免罪体質者がPSYCHO-PASSの世界を行く   作:アルトリア・ブラック(Main)

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最近読書にハマってるので投稿頻度が遅くなるかもです。ちなみに最近読んでいるのは『向日葵の咲かない夏』と『ハッピーエンドにさよならを』ですね

【変更点】
主人公は槙島聖護を知らない
(今改めて直してます)


第14話『喪失・中』

霜月監視官と共に歩いている最中もデータをみている雪絵に嫌な表情を浮かべていたが、咳払いする

 

顔を上げた雪絵はデータを消し、こっちを見る

 

「貴女の案内は法定執行官である常守朱が担当するわ、公安局内は基本的に監視官か常守朱に許可をとって移動して良いと局長から貰ったわ」

 

「はい、ありがとうございます」

 

更生施設とは全く違う格式のある廊下を通って、少し豪華な部屋に入る

 

「常守朱が来るまでここか、テラスで待っていてください」

 

「はい」

 

出て行った霜月監視官を見送り、テラスに出る

 

「フゥ」

 

ちょうどタバコを捨てる場所があり、その横でタバコを吸い始める。

 

黄色いパッケージのタバコ『キャメル』を吸う

 

清涼感のある味わいが広がる

 

「………」

 

データを開き、名前を確認しつつ、前後で明らかに色相が落ち着いている人間をピックアップする。

 

《ロボトミー手術》

 

時代が時代だったとはいえ、この手術は画期的なモノだと当時はもてはやされていた。

 

それが否定され、悪魔の手術と言われ、史上最悪のノーベル賞と言われた

 

その手術は人間が考えた中では最も恐ろしい手術の内容なんじゃないかと思っている。

 

タバコを吸わず、史上最悪の手術を思いついた医師の姿を思い出す。

 

その医師は、人の脳みそをいじって人格変化する事を間違いじゃないと、宣言した。

 

画期的な発案だとそれを信じた別の医師を思い出す

 

『あぁ、暴れ回る患者を落ち着かせる?任せてください。私がやります!』

 

幻覚が高らかに叫ぶ

 

『このウォルター・フリーマンが』

 

手袋もせず、7分で完了する手術を誇らしげに語るウォルター・フリーマンの姿

 

「うーん。まだ理解出来ない」

 

タバコの煙を吐き、その幻覚が消える

 

彼は犯罪者ではない、世間一般で『犯罪者』と定義される人間たちは無意味な殺戮を繰り返し、凶悪な犯罪者はそれをバラバラにしたりする行為を行う

 

だが、ウォルター・フリーマンは自分の行いを盲目的に信じた。

 

(…神経線維を切除するのに関心はあっても、人の気持ちを理解しない。人の心に関しての理解もまるでなかった…)

 

興味ないからこそ、ロボトミーの手術を敢行し続けられたのではないか

 

(あー…だから『ドライブスルー式ロボトミー手術』とかメチャクチャなことも出来たのか…)

 

人間の性格を、個性を破壊する権利は人間にはないだろう。

 

なのに、彼の行いは最後の最後まで医学の発展として相応しいと判断され続けた

 

(…全くの素人の猟奇犯罪者がロボトミーを簡単に出来るくらいだからな…)

 

猟奇犯罪者がロボトミーをすればそれは、強烈な程嫌悪され、異常と判断される。

 

しかし、医師が患者の心を無視して家族の意思だけを汲み取り(下手したらそれすらも取っていない)脳をアイスピックなんぞでいじくり回す行為は批判はされど、すぐに忘れ去られる

 

どっちも異常だろう。犯罪者か医師か何が違うのか

 

タバコを吸い、気分転換をすると、幻覚が消えて行く

 

「雪絵ちゃん。お待たせ」

 

常守さんがいつのまにか横にいた。

 

「!ご、ごめんなさい。来てるのに気づかなくて…」

 

慌ててタバコを消して謝ろうとすると、常守は微笑み

 

「ううん。3分前に来ただけよ」

 

常守に連れられ、部屋に向かう道中、常守が少し雰囲気が変わったことに気づく

 

まぁ、法定執行官になったのだからある程度雰囲気が変わっても良いのだが

 

それから場所を変え、会議室のような場所に通される。他の執行官達はおらず、灼監視官と炯監視官達に可能性のある人間達の話を始める。

 

「色相が変化したりするのは良くあることですけど、この三人は数ヶ月前までは潜在犯レベルに到達するぐらい色相が濁ってました」

 

「…それが何かしらの手術を施された時期を境に安定するようになったのか…」

 

全員の色相は56と固定されており、上昇もしなければ下降もしない不可思議な状態で止まっていた。

 

「雪絵先生、そのロボトミー手術って、施されるとどうなるんですか?」

 

灼の場違いのような元気な声にチラッと常守と炯を見る

 

何故か、灼に関しては色相が悪化しないだろうという確信があったが、炯と常守に関しては色相が悪化する可能性がある内容なので少し躊躇う。

 

「…内容が結構ヘビーですけど、大丈夫ですか?」

 

「大丈夫よ」

 

「…あまりにもグロイなら少し退出する」

 

炯の言葉に灼が苦笑いする。

 

 

 

「ロボトミー手術を施された人間はウォルター・フリーマンの手術では失敗もしまくってましたし、成功もしてました。それぐらい最悪な手術です」

 

脳の映像を出し、説明し始める。

 

当時の社会状況についても話すべきだと思ったが、あまり話してシビュラシステムに睨まれたくない。

 

「コレが受け入れられたのは当時増加傾向にあった精神病患者を入院させる施設が圧迫しつつありました。それに今も多少ありますが、暴力性のある患者は一定以上います。相手を殴ったら当然とこちらが責められ人は辞める」

 

どこも精神病患者を受け入れるのに逼迫しており、公にはなっていないであろう謎の死因も続出した。

 

あまりにも殺人性が問われるものは起訴されたであろうが、自殺に近いものや事故に近いものはそれだけで片付けられた。

 

今の更生施設もそうだが、昔の介護施設も何十年もいられたら困るような暗黙の考えもあった。金を落としてくれる患者ならまだ良いが連絡を断たれて『そちらにお任せします』なんて言うのは迷惑極まりない。そういう家族は患者が死んでも特に追及しないから事故に見せかけた死因も恐らくはあっただろう。

 

「…つまり、その凶暴性をなくしたということか…」

 

炯の言葉にはいと頷く

 

「別名『ドライブスルー式手術』なんて言うぐらい簡易的で非人道的な手術です」

 

「ドライブスルーって事は…数分程度で終わるのか?」

 

「はい、フリーマンで7分。脳を破壊するだけですから」

 

「………」

 

「粗暴な人間も人が変わったように穏やかになります。美しいものを見ても美しいと感じない。楽しいことをしても楽しいと感じない、無機質な人間になります。失敗すれば脳溢血ですが」

 

前の事件で逮捕した加藤俊樹のことを思い出す

 

「それで、この三人について調べて見てください。何もなければ良いんですが…人を殺していそうな人はこの人です」

 

そう言って一人の男性を出す

 

「春田 文章、30歳。学校を卒業してから薬局に勤務。しかし、24歳の時に色相が悪化100にいきそうだったため、両親がメンタルケア薬剤とセラピーを繰り返していた」

 

炯が腕を組みながら読み始める

 

「一回、長野県の更生施設に入り翌年にサイコパスが少し下がったことにより退院…しかし、粗暴さは変わらず、両親は廃棄区画から少し離れた場所に連れて行ってから春田文章の色相が56で安定し続けてる。両親との生活は続けてるみたいだけど…」

 

「両親は一度も家から出た形跡はない…サイマティックスキャンに引っかかることもない」

 

灼と炯は頷き『調査に行きます』と言って退出する。

 

 

 

 

 

 

朱は二人が出て行った後、ホワイトボードを見続けている雪絵を見る

 

「…幼い頃、両親はよく喧嘩していたものの、春田文章は親思いの良い子供だと近所からも好評だった…」

 

「雪絵ちゃん?」

 

そばに近寄って行くが、雪絵は気づいていないのか、ずーと画面を見ていた。

 

仲の良い写真が写り、雪絵の口調があからさまに変わる

 

「大事だから食べて自分の物としても問題ないだろうなぁ、排水溝に流すのは可哀想」

 

あまりにもグロい内容を淡々と言う雪絵

 

「雪絵ちゃん!!」

 

肩を掴んで揺さぶるとビクッとなり、我に返ったのか「え?」となっていた。

 

「あぁ…ごめんなさい。常守さん」

 

考え事に集中してましたと言う彼女

 

「雪絵ちゃん、無理していない?」

 

そう言うと、彼女はきょとんとした表情で

 

「無理してないですよ、事件が解決するならいくらでもします」

 

「そう…」

 

彼女と相対して見ると、本当に槙島聖護のような感覚に陥る

 

慎導灼のように共に立ってくれる人間がいなかった結果が彼女なんじゃないかと

 

彼女は犯罪者の心理を、異常犯罪者の心理を理解しようとしすぎて、自分がその異常者と同一化してしまうのではないかと不安になってしまう。

 

彼女の親友である由美も『放っておいたら絶対に何かやらかす』と言っていた。

 

異常犯罪者のような、例えば、槙島聖護のようにナイフで人を殺している瞬間にも、彼女の犯罪係数は0のままなのだろう。

 

シビュラは彼女や槙島の存在は稀有の存在、特異性のある存在だと、その脳を欲しているが、常守からしてみれば彼女はシビュラにとっての『怪物』だと思っていた。

 

彼女や槙島という存在がいつまでもクリアでも、集団で考えた場合の可能性を考え、いかに彼女の危険な存在がわかるだろう。

 

「常守さん?」

 

声をかけられてハッとなる。

 

「ごめんなさい。ボーとしてしまって…調査結果次第伝えるわね」

 

「はい、お願いします」

 

彼女を玄関まで案内する

 

「体に気をつけてね」

 

「はい」

 

車に乗り込んだ雪絵を見送る




【参考文献】
『ロボトミスト-3400回ロボトミー手術を行った医師の栄光と失墜』
著者名・ジャック・エル=ハイ著 岩坂彰訳
出版社・東京ランダムハウス講談社
出版年月・2009、7

トラウマになった場面『今の手術方法だと時間が掛かってしまう。何か手っ取り早いものはないかと自宅の台所に来た時良い物を発見した。コレなら上手く行けると…台所にたまたまあったアイスピックを見つける』

…発想がサイコパス
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