免罪体質者がPSYCHO-PASSの世界を行く   作:アルトリア・ブラック(Main)

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当時の小説読み直してなんで自分はこの話題を書いたんだろうかとちょっと後悔


第16話『社会の在り方・上』

テラスに出ると、肌寒いくらいの風が吹く

 

灼は自動販売機の前にいた。

 

「………」

 

プレミアムメンソール・オプション・パープル・ワンを吸い始める。

 

ブルーベリーのような香りがしてくる。

 

ロボトミーの手術には副作用がかなりある。

 

春田文章にはその傾向はなかったが、こちらの質問に一定以上は答えないというのはその症状に近かった。

 

ロボトミーは感情を失うが、大体一つの感情を持てるのだ

 

それが『憎悪』だったり『怒り』だったり『喜び』もある。

 

(…春田文章の母親は息子が潜在犯に落ちるぐらいならと、違法手術を誰かに依頼した。ロボトミーの手術を受けた患者の家族の多くは患者自身と向き合ってない例が多い…)

 

「雪絵先生、コーヒー飲めます?」

 

そう言って缶コーヒーを渡してくる。

 

「あ、大丈夫です。ありがとうございます」

 

そう言って受け取ると、隣に灼が寄り掛かり

 

「現場に行った時、メンタルトレースしたんです。そうしたら春田に一発で心臓を刺されて終わりました。正直あんな感覚何度も体験したくないって思いました」

 

笑顔で言う灼

 

現場の凄惨さを見て気を病むどころか、気にしていないのだろう。

 

そこらへんに異質なものを感じるが、刑事としていちいち気を病んでいたら務まらないと言う気持ちもあるのだろう。

 

「雪絵先生は、どうして、犯罪者の心理を理解しようと思ったんですか?」

 

慎導灼からは異質な何かを感じていた。

 

メンタルトレース、高度な共感により精神的ボーダーラインを越境し追跡対象者になりきるらしく、物的証拠が揃っていたあの現場で、被害者の意識にメンタルトレースしたらしい。

 

「犯罪は人間が唯一犯す行為だと思うんです。ライオンが群れのボスになるために同じライオンを殺しますけど、人間みたいにいろんな方法で殺そうという発想をするのって人間しか出来ないじゃないですか」

 

煙を吐き、空を見上げる

 

「犯罪を犯して、それを風化させないために起こす側の気持ちを理解してみようと思ったんです。理解出来ない彼らにも必ず、動機となり得るべきものがあるんだろうと、犯罪者の心理を理解しようとし続けてたら、いつのまにか犯罪者自身になりきってしまって…」

 

苦笑いしつつ言うと灼は「僕もよく炯に怒られるんです。雪絵先生も一人の時はやらない方が良いんじゃないですか?」と言ってくる

 

「そうですね」

 

「さっきの春田に関してなんですけど、なんで食べたなんて発想に行ったんですか?」

 

「…本人の過去が元アメリカの犯罪者に似てたんです。1994年11月28日、アメリカの連続殺人犯。 ミルウォーキーの食人鬼との異名を持つ殺人鬼です。推定17人の人間を殺害して食べたらしいです」

 

そう言うと灼が『うぇー…』と言う。

 

「前頭葉を切り取られた春田は、色相が一定以上変わらない代わりに親への愛情だけ残っていた。普通なら殺すなんて発想思いもしないでしょうけど」

 

春田は残った感情でバラバラにしたんだろう。

 

「…まだ問題はあります。ロボトミーをした犯人です」

 

「うん、それは分かってます」

 

「それで少し疑問に思ったんですけど…」

 

「はい」

 

二人は向き合い

 

「こんな狂った医療技術をしようとしたなんて相当な潜在犯でも無理だと思うんです」

 

人の脳を刺そうなんていうイカれた事を考えてもサイコパスはクリアなままかもしれない。

 

「……社会の抜け道になるような…シビュラに見つからないように出来る何かがあるはずなんです」

 

 

 

 

〜シビュラ〜

 

細呂木局長の元に一人の監視官がやってくる

 

「この時期に免罪体質者が3人同時に現れるなんて奇跡に近い」

 

局長の言葉に監視官の義体を使っている彼女は「そうね」と言う。

 

「まだ、犯人が免罪体質者だとは断定出来ていないけれど、白澤雪絵のプロファイリングでは、かなりの確率で免罪体質者だと判明した」

 

細呂木は彼女に『尤も最優先で取り込むべき人間は、白澤雪絵だ、彼女の精神は我々の総意を持っても計り知れなかった』と言う

 

彼女の友好適性が唯一見つかったのは良い事だ

 

「しかし、槙島聖護の件もある。事実を打ち明ける事は最優先であり慎重に行われるべき行動だ、異論はないか」

 

「もちろん私達に異論はないわ、あちらに戻って最善策をとりましょう」

 

「そうするか」

 

 

 

 

〜???〜

 

無菌室のように殺菌された真っ白な部屋

 

中央にある人一人分が横になれるぐらいのベッドとその頭上にある。強烈なライト

 

ベッドから離れた壁際にアイスピックとハンマー、そして、小さな皿が置かれていた。

 

そして、ベッドの頭上には半分壊れかけの古いラジカセから不協和音が響く

 

「"科学はパンドラの箱であり、中に入っているのは希望か世界を恐怖に陥れる悪魔が入っているのか、私達は分からない"」

 

本を読みながらベッドの横脇にある椅子に座って話している男がいた。

 

「おれは…俺は、間違ってない、おかしくなんてない」

 

そう呟く男は震えながらベッドの上に乗せられていた。

 

普通に横になっているのではなく、ガチガチに拘束された状態で懇願するように呟く

 

男は、本をペラペラめくる手を止めない

 

「せ、先生…息子は治るんですか?」

 

無菌室の外から声をかけて来る女性

 

「治りますよ、サイコパスの綺麗な健全な息子さんに」

 

「そ、そう!ならよかった!頑張るのよ!智和!」

 

そう呼ばれた智和は涙目になりながら「母さん!俺はどこも悪くない!たまたまストレスが溜まっちゃっただけなんだよ!!」

 

と叫ぶ

 

【サイコパス300、ダークイエロー】

 

表記された数字に母親は「あぁ」と顔を覆う

 

「なんとか…息子を治してください。お願いします。雄二先生…!」

 

「任せてください。お母さん」

 

笑顔を向けて言う

 

お辞儀をして涙を拭きながら去って行く母親

 

雄二は本にかかった埃を祓う

 

「コレ借りた本なので綺麗なところに置いておかないといけないんですよ」

 

雑談をしながら患者に近づく

 

怯えながら歯をガチガチさせる患者

 

「あ、コレ知ってます?超有害図書扱いされてる本です」

 

『ロボトミスト』と書かれた本を見せる

 

「イカれた精神科医の事を理解しようと調べ尽くした本です。借りた本には禍いの科学なんて言われてますけど、私は、この手術割と理に叶ってると思うんですよ」

 

本を離れたところに置き、アイスピックとハンマーを持つ

 

「イカれた奴は発想もイカれてるんですよ、ウォルター・フリーマンの発想は医学界を激震させましたが、人間としては一層衰退してしまった」

 

患者の頭上に行くと絶叫しながら逃げようとする

 

「"あなたたち外科医の手は優しく賢い。神があなたたちに多くの黄金の帯を与えている"」

 

瞼を掴み、静かに語りかける

 

頭も固定されているというのにひたすらに逃げようとする患者にため息をつき、離れたところから注射針を持って来る。

 

暴れる患者の首に針を向ける

 

「あぁ!!!嫌だぁ!!」

 

「……」

 

刺した瞬間、患者が静かになって行く

 

「おれは…、おかし、くない」

 

瞼を持ち上げ、アイスピックを向ける

 

「ゃ…だ、お、かしくない」

 

「"私たちの魂を永遠の地獄から救い出す。色と音の真の美を与えてくれる"」

 

あぁぁあとひたすら小さい声で何か話していた。

 

「"あなたたちが私に与えた美はもっと遥かに美しい、彼らは私の心を救い、私の魂を自由にした"」

 

 

 

 

血に汚れたアイスピックとトンカチを洗面台で洗い終わり、患者が両親と会っている光景を見る。

 

ボーとしている患者に相反し、両親は涙ながらに喜んでいた。

 

外まで見送り部屋に鍵を閉め、自宅に帰る

 

入った瞬間に電気がつき、モニターが現れる

 

《サイコパス10、色相ホワイトカラー》

 

『お帰りなさいませ〜今日の午後から予定が入っております!』

 

「ワッツ、ニュース流して」

 

『かしこまりました〜!』

 

ワッツと名付けられたイカのようなマスコットキャラクターがモニターを持ち上げる

 

《先日から繰り返し発生している殺人事件解決のため、厚生省公安局は犯罪心理学者として白澤雪絵が抜擢されました》

 

そう報道されてる彼女を見て飲んでいたトマトジュースを置く

 

「犯罪心理学…へぇ、やっぱり凄いんですね、彼女」

 

借りた本を手に取ってめくる。

 

『正義が愚行に変わる時』

 

 

 

「あー…!事務仕事終わったぁ!」

 

場所が変わって科学技術省の一室にて、由美は終わった書類の山を見て背伸びする。

 

科学技術省は厚生省公安局に並びエリートコースの一つだ。

 

しかし、厚生省の公安局と違って命の危険が日常茶飯事にあるわけではなく、多くの人間は公安局よりもこちらを選んで入ってくることが多い。

 

主にフォログラムに関しての仕事で、常に新しい発展のために存在していた。

 

由美は現在、研究員が立ち上げた動物実験の結果の報告書をあげていた。

 

「由美さんって色相美人ですよね、ストレスケア薬剤飲まないなんて」

 

同僚からの言葉に由美はいやいやと手を振り『年に一回はセラピー行ってるよ』と言う

 

(まぁ、本当に色相美人なのは雪絵だけどね)

 

動物実験の結果を報告するのは、動物といえどストレスが溜まる仕事だ。

 

「由美さんのご友人って最近話題の白澤雪絵さんなんですよね、やっぱり、色相美人の人には色相美人の友人がいるんですねぇ、羨ましいなぁ」

 

同僚の言葉に「そうですかね」と言う

 

初めて雪絵と会ったのは、シビュラ友好適性の一人として彼女が出て来た。

 

親からは『両親が幼い頃に死んで兄姉二人が更生施設にいる潜在犯の家族を由美に勧めては来るなんて…』と不満そうにしていたが、実のところ由美は潜在犯の家族まで潜在犯になりやすいとも思っていなかった。

 

(…雪絵、目死んでたなぁ、あの頃…)

 

目にハイライトがないというのはあの事なのか、ここではないどこかを見ているような目をしていた。

 

『よろしくね、雪絵ちゃん!』

 

そう言って手を差し出すと雪絵は「よろしく」と挨拶して来た

 

『雪絵さん!そんな本、学校に持ってこないでください!生徒のサイコパスが濁ってしまうでしょう』

 

教師の言葉に雪絵は不満そうにしつつもごめんなさいと言っていた。

 

雪絵が持って来た本は有害図書扱いされており、どう手に入れたか分からないが、今は再販なんてしていない『アンドロイドは電気羊の夢を見るか』なんて本を読んでいた。

 

由美は読んでも幼かった事もあり、割と理解出来なかったが、雪絵の話を聞けば、その本がいかに危険な話題を取り上げているか知りちょっとだけ引いた事があった。

 

でも、雪絵の話は面白かった。

 

『可能性の社会、モノの見方が違えば全体の見方も変わる。本って、そういうの考えられていいのに、ただ害悪だって言って有害図書扱いするなんて、過去の作者への侮辱じゃない?』

 

雪絵は過去を大事にしていた。妙に大人っぽい所も過去に起こった事を見て気に病むだけじゃなくて、もう二度と同じ過ちを犯さないよう、こんな世界にならないよう勉強する人だった。

 

『由美のサイコパス、今日も25と安定してるわ、やっぱりシビュラ友好適性って間違いじゃないのね…』

 

雪絵の言う事は確かに一理あった

 

シビュラシステムからの適性をただ受け入れるだけじゃなく、より良い未来のために過去を振り返る必要性

 

「雪絵って、未来見すぎてて足元見てるのか時々不安になるんだけどねぇ…」

 

犯罪者の心理傾向なんて危なっかしいものを学んでいる雪絵のサイコパスが決して曇らなくても、雪絵自身の魂を悪に染めて行ってしまうのではないかと思っていた。

 

同僚と話していると、扉が開き入ってくる人物がくる

 

「あ、お疲れ様です!松本部長!」

 

「お疲れ様です」

 

そう言って笑顔で入って来た部長・松本雄二

 

由美の一個上だが、サイコパスが悪化しづらいことと多くの研究を上げ続けていることからその役職についている。

 

挨拶終わり、報告書を上げに行こうとすると…

 

「佐藤さん」

 

松本雄二が立っており、微笑みかけてくる。

 

一言言ってイケメンであり、身長もそこそこある事から結構モテるだろう人物であり、恋人適性云々を無視して同僚たちや後輩が部長にアタックしているぐらい話が上手なところもあった。

 

「はい、あ!仕事終わりました!後で確認お願いします」

 

そう言ってデータを送ると笑顔で「はい、確認しておきます」と言ってくる

 

「そういえば、佐藤さんって白澤雪絵さんと友人関係なんですか?」

 

「え?あぁ、友人です。雪絵がどうかしました?」

 

そう言うと部長はそこそこデカい紙の本を見せてくる

 

まんま有害図書で由美は慌てて、その場から席を外す

 

有害図書はエリアストレスの原因になりかねない。

 

雪絵が喫茶店で堂々とデカい字数の有害図書を読んでいたのを見た店員からお客が無意識にストレスが溜まり、エリアストレスが上がった事があった。

 

自動販売機の近くに来ると、部長は苦笑いしながら「すみません。いつもの癖で、この本、その雪絵さんにお借りしたんですけど、お返ししたいと送ったんですけど、全然メール見ていないのか返事が来なくてどうしようかなと」

 

「あー…雪絵って知らない人からのメールって無視してるんですよね、私と公安局の刑事二人しかメールアドレス知らないんじゃないですかね?」

 

そう言って本の題名を見て「雪絵の趣味は知ってましたけど、部長もこう言う本読んでも色相濁らないんですか?」という。

 

題名を『ロボトミスト』と書かれた本だった。

 

超有害図書扱いされている本だ

 

「全然濁りませんよ、彼女とは喫煙所で会ったのが初めてで、その本お借りしたんです」

 

返せる手段がないと言っていたので、由美がそれを受け取り「じゃあ、私から返しておきますよ」と言う

 

「ありがとうございます。由美さんもこう言う本読むんですか?」

 

「え?まぁ、時々、私も雪絵ほどじゃないですけど色相は濁りにくいんですよ、まぁストレス溜まりすぎると悪化しますけど」

 

そう言って頭を下げて走って行く

 

【佐藤由美 サイコパス31 色相クリアカラー】

 

 

 

「…たった一人の友人…かぁ」

 

由美を見て微笑む松本雄二




【引用元とモデルとなった事件】
・ジェフリー・ライオネル・ダーマー
1978年から1991年にかけて、主にオハイオ州やウィスコンシン州で17人の青少年を絞殺し、その後に屍姦、死体切断、人肉食を行った。その突出した残虐行為は、1990年代初頭の全米を震撼させた。またこの事件では、ミルウォーキー警察当局の無能さと、人種的および性的少数者に対する偏見がジェフリーの蛮行を許したとして厳しく非難されることになった。
ちなみにコイツもロボトミーを被害者にやってます。

主人公がトレースした相手であり、笑顔で解体してから食べた事伝える。

・メンタルキラートレースの表現の仕方
ビデオを入れた時の強烈な砂嵐が主人公の目から見えており、精神そのまま犯罪者に共感する。

普通に出てくるが、絶対に犯罪者達は自分なら元の砂嵐の中には戻ろうとしないため、外部からのアクションがないと反応できない
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