免罪体質者がPSYCHO-PASSの世界を行く   作:アルトリア・ブラック(Main)

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pixivの方のコレは止まっているというのにどんどん書いてしまう(加筆込みだけど…)

いろんな本を読んでから再度PSYCHO-PASSの世界を見ると見方が変わるんだよなぁ、コレを書いてた当時はシビュラは悍ましかったけど…



第8話『犯罪者と異端者・上』

 

五月蝿いぐらい鳴く蝉の鳴き声を聞きながら、二人の兄妹は一軒家の庭でくつろいでいた。

 

『いつも色相が真っ白で羨ましいな』

 

そう言った兄の表情は穏やかで、人に好かれそうな優しい表情だった。

 

『私は白より色が付いてる物が好きだよ、私は白大嫌い』

 

幼い妹に語りかける兄。

 

『どうして?』

 

『…だってみんな、白だと嬉しそうにするけど理解出来ないって顔してるんだもん、私は普通だよ?』

 

そう言って兄を見る。

 

『うん、知ってるよ。雪絵は感情表現が乏しいんじゃないかな?怒る所で冷静になっちゃって、泣くところで泣かないから』

 

『どうしたら良いの?』

 

膝に乗る妹に兄は優しく語りかける。

 

『たくさん本を読んで、たくさん物を見たら変われるよ』

 

見方が違えば価値観も変わる。登場人物の立ち位置になって考えたらきっと視野は広がると兄は言った。

 

『うん、頑張る』

 

幼い妹は物事を理解するのが好きだった。

 

『俺もね、雪絵の行動はおかしいと思わないよ。鍵を毎日閉めてるのも、俺達を守ろうとしてくれてるんだろう?念には念をって』

 

『うん。でもお母さんは必要ないって』

 

そう言った妹に兄は優しく撫でる

 

『雪絵にとって正しいと思うことをしたら良いと思うよ』

 

そう言って微笑む優しい兄のことを思い出す。

 

『お兄ちゃんみたいになりたい』

 

そう言って微笑む妹。

 

 

 

 

ポタポタと血が垂れるひしゃげた木製バット。

 

本来の用途とはまるで違う使い方。

 

 

兄を見下ろす妹の瞳には何も映していなかった。

 

『大丈夫?お姉ちゃん』

 

感情の動かない瞳で姉を見る。

 

 

 

 

 

「………」

 

車内にて目が覚める。いまだに手に残る木製バットの感覚、兄の脳天をフルスイングした時の感覚。

 

常守さんの話では、子供だったから兄は死ななかっただけ、もう少し筋肉があったら殺していたかもしれない。

 

「……」

 

メールを確認し、倉田慎吾くんからの『助けてください』というメールを見る。

 

どうしたの?と聞くと廃棄区画にいると言っていた。

 

念の為に慎吾君が引き取られた養護施設に問い合わせると、祖母が養護施設に押し入り、彼を引き取ると言って聞かなかったそうだ。

 

その祖母が強引に慎吾君を連れて行ってしまったらしい。

 

車の後部座席に行き、護身用の武器を身につける。

 

更生施設は暴力的な潜在犯が多く、犯罪係数が200以上の潜在犯はやや凶暴的な一面がある。

 

(…ある程度鍛えて来た方だけど…)

 

170はあるとはいえ、錯乱した患者を制圧するのは正直手が掛かる。都合よく男性医師なんていないし、同僚の『彼』は鎮圧するために再起不能にしかねないぐらいの荒さがあるので安易に相談は出来ない。

 

それに、千代田区の更生施設は患者第一をモットーにしている。辺境の場所にある更生施設はヤバイが、患者の安全第一をモットーにされたらそれこそこちらも身が持たない。

 

社会的弱者は守られるべきという思考は今も昔も迷惑極まりない。なりふり構わず急所狙ってきたり噛み付いてきたりする奴の何が社会的弱者なのだ。

 

地図を出し、慎吾くんから言われた場所にマークをつける。

 

ライトを付け廃棄区画に向けて歩き始める。

 

ある程度廃棄区画を進んでいると…

 

「先生…」

 

ボソリと呟く声が聞こえて来る。

 

そちらに向けてライトを照らす。

 

「慎吾くん」

 

養護施設で見た時と違う服装で、ボロボロな服に短パンを履いていた。

 

重い鉄の扉の前で蹲っていた。

 

「…先生…」

 

「慎吾!どこにいるの!」

 

祖母の声が聞こえて来たと同時に扉が開く。

 

「!」

 

慎吾のそばに駆け寄ったであろう雪絵を見て驚く。

 

 

 

「白澤雪絵が行方不明になった?」

 

公安局に通報が入り、慎導監視官が呼ばれる。炯は別の仕事に出ており、それが終わり次第行くと言っていた。

 

『そう、通報者は彼女の友人の佐藤由美。ここ数日連絡が取れない上に更生施設にも来ていないという話があったわ』

 

霜月監視官は関わりたくないのか、単に彼女を毛嫌いしているのか嫌そうに言って来る。

 

『普通の行方不明者として処理されなかったのは…』

 

「…シビュラシステムに関係があるんですか?」

 

「!」

 

灼の言葉に霜月は眉を顰める。

 

彼女と同じ免罪体質を持っている慎導灼はシビュラに吸収される事はなく、今も普通に監視官としての仕事をこなしている。

 

しかし、彼女は幼い頃に兄を殴り倒してから事件らしい事件を起こしているわけじゃない。

 

彼女が初めて免罪体質だとわかったのは常守朱が担当した事件であり、当時はカムイなどと言った複数の事件の合間を縫って常守朱は彼女に会っていたという。

 

「…シビュラシステムは彼女を至急保護するように、と言ったわ…問題なのは…」

 

「雪絵さんがもし、姿を消した後殺人や事件を起こしてたら…」

 

灼はまっすぐ霜月監視官を見て

 

『シビュラはここぞとばかりに彼女を取り込もうとするでしょうね』

 

シビュラにとって免罪体質者を取り込めないという事は大きな痛手に繋がる。

 

『出たわよ』

 

唐之杜から報告が入る。

 

『彼女、公安局を出た後、誰からか連絡を受け取った様子があるわ』

 

公安局の前、車に乗る前に何か確認している様子があった。

 

『その後、彼女の車は自宅に帰らず、廃棄区画の方に向かって、ー区画の前に着いたわ』

 

そう言って場面が切り替わる。

 

メールを見ながら後部座席の方に移動するのがわかる。

 

「?何をしているんだ?」

 

後部座席に移動した雪絵は車内から割と大きめのナイフを出してポケットにしまう。

 

「!!」

 

『彼女、幼い頃から結構警戒心強い子だったみたいよ。まぁ?兄が雪絵ちゃんのお姉さんを襲った時、血まみれのお兄さんに警戒せずにいきなり背後からバットを振りかざすぐらい防衛本能アリアリの子だったから?これくらいのサイズのナイフを持っててもおかしくないと思うけど…』

 

廃棄区画に入ってから数分経った時、現れたのは50代ぐらいの女性と30代中盤程の男と20代の男だった。

 

『50代の女性は倉田智枝、30代の男で作業服を着た男は倉田優吾、20代の男は吉川隼斗ね、女性以外の二人は最近、サイコパスが上昇傾向にあるからセラピーを受けるように言われているわ』

 

「今すぐに現場に行きます」

 

「頼んだわよ」

 

「はい!!」

 

 

 

〜??〜

 

 

「先生っ!大丈夫ですか?先生!」

 

「ん……慎吾くん?」

 

ムクリと起き上がり、頭をさすりながら起き上がる。

 

辺りを見渡して見ると鉄格子が目に入る。

 

「??」

 

灰色がかった壁紙の殺風景な部屋。

 

鉄格子のギリギリまで行くと廊下の様子が見える。

 

(鉄格子だらけ…?)

 

廊下に続く鉄格子の部屋が無数にあった。

 

(ホステルみたいな空間だなぁ…)

 

2005年に流行った映画『ホステル』に似た何かを感じるが…

 

(…私ってやっぱりサイコパスだなぁ)

 

この光景を見てもこれからどうなるかという恐怖があんまり湧かない自分に苦笑いが溢れそうになる。

 

「先生…?」

 

「慎吾くん、ここに連れて来られた理由分かる?」

 

「…おばあちゃんが言ってたんだ、ここは…お金持ちの客を喜ばせる場所だって…お前が客を連れて来なかったら殺すって」

 

怯えながら言う彼に『あ、選ばれたんだね私』と理解する。

 

そこに怒りや絶望なんて湧かない自分はおかしいのだろうが。

 

「お金持ちの客を喜ばせる所……ホステルとかそういう所かなぁ、見せ物小屋みたいな感じだけど…血生臭い匂いはしないし…」

 

シビュラシステムがあるこの世界においてそんな無法なことが出来るのだろうか?

 

少なくとも廃棄区画は治安が整った地区に比べれば遥かに治安が悪いし、そんな所に足を踏み入れる人間なんてたかが知れている。

 

こういう犯罪もシビュラは見逃しているのだろうか?

 

人間の調達なんてそんな安易にできないと思ったのだが、更生施設から逃げ出した潜在犯やサイコパスが悪化した人間が、更生施設に行きたくないと最後の足掻きとしてここを選んでもおかしくはないだろう。

 

冷静に分析しながら檻の中から外を見る。

 

「ねぇ、慎吾くん、このこと知ってた?」

 

振り返って彼を見て言うと、彼はビクつく様子を見せた。

 

「し、知らなかった…」

 

震えながら言う彼に「そっか、にしてもあのおばあさんがこういうタイプなんだ…」と呟くと

 

「…先生、怖くないの…?」

 

「それは死ぬかもしれないなら怖いけど…まぁ、まだ死んでないから大丈夫だよ」

 

その言葉に驚く慎吾。

 

死ぬのは勿論怖いし嫌だ。むしろ好きな人間なんていないだろう。

 

すると、少し離れた場所から足音が聞こえて来る。

 

「慎吾くん、気絶したフリするから起きてるとか言わないでね」

 

そう言って慎吾のそばに行く。

 

 

やって来た男達は起きている慎吾を見ると近寄って行く。

 

「こ、来ないで!!」

 

そう怯えている青年と気絶したフリをしている雪絵に近づく。

 

ある程度近づいた男の一人の急所目掛けて蹴り飛ばす。

 

「がっ…!」

 

思いっきり股間を蹴られて悶絶している顔面を躊躇いなく足で蹴り飛ばす。

 

「起きてやが…!」

 

拳を振おうとする前に足蹴りして転ばすと、遠慮なく頭を足で踏みつける。

 

「ふぅ…」

 

近寄って生きているのを確認し、ホッとする。

 

「せ、先生…殺したの…?」

 

「殺してないよ、殺人は最高刑だから…あ、そういえば法律ないんだったっけ」

 

そう言って二人の男の服を触ると武器になりそうな物を取り、小さな窓から外に投げる。

 

「慎吾くん、逃げようか」

 

そう淡々と言う雪絵に驚く。

 

「ナイフは取られてないか、なんでだろう」

 

そう言ってポケットからナイフを出す。

 

気絶させられた時に気絶させた人間が持っている物を探らない辺り、ここの人間は殺しを目的にしていないだろうか?

 

外に出ようとすると、頑なに外に出ない慎吾を見る。

 

「どうしたの?逃げないの?」

 

「……行きたくない」

 

「どうして?ここにいたら殺されるかもしれないよ?」

 

「……」

 

不安に思っているのか動かない慎吾にため息をつきたくなるが、何も分からない場所を一人で探索する危険もある。

 

何より、この子の祖母に何かしらの関係があると思っていた。

 

「慎吾くん」

 

近寄るとビクつく慎吾。

 

「色相が濁るのが怖くて動かないの?それとも、殺されるかもしれないから動きたくないの?」

 

屈んで彼を見ると『両方…』と呟いていた。

 

「大丈夫だよ、慎吾くん、貴方のことは死なせないから。それに何回か伝えてるけど…私は人を殴ろうと殺人を犯そうとどんなことをしても犯罪係数は上がらないの。だから心配しないで?ね?」

 

微笑みながら言うと慎吾は小さく頷く。




主人公が兄を殴り倒したシーンのイメージは『ハッピーシュガーライフ』の松坂さとうが画家のお兄さんを●●たシーンをイメージしてください。


ちなみに続きは今日の15時投稿です。
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