免罪体質者がPSYCHO-PASSの世界を行く 作:アルトリア・ブラック(Main)
シビュラシステムからのネタバレはとんでもなくつまらなかった。
物語を読み進める途中で後半の結末のネタバレを喰らうような苛立ちだった。
「………」
ジュースを飲みながらテーブルに突っ伏していると唐之杜さんが『あら、退屈そうね』と言われる
「…退屈です」
素直に認めるとじゃあ、仕事、割り振っても良い?と言われる
「はい」
9歳になった人間に任せるような事じゃないと唐之杜さんも初めは思っていたようだが、事件をこうじゃないかと推測して伝えれば案の定そう言った展開になったりもした為、最近は任せてくれる仕事も増えた。
「行方不明になった監視官…人質になった女性の正体」
そう書類を見ていると唐之杜さんが笑う
「?どうしました?」
「本当に事件が好きなのね」
そう言われてアハハ…と笑う
シビュラシステムは鹿矛囲桐斗を秘密裏に殺し、自分たちの完全性を確立したい。
でも、秘密裏に殺すのは常守朱がいては邪魔なのだろう。
『そこがつまらないとは思わないか?雪絵』
そう槙島さんなら言うだろう。最近は槙島さんに拾われる前の頃に環境が戻ってしまって、本当に退屈でつまらなかった。
(つまらないだろうなぁ、一昔前の警察とやってることおんなじだし)
透明人間の人質の女性、そして、行方不明になった監視官
そして、犯罪係数が下降した爆弾魔
彼は釈放される事になったのだが、これもシビュラにとっては問題なのだろう。
一度執行対象になった人間が安定する事なんて早々ない
会いに来たのは公安局直属のセラピスト
「あー…」
『分かったかぃ?雪絵』
幻聴が聞こえるなんて余程だろうが、犯人の可能性が大方分かってどうするか考える
間違いなく子供の自分では返り討ちに合うのが目に見えているし、犯人の可能性であって確率は低い
事件に息詰まり、常守はテラスに出ると、そこにいたのは雪絵で、本を読んでいた。
【アリス殺し】という本を読んでいた。
「………」
ふと、彼女に意見を聞いてみようかなと思って歩き始める
今回の事件で槙島雪絵はあまり関わらないとされていた。
まぁ年齢的に唐之杜さんの補佐と位置付けられているから、メインが唐之杜さんにあるのはわかる。
「こんにちは雪絵ちゃん」
そう声をかけると本を閉じて『こんにちは』と返して来る雪絵
「カムイの正体ですか、まぁ、分かりませんよね、真っ白な状態じゃ」
そう淡々と話す雪絵
「…驚かないんだ…」
そう言うと雪絵は
「案外近くにいるかもしれないですよ?だって、常守さんの部屋に侵入してWCって書くくらいですから」
そう言って足をパタパタさせる
「え?どう言う事…?それ」
「貴女の色は何色?セラピストによって色相が安定した爆弾魔。ドミネーターが認識すらしない人間」
雪絵は紅茶にマドレーヌを浸して食べる
「…常守さん、私のことドミネーターで計測してもずっとゼロのままなんですよね」
話を変えて来た雪絵に「え?うん」と返す
「少なくとも免罪体質ではない。ごくありきたりな何処にでもいるような猟奇犯罪者だと思いますよ。ハンニバルレクターに近いかなぁ」
「ハンニバルレクター?」
「まぁ知らないですよね、アレ大人でも嘔吐するらしいですし、槙島さんが見せてくれた映画です。サイコキラー映画」
雪絵が椅子から降りる
「シビュラシステムが裁けない存在、それってなんだと思います?」
「それは免罪体質じゃ…」
「それは正解ではありますけど、もっと別の可能性」
「もっと別の可能性…?」
そう考え込むと雪絵は笑う
よいしょっと言って眼下に見える人達にドミネーターを構える姿勢を取る
「雪絵ちゃん、危ないわよ」
そう言って近寄ると「頭から落ちたらそれはそれでシビュラにザマァと言えるので良いですよ」と言われる
雪絵を引き戻すと雪絵の端末に連絡が来る
「唐之杜さんから呼ばれました。行って来ます」と言ってペコリと頭を下げる
「あ、それと常守さん」
「なに?」
「東金執行官の事、信用しちゃダメですよ絶対に」
そう言って走り去っていく
部屋に入り、唐之杜からの仕事を終えて外に出ると
「9歳で仕事とは、やはり、天才は違う」
そう接触して来た東金にため息をつきたくなるのを堪える
「…逆説的に言えば、その歳で固執出来るのも大概だと思いますけどね」
そう言うと空気がわずかに凍る
「貴女には秘密が行き渡っているようだ」
そう言って近づいて来る。普通に怖い、槙島さんよりある意味怖い
「ですね、教えるなと言われたので喋りませんけど」
「懸命な判断だ、流石は選ばれた者だけある」
ブラックホールのような男ではあるが、面と向かって見て分かった。
全てを飲み込む程の黒ではない。底が知れる程度の黒
「選ばれた者、ねぇ…その選ばれた私が言いますけど、常守朱は本当に邪魔な存在ですか?」
「………」
東金は少し間を置いてから本当の顔をする。
(…ストーカーってこんな感じか…コワッ)
「無論、母さんの秘密に触れる者は母さんが受け入れた者だけ、常守朱のやり方は母さんを侮辱する」
「………」
この手のタイプには何言っても無駄だ、シビュラシステム全体を指して言ったのだが、さっきから母さん母さんとしか言わない。
超絶マザコン野郎のストーカー犯罪者に近い思考だろう。
(…いや。これ、普通にマザコンとストーカーが混ぜ合わさったキメラだろ…)
槙島さんならどう言うか考えたが、槙島さんがストーカー気質持ちの相手にどう返すかイマイチ想像出来なかった。
というか、私の思考が既に理解したくないと言う回路になってる。
「…そうですか、まぁ、私は割り振られた仕事をこなしますよ、9歳ですし」
そう言って自室に少し足早に向かう
部屋に入り、盗聴器が付けられてないのを確認し
「…ダメだろあれ…」
どっからどう見ても常守朱を排除する動きにしか見えないし、何より怖い
(…あの手のタイプの考えることは分かりやすいけど、分かりたくないと言うか…)
間違いなく常守朱の親族が危険な目に遭う。
それでも、不思議と理解出来る。
絶対に常守朱は色相悪化なんてしないと
(…そうなれば…)
常守朱の親族関係に関して調べる
「…監視官なら閲覧可能ってのも、ちょっとヤダな…」
監視官なら執行官の情報も筒抜け、部屋に入るのも自由。
その事実に寒気がする
ある程度調べて画面を消す
「…向島さんか」
セラピストの名前を見て話だけでもしに行こうと思い、立ち上がる
セラピストの元にいくと向島は『おや』と言う
「珍しいお客さんだ」
そう言って出迎えてくれる。
「9歳で異例の監視官になった槙島雪絵さん、かな」
「そこは本名で言わないんですね」
大体は槙島さんと暮らす前の白澤の姓で呼ぶ人間が多い。特に宜野座さんは白澤と呼んでくる。
「確かに本名は白澤さんですが、貴女は槙島と名乗り続けてます。その苗字に特別な思いでもあるのでしょうね、貴女が望む姓で呼ぶのが良いんですよ」
そう言われ思わず微笑む
確かに自分からしてみれば白澤も特に問題のない苗字だし、槙島の姓に拘ることはなかった。
でも、槙島さんに引き取られた時からそれで固定されていたイメージはあった。
もう私は『白澤雪絵』ではなく『槙島雪絵』なのだ。
「今言われてハッとなりました。確かに特別だったんだと思います。みんな私のことを誘拐された可哀想な子とかそう言う目線でしか見ませんけど」
「その話題に関してはセンシティブですからね、当人の受け取り次第によると思いますよ」
セラピストらしく話をしてくれる向島さん
「別に誘拐されてたわけじゃないんですけどね」
「ところで、今回はどう言ったご用件で?貴女の色相は全てクリアですが」
そう言われて微笑む、ちょっとだけ悪い表情を浮かべ
「桐人先生、私の色は何色ですか?」
そう言うと向島は静かに姿勢を後ろにする。
「なんてことないんです、私、絶対に色相が濁らない性質だって言われて、それが悩みなんです。まぁどう足掻いても誰に相談してもただ一人以外は理解してくれませんでしたけど、兄を撲殺したというのに」
身の内を明かすのが何より大事なことだ。
槙島さんと過ごして来て学んだ生き残る知恵だ
「…人を殺したんですね、そう言えば」
向島さんらしい話し方ではあるが、何処となく別の人になったような雰囲気だった。
「えぇまぁ、明確に殺そうという意思で、でも私はゼロのままだった。それが正しいと言われた。異常ですよね?この世界」
相手に敵意を抱かれないようにまずもって本当のことを言う。そして、監視官であることを考えれば向こうが取る行動はわかる。
しかし、そうされないためにもやりようはある。
「シビュラシステムはカムイという存在を探してます。殺処分したいから、でも、私は殺す必要なんて皆無なんですよ、シビュラシステムにとって目を背けたい存在に他ならないから、だから私はカムイにも生きていて欲しいんです。ね?向島さん」
そう言うと向島さんらしくなり『死んで良い人などいませんからね』と言われる。
(…よし、ここから上手く話を持ってこう…)
殺人の経歴なんて増やしたかないが、相手の取る手段によっては考えなくてはならない。