免罪体質者がPSYCHO-PASSの世界を行く   作:アルトリア・ブラック(Main)

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始まり〜免罪体質〜
第1話『事件の始まり、免罪体質者』


物心ついた時、この世界の仕組みを見て違和感を感じた。

 

この世界は、私の知っている世界とは違う。

 

そう漠然と思ったのは10歳の頃、私の知っている世界はスマホが主流だった。

 

家の戸締りをするのが当たり前だった。

 

だが、この世界は何もかも違った。

 

スマホの代わりに宙に浮く画面、家の戸締りはしなくても大丈夫だという治安。

 

(…サイコパスが保障された安全な人間だから平気って…)

 

幼い頃からその感覚に慣れず、家の鍵を閉めることが多かった。

 

その度に朝、両親から閉める必要のないのに閉めたのかと言われることが多かった。

 

この世界は、数値化されたサイコパスが「色相」と呼ばれる視覚的バロメーターに変換され、その色合いや濁り具合などによって個々人の精神状態を簡単に測れるようになっており、市民達の日頃のメンタルケアなどに用いられるのみならず、進学・就職・結婚といった市民の人生設計そのものを決める指標としても活用されているらしい。

 

平たく言えば全てをシステムに委ねており、犯罪係数が閾値を超えない人間は人に害を与えない無害な人間であると保障されているらしい。

 

この世界には、犯罪がない。

 

まぁ、小規模な犯罪はあるものの、殺人や強盗殺人などと言った犯罪は消え失せた。

 

(…それでも、隣を歩く人間が100%安全な人間だなんて限らないのに…)

 

母と手を繋いで歩く。

 

「雪絵、今日も色相真っ白だったわねぇ、お兄ちゃんとは大違い」

 

そう言う母の目はこちらを見ない。

 

母は医師から処方されたサプリを飲んでいた。

 

ストレスケア薬剤というモノで、飲むことにより色相が浄化される薬とのことだった。

 

(そんなものに依存するぐらいの社会…おかしな世の中だなぁ)

 

母と手を繋いで家に帰り、母に言われた通り二階に上がろうとすると…

 

「義和!お願いだから病院に行って色相チェックして!」

 

姉の江美の声が聞こえてくる。

 

「うるせぇ!!行かねぇって言ってんだろ!」

 

兄の怒号が聞こえてくる。

 

「アンタがいたらサイコハザード起きちゃうのよ!入院して良くなるならそっちを取ってよ!」

 

サイコハザード。色相が悪化した人間がいることにより、周囲の人間の精神状態が悪化してしまう状態らしい。

 

階段を一段上がった時の物音で姉が気づく。

 

「雪絵、お帰りなさい」

 

深呼吸をして姉がやって来る。

 

「サイコパス、今日も良かったの?雪絵は優等生ね」

 

そう言う姉に抱きしめられる。

 

「………」

 

兄の色相が悪化したのは学校に通い始めてすぐのことだ。

 

元々兄は、感情豊かだった。

 

笑ったり怒ったりすることが子供ながらあり、正義感が強く、姉に暴力を振るおうとした人間を止めたこともあったらしい。

 

しかし、姉を殴ろうとした人間の色相は悪くなく、むしろ、サイコパスは兄より下回っていた。

 

姉の同級生は姉との相性が良いとシビュラシステムに診断されて友人になった。

 

しかし、実際は違った。

 

確かに本質的な相性は良かったのかもしれないが、相手はDV体質で姉を虐げて快感を得るような人間だった。

 

そんな同級生に姉は不満を漏らさず、シビュラに診断されたからという盲目的な感情で交流を続けた。

 

いわばDV男に貢いでも、それが相手の為と思ってしまうタイプだったのだろう。

 

姉の色相が一度悪化した時に、兄は正義感で同級生を殴った。それが正義だと確信し、結果的に学校で兄は浮いた存在になり、色相が濁り始め、学校自体に行かなくなったのは今年に入ってすぐだ。

 

(…昔だったら、こんな事で入院にならないのにな…姉の同級生を疑うってことはシビュラが勧めたものを否定するって話になるから…)

 

兄の色相が悪くなるのも当然だろう。

 

「先に部屋に帰ってなさい」

 

「うん…」

 

上に行く前に兄の部屋に向かって

 

「お兄ちゃんのやってる事は正しいよ」

 

そう言って階段を駆け上がる。

 

今思えば、ここで、もっと兄姉の話に耳を傾けていた方が良かったのかもしれない。

 

 

 

公安局刑事課一係の補充が行われてから数日後、公安局刑事課の元に一件の通報が入る。

 

『上の階から誰かが暴れてるような音がするから確認してほしいって通報なんだけど…さっき、通報者からの電話の後ろから聞こえて来る環境音をチェックしたら、どう考えても何か口論してる声と怒号が聞こえて来たわ』

 

唐之杜は眉間に皺を寄せて音を流す。

 

「…男」

 

常守の言葉に唐之杜志恩は『そう』と呟き、音量を少し上げる。

 

『男の怒鳴り声と男女の悲鳴、殺人事件ねコレは…』

 

鳴り止まないのを見るに、まだ暴れてるに違いないのだろう。

 

「急行します」

 

 

 

 

 

 

その日…

 

両親が兄を外に出そうと必死に説得してる声が聞こえて来る。

 

姉は私と一緒の部屋で耳を塞いでいた。

 

下の階から聞こえて来る怒号に姉は震えて『もう嫌、もう嫌だ』と呟いていた。

 

「お姉ちゃん…大丈夫。大丈夫だよ」

 

混乱している人間がそばにいるとかえって冷静になるというのはよく言う。

 

しばらくすると、突然静かになる。

 

「……?」

 

ガタガタ震える姉、静かになった下に違和感を感じる。

 

姉は混乱して余裕がなさそうだった。

 

「お姉ちゃん…ここにいて、ちょっと様子見て来る」

 

「………」

 

扉を開けて階段をゆっくり降りる。

 

ガチャっとリビングを開けると…

 

「!」

 

リビング一面真っ赤で、二人とも血に伏せていた。

 

「お母さん!」

 

そばに近寄って揺する。

 

「……」

 

脈を確認し、両親が死んでいるのを確認し、ひたすら冷静な自分にハッとなる。

 

この世界に生まれてからなんというか、生きている感覚というか、物語を俯瞰しているような、そんな感覚でいることが多かった。

 

ガタッ…

 

物音が聞こえ、階段の方を見る。

 

「いやぁぁああ!!」

 

「!!お姉ちゃん!」

 

姉の絶叫が聞こえて来て、急いで階段を上がる。

 

 

 

 

 

 

現場に駆けつけると静かになっており、騒いでいるような音が一切なくなっていた。

 

「踏み込むぞ」

 

宜野座執行官の声と共に室内に入る。

 

「……!」

 

「…手遅れか…」

 

悔しそうにする宜野座執行官。

 

ドミネーターをリビングの方に向けながらゆっくり歩く。

 

「ッ…」

 

リビングは一面血の海で凄惨な光景が広がっていた。

 

すると…

 

ドンッ!!と言う鈍い音が2階から聞こえて来る。

 

「「!!」」

 

「行きましょう!宜野座さん!」

 

「あぁ!」

 

ドミネーターを構え、2階に上がる。

 

階段には、男性サイズの足跡と子供の足跡があるのを確認する。

 

ドアを開け、ドミネーターを向ける。

 

「手を挙げろっ!」

 

次の瞬間、目に入って来た光景に息を呑む。

 

18歳ぐらいの女性の上に倒れ込む20前後の男。

 

そして、その男性をバットで殴ったのか10歳前後の少女がいた。

 

《犯罪係数0、執行対象ではありません。トリガーをロックします》

 

「…なに?」

 

宜野座さんが少女に向けたドミネーターからサイコパスの診断結果が告げられ、ドミネーターがロックされる。

 

代わりに震えている18歳の女性に向ければ…

 

《犯罪係数オーバー213、執行対象です。セーフティーを解除します。執行モードノンリーサル・パラライザー、落ち着いて照準を定め、対象を制圧してください》

 

宜野座執行官はドミネーターを下げる。

 

 




白澤 雪絵
【性別】女性
【容姿】黒髪に茶色の目
イメージは家入硝子

【家族構成】
両親、叔母夫婦、兄姉二人がいた。
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