免罪体質者がPSYCHO-PASSの世界を行く 作:アルトリア・ブラック(Main)
【真如絡仔苑】
カルト宗教団体としてではなく、普通の無害な宗教団体としてシビュラシステムには登録されていた。
数世紀前にあったようなカルト宗教のような団体は壊滅している。
まずもって武力によって分からせたい、教えを広めたいなんて考えを持った時点で犯罪係数が上昇し、潜在犯として認識される。
破壊的思考を持った時点でシビュラシステムに睨まれるが故に今現存している宗教施設の団体は大したことのない施設になっている。
「だが、元更生施設の医師とロボトミー事件の協力者の出身者が生まれた場所だなんてどうもきな臭いな」
自動運転に切り替えた車内にて、炯の言葉を聞いていた。
「…八神和彦さんは、犯罪を犯していないとは思いたいけど…」
もしも、免罪体質だったら、その可能性を考えれば不安で仕方なかった。
しばらく話していると、都会からほんの外れの大きめの建物の前に車が着く
車から出て行くと建物の中から男女のペアが出てくる
「初めまして、私は真如絡仔苑の会長を務めさせて貰っております。美田雅美と申します。こちらは夫の美田雅弘と申します」
「よろしくお願いします」
50代中盤の二人を見て八神和彦とは一切血のつながりを感じない気がした。
こちらにどうぞと部屋に案内され、室内に入る
「………」
灼達は室内に案内され、二人に警戒されない程度に当たりを見渡す
執行官は表で待機している。
どの建物でもそうだが、潜在犯が身近にいると不安に思い犯罪係数が上昇するから近くに来られるのを拒否する傾向にある。
潜在犯は感染症じゃないと言われているが、それでも人の潜在意識は変わらない。
二人は応接室に案内される
「それで、今回はどういったご用件で?厚生省への届出は問題ないと思いますが…」
何もやらかしていない、と自信たっぷりの美田雅美と笑顔のままの美田雅弘
「実は、この人物に関してお聞きしたく来ました」
そういって八神和彦の写真を見せる
「彼は千代田区更生施設の医師をしておりました。八神和彦と言います。この施設の出身者とお聞きしました」
あくまで連続失踪事件に関しては話題にあげず彼について聞くと美田雅弘の方がピクッと反応していた。
「随分と美形なお方ですね、私は知らないです。あなたは?」
「…私も、知りません。更生施設には行く必要がなかったので」
明らかに何かを隠しているような反応
「では、彼は?」
そう言って兄の八神宗壱の方を出す
例のロボトミー事件は箝口令が敷かれ公になっていない。
いっときは事件の話題で持ちきりだったが、やがて忘れられた。
そもそも、あんな猟奇事件はすぐに忘れ去られるものだ。
槙島聖護が起こしたようなテロじみたものは忘れ去られるのに時間はかかるが…
「八神宗壱。八神和彦の兄です。かなり歳の離れた兄で…」
「知りません!!ウチの施設の人間じゃない!」
そう怒鳴るように言う美田雅弘に妻は「え?あなた?」と動揺していた。
その動揺にハッとなったのか、座り直し
「彼らとは知り合いではありません。かつて当法人にいらっしゃったのかもしれませんが、今は所属していません」
なんとか落ち着こうと息も絶え絶えに話す
明らかに何か隠しているのは明白で、ここにサイコパスを測定する機械があったらすぐにレッドゾーンに行っていてもおかしくなかっただろう。
「…あの…このお二人が何か?当法人と何か関わりがあるんですか?」
妻の方が不安そうに聞いてくる
炯と灼は顔を見合わせ炯の方が口を開く
「最近、都内の更生施設で失踪者が増えて来ているので、その身辺調査を、その際に二人が関係者として該当しました」
もちろん、二人とは言っているが、八神宗壱はすでに故人であり、白澤雪絵のことを言っているのだが、そんな事を言わなくても美田雅弘の方には伝わっているように見えた
「八神和彦さん、この施設の出身のようなんです。そのお兄さんも」
炯はまっすぐに美田雅弘の方を見る
「まぁ、彼が?私は名簿を見ていなくて…あなた?」
美田雅弘は拳を握り締め
「私は…知りません…!彼らの事は…!私はただっ…彼らからの土地の所有権と法人の名義を貰っただけで…、失踪事件と何の関係もありません!」
そう言って立ち上がり部屋から出ようとする
「八神和彦さんは生きてます。更生施設の医師をして今は私立桜霜学園の教師をしています。現在も結構人気のある教師らしいですよ」
灼の言葉にん?となる炯
人気があるのは白澤雪絵の方だと学園の教師陣から聞いた。
確かに八神和彦は美形の分類で、持っている科目は白澤雪絵より多いが、人気という話は…
灼がメンタルトレースしているのか、淡々と話しているのを見て後で事情を聞くかとその場を任せる
「どうして、彼らについての話題をそんなに出されるのを嫌がるんですか?」
そう聞かれた美田雅弘は壁に掛かっているサイコパスを計測しているモニターが悪化して行っているのを見て焦ったのか
「本当の…悪魔は、人間の皮を被ってるんだ…刑事さんには分かるでしょう」
そう頭を抑えながら言う
「…あーないかなぁ本」
そう本棚の前で呟く雪絵
「…格闘技の練習しながらも考えてますよね本のこと」
隣にやって来た八神がお茶を飲みながら言う
「本は面白いよー、価値観が広がるから」
そう言って本を取ってペラペラ捲るがまた本棚にしまう。
「これはどうですか?」
そう言って八神から勧められた本を見て眉をひそめる
「…よく女性にこんなエログロサイコキラー小説すすめられるね…」
そう言うと『悪徳の栄え勧めた貴女が言います?それ』と突っ込まれる
「面白いですよ、すごい猟奇的ですけどサイコキラー小説としては有名じゃないですか『殺戮に至る病』って」
「……いや有名だけどさ」
そう手に取りながら背表紙を確認する
「少なくとも夜に読む本じゃないよね」
「夜に読むから良いじゃないですか」
そう笑顔で言われ、雪絵は思いっきり顔を顰める
その顔を見て笑いながら
「"自分は魅力的に捉えやすい"と思うサイコキラーって多いですよね、以前貴女が教えてくれたテッドバンディとか」
「…まぁある意味、ナルシストだから前へ前へ行けると思うんだけどね」
そう言って本棚の下の方から本を取り出して八神に渡す
「『望み』?どんな話ですか?」
「ネタバレしても良いの?」
「うーん、それは嫌ですね、あらすじだけでも知りたいですけど…」
「平穏に暮らしてた四人家族に襲い掛かる悲劇の物語。行方不明になった息子が加害者か被害者か、どっちの方が幸福という話」
そう言って『殺戮に至る病』を持って台所に向かう雪絵
「面白そうですね…ちなみに雪絵さんは、どっちが幸福ですか?」
そう言われ雪絵は足を止め
「被害者」
ちょうど月明かりに照らされた雪絵がそう振り返って言い、台所の方に去って行く
八神は微笑みながら
「雪絵さんもこっち側だと思うけどなぁ」
そう呟きながら『望み』をペラペラめくる
【参考文献】
『殺戮に至る病』
作者・我孫子武丸
エログロサイコキラー小説(少なくともいろんなサイコキラー小説読んで耐性つけないとキッツイ)
コレを読む前に『逡巡の二十秒と悔恨の二十年』とか『向日葵の咲かない夏』とか読んだ方が良いかも少なくとも初見で読むもんじゃない
『望み』
作者・雫井脩介
行方不明になった息子がある事件に巻き込まれた可能性があると警察に教えられる。被害者か加害者か…