免罪体質者がPSYCHO-PASSの世界を行く 作:アルトリア・ブラック(Main)
午前10:00、喫茶店にて
「やっぱり、事件に巻き込まれてた!!もう、心配させないでよね!」
由美は事件に巻き込まれていた報告をされ、机に伸びる。
「ごめんごめん。まさか、あんな大げさなことになるって思わなくて」
コーヒーを飲みながら言うと
「いやいや、二日間巻き込まれてたのになんでそんな冷静なわけ?!いやまぁ…?アンタの事だから鋼みたいなメンタルで凌いだんだろうけど…」
アイスを食べながらため息をつかれる。
「本当に死んでたらどうしてたの?好奇心は猫をも殺すって言うじゃない」
「死んでたら、その時はその時、だったかなぁ」
他人事のように呟くと由美は食べてたアイスをテーブルに置く。
「…ホント、自分に関して興味なさすぎるよね、アンタって…。アンタは自分の命に関してどうでもよく思ってるだろうけど、私は全然そう思ってないからね?親友を失いたくないじゃん」
「…でもさ、死にそうになったら殺してでも生きてたと思うよ」
慌てて言う雪絵に由美は悲しげな表情をし
「…アンタなら本当にやりそうなのが怖いのよねぇ…」
学生時代のアンタ手が出るの早かったしと言われる。
注文した食事が来たのを二人で食べ始める。
「雪絵はさ、この社会じゃメンタル強靭美人だからこそ、並大抵のことじゃサイコパスが悪化しないのは利点だと思うわよ。普通の人じゃ出来ない仕事、例えば潜在犯の心理状態を考えようとするんでしょ?」
「うんまぁ」
「でも、何でもかんでも理解しようとしてドツボにハマったら、きっと取り返しのつかない事になるよ?前雪絵が貸してくれた哲学者の本、確かドイツの哲学者フリードリヒ・ニーチェが『怪物と戦う者は、その際自分が怪物にならぬように気をつけるがいい。 長い間、深淵をのぞきこんでいると、深淵もまた、君をのぞきこむ』って言うじゃない?深く潜り込みすぎて帰って来れなくならないように気をつけなさいよ」
本気で心配している由美に苦笑いを浮かべ
「うん、気をつけるね、心配かけてごめんね、由美」
「ホントに!」
二人で笑い合う。
ー廃棄区画の闇市ー
「嬢ちゃん、年代物の葉巻をご所望で?」
「あ、はい。個人的に昔のもの集めるの趣味なんです」
そう言って闇市のおじさんが奥から何かゴソゴソ出して来る。
「今じゃ、葉巻はほとんど絶滅。こっちは超有害図書扱いされて図書館にすら置かれてない本達だよ」
「うわぁ、すごい、とりあえず全部買いたい」
「あははは、給料全部使ってまで昔のものを集めるなんざ、コレクターかい?」
車に荷物を入れながらおじさんと会話していた。
「えぇまぁ…葉巻はとりあえず全部買います。タバコもあれば一応」
「珍しい客が来たもんだ」
そう言って荷物を最後に乗せ終わった後一冊の本を出す。
2016年代に起こった事件の書が出て来る。
だいぶ古ぼけているが、連続殺人事件の被害者達の家族に焦点を置いた話だった。
自宅に着き、段ボールを部屋の隅に置くと葉巻を取り出す。
(葉巻まだあったんだ)
最近読んでいる小説のキャラが吸っているのを見て真似してみたいと思ったのは悪くないだろう。
葉巻に火をつけ吸う。
「…深淵を覗くとき、また深淵もこちらを覗いている、かぁ」
ここ数日、いろんな事があった。
更生施設の人間だけじゃない、殺人を起こしている人間と会うのは緊張感があり、ハラハラドキドキした。
〜更生施設〜
公安局の仕事はサブに近く、本業は更生施設の医師だった。
昔と違って事件がそんなあるわけでもないし、割と平和な分類だ。
「先生、ファイル持って来ました」
「ありがとう」
そう言って渡された4枚の書類を見ながらその書類に載っている人間の部屋の前を通る。
『犯罪係数360オーバー、回復の見込みはありません。処分をお願いします』
「………」
更生施設の管理長をしている人間からイヤホン越しに指示が届く。
人間の命を諦めるような言葉に雪絵は酷く落胆する。
同僚の二人が震えながらいた。『彼』は別段震えていなかったが。
「私やるから良いよ、部屋に戻って」
「そ、そうですか!?ありがとうございます!雪絵先生!!」
そう言ってバタバタ部屋に戻って行く。
「私もじゃあ先に帰りますね」
『彼』からそう言われ「ハイハイ」と返す。
「………」
ポチッとボタンを押して次のボタンも押す。
ボタンを押し終わり、通風口から毒ガスが出て終わる。
(…犬か何かかなぁ)
そう思いつつ部屋に戻ると、看護師がやって来てサイコパス計測器を出して来る。
『犯罪係数0、色相ホワイトカラー』
「…!お、お疲れ様です。先生」
「先にあがります」
そう言って私服に着替え車に乗り込む。
助手席に書類を置く。
「…更生施設とは名ばかりの拘置所だな」
タバコを取り出して吸う。
実行するのは本来、三人らしいが、この作業は年々ロボットに任せたいという意見が看護師複数から上がり、システムに移行されるとなったのだが…
『人の生き死にをシステムに委ねるなんて、本格的に人間が犬になる気がしますけど…』
そう溢した雪絵の意見が採用され、継続された。
車の中から空を眺める。
ため息をつきながら自宅に帰り、並べていた書類を片付ける。
犯罪を犯す前の人間を処分する。
その事に大きな違和感を感じていた。
手のつけられないドーベルマンを調教するのではなく、殺して解決するみたいな感覚にこの世界の人間がいかに、生死に無頓着か考えさせられる。
すれ違う赤の他人を警戒もしない。
変わらない日常が続いた中、由美が「またご飯食べに行こう」と誘って来る。
「人間って人を殺す事には躊躇いが生まれるよね、普通」
「唐突にどうしたの?」
デザートを食べながら呟く。
「最近、仕事でいろいろ」
人の生き死にを管理している上、守秘義務というものがあるため、詳しく話せないがぼかして言うと由美が「仕事のことで悩んでたの?」と言われる。
「そりゃあ、人は殺したくないし、死にたくないよ。当たり前じゃない?」
「じゃあなんで、更生施設なんてあるんだろう?」
そう呟くと由美は「んー」とフォークを咥えながら考え込む。
「心の健康を害した人間の治療をし、社会復帰を支援する…ためじゃない?ストレス溜め込んで爆発させないようにする施設じゃなかった?半世紀以上前の精神病院みたいな感じじゃない?」
科学技術省に入った由美は、雪絵からの結構重めの話でも色相を気にすることなく話せる間柄だ。
本人曰く、ストレスケアもあまりしていないとのことだ。
「…劣悪さは同じだと思うけどなぁ」
「まだこっちの方が良いんじゃない?え?看護師の中に潜在犯虐待している人でもいた?通報案件だよ、それ」
「いや、いないんだけど」
「いないんかい」
食べながら考え込む雪絵に
「雪絵はさ、一つのことに興味持つと獰猛な獣みたいな目するよね、こうキッと」
「そんな野生みたいな顔してる…?」
鏡を見て確認する。
「確かに雪絵みたいに日々考え続けて仕事に貢献するのは凄いと思うよ。私は今日明日の仕事のことしか考えられないから」
「給料は高いけど、事務仕事多いしなぁ」と呟く由美。
「最近、シビュラシステムが海外にも範囲を広げようとしているってニュースで見たんだけど、海外の前に自国のことなんとかしないのかなと思ったことあるんだよね」
「問いかけてみれば?」
「どこに?」
「わかんないけど、公安のお偉いさんに」
「えー」
自宅に帰り、サスペンス調の音楽を流しながらボーと天井を見上げる。
「…殺意を抱いている人間に、手段を与え、音楽を奏でるように犯罪を繰り返して行く…か」
槙島聖護と書かれたファイルには、犯罪の経歴が載っていた。
目を瞑り、いじめなどと言ったモノによって殺意が溜まった人間に手段を渡した彼の心境を考える。
「…人間の本質、殺しの手段を与えてどうするか…」
目を開けると、テーブルの横に半透明の槙島聖護が立っていた。
最近、犯罪者の心理傾向を理解しようといろんな事件の書類ばっかり見ていたこと、更生施設でのことがあってからこういう幻覚がよく見えるようになった。
廃棄区画の一角で行われていたことを思い出す。
「…輝いてたなぁ」
殺人を犯す人間はそこら辺を歩く通行人とは違い、活気があった。