いたキラの声がやけに大きく聞こえた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あそこの水を!?本気なんですか!?」

 

キラの声がブリッジに響く

 

あの後、マリエ達は崩壊したユニウスセブンの悲惨な光景に動揺しながらも本来の目的である水を求めて探索を行っていた

 

「あそこには一億トン近い水が凍り付いているんだ」

 

「…でも!ナタルさんだって見たでしょ!?あのプラントは何十万人もの人が亡くなった場所で…それを…」

 

探索中に見た我が子を抱きしめ亡くなっている親子の姿を思い出し、探索を行ったメンバーは皆、表情を暗くする

 

「誰も大喜びしてる訳じゃない。水が見つかった!ってよ…」

 

「フラガ大尉…」

 

「誰だって出来ればあそこに踏み込みたくはないさ。けどしょうがねぇだろ。俺達は生きてるんだ!ってことは生きなきゃなんねぇってことなんだよ」

 

フラガの強い言葉にキラも言い返せず、ブリッジは静まり返る。そんな中、マリエが口を開いた

 

『…なら、せめて何か手向けしませんか?』

 

「マリエ?」

 

その場にいる全員がマリエの方を向く

 

『自分達が生きるために此処の水を分けてもらうんです。その感謝の気持ちを込めて何か手向けたいなって…』

 

「あ、なら花を供えようよ!」

 

マリエの案に賛成したミリアリアは思いついたように声を上げた

 

「花を?」

 

「はい!といっても本物の花じゃなくて紙で作った花ですけど____」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それからマリエ達は艦内にある色紙を集め、沢山の花を折り始めた

 

「いや〜、俺はこういうのやったことないんだがな」

 

「俺もですよ」

 

フラガを始め、男性陣は折り紙をやった事がない者が多く折り方がわからず手が止まっていた。そんな中、フラガは自分らと同じく手を止めているマリエに気がついた

 

「ん?嬢ちゃんも手が止まっているが折り紙で遊んだことないのか?」

 

『あはは…実はそうなんです』

 

「へえ、意外だな。嬢ちゃんも室内で遊ぶより、外で駆けずり回ってたタイプか?」

 

病院やカレッジでは折り紙をする機会はなく、マリエがこの1年しか記憶をもっていないことをフラガ達は当然知らないので、内心なんと答えるかと悩む

 

『本とか勉強ばかりしていたからあまり折り紙とか外で遊んだことがなくて…』

 

あながち間違えではないことを言うとフラガは何か勘違いしたのか顔を少し暗くして「そうか…」と言いそれ以上何も聞いてこなかった

 

『ミリアリア、折り方教えてくれる?』

 

「もちろんいいわよ」

 

花の折り方をミリアリアに教えてもらい、なんとか完成した沢山の折花

 

それらを集めユニウスセブンに供えると艦にいる全ての人間が黙祷を捧げる

 

マリエは宇宙に舞う花を悲しげに見つめ、目を閉じる

 

どうか、安らかに____

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。