免罪体質者がPSYCHO-PASSの世界を行く   作:アルトリア・ブラック(Main)

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『ケモノの城』お勧めしません。面白いけど!!ハンニバルレクターとかアビスとかホステルに慣れててもキツかった


第1話『蜘蛛の糸』

事情聴取を終え、雪絵は文学の授業を担当する事になっていた。

 

(…ここの教材って、まぁ…明るい話が多いんだよな、まぁ、暗い話出せるかって話なんだけど…)

 

教師達から少し反対はあったが、ここにいる生徒達の犯罪係数は決して高くはならないだろう。

 

「『僕たちは相互監視メイトと呼ばれる独自の関係に属していた。カメラと集音器で相互に私生活を監視し、反体制的な言動を報告するとした側の国民信用値が上がり、された側の信用値は下がる、国民信用値がある事により進学や就職が有利になると言われている』」

 

「そこまで」

 

「はい」

 

女子生徒が本を閉じ、その場に座る

 

「今読んで貰ったのは2023年に発売された柞刈湯葉著作の『人間たちの話』この著作は現社会、シビュラシステムと相対的な社会として描かれています。皆さんはこの世界についてどう思ってますか?」

 

その言葉に生徒達がざわめく

 

生徒達の色相が少し上昇する傾向にあり、中でも勢いよく上昇している生徒を見て

 

「佐藤さん」

 

「え、あ、はい…この世界はとっても怖いと思います。相互を監視して支配して行くなんて恐ろしいことは…」

 

生徒の言葉に笑顔で相槌を打つ

 

"シビュラシステムとどう違う?"

 

「はい、もちろんお互いがお互いを監視し、密告し合う行動は疑心暗鬼に駆られ、やがて世界は破滅への一途を辿るでしょう」

 

「し、白澤先生」

 

教頭の焦ったような声が聞こえてくるが無視しつつ

 

「先生」

 

「はい、黒崎さん」

 

色相が安定していた黒崎が手を上げる

 

「この世界を生きている二人は幸せなのでしょうか」

 

物語の最後、二人の主人公は嬉しそうにしていた。

 

「皆さんはどう感じましたか?物語というのは受け取り方によって大きく違います。幸せと取るか不幸と取るか、それによって私達の色相にも大きく変わります」

 

チラリとモニターを見るとサイコパスは基準値を超えていなかった。

 

「物語には答えはありません。作者がどう描きたいか、何を伝えたいか、何を思って描いたか、全ては読者の想像次第なのです。想像を辞めた時、人は真に終わってしまうのです」

 

それに、と付け加える

 

「これはフィクションですから」

 

本気にしちゃダメですよと笑いながらいうと生徒達が安心したようにしていた。

 

 

 

 

 

授業終わり、書類をまとめていた雪絵

 

今回の授業で多くの生徒のサイコパスは上昇傾向にあったが、最後のまとめで色相が落ち着いた

 

(…『これはフィクションですから』ってそんなに効果あるんだなぁ)

 

この学園ではサイコパス検査は定期検診でしか行われない。

 

その時期にさえサイコパスが安定していれば良いだけだから、普段は自由に彼女たちは学園生活を謳歌している。

 

「校長に怒られなくてよかったですね」

 

授業が終わったのか、隣に八神が座って来る。

 

「別に辞めさせられても仕事は山のようにあるしねぇ」

 

「人考えて言わないとそれ、喧嘩売ってると思われますよ」

 

荷物をまとめ始めたのを見て八神が『もう帰るんです?』と聞いてくる。

 

「帰るよ、終わったし」

 

「じゃあ、私も帰りますか」

 

立ち上がった八神は自分より身長が高く、眼鏡をかけているせいで知的に見えるが…

 

(…まぁろくでもないしね)

 

何があってそうなったと言いたくなるぐらい精神構造が歪んでいた。

 

とは言ってもサイコパスが悪化しないから案外"そういうこと"かもしれない

 

 

あの学園に勤め始める前に、昔住んでいた家は引き払い、今の家で暮らしていた。

 

自分の身長より優に高い本棚の前で本を選んでいた。

 

「……前から思ってたんですけど、地震があった時ヤバくないですか?この本棚」

 

「ちゃんと地震対策はしているよ」

 

八神は汗を拭きながら言ってくる

 

今更だが、八神と一緒に暮らしている。

 

友情適性も恋愛適性もないが、趣味は合うのと、格闘技の練習に結構便利だった。

 

本を手に取って読み始めると、インターフォンが鳴る

 

「出てきますよ」

 

「お願い」

 

適当にそう返して待っていると、すぐに戻ってきて

 

「公安局監視官さん達がきたみたいですよ」

 

そう言われ、八神が階段を登って行く、読んでいた本をテーブルに置く

 

『オレンジだけが果物じゃない』

 

「慎導監視官、炯監視官?どうしたんですか?」

 

そう言って玄関を開け、室内に案内する

 

「家まで来てごめんなさい。ちょっと聞きたいことがあって」

 

灼がペコリと頭を下げてくる

 

「別に構いませんよ、いくらでも聞きますし」

 

そう言ってコーヒーを取りに行く

 

「八神さんと一緒に住んでいるんですね」

 

炯からの言葉に「まぁ」と返す

 

「恋愛適性も何もかもないですけどね」

 

「それなのに住んでるのは珍しいですよ…」

 

「そうですかね」

 

そう思いつつ、コーヒーを出しつつ、例の話題になる。

 

「更生施設で勤めてましたけど、患者の顔なんていちいち覚えてませんし、その後のケアはきちんとしますけど、更生施設にいた時よりも放任になりますよ」

 

「失踪していたらこちらから伺うなんて事はなかったんですか?」

 

炯の質問に少し違和感を感じたものの雪絵は

 

「子供じゃないんですし、一応退院したらその後は家族に任せます。更生施設の医師って抱える患者が膨大すぎて誰が誰だか判断つかないんですよ」

 

これは事実である。いくら仕事をこなしていたとしても医師は神ではない。

 

何で悩んで来ていたか忘れる時だってある。毎日無数の人間の悩みを聞き、それとなく回答すれば終わりになる。

 

ゴミ捨て場だってそうだ、溜めてたゴミは当然捨てる。

 

相談内容だって数多ある中で蚊の刺す程度レベルの悩みから胃が破裂するくらいの悩みの幅広さがあるが、だからと言ってずっと胸に秘めているほど馬鹿でもない。

 

「患者名簿とか施設に…」

 

そう言おうとすると、二人は既に調べたのか、その後の足跡も分からないという。

 

爆弾魔の時と然り、突然、犯行に及んで白澤雪絵先生は神だなんだ血文字書いて死ぬ始末。

 

傍迷惑な話である。誰が指導者だ

 

「今回の事件、雪絵さんも狙われる可能性もあるので公安局の警護は…」

 

「あぁ、八神がいるから大丈夫ですよ、彼、暴れる患者やナイフを持った患者を制圧するのは多分警察官より強いと思うので」

 

そう言ってアイスを食べる

 

「あ、その八神さんについて教えて貰って良いですか?いつ頃から住み始めたとか」

 

「本人に聞きます?呼んで来ます」

 

そう言って『オレンジだけが果物じゃない』を持って2階へ上がる。

 

それから数分後、降りてきた八神に二人はお辞儀する。雪絵はおらず、灼はあれ?となると

 

「白澤さんなら本を片付けてから行くって言ってました。まぁ、私の話は私だけで良いだろうって配慮でしょうね」

 

そう言って笑いかけて来る八神に灼は違和感を感じる

 

白澤雪絵と真反対のような性格に見える。少なくとも、相性良さげには見えない。

 

同棲するほどの仲か?と思ったものの、更生施設を辞めた理由について聞くと

 

「白澤さんが辞めると聞いたのでなし崩しでやめました」

 

そんな理由にはっ?となる。

 

自分で選んだ選択肢を一人の女性が辞めたからと言って辞めて着いて来るなんて大概である。

 

「元から興味なかったんですよ、あそこで働くの、人間を殺処分する仕事も、単なる悩み相談で見合わない薬をテキトーに出すのも、すごく色のない生活でした」

 

ただ自分には適性があったからあそこに行っただけと言われた。

 

それからの話は雪絵同様で、更生した潜在犯のその後なんて管理しないという話題だった。

 

「八神さんはどうして、雪絵先生と暮らしてるんですか?」

 

そう思い切って聞いてみると

 

「いろいろあったんです。シビュラ適性はなくても似たような人生を歩んでいたらそれとなく息が合うというか、あの人読んでる本、過激じゃないですか?私も昔っから色相が濁りにくいタチでしてね、公共の場で色々読みましたよ」

 

そう言って『ケモノの城』を見せて来る。

 

「超有害指定された実在した事件をモチーフにした殺人事件の本です。まぁちょっと物語調になってますし、こっちは警察目線に重きを置いているので面白いですよ」

 

ニコニコと話すのを見て炯は内心『白澤雪絵と同種だな…』と内心思っていた。

 

趣味が似通っているが、雪絵はこういう殺人事件の本も読むのだろうか、知りたいような知りたくないような感覚に灼はなる。

 

それから潜在犯の行方、失踪している人達に関しての話になる。

 

八神も一貫して「知らないです」と言っていた。

 

「行きそうな場所とか、わかりますか?」

 

雪絵の時には聞かなかったが、不思議と八神なら知っているような気がした。

 

炯は一回、灼を見たが、質問を止めないのかそのまま聞く姿勢になる。

 

「…さぁ?自分の家、じゃないでしょうかね?」

 

そう笑顔で言う彼に違和感を感じ取る

 

蜘蛛の糸が巻き付くようなそんな感覚に

 

 

あれからも家族からの通報は後を絶たず、公安警察は頭を悩ませていた。

 

しかし、灼は八神に違和感を感じたことを唐之杜に言うと調べてくれる

 

「八神和彦…更生施設の医師をしていた以外には…、これって…」

 

唐之杜は大きなモニターに八神和彦の家族構成を出す

 

「八神和彦には一人の兄がいるけど、両親は不明。急に湧いたように過去の経歴が偽装されてるわ」

 

「剥がせますか?」

 

「今やってる」

 

そう言って唐之杜のパソコンのスピードが早くなる。

 

「八神和彦の兄は八神宗壱。例のロボトミー事件の協力者。あの事件の後色相が悪化して更生施設に入院。その後、犯罪係数が400を越えて毒ガスが出て死亡したようよ、有事のボタンを押したのは…」

 

八神和彦が押していた。

 

「実の兄を弟が殺害か…」

 

「色相とサイコパスは?」

 

「えっと…80を出してるけど…これも偽装されてるわ、本当のデータは…」

 

パッと画面に出る

 

そこには兄を執行したのにも関わらず犯罪係数は0のままだと言うこと。

 

そして、嬉しそうにボタンを押す八神和彦の映像が映る

 

「何故…サイコパスを誤魔化す必要が…?」

 

「休みを取りたいって理由じゃなさそうだな」

 

入江の言葉に灼は嫌な予感を感じ取る

 

【免罪体質者】その可能性に

 

しかし、白澤雪絵とはまた違う歪な何かを感じる

 

「両親は分かったわ、二人とも都内のごく普通の…じゃないわね、経歴では普通の中央省庁に勤めていたって歴はあるけど、出勤日数は明らかに少ないらしいわ、本業は…」

 

【真如絡仔苑】という団体を立ち上げていたらしい。

 

「宗教か?」

 

シビュラシステムのこの時代において宗教は禁止されていない。

 

むしろ、色相サイコパスが安定するなら勧められるぐらいには少々あるが、巨大な宗教団体は無くなっている。

 

2000年代にあった団体もこぞって壊滅している。

 

理由は地獄の季節とシビュラの到来があったから。

 

「この宗教団体もヤバいとは言われていないみたいね、所属している人間の大多数は色相が安定しているし…でも、問題なのは…」

 

最近は多額のお金が流れ込んでいるという。

 

そして、若者たちを始めとした人達がハマり傾向にあると言うこと

 

「犯罪係数は規定値を越えていないから平気なんでしょうけど…これは調べたほうが良いわね」

 

そう唐之杜に言われてもちろんと言う全員。

 

「その八神和彦さんの両親にまず話を……』

 

灼の言葉に『無理ね』と言われる

 

「二人とも2年前に火事で亡くなってるわ」

 

「生き残った息子のうち1人が大犯罪者の助手。片方は更生施設の医師か…」

 

その言葉に何か違和感を感じてやまなかった。

 

あの事件で少なくとも雪絵先生の友人は命を落としてしまっている。

 

その事件の首謀者である家族と同棲なんてするだろうか?

 

それとも彼女の中で、友人のことはもう過去の人間として割り切っているのだろうか?

 

彼女に聞こうか迷ったが、灼の脳内に一つ疑問が湧き起こる

 

『いろいろあったんです。シビュラ適性はなくても似たような人生を歩んでいたらそれとなく息が合うというか、あの人読んでる本、過激じゃないですか?私も昔っから色相が濁りにくいタチでしてね、公共の場で色々読みましたよ』

 

その言葉にどうしようもないぐらいの違和感を感じる




【引用本】
『オレンジだけが果物じゃない』
初版発行: 1985年3月21日
著者: ジャネット・ウィンターソン
『あらすじ』
熱烈なキリスト信者の子供として引き取られた女の子が世界を知る話。

『ケモノの城』
著者名・誉田 哲也
シリーズ情報・双葉文庫
出版社・双葉社 
出版年月・2017.5 
【注意】
北九州監禁殺人事件をモデルとした(というかほぼそれ)小説。ちょっと尼崎の方の事件にも掛かっている。
読んでて気持ち悪くなります。グロ耐性はあるけど、実在した殺人事件だとどうしても…
作中登場する警察官の好きなセリフ『蜘蛛の糸よりも細い糸を手繰り寄せる』
作中通して警察官は一貫して『何がどうなってんだこの事件は』と困惑しています。終わりのない深淵と評してる警察官もいました。
読むのは自己責任、アビスとかハンニバルに慣れた私でも吐きました


こっからだいぶ遅くなるかもです。難しいのとシビアなのと時間がないのと(⌒-⌒; )
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