進撃の巨人 freedom end(自由の終わり) 作:空き缶_たおたお
「・・・」
長い沈黙が続く。
手の槍を離さないように相手の眉間に槍をとらえる。
苦しめないように確実に倒すためだからだ。
槍の先端に頭が少し触れる。
それだけでまるで生まれたての小鹿のように震えている。
彼の名前はカール・フリッツ。
この国の宰相をやっていたものだ。
しかし、そんな男は無謀にも我らマーレ国に謀反を起こしたのだ。
結果は失敗。
多くの同族を犠牲にし、責任も取らずに彼はおめおめと逃げた。
しかし追い詰めた。
ここには私と彼しかいない。
やるなら今がチャンスだろう。
「なぜ、貴方のような賢者がこのような愚考を!」
「われら部族はマーレに支配されてきた!その支配から自由になりたいと思って何が悪い!」
「相応の地位や名誉はあったはずだ。それこそ貴方は宰相の座まで登りつめるほどに!」
「何が宰相だ!そもそもこの地は元々は我らの土地だ!お前らマーレがそれを奪ったのではないか!」
「貴様達は他の部族や村人を奴隷にし、必要以上に虐げてきた!当然の報いだろう!」
「まるで自分たちが奴隷にしていないような言い方だな!」
「・・・」
「ハッ!どうしたへロス!図星で声もあげれんか!」
「これ以上の言の葉は不要・・・お覚悟を!」
槍の先端に力を入り頭の皮膚を掠め取る。
「ヒッ!」
最後の抵抗を示すかと思ったが事態を急変を起こす。
「お許しください!」
「どうか命だけは!」
「何卒!何卒どうか!」
それは何百回も見てきた命乞いだった。
しかし、それを彼の姿では見たくは無かった。
私にはない知識、カリスマ。政に秀でた存在
歴史の偉人というものがあるのであれば間違いなく彼も残るものだと確信さえしていた。
しかし、今は何だ。
まるで気品すら感じさせない。
豚のように人間に媚びへつらう人以下の顔つきだ。
「・・・」
そっと突き立てた槍を離す
「た、助けてくれるのか・・・」
「私は戦士だ。王の勅命ではない限り戦士以外には手を出さん。」
「そしてお前は戦士ではない。ただの腑抜けた老人だ」
「・・・!」
「ありがとう!ありがとうございます!」
土下座をし、涙を流す
しかし言葉とは裏腹に彼の目つきには憤怒の感情を必死に堪えているようにも見える。
「しかし、この地には置けない。この地にいればまた誰かにつかまるだけだ。」
ふと近くにあった舟を海に出す
「この先の遠くに大きな島がある。あそこまで辿りつければお前は助かるというわけだ」
「数日程度の食糧も置いておこう。」
「まぁ、辿りつけれるかは知らんが」
「さぁ早くいけ。でないと他の奴らが来る。そうなればお前を殺さなければならなくなる。」
「わかりました!ありがとうございます!ありがとうございます!」
そう言い放ち、舟を出す。
もしここで彼を殺していればあんな事にはならなかっただろう。
そんな
そして数年後、海から大きな巨人がやってきた。
「な、なんだ・・・!あれは・・!」
海から女型のような巨人が向かってくる。
それは巨大であり、鋼であり、動物的でもあった。
もし、神がこの世界で降臨するのであればあのような姿でも納得するだろう。
「お前だけでも逃げろ!ここは私たちが!」
親友ともいえる人達の断末魔が聞こえる。
およそ人が普通に殺されたとは思えない、まるで拷問を数年受けたかのようなひどい声だ。
そして、数日後。
一種の幻だと皆から揶揄された巨人が街へと襲った。
街の人は逃げまどい、兵士も立ち向かうもあっけなく踏みつぶされる。
この戦いで私の妻と子供は死んだ。
私は幾度もアイツと戦い、とうとうあの巨人は奴隷の女が変身していることを知った。
女の名前はユミル
私がアイツを島流しにした島に住んでいた人間だ。
王や宰相にこの事を報告し、王から勅命として悪魔ユミルの暗殺が下された。
「着いたか」
舟を沖につかせ、島へと地を着く。
「では私たちはこれでご武運を」
「ああ。」
「いいか、我々の目的はあの悪魔ユミルの暗殺の暗殺である。」
「あの悪魔さえ排除すればこの長い戦も一変するだろう。」
「しかしへロス隊長。かの巨人が人型のまま無警戒で暗殺するとしても確実に王の傍にいさせ護衛もいるはず。
護衛を倒してたとしても巨人に変身され我々は一網打尽ではないですか。」
「確かにそうだ。では人が密集している時に暗殺するべきだろう。その中に王の傍にいる状況にさえなれば奴も巨人に変身はできまい。変身すれば王を吹き飛ばしてしまうからな。」
「変身する可能性はないでしょうか。」
「あの力があるのにあの王に従っているんだ。忠誠心が高いのか。何かしらの感情がある事には違いない」
「確かに、自分があんな力があれば確実に謀反おこしますもん」
「おいおい、もしあの力を手に入れたからといって踏みつぶさないでくれよ」
ブラックジョークのような発言で少し雰囲気が緩む。
もし戦が無ければ私たちはこの島でバカンスでもしゃれこめるほどには緊張が緩んだ気がした。
「これはあくまで提案だが、偽装降伏はどうだろうか。」
「偽装降伏ですか。第一降伏にまんまと応じますかねあの元宰相が」
「・・・今まで黙っていたが俺はアイツを見逃した事がある」
「え!?」
「なんでそんなことを!」
「一生の不覚だ。幾度死んでも詫びにはならないだろう」
「しかしアイツも何かしらの執着はあるはずだ。処刑だとしても確実に私の前に現れるだろう」
「そこを潰す。もし成功したとしても確実に我々は護衛によって殺されるだろう。皆、俺に心臓を捧げてはくれないか。」
そう言うと部下たちは自分の心臓部分である胸に強く握られた手を置く。
これは発祥は不明だが死地へと向かう戦士内で流行ったとされる。覚悟を示すポーズである。
このポーズをするという事は生半可の覚悟ではない事を示した。
「当たり前です!我々が死のうともあの悪魔たちから家族を守れるのであれば何だってします!」
「ありがとう・・・お前たち・・・!」
「しかし、問題は獲物をどうするかですね。相手も我々を武器を持たせたままにはしてくれんでしょう」
「そこが問題だな」
刹那、かすかな足音が鳴る
「誰だ!?」
「きゃあ」
その声は女子の声だ。
女子は逃げるも部下に捕縛される。
「こいつ現地民か!まずい!」
女子はあっけなく捕縛され槍を構えられる
「どうしますか。殺しますか。」
「やめて!殺さないで!」
「やめろ、俺たちは戦士だ。戦う能力も意思もない奴を殺す事は許さん」
「し、しかし」
「こんな時間に護衛もなしに海沿いにいるなんてのは大抵奴隷だ。殺しても殺さなくてもさほど変わらん
」
「その代わり夜の見張りとこいつの見張りは私がやろう。お前たちも船の生活でろくに寝れてないだろう」
「隊長がそこまで言うのであれば」
「では皆の者、今は休息に入れ。作戦は明日話し合おう。」
「ハっ!」
そういうと部下たちは簡易テンスを設営し始めた。
ここには私と縄に縛り付けられた女児しか居ない
「お前名と姓は?」
「名はマリア、姓は言いたくない・・・」
「言いたくないのであれば無理には言わんが俺は言わない理由とお前の姓の名前はあらかた予想できる。」
「え?わかるの?」
「お前王族だろう。それも位の高い王族だ」
「さしあたって考えられるのはユミルの子供であり姓はマリア・フリッツというくらいだろう」
「すごい!当たってる!ねぇどうしてわかったの?」
「服装をよく見ればわかる。汚らしいがよく見てみると生地がしっかりしている。これを一介の平民、奴隷が着れる服ではない。そして徹底的なのは靴にある紋章。これはフリッツ家が昔から使っている紋章だ」
「すごいすごい!よく見てるのねおじさん!」
なんだが人懐っこい子だ。というより本当は人懐っこいのに今まで我慢してきた風にも見える
「戦士に本当に必要なのは腕力ではない、相手と自分を知る鑑識眼だ。」
「お前も戦う時はよく相手と自分をよく見る事だ。そうすればあんな草木で足音を鳴らすヘマなんてしない」
「そんな事私に言われても・・・」
「はぁ海を見に来ただけなのにどうしてこんな目に」
「なに明日になれば解放する。今日は我慢してくれ」
「わかったわよ」
「ねぇ、聞いてもいい?なんでそこまで私に良くしてくれるの?あなた達マーレの人でしょ。あのユミルの娘なのよ?憎くはないの?」
「憎くないと言われれば嘘にはなる。ユミルをこの手で殺せるなら何だってしたいさ。しかし娘のお前には関係ない話だ。」
「関係ない、か」
「私見ての通り色んな人に虐められてきたの。お前はあの化け物の子供だから一緒には遊べないって言われてさ」
「理由はわかるわ。あんな巨人に変身するかもしれないなら逆の立場だったら怖いですもの」
「そんな憤りを処刑されていく私より可哀そうな人達を見てスカッとした気持ちになっていたのよ。」
「それでも私は関係ないって言えるのかしら」
「・・・」
「お前の夢はなんだ。」
「夢?」
「うーん」
「何でもいい。何なら今考えたものでもいいぞ。」
「それならあの海の向こう側に行ってみたい。私この島から出た事ないですもの」
「良い夢だ」
「よし、それならお前は人間だ。」
「え?」
「人間と化け物の違いは何だと思う?」
「特別な力?巨大な身体?違う」
「それは夢だ。」
「化け物は夢を見ない。明日に希望なんて持つより目先の事を考える。」
「でもお前は違った。それならお前がどんな化け物だったとしても人間だよ」
「でも私はこの奴隷で自由なんか・・・」
「人は皆生まれながらにして『自由』なんだ。」
「お前が化け物じゃない限りどんな事をしても『自由』なんだよ」
「な」
マリアが顔が少し赤くなる。おそらく潮の風にやられたのだろう
「なんてな。少しキザっぽかったか?」
「べ、別にそんな事ないわよ!」
「こんなおっさんの話を聞いてくれてありがとな。じゃあ私はこのへんで」
「待ちなさい。」
「ん?」
「さっきの作戦。武器が必要なのよね。なら私が地面に槍を置いてあげる。それで奇襲できるわよ」
「作戦に参加すると?」
「ちょっと手伝うだけよ。しくじったなら見捨てるわ」
「もしバレたら君も無事じゃすまないよ」
「覚悟の上よ。その代わり条件があるわ。」
「条件?」
「殺すならあのクソ野郎のカール王だけにして」
「クソ野郎って一応君の父親だぞ」
「あんな奴父親だと思いたくもない。あんな奴の血が入ってると思うだけで嗚咽がする」
「理由は・・・聞かなくてもわかるか。母親の事だろ」
「ええ、母様はただ献身的なだけ。奴隷に慣れすぎて奉仕と恋愛感情がごっちゃになってるのよ」
「だから母様だけは見逃してあげて、お願い・・・」
「・・・・」
長い沈黙が続く
「わかった。」
「本当に!?」
「じゃあ、指切りげんまんだ。」
「指切りげんまん?」
「東洋の知り合いに聞いてな。約束事に対する誓いらしい」
「やりかたはこうだ」
そういうと小指と小指を重ねる。
「次は私の言った事に復唱してくれ」
「わかったわ」
「ゆびきりげんまん 嘘ついたら針千本飲ます」
「えーと・・・ゆびきりげんまん 嘘ついたら針千本飲ます」
「指切った」
「指切った」
「これで約束の誓いは果たされた。」
「なんだが不思議な気分」
「これが誓いっていう魔法さ。なんだが自分自身に使命を感じるだろ?」
「たしかにそうね」
「あ!それならもう一つお願いできないかしら?」
「もう一つ」
「もしこの暗殺が終わって貴方が生還したなら私の伴侶になってくださらない?」
「流石にこの年の差だとなぁ・・・」
「えーなんでよ!人は自由なんでしょ!年の差くらいなによ!」
「まぁ生還したら考えてやるさ」
「ちなみに私のどこが気に入ったんだ。こんなきたない髭に皴も顔中あるおっさんだぞ?」
「えへへ秘密!」
「うーんこれは私の鑑識眼をもってしてもわからんなぁ」
こうして夜が明けていく。
気が付くと朝になっていた。
部下たちを目を覚まし、彼女の縄を解く。
「よし、これでマーレの基本的な文字はわかったな。今後は地面に文字を書いてやり取りをする。いいな」
「わかったわ。じゃあ私は先に行くわじゃあね!」
「ああ、また会おう」
そういうと彼女は自分が使っていた馬を走らせる。数分も経てば互いの姿は見えなくなっている
「ほんとうによかったので?彼女を解放させるなんて」
「しかも武器を隠すなんて、作戦の要じゃないですか」
「それしか方法が無いんだ。仕方ないさ」
「そういえば昨日の約束本当に守るんで?」
「ああ、できる限りな」
「ユミルを生かすなんて王が聞いたら最悪処刑ですよ」
「隊長も憎いはずだ。なんでそこまで許せるんですか。」
「そんなの当たり前だ。あのユミルが人間に見えたからだ。」
「人間は人間に見えた以上。殺せない」
「それは戦士になった身でも変わらんよ」
「でも・・・」
「ああ、皆は納得はせんだろうな。だから俺が生還するならあいつら親子とどこか遠い所に一緒に幽閉するさ」
「それこそマリアと同棲してもいいだろう」
「そんな事を無きあなたの妻が聞いたらどう思うんでしょうね」
「もちろん、殺されるだろうな。間違いなく蹴りと包丁はくるだろう」
「まぁでも最終的に笑ってくれるだろうさ。あんたらしいって」
「隊長・・・・」
「さぁ、行こう。ゾンジ・ゾエ。皆が待っているぞ」
「はい隊長!」
「あ、そういえばなんですけど」
「ん?」
「もし生還したら一か月前に貸した金返してくださいね。」
「ここでそれが言えるなんて大した奴だよ。なんだかんだ君は生き残りそうだよ全く」
「あー話を逸らそうとしてませんかー!」
「あーわかったわかった」
そして、作戦実行日
我々は降伏した。
案の定、彼は私の目の前に現れた。
なんだがにやけ面がやけにうっとしい。
「久しぶりではないか。戦士へロス」
「私は会いたく無かったですけどな。カール宰相」
「貴様!王に無礼だぞ!」
「こやつは良い。長年付き合ったなかだ」
「か、かしこまりました。申し訳ございません」
「しかし、その呼び名をするのはもはやお前だけになった。歳は取りたくないものだ。」
「で、私の事は打ち首にでもするつもりで」
「いや、そんな事はせんよ。正式に降伏をしたのだ。是非とも我々の奴隷になってもらう」
「私が受けた雪辱。こうしてやってきたのだ。今から楽しみで仕方ない!」
「サディストめ」
「では正式な手順に沿うぞ。表を下げろ」
そして、正式な降伏宣言を行う。
何かしらの彼らのお正当性がある風な言葉を連ね、それを認めるような文言を綴り、降伏をする。
カールは歪つな笑顔を見せ、完全に油断しきっている
好機は今しかない!
私はマリアが隠した槍を手にとり構える。
刹那───
迷いが生じる。
ユミルの方へと一瞬目線が行く。
カール王を殺せるチャンスはユミルを殺せるチャンスでもある。
一番憎き奴は誰なのか。
ユミルではないのか。
ユミルを殺せ!
そんな悪魔の囁きが実際に聞こえていないものの脳内へと直接流れ込む。
しかしそんな私を正気に保たせたのがマリアだった。
その間0.2秒
軌道修正し、カール王へと槍を投げる。
軌道は確実に彼の心臓へと打ち込まれる軌道。
当たれば即死間違なしだ。
しかし、ここで大きな誤算が生じる。
カール王へと投げ出された槍はユミルの胸へと刺さる。
ユミルはカール王を庇ったのだ。
それを見た瞬間つい言葉が零れる
「やった・・・!」
それは悪魔の笑みのような薄気味悪い笑顔を放ち、その後、護衛に切り捨てられる。
まるで今までの事が嘘でありこの一瞬のみが私の本性であるかのような気さえするこの笑みは決してきえず
こうして私の意識は完全に消えた・・・
FIN
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おまけ
血の匂いと生の臓物の嫌な触感が伝わる。
私は〇〇を食っている。
吐き出しそう
気持ち悪い
なんでこんな目に
姉妹達は泣き出しそうになりながらも食べている。
こんなの見せられて私が泣けるわけが無い。
「進み続けなきゃ」
ふと彼の最期の瞬間を思い出す。
彼の遺体は死んでもなおぐちゃぐちゃに刺されており放置されている。
もはや彼は動かない。ただの肉の塊だ。
悲しめば怪しまれる。だから私は泣かなかった。
母様も亡くなり、彼も失った。
もはや生きていく気力が失いかけた。
「もう死んでもいいかな」
彼の前で項垂れているとふと彼の太ももに何かを巻き付けられている。
「これは手紙・・・?」
それを取り出すとこう書かれていた。
【マリアへ 何があっても進み続けろ へロスより】
短い文。何を言いたいのかわからなかったけど不思議と涙がこぼれた。
まるで自分の気持ちを代弁してくれてるかのようなそんな気分。
これが例えへロスが書いたものじゃなくても。その言葉は確実に私の胸へと刺さった
そして現在(いま)、この言葉を糧に私は〇〇を食べている。
他人から見ればそれは狂気でもある。
「それでも私は進み続ける・・・・」
小さな声で何度も呟く
ふと何か異質な気配を感じる。
その気配を感じ取ると服装が異質な長髪の男性が経っている。
その顔立ちはどこか悪魔にも見える
「あなたは・・・・?」
「俺は今から2000年後の未来からやってきた」
「名前はエレン・イェーガー。『進撃の巨人』の最後の継承者だ」
「よろしく、マリア・フリッツ。最初の『進撃の巨人』継承者」
続く
「
へロスは原作で出てきた善人よりの中途半端なクソ野郎として書きました。
個人的に英雄へーロスの元ネタみたいな感じのキャラになります。
最後の王とユミルを殺す選択ですがユミルを選んだ場合は個人的には長女マリアが庇い、進撃の巨人ルートから外れるのでなんだかんだへロスの選択は最善策だったのだとは思います妄想だけど。
カール・フリッツは若干ゲイみがありますがどちらかというとへロスに対しては執念のような気持ちが大きいと思います。
次は進撃の巨人を継承したマリア・フリッツの話を書こうかなと思います。