免罪体質者がPSYCHO-PASSの世界を行く 作:アルトリア・ブラック(Main)
3期は軽くしか見ていないため、唐之杜さんは普通に仕事を続けていたり、局長は禾生局長のままだったりします
【変更点】
松本勇人→松崎
シビュラシステムが今の日本の要になってから、この世から刑務所や裁判所も消滅している。
消滅はしているが、更生施設に刑務所のようなシステムはある。
自分の在籍している千代田区の更生施設はいまだに手動で毒ガスを排出させるボタンがある。
いわゆる死刑を執行する時に刑務官が三つのボタンを押すシステムだ。
とはいえ、そのシステムも近い内に廃止される予定になっている。
誰が押しているか分からないとはいえ、自分が押したこのボタンが人を殺めるボタンだったらと考えてしまえば絶対に犯罪係数は上昇するだろう。
(人を殺処分される犬のように扱うのは正直嫌悪するけど)
今日、犯罪係数が500を超えた二人の男性が大暴れし、毒ガスで命を落とした。
そのスイッチを押したのは雪絵で、他の看護師達は色相が濁るからと雪絵に頭を下げて来た。
(…サイコパスって上昇するものなんだ)
サイコパスが人の精神を数値化し、そのサイコパスによって色相が濁れば潜在犯の仲間入りを果たすらしい。
SF小説の世界のようで、初めは慣れなかった。
雪絵自身、これまでの人生でサイコパスが上昇したことはなかった。人を殺めるボタンをその時でさえ、サイコパスは『0』を叩き出した。
看護師が影で自分のことを何て言っているかなんて興味ないが『不気味な人』と言われているのは知っている。
自分でさえ、なんで下がるのか微塵も分からないのだ。
(…『1984年』の世界よりはマトモな世界だけど…どっちかというと『アンドロイドは電気羊の夢を見るか』の世界に近いよなぁ〜。まぁ、この世界の方が救われてる人間は多いだろうけど…)
この世界は過去の人間が喉から手が出るほど欲しかった世界だろう。昭和によくあった猟奇的犯罪者や幼児を誘拐拷問殺害なんてする犯人の精神構造をした瞬間に犯罪係数が上昇し逮捕できる。
更生施設にいる潜在犯の数人に幼女趣味や特殊性癖を持つ人間は確かにいる。そういう彼らを出したところで誰かしらが悲しむことになる。その悲しむ人間を一人でも減らせているこの社会は成功したと考えてもいいのだろう。
しかし…
(…公安局…)
シビュラシステムから通知が来て、急遽犯罪心理学者として公安局に協力して欲しいという申し入れが来た。
意味が分からなかったが、管理長からは公安局が必要としていると聞かされ、これから公安局に向かうことになっている。
「初めまして、公安局監視官・慎導灼です」
「同じく炯・ミハイル・イグナトフです」
そう話してくれる二人の監視官を見る。
「ミハイル・イグナトフ?外国人ですか?」
「ロシア系帰化移民です」
「へぇ…珍しい」
シビュラシステムが出来てから移民は疎か外国人は居なくなった。
日本のみの法治国家、他国は戦争に明け暮れていると海外サーバーを経由した掲示板で話しているのを見た。
しかし、近年、外国人を少数ではあるが移民として受け入れているというニュースはよく見る。多くの日本人は入ってくる移民に不安を感じつつ、同時に彼らの犯罪係数が上昇するのを願う者もいるのは知っている。
車に乗り、公安局に案内される。
公安局局長に挨拶した後、情報分析室に向かう。
普通なら外部の人間はすぐに事件に関わらないようになっているのかと思ったが、シビュラの判定はそういうのも凌駕するのか、あっさりと受け入れてくれた。
「連続失踪事件?」
公安局の一室に通され、事件のことを説明される。
「犯人は一応捕まえたのよ。色相が悪化したから捕まえたんだけど…犯人の親類縁者数名が失踪してるのよ」
そう言って犯人と取り調べしている執行官の映像が流れる。
「…スキャナーに引っかかることもなく?」
霜月監視官の言葉に唐之杜は「そうそう」と言って犯人が住んでいたマンションから会社近くの一帯まで見せる。
「入った形跡はあるんだけど、出て来る形跡はないのよ」
そう言われ、一つの可能性が脳裏に浮かぶ。2008年に起こった神隠し事件と2002年にあった監禁殺人事件が思い浮かぶ。
「……監禁されてるあるいは死んでる可能性が高いのでは?」
白澤の言葉に霜月は嫌そうな顔をし、その場にいた執行官達も嫌そうな顔をしていた。
「…どうして、その二つが上がった?」
炯監視官からの言葉に白澤は画面から目を離さず
「シビュラができる前、2000年代に似たような事件があったんです。その時の遺体の処理の仕方は…」
言おうとして止まる、あんな内容ここで話したら嘔吐する人間が現れてもおかしくないだろう。
「唐之杜さん。近隣からの情報提供の中に"ノコギリの音"がしたとかありませんか?」
そう聞くと
「ないわよ?まぁ、現場は一戸建てだし、両サイドの家は日中は出掛けていないみたいだし」
「………」
逆に言えば、日中なら処理できるということになる。
白澤の脳裏には複数の過去の事件が出てくるが決め手に欠けていた。
悩みながらモニターの犯人を見ると、執行官に対して敵意剥き出しな犯人の表情を見て
「あの、会って直接話して見て良いですか?」
最高責任者であろう霜月監視官に聞くと、本当に嫌なのか渋っていた。
「彼…松崎勇人さん、サイコパス50ですよ?今のこの状況じゃ逮捕できないし…まだ証拠もないし、ここは先生に行ってもらった方が良いんじゃないですか?霜月監視官」
灼からの言葉に霜月はまだ悩んでいたのか、メンタル薬をお菓子のように食べながら「行ってきなさい!」と怒鳴られる。
「はい」
そう言って部屋から出る。
取調室に入り、執行官と席を変わる。
「初めまして、私千代田区更生施設心理カウンセラーの白澤雪絵と言います」
そう名乗ると松崎勇人は「いやぁ、先生、お待ちしてました」そう言って立ち上がって両手を広げて来る。
自分で言うのもあれだが、割と有名人として世間を賑わせていると思う。自分のカウンセリングを受けたらサイコパスが下降しただとか、薬を飲まないで色相が正常になると高評価される。
「どうも、長い間拘束されてつらいですね」
そう返すと松崎勇人は大袈裟にジェスチャーしながら「そうなんですよ〜!サイコパスだって濁ってないのに!」とオーバーリアクションを取りつつ話していた。
取調室に入る前に渡された対象者の犯罪係数と自分の犯罪係数を測定する機械を見ながら話し始める
松崎勇人の犯罪係数は50、自分の犯罪係数は20と表記される
「最近、松崎さんのご自宅によく来られてた斉藤昭美さんと柚原和彦さんが行方不明なのご存知ですか?」
「えぇ、二人とは仲良くさせてもらってます!」
尋ねていない事を饒舌に語り始める彼。
「お二人が松崎さんのお部屋から出て来た様子がないと通報があったんですよ。姉が貴方に会いに行ってから帰って来ないって」
「それは申し訳ない。昭美は部屋にいますよ、一緒に暮らしてます。和彦は遊びに来てから酔い潰れまして寝てるんですよ!全く困りました!だから大丈夫ですわ!」
大袈裟にアピールしながら言う彼からは違和感しか感じない。それに、目の動きは実に分かりやすかった。
人は表情で嘘はつけるが目は口ほどに物を言う。どれだけウソをつくのに慣れている人間であろうと、瞳の動きは誤魔化せない。ロボットなら話は別だが。
しかし…
(…犯罪係数が規定値を超えてないからな…)
松崎勇人の犯罪係数は現在80と興奮しているせいもあってか、少しだけ高いだけで問題はなかった。
それに、犯罪の立証とやらが出来ていない。
しかし、松崎勇人から二人が家にいると聞き、質問を変えようと少し前のめりになり
「ご家族も心配しているのでご自宅に帰るように説得してください」
「はい!もちろん、そう致します!」
目を見せないようにニッコリと笑う彼、前のめりになる彼の足が組まれるのがわかる。
(…生きてる可能性低いな…)
この話題にはこれ以上触れてくるなと言ったような素振りに見える。生きているか死んでいるか聞けば良いのだろうが、彼の場合、上手くいく可能性があるとは微塵も思えなかった。
《犯罪係数 98》
雪絵にだけ聞こえて来る。
それと表情の動きを見て、これ以上引っ張り出せないなと思い、机の下で手をバツにして無理だと伝えると、監視官達がやって来る。
松崎勇人が帰った後、雪絵は元の部屋に戻り、監視官達がいる部屋に戻ると霜月監視官を見て
「間違いなく二人は部屋にいます」
そうハッキリ言うと「なんで」と聞いて来る。
唐之杜はデータをしっかり見ていたのか、データを出しながら
「雪絵ちゃんが家族が心配しているから帰るようにって言った時、明らかに犯罪係数が上昇したわね」
「今日か明日帰った場合は確実に生きていると思って良いですけど、あの調子じゃ無理でしょうね」
そう言って灼と目が合う。
「今回は様子見で、慎導監視官と炯監視官は松崎勇人のマンションを監視するように!白澤先生にはまた後日お知らせします」
霜月監視官からの言葉に『わかりました』と言って解散になる。