免罪体質者がPSYCHO-PASSの世界を行く   作:アルトリア・ブラック(Main)

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今回はオリジナル話が入っています


第4話『事件の影』

白い天井に無菌室な壁、常時計測されるサイコパスと色相

 

《サイコパス・198。白澤江美》

 

出入り口に掲示されている数字から目を離す。

 

『……どうして、雪絵はそんなにクリアなの…?』

 

幼い頃に病院から帰って来た両親と妹に聞く。

 

『雪絵ちゃんは色相美人なのよ、ね?将来有望な子だわ』

 

そう言って撫でられる妹の目を見て気持ち悪いものを感じてしまう。

 

子供なのに、子供らしくない目をしていた。

 

妹は本をたくさん読んで遊んでいた。

 

それだけ見れば普通の子供だった。

 

唯一異常だと思ったのは、怒鳴っている兄が皿を両親に投げたり、大声で叫んでいる時、皿を片付けながらいつもと同じ眼差しで兄を見ていたこと。

 

『…怒鳴り声を聞いても怖くないの?』

 

妹に聞くと『うるさいけど、怖くないよ。それより片付けないと』

 

そう言って片付ける妹が心底不気味で仕方なかった。

 

妹のこと、兄のこと、それら全てについて考えると色相が濁ってしまわないか不安で仕方なかった。

 

《貸し出し〜貸し出し〜》

 

「!!」

 

ハッとなる。

 

ロボットが貸し出しと言って荷物を持っていた。

 

まぁまぁ大きめなダンボールを持っていた。

 

「……」

 

リストを見ると妹から暇しないように貸し入れに問題のないモノが沢山入っていた。

 

「……お菓子が多い、DVD…?」

 

あの妹から送られて来る物はお菓子類が多く、手作りなのか美味しいものが多く、また、本も入っていた。

 

主に自然系統のイラストばかりだが…

 

「…音楽…?」

 

読み込んで聞くと、綺麗な音楽が流れて来る。

 

「…非公認のDVDでこんなのあるんだ…」

 

妹の事は理解出来ない。

 

でも、妹は理解しようと歩み寄って来る。

 

でも…

 

兄に襲われた時、兄の後頭部目掛けてバットを振りかざす妹の目を思い出す。

 

何の躊躇いもなく殺そうとする意思。

 

 

 

 

 

 

公安局から帰った翌日、いつも通り更生施設に出勤する。

 

自分が就職した千代田区の更生施設は他の施設と同様、患者が暴れても怪我しないような緩和剤を入れた柔らかい壁や武器にならないよう細工されているテーブルと不自然な畳でできている。

 

布団も支給されるようになっているのだが、自殺防止のために就寝時間に看護師が入れるようになっている。

 

(…こんな施設に入って、犯罪係数が300を超えたら普通に殺されるのに自殺を防止するなんて変な話だなぁ)

 

まぁ、刑務所と同じだろう。死刑囚に自殺をさせないよう、死刑を執行するのを事前に言わないようにするようなものだろう。

 

『おはようございます。白澤雪絵医師、どうぞお入りください』

 

無感情のロボットからそう言われて中に入る。

 

(…死刑囚ねぇ…)

 

診察室に入り、白衣を着る。

 

ここの建物にいる彼らは《入院》と銘打っているが、実際のところ回復が見込めない場合はほとんど犯罪者のように扱われている。

 

100〜200ギリギリまでは別病棟におり、そこで治療を受けている。そこにいる患者はまだ良い。回復しようと熱心に治療に勤しんでくれるが、200から上は癖がある患者が多い。

 

この世界にとって犯罪係数がそこまで上昇すれば自棄になって誇大妄想を膨らませるパターンが多い。

 

(…家族にも問題がかなりあるんだよなぁ)

 

椅子に座り患者のデータを見ていく。

 

犯罪係数が200以上になれば家族は当然と彼らを捨てる傾向にある。この世界からしてみれば潜在犯の身内なんて碌でもないと見られるだろう。事実、兄が両親を惨殺して姉を強姦してからも雪絵に対する眼差しはそんなモノだった。

 

差別されたとてそれは所詮第三者の目線で、雪絵自身も兄は異常だと思っているから、差別をされても別に「だろうな」程度の感想しか抱かなかった。

 

「白澤先生、午後から初診予約が入ってます」

 

看護師からの言葉に『何時?』と聞くと「13:30と14:30ですね」と言われる。

 

「14:30の方を15:00にしてくれないかな」

 

「分かりました。相談してみます」

 

更生施設の医師は多忙すぎて一昔前の介護士や医師みたいだ。

 

それでも離職率が低いのは給料が高いのと、元々こんな職種を選ぶ人間は公安局に入る並みにサイコパスがクリアでなければならないからだろう。

 

自分の他に医師は四人いるが、正規医師は自分ともう一人、後は臨時の医師で小まめに休暇がある。

 

正規の医師はかなりハードで、それなりに命令権がある。

 

正規医師の上に管理長がいるが、実際の所、管理長の仕事は業務の割り振りや他の省庁との会談ぐらいだろう。

 

 

〜3時間後…

 

 

(あー…つっかれた)

 

肩を回すと肩からゴキゴキ音が鳴る。

 

「お疲れ様です先生」

 

看護師からの言葉にありがとうと営業スマイルで返しつつ、また診察室に入る。

 

(…また大した内容じゃないのによく相談に来れるよなぁ…)

 

サイコパスが80に上昇しつつある患者が二人、診察を依頼して来た。自負するわけじゃないが、自分の診察は割と好評で、白澤雪絵と話すとサイコパスが下降すると評判だった。

 

まぁ、実際の所内容なんて覚えちゃいないし、彼らの話を聞く際は数値ではなく、精神異常者の方の意味合いのサイコパスの人間をイメージしていたらそういう評価をもらえただけなのだが。

 

「白澤先生。倉田慎吾くんのカルテ持って来ました」

 

「ありがとう」

 

そう言ってデータを確認する。犯罪係数が200を越えた患者を診察するのも医師の仕事であり、自分は200〜250まで上昇した人間を診察する担当だった。

 

(…今日でサイコパスは概ね110…それ以上上昇することもなく、規定値も超えてない)

 

彼はもう少しで退院出来るだろう。

 

しかし、唯一の問題は、彼が退院した後のことだ。

 

(…元潜在犯の引き取り手を拒否か…もう潜在犯じゃないって言うのになぁ…)

 

彼の家族が彼を引き取る事を拒んでいる。

 

(…そうなると…唯一の引き取り手候補として父親と母方の祖母がいるんだけど…)

 

ハァとため息をつく。

 

彼の父親は凡人であり、あまり頭が良くない。

 

現在は、普通に工場の仕事をしているが、仕事の結果はあまり良くなく、上司から任される仕事は事務のデータ入力のみ。

 

しかし、そんな存在であっても職場での交流関係は上位であり、平たく言えば部下から手柄を搾取しているタイプだ。

 

凡人であるからこそ、良く考えることができず、部下にパワハラを行うのだ。

 

(…彼についてはとりあえず却下した方が良いかな…母方の祖母に引き取りを頼まないか依頼を…と…)

 

サインをし提出すると、ため息をついて背もたれに寄りかかる。

 

すると、内線が鳴る。

 

「はい」

 

『白澤先生、倉田慎吾さんから話したい事があるみたいです』

 

「通して」

 

『はい』

 

しばらくすると…

 

「…雪絵先生」

 

「どうしたの?慎吾くん」

 

やって来た倉田に微笑むと、少し考えたような素振りを見せる。

 

「?」

 

「…僕ってこれからおばあちゃん家に行けば良いんですか?」

 

「そうなるけど…どうして?嫌だった?」

 

そばに近寄り目線を合わせるように言うと、無言で下を向く。

 

「……おばあちゃんに会いたくない」

 

そう言う彼の色相がだんだん濁って行っているのか、後ろにいた看護師が慌てているのが分かる。

 

「んー、おばあちゃん家に行かないなら養護施設になるけど…大丈夫?」

 

「…うん」

 

目を見てはっきりと言う彼に少し違和感を感じる。

 

シビュラが生まれてから養護施設の存在はあまり良くないものになっている。

 

潜在犯が仮に回復しても社会に馴染めず、出戻りして来る可能性が最も高い。

 

養護施設とは言っているが、刑務所と児童相談所を併せ持ったような劣悪な施設だ。

 

養護施設は社会復帰した元潜在犯がシビュラから適性診断を受けて復帰するまでの中間地点だ。

 

(…劣悪な施設を選ぶほど嫌な祖母…か)

 

祖母のデータを見ていると、また電話が鳴り、今度は公安局から呼び出される。

 

 

 

ー公安局・局長室ー

 

「新たな犯罪心理学者か」

 

シビュラシステムでもある局長が白澤雪絵についての情報を見ながら常守の話を聞いていた。

 

「雑賀先生の代わり…なんて事はいかないけど、あなたたちにとっては願ったり叶ったりでしょう?」

 

免罪体質者である人間をそばに置ける事はシビュラにとっては良い話だろう。

 

シビュラシステムはシステムでは裁けない人間を取り込んで理解力を広げようとしている。

 

「彼女が今後、シビュラにとって必要不可欠な存在になるのは確かだ。公安局の手元に置いておきたかったが…」

 

「彼女自身がシビュラシステムの真実に気づけば槙島聖護のように拒否するのが明白と思ったんでしょう?」

 

「君の言うとおりだ、それについて我々は否定しない」

 

白澤雪絵は、犯罪者の心理を理解しようとしている。

 

否、心理学においての人間の本質がどこにあるか、彼女は貪欲に求めている。

 

「彼女の話を聞いて思ったけれど、彼女は槙島聖護のようになりえる可能性は十分あるわ。でも、彼女自身が自分の能力に気づいていない」

 

サイコパスをクリアにしたり色相悪化させたり、彼女の本質は槙島聖護に近いだろう。

 

「あなたたちの目論見は、彼女に知識を蓄えさせて理解力を増大させてから取り込もうと思っているようだけど、真実を提示しないで取り込んだら彼女はきっと、あなた達を内側から喰らう怪物になると思うわ」

 

局長は「そんな事はあり得ない」と言う。

 

常守は苦笑いを浮かべ

 

「言ったでしょう?彼女は犯罪者の心理を追求するのに貪欲なの。理解出来ない事が見つかれば必ず理解しようとする。槙島聖護の心理を理解出来るならきっと彼女は同じ事をしようとするわ。本当に彼女が必要なら、真実を発表する事を拒まないことね」

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