免罪体質者がPSYCHO-PASSの世界を行く   作:アルトリア・ブラック(Main)

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PSYCHO-PASSの世界は大好きだけど難しい。なおのこと他な本を読むから脳がぐちゃぐちゃになる。




第7話『恵比寿一軒惨殺事件・下』

ドアが開き、まず、松本勇人がいる部屋に入る。

 

今回の事件と半世紀以上前に起こった殺人事件は類似している。

 

しかし、唯一違う所といえば…

 

「お久しぶりです。厚生省更生施設の医師をしてます。白澤雪絵といいます。よろしくお願いします」

 

営業スマイルで彼に語りかけると、彼は社交辞令のように「先生!今回の事件私は一切関与しておりません!この通りサイコパスもクリアでしょう!」といきなり身の潔白を証明し始める。

 

開口一番に無実の証明は『私は犯人です』と言っているようなものだ。

 

「はい」

 

両手を机の上で組んで彼の話に耳を傾ける。コミュニケーションを取る時には笑顔も無論大事なのだが、目線も大事だ。適度に瞬きの回数も計算しなければ相手に威圧感を与えてしまう。

 

目を見て話せとは言うが、目を見すぎても圧を感じる。微妙な匙加減が必要だ。

 

「先生は私の事を疑って来たのですか?厚生省の監視官さん達には事の顛末はお話しましたが…」

 

「はい、聞きました。まさか隣室で人が死んでたなんて驚きですよね」

 

笑顔を交えて言うと、松本勇人は少したじろぎながら「は、はい!そうなんですよ…まさか本当にやるなんて…」と涙ながらに言う。

 

「………」

 

松本勇人の犯罪係数が50と降下して行くが、焦る事なく笑顔で話す。

 

罪を犯しても犯罪係数が上昇することのない松本勇人、その後ろに見える史上最悪サディスト殺人鬼、半世紀以上前…いやもっと遥か昔かもしれない洗脳を得意とした最恐最悪外道犯罪者が嗤う。

 

「えっと、倉田静江さんと鈴木真理恵さんが口論していたのが始まりなんですよね?そこから怒鳴り合いに発展したと、そんな時あなたは二人を止める事をしなかったんですか?」

 

「勿論しました!二人の怒鳴り合いを止めに入った義樹と和彦の仲裁で一時的に和らいだんですが…」

 

「はい」

 

相槌を打ちながら彼の話を聞く。

 

「真理恵が義樹を突き飛ばして…運が悪く…」

 

タオルで目元を拭きながら話をする。

 

(…涙出てないけどなぁ)

 

と思いつつも笑顔は絶やさない。

 

「そこからどうして解体の流れになったんですか?」

 

「え?」

 

自分が話している内容がいかに異常なのか理解してはいるが、こういった犯人に取調官のような立ち位置で会うのは少しだけワクワクしていた。

 

松本勇人の前にサイコパスが計測される機械を出す。

 

《松本勇人、犯罪係数57。白澤雪絵、犯罪係数20》

 

「!!」

 

「もし、仮に突き飛ばして死なせてしまったなら公安局に通報しますよね?でも貴方はしないで、残った倉田静江さんか真理恵さんに『自分達でやれ、私は関係ない』みたいなこと言ったそうですね」

 

自分は一切関係ないという線引きをしているのは良いが、そこで自分も手を下さないのだから、日常的に暴力で支配していたのだろう。

 

『シビュラが判定した通りなんだから間違いないよ』

 

そう言った姉の姿を思い出す。

 

「貴方と倉田静江さん、シビュラ診断で親友になったみたいですが、貴方の性格からして彼女に話を聞いてもらうのが多かったんじゃないですか?」

 

《松本勇人、犯罪係数30、白澤雪絵、犯罪係数30》

 

「そ、そうなんですよ!静江は凄い聞き上手で…」

 

彼の表情を見て余裕のなさが伺える。

 

「私、彼女の息子さんの主治医をしたことがあるんです」

 

「!」

 

そう言って懐から写真を出す。

 

「倉田慎吾くん、15歳です。静江さんの息子で元潜在犯、今は養護施設で生活しているんですが…彼からいろいろ聞いたんですよ。静江さん、結構な内気な女性で聞き上手というよりかは受け身がちな女性と、彼女の夫は工場勤務していて数年前に結婚してから慎吾くんが生まれているんですが…」

 

個人情報になるが、倉田慎吾君から聞いた彼女達の家庭を思い出す。

 

「彼から母親に関して『全て受け身で怒鳴られても笑ってる』って言ってたんですよ。その祖母…静江さんのお母さんも結構言葉のきつい母親だったみたいで、慎吾くんもそんな家族が嫌だったみたいなんですよ」

 

思い出しながら言うと松本勇人が「は、はぁ」と呆気に取られていた。

 

「話がそれましたね、ごめんなさい。貴方は責任を負いたくないから静江さんに遺体の解体を任せた。普通なら嫌だとか言いますけど、日頃から受け身がちだった静江さんは貴方に逆らうことが出来ず遺体を解体した。静江さんは現場に踏み込んだ執行官さんによって執行されました。それぐらい罪の意識があったと言うことです」

 

《松本勇人、犯罪係数60。白澤雪絵、犯罪係数20》

 

「そ、それがなんだというんですか!とにかく私は殺していない!サイコパスだってクリアでしょう!これ以上言うなら…」

 

「仮に貴方が私にサイコパスを侵害されたとか言っても構いませんよ」

 

ニコリと微笑み、松本勇人の性格を考え

 

「貴方は悪くないんでしょう?自分の友人が勝手に柚原義樹さんの遺体を切断してミキサーにかけたのも貴方は悪くない」

 

《松本勇人、犯罪係数89、白澤雪絵、犯罪係数10》

 

「なっ…」

 

犯罪係数がみるみる内に下降している雪絵を見て血の気が引いていた。

 

「自分は関係ないっていう傍観者効果で貴方は幸いにも犯罪係数は上昇しなかった。ある意味そこは凄いと思っているんです」

 

椅子に深く寄りかかって微笑み

 

「でも、自分の言葉に責任を持たない、友人を解体するように命令する。次は解体業の部長をお勧めしますよ!人間を解体するより土木を解体した方が楽ですから!えっとお勧めの所は…」

 

《松本勇人、犯罪係数109、白澤雪絵、犯罪係数0》

 

その数値を見て松本勇人は椅子から転げ落ちる。

 

「な、なんなんだよ…!あぁ、色相がぁ…濁ったぁ…」

 

狼狽する彼に歩み寄る。

 

「たかが109ですよ?更生施設で療養すればすぐ退院出来ます。まぁでも?」

 

屈託ない笑顔を見せ

 

「更生施設も人手が少ないので、私が医師を務めます。責任をもって『最後まで』一緒に頑張りましょうね?」

 

心理カウンセラーとして患者一人一人に向き合わなければならない。退院した後のことは知らないが。

 

《松本勇人、犯罪係数135、白澤雪絵、犯罪係数0》

 

松本勇人に重ねていた最恐最悪外道犯罪者が霧のように消えていく。

 

 

 

 

事情聴取を終えた後、監視官達のいる部屋に行くと霜月監視官と執行官達がおらず、代わりに常守朱と男性がいた。

 

炯監視官は唐之杜と何か話していた。

 

「ご苦労様、雪絵ちゃん」

 

朱はそう言ってやって来る。

 

「霜月監視官達いないんですね」と言うと唐之杜が振り返り

 

「気分悪いからって言って退出して行ったわよ…。というか、貴女、爽やかな顔して言ってる事かなりエゲツないのね」

 

タバコを吸いながら『可愛い顔して凶暴過ぎるわねぇ…』と呟く。

 

「そうですかね?実行犯は彼じゃないんでしょう?なら最後まで罪を認めなかったら良いのに、変に動揺していたから少しは罪悪感を感じているんだろうなと思って追求してみました」

 

猟奇的犯罪者、半世紀以上前に起こった外道犯罪者は裁判の時ですら笑いが起こったという。人を数十人言葉だけで殺したのにも関わらず。思うに、外道犯罪者は罪悪感を微塵も感じなかったのだろう。

 

しかし、松本勇人は違った。確かに人より罪悪感を感じない性格なのだろうが、猫を蹴り飛ばせば微妙に罪悪感を抱く程度の人間だったのだろう。

 

「遺体の処理の仕方を土木の工事に例えたアンタがゾッとするよ」

 

狡噛がタバコを吸いながら言う。

 

「骨って土木で使われてるような木よりは脆いみたいですよ、電車が乗っかる程度の重みで砕け散るくらい」

 

普通に言う雪絵に唐之杜が『なんで知ってんだか…』と言う。

 

「雪絵ちゃん」

 

「?はい」

 

「彼と話しているときのこと、少し教えてくれない?」

 

常守の目に軽蔑の色は含まれていなかった。

 

「私の心境ですか?状況についてですか?」

 

「貴女の心境について」

 

そう言って席に座って話しましょうと言われる。

 

「端的に言えば彼をどう切り崩すか考えてました。だって罪の意識はないんですよ?どっちかと言うと私は悪くない!真理恵達が勝手にやったとか言ってますけど、そう言ってる彼には焦りが見え見えでした」

 

「自分のサイコパスが濁されるんだからな」

 

そう言う狡噛。

 

「アンタが目の前にサイコパスの計測器を出したのも、アイツへの圧の為だろ?」

 

「よく分かりましたね」

 

「自分はどんどんサイコパスが悪化してるのに対面の人間はどんどんクリアになって行く、側から見れば恐ろしくて仕方なかった。んで、アンタはバラバラにした様子を事細かに話した。逆に問いたい、なんであそこまで詳しかったんだ?」

 

「………」

 

二人の怪訝そうな目に

 

「まだシビュラシステムが生まれる前の事件、それが本になってるのを最近見たんですよ」

 

そう言ってデータを二人に見せる。

 

『殺し合う家族』と書かれた分厚い本を見る。

 

「…知ってるか?」

 

常守に問いかける狡噛。

 

「いえ…内容までは、有害図書よね?コレ」

 

「はい。今じゃこの本を借りるのに、サイコパス検査やらここ2年間の色相チェックが必要になるんです。まぁ、借りたら自動的に厚生省に通報される形になってますけど」

 

「コレと似たような事件が起きて、この犯人と同一かもしれないと覚悟して切り込んだんですが…。まぁ、犯人は目の前で解体する様子を見て色相が悪化して一時逮捕、本当に性根も臆病者でしたよ」

 

まぁ、犯罪者なんて性根が腐っているからそんなことできるのだろうが。

 

 

二時間後…

 

 

少し遅くなり、自宅に帰るために車に乗り込む。

 

エンジンをかけた時…

 

「ん?」

 

メールが来ていることに気づき開く。

 

《白澤先生へ、助けてください。倉田慎吾》

 

「慎吾くん?」

 

 




【参考文献】
『殺し合う家族』
初版発行: 2009年3月31日
著者: 新堂冬樹


ちなみに遺体処理の例えに土木のように例えたのは、電車の車掌をしていた高校時代の先輩が電車に飛び込んできた人を轢いた時の感覚がそんな感じと言ってました(実話)

なんか、土木工事してる時のような音らしい………

窓ガラスに当たるんじゃなくて下に当たったらそうなるらしいです…(知りたくなかったその情報)
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