免罪体質者がPSYCHO-PASSの世界を行く   作:アルトリア・ブラック(Main)

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誤字報告いつも見て直してます。本当にありがとうございます。

ちなみにオリ主の性格はサッパリです。



第18話『心の在り方・上』

 

〜10分前〜

 

灼は炯に報告した後、シビュラシステムから連絡が来る

 

『松本雄二は先天性免罪体質者ではない』

 

突然言われた内容に灼は何も言えなくなる。

 

雪絵の話では、一連の事件の犯人…ロボトミーをやっている人物は免罪体質者の可能性があると話をしていた。

 

つまり、雪絵の推測は外れたということになるが…

 

『過去、母親を亡くしているが、彼の犯罪係数は一度上昇し落ち着きを取り戻している。科学技術省に入る前に犯罪係数が規定値を超えたこともあった。普通の人間と変わりない』

 

「でも、サイコパスは0を出しました。免罪体質者でないと出せない数値だって…」

 

『ごく稀に普通の人間が出すことがある…が、原因は分からない。彼を拘束し、一連の事件の関係性を探れ』

 

局長からの言葉に頭を掻きながら唸る

 

「局長、後天性免罪体質者の可能性はないですか?」

 

その言葉に局長は『なんらかの外的要因でしかあり得ない』と言いつつ『引き続き捜査するように』と言って切られる。

 

「うーん。違ったかぁ…」

 

免罪体質は生得的で生まれた時からあるものだ。

 

白澤雪絵先生なんて免罪体質者の中でも槙島聖護の次に異質な存在だとシビュラシステムは言っていた。

 

『灼、お前は誰かに命綱を握ってもらいなさい。決して独りになってはいけない。慎導灼として生きてほしい』

 

父の言葉を思い出し、空を眺める

 

『300オーバーだったら執行しても良いですよ、…どんなに優しい人間でも取り返しのつかない事をしたらそれ相応の罪を償うべきだと思いますよ、昔は正義感があっても、それは昔でしかないので』

 

そうあっさりと兄の処遇について言った雪絵を思い出す。

 

免罪体質者は孤独を約束されている人間だと、シビュラシステムは言っていた。

 

他者にいたずらに共感することも情に流されることもない外側の観点から物事を見えると

 

白澤雪絵には、慎導篤志のような存在がいなかった。

 

『雪絵ちゃんは怪物じゃない。怪物だと自覚してしまったら最後なの』

 

常守朱の言葉を思い出しため息をつき、背伸びする

 

「さてと、雪絵先生迎えに行こうかな」

 

 

 

 

 

公安局に向かう車の中で雪絵は松本雄二の経歴を見て確かに違和感を感じる部分は山のようにあった。

 

父親である松本雄三は官僚の一人であり、科学技術省に勤めていた経歴がある。

 

二人の息子がおり、一人は松本雄二、弟は姓が変わっており、米澤隼斗となっていた。

 

公安局に着き、松本雄二と話す為に部屋に行く

 

「私が最近開発しているのは、新型前頭前野の切除術です。手術の内容はロボトミーと大差ないと思いますが、問題は四時間の時間を要すること、システムを行使しての切除をして色相を低下させる。それが私の掲げている議題です」

 

「それを許可なくしている可能性はないのか?」

 

「ありませんよ、上層部からOKをもらった場合にはしていますが」

 

炯監視官との会話に松本雄二はニコニコ笑う

 

「つまり、実行しているとみて間違いないですか?」

 

「上からOKをもらった人間はね?監視官も思いませんか?増え続ける潜在犯、元刑事の方にまでロボトミーはしませんが」

 

炯が尋問中、雪絵が入ってくる。

 

「炯監視官。変わってもらって良いですか?」

 

それを言われた炯は頷き、後ろにある席に移動する

 

「一連の事件、同窓会爆破事件の犯人といい、母親を食べるなんていうことをした男も、あなたが施術した患者で間違いないですか?」

 

「…えぇまぁ、そうですね、記録も取っているので見せましょうか?」

 

そう言ってデータを渡してくる

 

別室では常時、二人の犯罪係数を計測している。もし、松本雄二のサイコパスが上がれば即逮捕の流れになる。

 

「加藤秀樹、爆破事件の犯人です。彼を治療したのはあなたじゃない」

 

雪絵のハッキリした声に松本雄二は固まる。

 

「彼を治療したのは松本雄三。現在76歳の高齢の医学部教授ですが、彼の元にも患者は山のようにくるんでしょう?あなたが請け負った人間の数名は感情は無くすものの一通り暮らしていけるレベルにまでなってます。ただ一つ、あなたの手術で植え付けられているのは【家族への愛】松本雄三の治療では副作用が大きく出て介護がなければ生きていけない人間まで出た」

 

淡々と話す雪絵に松本雄二は手をテーブルの上に置く

 

「あなたの父親は異常なほど【ロボトミー】にこだわっている節があります。あなたの弟さん…名前を変えて今は米澤隼斗さんと言いましたか、彼からあることをいろいろ聞きました」

 

「弟から?何を?」

 

それでも笑顔は絶やさない

 

「父親は貴方のことを最高の息子、弟さんのことを出来損ないの息子と呼んでいたみたいですね」

 

「いかにも…父は強烈なほど社会的地位を気にするような人でしたからね、特にある時期を境に狂ったように私たちに英才教育を施して来ました」

 

松本雄二の淡々とした声に雪絵はため息をつき

 

「父はとにかく槙島聖護という男が大事な存在だったようですよ、毎日仕事をして帰る前に槙島聖護に挨拶に行くくらいは」

 

「……槙島聖護?」

 

「あれ?ご存知ないんですか?知っていると思ったのに」

 

そう揶揄うように言うと雪絵は咳払いし

 

「貴方、ロボトミー手術を受けましたね、雄二さん」

 

「!」

 

そう言うと後ろにいた炯がビクつく

 

「執刀医は父親の松本雄三、二人の息子にロボトミー手術をし、弟の方は失敗、貴方の方は奇跡が重なって大成功、本来あり得ないD判定の適正からA判定まで一気に上がった。そんな貴方は科学技術省に入ったわけですが…」

 

雪絵は厳しい眼差しで彼を見ると

 

「ロボトミー手術の弊害は吐き気や無感動、失禁だけじゃない。あなたは唯一の成功例…いや、何かしら失ったんでしょう。例えば扁桃体とか…あなたは…」

 

それ以外にも多くの副作用と弊害はあるが

 

「何を失ったんですか?」

 

 

 

 

 

ー??年前ー

 

 

ザァァアアと雨が降りしきる中、雄二の記憶の中にあったのは父親がいつも車の中で、雄二を待たせてどこかに行っている様子だった。

 

出かける前は俗に言う無口な父親で、教育熱心で、サイコパスの悪化を何よりも嫌っていた。

 

色相の悪化は潜在犯になり、更生施設に入ることを約束されている。

 

いわば人生の負け組という認識らしかった。

 

母は生まれた時から色相が濁りやすい人で、父と結婚したのもシビュラに勧められたから結婚したんであって、そこに愛情なんてものはなかった。

 

ただ二人の息子が生まれ、弟が生まれてからすぐに亡くなった母、それを見た父はある程度成人した自分と弟の隼斗に脳へ外科的な手術を決行させた。

 

それを受けた弟は色相の低下が見られた代わりに、感情というものをなくしたかのように、実際の年齢よりも低い言葉で話すことが増えた。

 

弟と違って自分は人格まで大きな変化はなく、いつも通りと変わらない生活を送れた。

 

何をしたのか分からないが、色相が50以上上がらないのを見て父は感激していた。

 

「お前は出来の良い息子だ!!」

 

そう高らかに叫ぶ父、実際の年齢より低い知能で話す弟を無視して父は自分を連れて何処かへ向かった。

 

「槙島さん。息子を連れてきました」

 

そう言って父がやや強引に手を引いて向かった先にいた白い髪の男性の目を見てハッキリとわかった。

 

『底なし沼のような目をしている』

『空虚な目をしている』

『そこに父は映っていない』

 

父の顔を見て、父が心底悲しい生き物だと思った

 

「うん、ありがとうございます。松本さん」

 

そう言って槙島の手に大きな札束が手渡される。

 

「槙島さんのためなら…」

 

父の自慢話に槙島さんと呼ばれた男は、何も聞いていなかった。

 

笑顔で相槌はしているものの、興味なさそうな目をしていた。

 

しばらく話した後、父が車の方に行ったのを地面に座って待っていると…

 

「お父さん、変わり者だね坊や」

 

そう話してきた槙島さんは、少し段差の高いところに座り話しかけてくる

 

「槙島さんのことすごく好きみたいですよ…」

 

そう呟くように言う、目線を父の方に向けていたか知らないが、槙島さんは本当に声色一つ変わらず

 

「好き、か、それは単なる偶像崇拝と変わらないだろうに」

 

槙島さんは自分を見て頭を撫でてくる。目線の関係で槙島さんの表情は上手く読み取れない。

 

「自分の息子の人生を差し出してまで僕のことを崇拝してくれているのは助かるかな、でも、可哀想に」

 

そう言って立ち上がり

 

「何か困ったことがあったらウチへおいで、まぁ、君のことだ、僕のことはあんまり興味持たないだろうけど」

 

そう言って背を向けて部屋に入って行く槙島さん

 

 

 

 

 

目の前に座った一人の女性を見てまさか思い出すことがあるとは

 

「あなたは、何を失ったんですか?」

 

そう言う彼女の言葉に笑顔を向け

 

「そうですね、あれからあまり『恐怖』を感じないんですよ、自転車の車輪に指を突っ込んでも、轢かれて足を失って義足になると言われても、別に何も」

 

彼女と公安局の刑事は対照的な表情を浮かべていた。

 

公安局の刑事…監視官の方は不安げのような表情に対し、彼女は何も思っていないような『槙島さんそっくりの空虚な目をしていた』

 

笑顔を見せながら話す

 

成人してからもサイコパスは上昇する傾向なんて微塵も見せなかった。

 

有害図書を読んでも、猫を解体しても、何も感じなかった。

 

(…あぁでも少し感じる気持ちはあるけれど…)

 

「貴方がロボトミーを施した複数の患者の内数人が殺人事件を引き起こしてます」

 

「許可がありますよ?更生施設に入れないからストレスケア薬剤多用してでも、良くなって欲しいって」

 

「だからロボトミー手術?」

 

嫌悪感のあるような声を出しているが、彼女の目は先ほどから何も変化していない。

 

「ウォルター・フリーマンのように杜撰な管理状態ではやっていません。上司に意見書を提出し、許可を貰って実行しています。まぁ、厚生省にまでこうしていると伝えそびれたのは確かです。そこに関しては罰はいくらでも受けます」

 

彼女を見るために、少し前のめりになると

 

「私は一応医師免許も持ってます。私はあくまでウォルター・フリーマンであって、ジェフリー・ダーマーではないですよ、それに、術後の患者達の様子を聞いていましたが、患者の殺人は医師の殺人ですか?例えば内臓の手術をした患者が退院した後、殺人を犯したら殺人は医師の責任になると思いますか?」

 

「内臓の手術の例は医師の殺人じゃないです。問題は脳みそをいじくり回して感情を喪失させた故の殺人行為は貴方にも責任は問われます。半世紀以上前にあった法律の内容ですが、殺人幇助の罪で貴方を牢獄に閉じ込めておくことだって出来ます」

 

《白澤雪絵 犯罪係数30。松本雄二 犯罪係数0》

 

まるで壁に話しかけているように意思の強い、彼女に微笑みが溢れる。

 

「雪絵さん。貴女は前頭前皮質の灰白質が低下傾向にあり、扁桃体も活動低下にありますよね」

 

「…!」

 

初めて彼女の目が見開かれる

 

科学技術省に勤めているからこそ分かる情報。各省庁に所属している人間の健康診断の情報がフルオープンなのもいささか考えものだが、その人間のデータを見比べて少しわかったことがある。

 

高い地位にいる人間ほど、サイコパス及び色相がクリアだということ、そして特定の職業に就いている人間の脳の構図が世間一般の人間の脳とは少し違うことが分かった。

 

「幼い頃に兄を木製バット脳天をフルスイング、両親の惨殺死体を見たらしいじゃないですか、それでいて貴女の犯罪係数は規定値を超えなかった。それは、脳に異常があるから、私は思うんです。サイコパスも治せるんじゃないかと」

 

「………」

 

彼女の目が初めて下を向く

 

「貴女なら分かりますよね?サイコパスという言葉がどちらを指しているか」

 

「…仮に、私がそうだとして、今この状況と何が関係あると?私の脳を治せるとして、貴方は幸せですか?」

 

わずかに深呼吸したのを確認する。

 

初めて見た彼女の動揺。色相及びサイコパスが悪化しないという噂は本当のようだ。

 

《白澤雪絵 犯罪係数0。松本雄二 犯罪係数0》

 

お互いの数値が異常な数値を叩き出す

 

「もちろん幸せです。サイコパスを治せる人間という名声が手に入る」

 

「結局のところ、自己顕示欲の塊じゃないですか、そもそもロボトミー手術は人の感情を人為的に操作するから禁じられたんです。人としてやっていけないことだから」

 

「では、ストレスケア薬剤は?過剰投与によってユーストレス欠乏症になってしまう。一昔前まで普通に処方されていた睡眠薬、アレも気絶させるように眠らせる薬で服用方法を間違えれば犯罪に利用されてしまう」

 

「………」

 

「やっていたことが悪いことだった、狂った医学だったなんてよくあることなんです。ですが、今この時代に求められているのは新型前頭前野の切除術じゃないでしょうか?膨れ上がる潜在犯達、その潜在犯の家族であるのことを苦しみなんとかしたいと願う家族。私はそれを解決するために新型前頭前野切除術をします」

 

「その結果にあるのが殺人行為だとしても?」

 

彼女の口調が次第に遅くなるのを感じる

 

「殺人行為に重点を置き過ぎですよ、雪絵先生、貴女はわかるはずですよね、潜在犯施設がどんな風になっているか、今のその現場とナチスドイツが犯したアウシュヴィッツ強制収容所の何が違うんですか?」

 

「………」

 

「雪絵先生、そろそろ戻りましょう」

 

監視官の言葉に彼女は何か考え込みながらも立ち上がる

 

立ち上がって背を向けようとした彼女に

 

「『ロボトミスト』の発案研究員の最後、あれはなかなかに滑稽でしたね、そう思いませんか?雪絵先生」




自分って日本語苦手かもしれない……

そして気付いた、雪絵は槙島聖護のこと知らないのに知ってる前提の話になっているということに…!
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