免罪体質者がPSYCHO-PASSの世界を行く 作:アルトリア・ブラック(Main)
ずらりと並ぶホルマリンに浸けられた脳味噌
その下は霊安室になっているのか、複数の扉が並んでおり、一つだけ空いていた
「脳みそが綺麗にスッポ抜かれてますね…しかもこの状況で…脳みそに管みたいな…慎導さん??」
灼がその脳みそを見て止まっていた
「みんな精神を病んだから治してほしいと言われた人たちです」
「!!」
奥から現れた松本雄二に執行達がドミネーターを構える
【犯罪係数0執行対象ではありません。トリガーをロックします】
ドミネーターは松本雄二の犯罪係数を測らない
「お待ちしてましたよ、雪絵先生、今回は銃なんてありませんし、少し話をしましょう」
「……話…?」
「はい、話をしたら同行しますから」
そう言ってテーブルに座り、脳みその一つを撫でながら
「雪絵先生、免罪体質者と後天性免罪体質者の何が違うと思いますか?」
「先天性免罪体質者と後天性免罪体質者とこの世界では言いますが、結構前には免罪体質なんて言わなかったんですよ、なんて言ったかわかりますか?」
脳みその入った瓶を撫でながらいう
「サイコパスとソシオパス」
雪絵の言葉に『博識ですよね、雪絵先生って』と笑いながら言い
「この世界で、どうしてそれらの人たちのサイコパスが計測できないか考えたことありますか?」
ゴソゴソと管の入った脳みそを出す
「先天性免罪体質者は脳の神経がおかしくなっているんです。扁桃体、前頭前皮質、大脳辺縁系、腹側線条体が活動低下状態にあるんです。つまりは脳の機能の神経が狂ってる。そこで実験してみたんですよ、色々」
「…それで、その脳みそは生きているとでも?」
雪絵の言葉に執行官達は吐きそうな顔をしているが、灼だけは何故か複雑そうな顔をしていた
「はい、生きてます。脳みそだけでも生きれるようにしてあります。なんでしたっけ?父が残した医療用具の中にあったんですよね。彼の名前は安藤智和。父の友人の一人でサイコパスが計測できない人だったんですよ、父はサイコパスがしょっちゅう曇る人で、安藤さんはそんなこと一切なくて確か科学技術省に勤めてたんですよ」
「…ロボトミーの研究を掘り出した人ですか?人の脳みそいじくり回そうなんて発想、思った時点でサイコパス濁りますからね」
淡々と話す雪絵に松本雄二は微笑む、脳みそに囲まれながら話をしている二人を見て今すぐにでもこの場から去りたそうにしている執行官たち
「そうなんです。まぁ父は安藤さんの研究の内容をあんまり理解していなかったようですから、彼の研究のサポートをしてたみたいなんですけど」
「彼を殺して自分がやったこととして世間に公表した」
雪絵が答えを出したことに松本は『早いですよ』と言う
「でもまぁ、その脳みそが生きている時点で、彼の掌で踊らされていたわけですか」
「どう言うことだ…?」
入江の言葉に雪絵は
「自分の脳みそを取り出して研究するように言ったんでしょう?死ぬ前にあなたにロボトミーが成功する技術だけ託して、もし、自分を殺害する方法さえ固定化させれば問題なかった。脳みそが無事ならそれでいい」
雪絵の言葉に入江が『殺害方法を操るって…なんでそんな狂ったことを…』と呟く
「……シビュラから隠れるために…」
灼がボソリと呟く
「さすが、殺すときは脳みそを狙う雪絵先生らしいですね」
そう笑う彼に『殺してはいませんけどね』と言う
「彼は言ったんです『真の幸福は考えないこと』だと、サイコパスも色相も人間としての感情があるから人は悩む。なら考えないほうが幸福だと、私も科学省にいて思ったんです。考え続け悩み、更生施設に入る人たちを、ならいっそのこと考えられないようにいじればいいんじゃないかなと」
【犯罪係数0執行対象ではありません。トリガーをロックします】
相変わらず、犯罪係数の測れない松本雄二に入江は舌打ちする
「……それが犯行理由ですか」
雪絵の言葉に『はい』と頷き、その脳みそを横に置くとこちらに向かって歩き出す
我に帰った灼が手錠を出して逮捕する
「由美を襲った理由がそんな理由なんて納得出来ませんけど」
そう呟くと
「おや?由美さん死んでいないんですね、てっきり死んだと思ったのに」と笑いながら離れて行く
「……?」
松本雄二は微笑み
「ウォルター・フリーマンには一人の助手がいたんです。名前をジェームズ・ワッツ。神経外科の医師でした」
そう言って退出する松本雄二の言葉に違和感を覚える
(…外科医…?)
「!慎導さん!由美の病院に向かってくれませんか?!」
「え?なんで?」
「松本雄二の協力者がまだいます!こんな研究一人でやれるわけありません!!」
「!至急行きましょう!」
慎導灼の後ろを着いて行く雪絵
車に乗り、急いで病院に向かう
両親が死に兄姉は更生施設に入所してから白澤雪絵の人生はとても冷たく人間の営みとしての暖かさはなかった
『あの白澤雪絵さんって確か、どんなことしてもサイコパスが濁らないんでしょ?』
『実兄をバットで殴り殺そうとしたんでしょ、あんな人と一緒にいたら色相が濁っちゃうよ』
幼い頃からいじめなんて当たり前だった
トイレで水をかけられるなんて当たり前だった
それが変わったのは生まれて初めてシビュラから【友人適性】が一人該当したのは
『雪絵、何読んでるの?』
そう声をかけてきた由美はとても明るく、活発な人間だった
無表情な自分に懲りずに話しかけてきた
叔父夫婦の元に引き取られてから手に入れた本を学校に持ち込んで、生徒の色相を悪化させ、潜在犯ギリギリにまで行かせた時
『過激すぎるってこの本!悪徳の栄えって、趣味悪いし、どこで手に入れてきたの雪絵?』
由美はその本を雪絵の部屋に隠しながらいう
『…廃棄区画の本屋…』
ボソッと言うと由美は隠した後、ベッドに座り
『うわぁ、危険なところ行くね〜雪絵って前も男子生徒を脅してなかった?』
『あれは、あっちが悪い』
そういう雪絵に由美は苦笑いし
『何したわけ?その生徒、退学処分になってなかった?』
雪絵が持っていた本を取り出して読み始める由美
『なったね、色相悪化したんだっけ』
雪絵を犯そうとしてきた生徒を思い出す
子供のいじめは陰湿すぎる
多分色相が悪化してその気分転換のために色相が悪化しない雪絵を狙って来たのだろう
まぁ…ナイフで脅して性機能が機能しないようにしてやろうとしたけど、流石に倫理的にやったらいけないというのはわかって途中で止めた
『雪絵ってサイコパス本当に濁らないよね、後性格が最近どぎつくなってきたよね』
『どこら辺が?』
『え?口悪いじゃん、でも博識だから後輩にすごいモテてたよ』
『…嬉しくない』
そう言いながら最近、叔父夫妻に嫌がらせられているのを思い出す
『サイコパスが計測できないからってあんな不気味がるなんて…私だって人間なのに…』
人は理解できないものを恐れる生き物だ
ベッドに横になり、茶色の天井を見つめる
『…サイコパスが悪化する人間になってみたい』
本音を言うと色相を悪化して潜在犯になってみたかった
本当の人間らしい在り方を潜在犯たちの中でたくさん見た
『先生ってすっごい綺麗だな、この本って面白いし、またいっぱい教えて』
10歳で潜在犯認定されて更生施設に入ってきた男の子の言葉を思い出す
由美にとって雪絵はたった一人の親友だ。
《サイコパス100》
「よかったですね、佐藤さん、もう直ぐ退院できますよ」
看護師からの言葉に『ありがとうございます』と笑顔で返す
「しかし、佐藤さんも色相美人ですね、普通はこんな早く回復しないんですよ」
「そうなんですか、早く回復して仲直りしたい人がいるんです」
「もしかして噂の雪絵先生ですか?」
「はい、母があんな怒りましたけど…たった一人の親友ですし…それに、雪絵を一人にしたらいけない気がして…」
雪絵はなんでも一人で出来てしまう。患者を制圧するための体術も知っているし、雪絵と話すと大概の人間の色相は安定する。
シビュラの世界には無くてはならない存在だ。
(…でも、あんな残酷なことをしてた部長、どうしてシビュラに引っ掛からなかったんだろう…)
犯罪係数が上昇する事は愚か、色相も安定していた
平坦な気持ちであんなことをしていたことになる。
(…知りたい…)
かつての職業適性欄には公安局はなかったが、つい最近、なぜかシビュラシステムから公安局も追加されていた。
カツンカツンと足音が聞こえて来る
「あ、佐藤さん、診察の時間来てたみたいです」
「あ、はい」
ガラッと開けて入ってきた医師を見る
「最近は順調ですね、明日退院も夢じゃない」
「はい、ありがとうございます。八神先生」
「じゃあ後は一通り検査して様子みましょうか」
「はいお願いします」
そう言って案内する八神医師の後ろを着いて行く
【この小説を書きながら勘違いしてた部分】
免罪体質者を精神異常者を意味するサイコパスだと誤認してたこと、小説版で説明してましたね『何かが致命的に欠けている代わりに何かが特筆して秀でている者達を指す言葉』って
八神宗壱(しゅういち)
大病院の医師。かなり歳の離れた弟がいる。
●●のレパートリーが多すぎて困る…