免罪体質者がPSYCHO-PASSの世界を行く 作:アルトリア・ブラック(Main)
屋外に出た、雪絵はタバコに火をつけ、煙を吸う
「………」
『私は思うんです。サイコパスも治せるんじゃないかと』
そう言うあの男から微塵も不安感を感じているように見えなかった。
『私はウォルター・フリーマンでおって、ジェフリー・ダーマーではないですよ』
そう笑顔を浮かべて言う彼の顔が脳裏に過ぎる。
『アウシュヴィッツ強制収容所と今の潜在犯更生施設、どう違うんですか?』
持っていたタバコのケースを握り潰す
「はー…」
(…アイツの言っていることあながちハズレじゃないのがなぁ…)
《白澤雪絵 犯罪係数25。松本雄二 犯罪係数20》
(…サイコパスも治せる…かぁ)
由美から指摘されたことがある。『雪絵って一昔前のサイコパスみたいだよねぇ〜』と
心外な、と思ったが、由美が持ってきたサイコパシーテストで約半数は正解してしまった。
確かに幼少期から映画を見ているような感覚になるとは思ってはいたが、それなりに普通だと思っていた。
動物虐待とか殺害とかしたことないし、前世における生涯も人は殺していない。
ロボトミーは感情を無くすことに特化しているが、その逆はない。
人に感情を与えるなんてそんなこと出来るようになったらそれこそ神の類になってしまう。
『どうして、そんな本を読んでるのにお前のサイコパスは上がらないんだ』
叔父夫妻の息子が雪絵に指差して怒鳴っていた。
『兄の頭を木製バットで殴り飛ばしたのにサイコパスは0を出したなんて、不気味で仕方ない、なんでここに来たのよ』
『しょうがないだろ…サイコパスも色相もクリアカラーで問題ないんだから、親戚である私達が引き取らないといけないんだ。シビュラがそう診断したんだ』
『シビュラが決めたことだから仕方ないけど…心底気持ち悪いわ、あんな子』
「………」
タバコを吸っても消えない幻聴
『ロボトミストの発案研究者の最後、なかなか滑稽でしたね』
ロボトミーの手術を発案したエガス・モニスは最後、自分の患者に撃たれて下半身付随になった。
モニス本人が障害者となってしまった末路
「雪絵ちゃん」
そう声をかけてきた人物の方を振り向く
常守朱が立っており、水を手渡してくる
「…ありがとうございます」
「お疲れ様。相変わらず無理ばっかりしてるわね」
サァアアと気持ち良い風がなびく
「そうですかね」
二人でベンチに座り、話し始める。
「今回の事件のことなんだけれど、彼の研究については一回ストップをかけるみたいよ、それと、彼の父親、炯監視官の話によれば居場所を発見して逮捕したようだけど…」
「犯罪係数、そんなに高くないんですよね」
空を眺めながら言うと朱は少し驚いたものの「そうみたい」と言う
「常守さん。松本雄二が言ってた『槙島聖護』って誰ですか?」
そう問いかけると朱はビクつく
「…機密事項ですかね?」
教えられない情報なら良いですよと言うと
「…ううん、今回のバックに槙島聖護がいたなら話しておかないといけないわね…」
朱さんは少し悲しげな、心配そうな口調で言われる
「槙島聖護はシビュラシステムが始まって以来、最悪の犯罪者」
朱さんがデータを転送してくる
そのデータを見ながら、彼が起こした内容に雪絵は驚く
どれもこれもシビュラシステムがあっては出来ないような犯罪ばかりだった。
(…内容は気になるけど…今は犯罪の内容じゃなくて今回の事件のことを気にしないと…)
内容を一通り読んだ後、槙島聖護の性格がなんとなく…かなりアバウトに推測出来た
「…松本雄三は槙島聖護に心酔していた。遺産の大半を彼に渡してでも、彼のためになろうとしていた」
「そうみたいね…そっちも今捜査してるわ」
槙島聖護と相対し、親友を失った過去を持つ常守朱からしてみれば槙島聖護なんて存在出来れば思い出したくなかっただろう。
「常守さん、どうして松本雄三が二人の息子にロボトミーの手術をしたか分かりますか?」
ロボトミー手術、今はその名称で読んではいけない忌まわしき過去であり、悪魔の所業
ホラー映画の殺人鬼が定番で使う手術、なんの知識のない殺人鬼が普通に実行出来る恐ろしい手術
「…槙島聖護からなんらかの指示があったからじゃないかしら、槙島聖護には数えきれない程の罪があるわ、一体いつから犯罪を犯していたかは分からないけど…」
「常守さんの言う事も正しいと思いますけど…この可能性はないですかね?」
朱が雪絵を見る
雪絵は常守の方を見ない
「息子のどっちかを槙島聖護のような存在にしたかった」
そうハッキリ言う雪絵に『そんな…支離滅裂な事で脳をいじるなんて…』と呟く
「まぁまだ本人に聞いてませんし、あくまで予想でしかないですけど、槙島聖護に心酔し、無意識のうちに彼に似た者を作ろうとした。脳の構図を研究していたのなら、やろうと思ったのかもしれない」
(それか…)
心のどこかで槙島聖護が自分を見ていないと思っていたのかもしれない。
だからこそ、自分を見てくれる偽りの槙島聖護を作ろうとしたのかもしれない。
『息子』という存在なら親を見ると、その息子が限りなく槙島聖護に似た存在なら、自分に頼るだろう。
結果的に自分は『必要』とされたいという思いがあったのかもしれない。
槙島聖護にはずっと凄腕のハッカーがそばにいたらしい。
彼だけは駒の一人だとしても、駒の中では特別な存在だったのかもしれない。
(…そんな『特別な存在』になりたかったのだとしたら…)
「今日は帰ります。また何かあったら教えてください」
そう言って背を向けて歩き始める雪絵を見て不安そうにしていた。
ー科学技術省のある一室ー
部長が公安局に連行されたものの、軽い事情聴取だけで済んだと言って戻ってきた時、少しだけ違和感を感じていた。
(…最近、部長が研究してる内容どう考えても危なっかしいんだよなぁ…)
新作のストレスケア薬剤と銘打っているが、依頼を受けた潜在犯の家族から潜在犯に脳の細胞の分裂を見たいと言って、部長が開発した機器に潜在犯を入れ、何か操作しているようだった。
(…守秘義務…とかあるけど…書類集めてたって言い訳して…)
言い訳を並べつつ、部長室に入る由美
本来ならやってはいけないのだろうが、部長室前にあるモニターには『サイコパス23、科学技術省研究員・佐藤由美』と表示されるだけでお咎めはない。
「なに…これ…」
目の前に広がる光景に息を呑む
「あぁ、最近こっちに移転してるんですよ、こっちの方が設備が整ってて良くて」
「!!」
真後ろに部長が立っていた。
「シビュラシステムって最高ですよね、色相とサイコパスがクリアなら何したっていい。ロボトミーって名前さえ出さずに別の名前を付けて意見を通したらあっさりでしたよ」
「もしかして…」
由美に向き直り、機械を出す
《佐藤由美、犯罪係数20》
「おや、この光景を見ても色相はクリアカラー。さすがA判定で入ってきただけはあります」
そう拍手しながら衣服を着替える。
「部長!こんな手術!非人道的問題です!勝手に脳内をいじくり回すなんて!」
室内に広がる地獄絵図に吐きそうになりながらも言う
「雪絵先生と同じこと言うんですねぇ…でもまぁ?今必要とされているのは新型前頭前皮質切除術だと思うんですよ」
そう言って由美のところに歩み寄る。180ある松本雄二に見下ろされるようになる。
「あなたと雪絵先生、主にあなたの方がですけど、雪絵先生の手綱を握ってますよね」
ニコニコ笑いながらも彼女に近づき
「あなたがいなくなっちゃったら、雪絵先生どうなるんでしょう」
「ちょっ、やめっ…」
暴れる由美を押さえつけ、首に麻酔薬を打つ
「さてと、どちらが先に始めるか心底楽しみですね、雪絵先生」
由美を車に乗せる
「…サイコパスは大切な人を失っても動揺しないとよく言われていますが、貴女はどうなんでしょうね…雪絵先生。サイコパスの研究はしたことがないから楽しみで仕方ないです…」
自宅に戻ってきた雪絵は疲れでも溜まっているのだろうと少し薄めたジンバックを飲みながら二階のフロアに行く
《お疲れ様でーす。今日の音楽はどうしますか?》
「…サスペンスの音楽」
《まだ買われていない曲があるみたいですが〜買いますか?》
「適当に買って」
《かしこまりました!》
そう言って切れる
1時間後…
慎導監視官から電話が届く
『雪絵先生、落ち着いて聞いてください。松本雄二の監視を続けていたのですが…一人の女性研究員を連れて去って逃亡。連れ攫われたのは…佐藤由美さんです」
「!!!」
ガバッと起き上がって「今すぐに向かいます!」と叫んで服を着替え直して玄関に向かう
PSYCHO-PASS難しすぎて脳がぶっ壊れる