免罪体質者がPSYCHO-PASSの世界を行く   作:アルトリア・ブラック(Main)

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次話は本編ではなく箸休め回。番外編です


第3話『偶像』

 

「彼らは…最初はどこにでもいる普通の夫婦と子供だったんです。私は、真如絡仔苑の一信徒ととして存在しました。会長である八神(みのる)さんはシビュラシステムを信仰してました。当たり前です。我々の社会基盤として絶対の神であるシステムを崇めるのは当然でしたから…」

 

美田雅弘は祈るように組んでいた手をギュッと握り締め。

 

「そんな時に一人の男が信徒として入って来ました。金回りが良く、ストレスケア薬剤の提供や情報を沢山くれました。外科医と名乗ってました」

 

「その男の名前は…?」

 

「松本雄三と名乗ってました。彼は八神稔さんを唆したんです」

 

視線を監視官に合わせず、横を見ながら言う

 

「唆した?具体的な理由はわかりますか?」

 

炯の言葉に首を振り

 

「当時の私は一般信徒でしたし、稔さんと会うのも合同会議の時でしたし…松本雄三が関わってから八神さん達が露骨におかしくなったんです。急に都外の方に引っ越すと言って土地の所有権も権利も唐突に一信徒の私に譲渡してきましたし…」

 

「問題は起こらなかったんですか?」

 

「…私は一信徒の中でサイコパスの上昇はない人でしたから…」

 

団体をいきなり丸投げした夫婦、そして、都外に唐突に引っ越した一家。

 

一見行方不明者達と何ら関係ないと思ったが…

 

「その引っ越した先については聞きましたか?」

 

「それが…詳しいことは…ただ、稔さんは『シビュラシステムを盲信し過ぎている妻を一回都内から離したい』と言っていました。奥様の方は…すごく信徒達に支持がありましたから数人は着いて行きました」

 

「その数人は彼らの中にいますか?」

 

行方不明者の写真を見せると一人を除いて全員知っていると言っていた。

 

 

公安局に帰る中、炯と灼は簡潔に話をしていた。

 

「一人の少女を除いて大抵の人は八神昭美の世話係として都外に引っ越したか」

 

「…松本雄三の話に乗るなら…都外じゃ無くて都内に隠れた方が良いと思ったんだけど…そうしなかった理由…」

 

灼の呟きに炯は「宗教が絡んでいる以上、断定は出来ないな」と呟く

 

灼は事件を大まかにまとめたものをモニターで眺めていた。

 

時期的に言えば全員は一回都外の方に引っ越している。

 

その後に何らかの事情があって更生施設に入所している。

 

更生施設に入ってる時期は様々だが、最後から4番目に入所施設から去る前に八神夫妻は亡くなっている。

 

その後、彼らは行方不明になり、そのうちの一人である爆弾犯が白澤雪絵に対する文章を残してテロを起こした

 

「…意味が分からないなぁ…」

 

八神夫妻の長男に関してはロボトミー事件で逮捕、犯罪係数の上昇で死んでいる。

 

生存者は八神和彦のみになり、妙な胸騒ぎがあった

 

行方不明になった人物達とその人物達と知り合いの爆弾犯。

 

人物達が世話をしていた八神昭美の人となりも不明。

 

二人の息子を残した火事。

 

 

 

 

 

雪絵が学校に行ってる中、八神は非番の日であり、雪絵から勧められた『望み』を自室で読んでいた。

 

一度本から顔を上げ、前を見ると遥か昔の家族写真が目に入る

 

父である八神稔は献身的で穏やかな男だった。母である八神昭美は活発で何でも信用しやすいタイプだった。

 

(兄さんとは仲悪かったけど、美沙とは仲良かったな)

 

実の父親のように慕ってくれたのを思い出し微笑する。

 

美沙と父の関係は悪かったが、そんな事美沙は気にしていなかった。

 

『あぁぁ、貴方はシビュラなの…!?あの男の息子もそうだと言っていたけど…!』

 

母の言葉を思い出し『何言ってんだろう』と思いつつも母は父と違って頭が悪かった

 

父は沢山本を読み、沢山勉強して名門学校を卒業していた。

 

いわば外へ外へ出るタイプでそれなりに人付き合いも良かった。その反面母は内向的であまりテレビも何も見ず、サイコパス計測器を握りしめているような人だった。

 

(…兄さんはこの小説に出てきてもおかしくなかったなぁ)

 

そう呟きながら読み終えた『望み』を見る

 

母は頭が悪いから否定されると狂人の如く怒り狂う。

 

でも、狂ってはいる分妄想は実に見事だった。

 

読者を引き込ませるぐらいのネタを書けるだろうにと思ったことは何度もあった

 

「……シビュラとはどんなものなんでしょうかねぇ…」

 

別に暴きたくもないが、ふとそう疑問に思った事はあった。

 

現人神なのかと一時は思った事はあったが、大人になればなるほど違うだろうなぁと言うのは目に見えて分かった。

 

こんな膨大な人間の管理と潜在犯を分別、そして、そこから細部に至るまでの適正判定。

 

誰と誰が仲良しなんてただの人間に務まるのかと思う一方、AIとかそういうのでも不可能な気がした。

 

(…まぁ、完全なるディストピアに舵を切っているなら話は別ですけど…)

 

【そのなめらかな世界と敵】や【ピュア】のような世界なら完全に今の見方も変えなければならない。

 

『シビュラって何だと思いますか?』

 

雪絵へ唐突に質問を投げてみた事もあった。

 

その時、雪絵の表情が少し変わった

 

明らかに知っているような素振りを見せたが、淡々と

 

『さぁ、現人神なんじゃないの?』

 

信じていないのにそう話す雪絵

 

『貴方は本当に嘘つきですよね』

 

『嘘を嘘だと証明できる何かでもあるの?』

 

『ないですけど』

 

『じゃあ、"本当"になる。嘘だと決定していないのならそれはずっと本当のまま。違う?』

 

雪絵と友人関係の意味の付き合いをしてから楽しい日々だった。

 

同僚時代からも雪絵は異質だった。

 

人によってまるで見ている人物が違うように演じていた。

 

『雪絵先生って毎回セラピーで人変わりますよね…私それが嫌いで怖くて仕方ないんです』

 

恋愛適性があった看護師からそう言われたこともあった。

 

確かにその看護師との相性は良かったかもしれない

 

でも、その人と一緒になってもつまらない未来しか見えなかったからすぐに振った。

 

どんなに相性が無くても雪絵といる時だけは楽しかった。

 

【ロボトミー事件】

 

その事件の共犯に自分の兄の名前が上がっていたのを見て本当に面白かった。

 

『犬と保健師みたいだな、兄さん』

 

そう楽しげに言いながらボタンの前に立つ

 

兄の、自分を責め立てる声を無視しながら

 

『家族が壊れたのはお前が……』

 

その言葉を聞き終わる前にボタンを押す

 

『何を言ってんだか…(家族を壊したのは松本雄二なのにな)』

 

そう思いながらテレビをつけると

 

『先日発生した爆破犯に関してです。同刻港区の一軒家が破壊されました…至急公安局は事件の収集にあたって…』

 

その話題を見てコーヒーを入れてた手を止める

 

「………本当につまらないことを考えるな…」

 

そう呟きながらコーヒーを飲む




八神稔
真如絡仔苑の教祖
二人の息子がいる。シビュラシステムを盲信的に崇めているが、現実を失うほどじゃない。

八神昭美
稔の妻。真如絡仔苑副教祖
シビュラシステムを盲信的に崇高しており、最早狂気レベル
例え真実が判ろうとその真実は見ない偶像を崇め続ける女。おかしくなった本人

八神宗壱
二人の長男、34歳
ロボトミー事件の犯人・松本雄二とは親友同士の間柄、ロボトミーに関しては…
弟に関しては強烈な嫌悪感を抱いていた


八神和彦
次男。24歳
主人公と同棲している男。次男。元更生施設医師で現在は教師
職業に対してのこだわりは無く、楽しいか楽しくないかで考えている。
更生施設の医師時に兄を【有事】の際の毒ガスで殺してる。

八神美沙
???。実年齢不明。娘
兄・和彦に似ている。ある事件で行方不明
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