免罪体質者がPSYCHO-PASSの世界を行く 作:アルトリア・ブラック(Main)
後書まできちんと読んでください。
【あらすじ】
『ロボトミー事件』から半年後、公安局に一件の通報が入る。それは『弟がセラピーに行ってから帰って来ない』という通報、そして、それから相次いで起きる『セラピーを受けた人間達の失踪』
共通項は【東京都内更生施設】に通っていた事、そこには白澤雪絵が在籍していた事を知り、嫌な予感がした灼は仲間達と共に現場へ向かう
第0話『人の在り方』
『ロボトミー事件』から半年後、公安局の元に一件の通報が入る。
「セラピーに行った弟が戻ってこない?」
「そう、名前は宮本敦23歳。ここ最近メンタル治療に専念していて、更生施設に出入りしていたみたい。1ヶ月前までは普通に戻って来てたみたいだけど、今月に入ってから音信不通、捜索願が出されたみたいなんだけど…」
唐之杜がその更生施設を見せる
「最後に確認されたのは都内の喫茶店から出て来るタイミング。それ以来は確認されていないわ」
「町中のカメラに引っ掛かる事なく?」
執行官の言葉に唐之杜が頷く
「自宅に帰ったような形跡はないみたい。一体どこに行ったのか捜索願いが出されたみたいなんだけど…この更生施設の潜在犯が復帰しても軒並み近親者と連絡が取れなくなる事が多いみたい」
「…この更生施設って…」
灼がうーんとなる
『東京都千代田区更生施設医師・白澤雪絵が今日から公安局に臨時でくる事になった』
局長から言われた言葉を思い出し、唐之杜に
「他の更生施設から行方不明者って出てますか?」
「え?まぁ…更生施設から復帰した潜在犯が行く当てがなくて養護施設に行くとはあるけど…行方不明者数が多いのは…」
千代田区の更生施設と新宿歌舞伎町の更生施設が多いと出される
「灼」
「嫌な予感がする。唐之杜さん、この行方不明になった患者たちの主治医って誰ですか?」
「えっと…ちょっと待ってね」
そう言ってモニターに向き直る
「灼、白澤雪絵を疑っているのか?」
炯の言葉に灼は考え込みながら
「疑いたくはないけど…第一候補…かな」
すると、入江が「免罪体質者が犯罪をしでかしたら洒落にならなねぇからな」と言う
免罪体質者が犯罪を起こして判明するのは取り返しのつかない事になってからだ。
藤間幸三郎も槙島聖護もテロのような事件に発展して初めて判明した。
「出たわ」
そう言って画面に出たのは二人の医師だった
一人は白澤雪絵、もう一人は…
「八神和彦」
「とにかく、現場に聞き込みに行くのが最適じゃない?」
灼の言葉に炯達も頷く
「え?辞めちゃったんですか?」
管理長に話を聞きに行った灼と炯
管理長から言われたのは、白澤雪絵ともう一人の医師・八神和彦は辞めたという話だった。
「ウチのエース二人が辞めたんだ。前のような施設に逆戻りだ」
管理長は心底嫌そうな顔をしつつそういう
「辞めた理由は言ってましたか」
炯の言葉に管理長は窓の方を見て
「八神の方は転職したいとだけだな。白澤の方は…疲れたから別の仕事をしたいと言っていたな」
「疲れたから?」
「ここ最近、白澤のセラピーが良いという患者が多くいたんだ。サイコパスがそこまで上がっていないのに受診する人間が増えてね、私達も最大限サポートしてたんだが…」
ハァと深いため息をつき『それで嫌になったんだろうな』と呟く
「転職先のこと言ってました?」
灼の言葉に管理長は『教師の仕事をしたいとか、公安の仕事をしても良いかもみたいなあやふやなことは言ってたな』と話す
「失礼ですが、八神和彦さんについてお聞きしたいのですが、どんな人物でしたか」
「実に勤勉で患者一人一人に向き合う人間だったよ」
管理長に粗方話を聞いた後、看護師達にも話を聞くことにした灼と如月
公安局に戻り、行方不明者の事について話すことになった。
シビュラシステムが全てを決めるこの世界において、自分の意思は限りなくないに近しいものだった。
友情も変愛も全てシステムに委ねれば確実、と言ったようなことを話すかつての同僚達を思い出して心底嫌気がさしたのは事実だ。
「私と貴女の友情適性限りなくゼロに近いみたいですよ」
向かいでモニターを見ながら話す八神
八神和彦、今年で25歳、彼とは更生施設の医師仲間として話したことがあった。
読書を嗜む趣味だけ似通ってはいた。
「…性格悪いからね、貴方」
本を読みながら言うと八神が『お褒めに預かり光栄ですよ』と言われる。
「…というか、私が辞めたすぐ翌日に辞めて何がしたいわけ?貴方に教師向いてないし、何?新興宗教でも作りたいの?」
「私の口が詐欺師みたいに言わないでくれません?」
「口が上手いじゃん、貴方」
本をペラっと捲る。
「貴女も上手いでしょう。人によって切り替えするのが私より上手いのに」
ある程度読み終わると、読んでいた本を閉じる
「それ面白いです?『動物農場』貴女、ジョージ・オーウェルばっかり読んでますよね」
「趣味が悪い」と言う八神に雪絵が『人のこと言えないくせに』と返す
「フィリップ・K・ディックも面白いけど、読み応えあるのはジョージ・オーウェルだよ、というか、貴方の方が趣味悪すぎるよ」
八神が見ていたモニターを見ながら言う
彼が読んでいたのは数百年前に流行ったネット上の物語で報告書形式で作られた物語だった。
幸せになれる物語なんて限りなく少ないものばかりを読んでいる八神にハァとため息をつく
「そういう貴女だって好きでしょ?コレ」
「………」
シラァと視線を逸らす
「"幸せは認められませんでした"なんて最高に皮肉の効いたセリフですよね」
八神は笑いながらバッグから本を出し
「コレ返します。貴女って過激な本しか持ってないですよね」
「余計なお世話」
そう言って雪絵に渡したのは『悪徳の栄え』と『美徳の不幸』と書かれた本だった。
「で?感想は?」
「人はやはり不幸を見て喜ぶ生き物ですよね、完全なる善人なんてこの世にいても長続きしませんし」
「相当ヤバいこと口走ってるの分かってます?」
本をバッグにしまう雪絵
「えぇまぁ」
スキャナーの前を通ると二人を一瞬見たが、すぐに別の人間を見る
「まともじゃないからカウンセラー選んだんですよ」
そう言う八神に『明日、早いので』と言ってさっさと帰って行く雪絵
その背中を見て
「マトモじゃないからこそ、人は惹かれるが、貴女自身は本当に淡白な人間だ」
そう言って背を向ける
更生施設のカウンセラーを辞めたのは半年前にあった『ロボトミー事件』の映像が隠し撮られており、それを見た一部の人間がその手術を批判、代わりに雪絵のセラピーを受けたいと大したストレスもないのに受診する人間が多くウンザリして辞めた。
「先生ー!おはようございます!」
「おはよう先生!」
「おはよう」
次に就職したのは都内から少し離れた学校の教師だった。
私立桜霜学園の教師として彼女達に教えるのは楽しかったものの、やり方を間違えれば彼女達の色相に大きく影響を与えてしまいかねない。
私立桜霜学園は二度の猟奇事件の現場として世間に話題になり、保護者達の意見により一時は休校になったが、それでもつぶれることなく今も存在している。
(…図面から抜け落ちた場所があるってのも、おかしな話だけど…)
昔の建物ほど、図面に載っていない場所があるのはおかしな話だ
「白澤先生、どうして、美術部の顧問にならないの?」
「図書部の顧問ってやる事ないって聞くのに」
女子学生二人からそう言われ
「私美術に関してあんまり興味ないんだ。分からない人よりわかる人が顧問の方が良いでしょ?」
そう営業スマイルで言うと
「白澤先生って、本好きだよね、前にいた柴田先生も本凄い読んでたし」
「頭良い人って本読んでる人多いよね」
「柴田先生?」
「うん、白澤先生と雰囲気似てる男の先生!すごいイケメンだったよね」
女子学生達が楽しそうに話す
「でも、なんか突然辞めちゃったよね、校長は何も言わなかったけど」
「そうそう、もっといて欲しかったよね」
「白澤先生ー、少し良いですか?」
「あ、はい、今行きます」
女性教員から呼ばれ、二人の学生と別れた後、そちらに向かう。
(…確かに、ここって閉鎖的だから事件の現場になりやすいよな…)
二人の猟奇犯がここを選んだ理由もなんとなく分かる
考え事しながら歩きつつ、シビュラシステムを思い出す
藤間幸三郎も槙島聖護もあの中に取り込まれたのだろうかと考えゾッとする
「…あんなものに認められて何になるんだか」
集団として生きて行くより、個人として生きて行くのが何よりの幸福だろう。
他人の脳と知識を共有し、理解力を拡張されて行く事の気持ち悪さ
『マトモじゃないからカウンセラーになれるんですよ』
趣味の悪い友人を思い出しため息をつく
(…マトモじゃないからねぇ…)
普通、人の痛みを理解するにはそれなりにこちらにも苦痛はくる。
が私にはそれがない。
セラピーとして仕事していて思ったのだ、余りにも相手に興味が湧かない
笑顔で話をしたところでだからなんだ、それだけか程度しか湧かない己がいる。
シビュラシステムによって精神を穏やかにするために薬やセラピーになるのが過剰になった。
大した問題じゃなくね?という話題で来るような人間は山のようだった。
人間じゃない、ただ口から生まれたような奴らを相手にしているようで退屈でやめた。
「白澤先生ー!授業の用意お願いします!」
「あ、はい、今行きます」
行方不明になっていた男・武藤和人が爆弾を作って立て籠ったビルの前で公安局は犯人を落ち着かせようとしたのだが、結局犯人はその場で人質の一人を惨殺した後に自殺してしまった。
「死ぬ間際に放った言葉は白澤さんに対する崇拝…」
血文字で壁に描かれた内容に炯はため息をつく
イヤホンをしてメンタルトレースしていた灼は「うーん」と言ってイヤホンを外す
「心理状態が本当にわかんない。トレースできない」
灼の言葉に廿六木が『お前がトレースできないってよっぽどだな』と返す
『灼くん、炯くん、白澤雪絵さんの場所掴んだわよ』
唐之杜の言葉に『どこにいる?』と聞くと
『私立桜霜学園の教師』
「!私立桜霜学園!」
『そう、藤間幸三郎の勤め先で槙島聖護が事件を起こした場所。偶然というか…』
唐之杜が私立桜霜学園のデータを見ながら
『ここ最近、この学校の生徒達のサイコパスが軒並み下降して行ってるの、それに、この学校じゃ、雪絵ちゃん結構人気みたいよ』
「一度話を聞きに行くか」
「うん」
私立桜霜学園に勤め出してから1ヶ月、雪絵は生徒の犯罪係数を軒並み下降させている事から校長から期待されていることは別に興味がなかった。
「雪絵先生、こんにちわ」
「慎導さん、お久しぶりです。炯さんも」
学校の敷地外でタバコを吸っていたら二人がやってくる
あの事件から半年間連絡は取り合ってはいないが、相変わらず二人は変わらなかった。
それに、監視官の服装を見て仕事で来たのが分かり
「何か事件です?」
そう聞くと灼は笑いなながら「さすが、雪絵先生」と褒めてくれる。
「単刀直入にいいます。この男、見覚えありますか?」
そう言って画像を見せてくる。
「見たことはあるような気もしますけど…知り合いではないですね、この人が何かしたんですか?」
「都内ビルに立て籠もり爆破事件を起こしました。その犯人は最終的に自殺しました」
「はい」
「その犯人が壁に白澤さんの事を書いていたので話を聞きに来ました」
その言葉に雪絵は『私が犯人とか書いたのかな』と思っていると
「壁に血文字でこう書いてまして」
灼がモニターを出して見せてくれる
そこにはデカデカと
【白澤雪絵先生こそ私たちを導く指導者なり】と書いていた。
持ってたタバコを落としそうになるぐらい嫌な気持ちになる
「…なんですか、この共産党のスローガンみたいな文章」
そう文句を言いながら二人が来た理由を察して派手にため息をつきたくなる。
今回の事件に関して完全にノータッチであり、この男と接点があるとしても更生施設で数回話しただけの間柄であろう。
「爆破事件を起こせと言う指示なんて微塵も出してませんよ、めんどくさいし、地獄に足突っ込む真似したくありませんし」
下手なことしてシビュラシステムの仲間入りなんてごめんである。
「そうですか」
炯は納得行っていなさそうだが、灼が「困ったことあったら連絡くださいね」と笑顔で言ってくる。
その様子を見ていた八神は雪絵を見る
「無意識とは本当に恐ろしいですね」
「八神先生、授業始まります」
「今行きます」
そう言って教室に向けて歩き出す
【新登場人物】
八神和彦
雪絵の同僚かつ友人。更生施設の元医師。
私立桜霜学園の教師で担任を受け持ってる。
読書家だが、かなり偏った本ばかり読む
かなり歳の離れた兄がおり、その兄はやらかしたらしい。
【主人公】
白澤雪絵
前作からの主人公。更生施設を辞めて今は私立桜霜学園の教師で副担任。
ロボトミー事件から少し性格に変化が生まれてる
【参考図書と引用文に関して】
『動物農場』
作者・ジョージオーウェル。
現在読書完了
『悪徳の栄え』、『美徳の不幸』
作者・マルキ・ド・サド
現在、悪徳の栄えを購入、これから読書(本が消失しました…)
SCP-1374-JP『大団円』
幸せは認められませんでした。
【注意】
今回は何かを特定の何かを信仰している方に関してはお勧めしません。
作者の個人的体験と色々結びつけて書きます。
また、今シリーズは書くスピードが遅いです。理由は作者が本を読むのが大好きになったのと仕事がバカ忙しいので(⌒-⌒; )
とりあえず内容が内容なので結構シビアです。ロボトミーの時もそうでしたけど、消されるギリギリというか消される可能性に片足突っ込んだような話題を取り上げるつもりなのでお覚悟をお願いします
時間かかると思いますが、どうかよろしくお願いします。一応、主人公の結末は考えてます。