途中でぶっ込んですいません
現代から遠く離れた未来。
世界は、ある1人の科学者の手に堕ちた。
崩れゆくビル、ビル、ビル。
荒廃した大地は、まさに地獄を思わせる様相である。
『生体反応確認、排除します。』
機械的に行動を宣言し、地獄を歩く生者に牙を剥く謎の怪物。
否、これは正しく機械。
今やこの世の支配者と化した、とある科学者の尖兵である。
「やっ…!やめて!この子だけは!」
「お母さん…!」
機械の兵士を恐れ、互を抱きしめる幼子と母親。
そんな言葉も虚しく、冷たき鋼の肉体はゆっくりと生者へ向かう。
『排除』
といったところで。
「…え?」
いつまでも来ることの無い痛みに疑問を感じ、母親が顔を上げる。
そこにあったのは
「大丈夫か?」
男。
この荒廃した地獄には似つかわしく無い、妙に小綺麗な容姿。
しかし怪しさは無く、その声は寧ろ暖かみを帯びる。
『生体反応解析…改造人間、ネオ・ファースト。』
「改造…人間…?」
「正解だ。じゃあ、さっさとお引き取り願おうか。」
『排除開始』
機械の声は男に返答を返すことなく、静かに排除を告げる。
「…人の話は聞いた方がいいぞ。」
男は呆れたように呟きながら、上着の前を開ける。
そこには、ベルトのような何かが巻かれていた。
「つーわけで、お仕置だ。」
『NEO TYPHOON ACTIVATED.』
取り出したカードをベルトに装填。
「…変身。」
ベルトの左右のスイッチを起動すると、ベルトから暴風が迸る。
その凄まじい風の中、男の身体は金属質、機械的な物に変化していく。
やがて男の顔は硬質的なヘルメットに覆われ
『NEO FIRST!』
機械音と共に、人を大きく逸脱した姿に変貌した。
未だ暴風は吹き止まない。
男の首から伸びたマフラーがそれを示している。
「あ…ああ…?」
「すっ…ご…」
「…離れた方がいいぞ、割と危ないからな。」
「えっ?あ……」
親子に声を掛けた後、怪人に向き直る。
優しげな声をしているが、その拳は強く握られている。
『排除ッ!!』
「うおっと」
怪人の高速かつ正確な打撃。
だが男は難なく避ける。
「ほいっ」
そんな軽い掛け声に見合わず
『排ッ』
男の拳は一撃で怪人を撃ち抜き、粉砕してしまった。
「さてと、帰るとしますかね。で、アンタ達は?ウチに来る?」
「…え?」
人の姿に戻った男が母親に話しかけるが、放心していたのか気の抜けた返答が返って来る。
「どの道、ウチ…『セクターK』以外この辺に安全な所無いし。ここら一帯はTROOPER共がウジャウジャいるからな。」
「…私達も、そのつもりで来たんです。元々私達が住んでたセクターも、ヤツらに…「お兄ちゃん、改造人間なの?」ちょっと、那月?」
母親の言葉を遮り、娘が男に問う。
改造人間。
世界を牛耳る存在、『ジェネラル』が使役する尖兵。
先程の戦闘用量産型アンドロイド『TROOPER』よりも遥かに強い力を持つ。
その問いに、男は暫しの沈黙の後膝を折る。
「…まあ、間違いでは無いな。確かに俺は改造人間だ。」
その言葉に、娘の表情は曇る。
「お母さん…大丈夫なの?」
「…あの、本当に貴方について行って大丈夫なんですか?」
無理もない。
今や改造人間とは、人類を脅かす恐怖そのものだ。
目の前に立つ男はそれと同様。
まるで言われ慣れているとでも言わんばかりに、男は返す。
「まあそう言いたい気持ちも分かるよ。だが、どの道安全なのはあそこだけだ。俺は信用しなくてもいいから、どうかあそこの人間は信じてくれないか?」
先程と同じく、優しさを内包した穏やかな声色。
「……」
この男が信用に足る存在なのか、判断は難しいがどの道進まなければならない。
「っと、自己紹介がまだだったな。俺は『風谷 剣』っつーモンだ。」
「剣…さん。」
母親は子を抱き上げる。
そして差し出された剣の手を取り、残骸の残る荒野を歩いていった。
〔セクターK〕
「この辺まで来りゃ安心だろ。」
この荒野には似つかわしく無い、白く無機質な壁の前で足を止める。
「オヤッサン、来客だ。」
『おお剣か、おかえり。今開けるよ。』
壁からの声の後、その壁は形を変える。
「うわぁ…」
「凄…」
「だろ?」
壁は扉の形を成し、独りでに開く。
その扉をくぐった先にあるのは
「人がいっぱい…」
先程までの荒れ様とは程遠い、活気のある街並み。
破壊し尽くされた外と比べ、ここはまだ過去の面影を残している。
「この人達は何処から…」
「ん?ああ、大方外からの人間だ。俺と一緒にココに来たヤツも何人かいるが…」
「剣、大丈夫だったか?」
街の方から初老の男が声をかける。
「おーオヤッサン。あ、紹介しよう。彼がココの防衛等その他諸々をになってる『ドクターK』。俺たちはオヤッサンって読んでる。」
「彼の紹介通りだ、よろしく頼む。そちらは?」
「私は紗凪晴子と言います。あと、娘の那月です。」
「晴子さんと那月ちゃんね。大分疲れただろう、ここでゆっくり休むといい。」
「あ、ありがとうございます。」
「…」
「一先ず此方に。諸々の手続きをしておこう。剣は休んでおきなさい。」
「うーっす。」
そのまま剣はどこかへ歩いていった。
「…あの、あの人は一体…?」
「剣の事かい?アイツはまあ…言ってみれば、私の息子代わりみたいなものだ。」
そう話すドクターの目は遠い。
何かあったのだろう
ひと目でそう思わせる。
「まあ私の昔話は後にしよう。まずは…」
「うーむ、暇だな…」
意味もなく歩き回る。
人を超えたこの力、最早通常の娯楽は耐久性の面で心許ない。
というか大抵のものは破壊してしまう。
「…ったく、メンドクセー…。もっかい外見に行くか。」
そう考え、門に足を向ける。
「ッ!?」
人を超えたのはフィジカルだけでは無い。
その超越的感覚、それが何かを捉えた。
「こりゃあ…『大物』だな。」
そのまま門に一直線。
「…こんな所か。何か、質問は?」
「ありがとうございます、今はこれで大丈夫です。」
「なら良かった。それじゃあアイツを…ん?」
手続きを終えたドクターの目に映るのは、凄まじい速度で門に向かう剣の姿。
「…またか?」
「YES!行ってくる!」
「行ってらっしゃい!あんまり無理するなよ?」
「はーい!」
そのまま足を止めることは無く、門から出ていった。
「…アレは?」
「剣は改造人間、その改造は肉体だけじゃない。感覚を強化し、諸々の異常を察知できるようになっている。ON/OFFも可能だ。」
「へ、へぇ…」
「えーと、この辺か…アレか?」
TROOPERとは違う、明らかにそれらよりも強化された異形の姿が目に映る。
頭部には巨大な目…否、昆虫のような複眼を持ち、左右の腕からは鎌のような刃が生えている。
その姿は、さながら螳螂の如し。
「貴様は…成程、貴様が例の『ネオ・ファースト』か。」
「おおー、俺有名人じゃん。」
軽口を叩きながら
『NEO TYPHOON ACTIVATED.』
ベルトを起動。
そのまま左右のスイッチを押す。
「…変身。」
その言葉と共に、その身体は異形へと変化する。
『NEO FIRST』
マフラーがはためく。
「貴様を潰せば、ここらの破壊も完遂できる。覚悟ッ!」
「覚悟すんのはテメェだ!」
吠える二つの異形。
互いに凄まじい速度で距離を詰める。
「フンッ!!」
「よッ!!」
鎌と拳が空を切る。
互いに当たりさえすれば一撃必殺級の破壊兵器。
空を切る互いの武器は、凄まじい衝撃で周囲に影響を与える。
鎌から生まれた衝撃波は遠く離れた瓦礫を切り裂き、拳による打撃は地を砕く。
〔こりゃあ…長引かせんのも危険か。〕
〔エネルギーも無限では無い…。次で決めるッ!〕
長引く戦いに終止符を打つため、その思考は互いに同じ。
ベルトに手を遣るネオ・ファースト。
そして
『CHARGE START』
ネオ・ファーストと怪人
二人の腕が光る。
その光は、片や拳に、もう一方は鎌に宿る。
「「ッ!!」」
二本の光が走る。
先に出たのは鎌。
「死ねェッ!!」
鎌から迸る光、それは衝撃波所ではなく。
光そのものが刃を形作り、敵の命を刈り取らんとネオ・ファーストに迫る。
が
『RIDER PUNCH!』
渾身の一撃。
拳から放出された竜巻は光の刃を消し飛ばし
「オォォらァァァァァァッ!!!!」
その拳は、怪人の身体に強く打ち付けられる。
「ぐぅッ…!!」
呻き声をあげる怪人。
「……ッハハハハハ…!まだだ!俺はまだ…!」
戦える
そう言おうとした。
しかし
「悪いが、お前は終わりだ。」
「ぐぉぉ…!?何だ…!?」
身体に打ち込まれた暴風。
その風は怪人の身体の中で暴れ回り、凡ゆる物を破壊していく。
「ぐあァッ…!!きッ…!貴様ァァァァァッ!!」
限界を迎えた肉体が爆ぜる。
その爆発の規模は凄まじく、遠く離れたセクターKからも観測できるほど。
「…どうやら、終わったようだな。」
「お母さん…!」
「大丈夫よ那月…あの、本当に終わったんですか?万が一にもあの人が負けたとなったら…」
「大丈夫だよ…『オヤッサン聞こえるー?』ほら。」
ドクターの通信から漏れる声。
間違いなく、あの男の声。
「アイツは私の最高傑作だからな。…いや、何も変な意味では無いのだが。」
「…凄い」
モニターに映る爆炎と、それに照らされた異形の姿。
その姿は無機質でこそあれ、恐怖を感じさせない。
陽子と那月がそれまでに見てきた改造人間とは、人類を積極的に蹂躙し、恐怖を振りまくだけの怪物だった。
だが、あの改造人間はそれとは違う。
明確な証拠こそ無いが、そう思わせるだけの雰囲気を纏っていた。
『ここら辺に他に敵はいなさそうだし、さっさと帰るべ。』
「分かった。気を付けてな。」
『うーい。』
マガツの方でも言いましたが、私基本的に次回予告とかできないのでご了承ください。
ちなみに、最後のバトルの『CHARGE START』はネオ・ファーストじゃなくてカマキリの方の音声だったりします。