触手と粘液は使いよう   作:ぬぇへへへ……

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 休日なので連日投稿也。

 本編とちょっと流れを変えます。ご注意を。
 まあ研究者なら興味を持たない訳が無いよなと。


十本目

「つまりお前達は四人のサンクタ人と一人の一般人に脅されておめおめと撤退した訳だな?」

 

 ロングスプリング地下。この地の統治者を父に持つ男、ドラッジは目の前の傭兵の報告を聞き、険しい表情で彼らを睨み付ける。

 己の目的の為に、彼等傭兵を雇ったもののあまりにも少ない成果を前に彼の機嫌は著しく急降下していた。

 

「サンクタ人はまあいいだろう。だが一般人相手にのこのこ帰ってくるとはどういう了見だ? いったい貴様らにどれだけの報酬を支払ったのか、忘れたわけじゃないだろうな?」

 

「いや、四人はサンクタではない。おまけに最後の一人も普通の人間じゃない」

 

 彼らに詰め寄ろうとしたドラッジはその言葉に内心の激情を更に押し殺しながら口を開く。無理もない。これまでに彼等の為に大金をつぎ込み、更には新たに『金と時間を食う神秘の探求者』にも資源をつぎ込んでいた。それにもかかわらず傭兵たちは目的を殆ど果たせず、探求者に至っては満足な成果すら提供されない。最も、時間を急いているドラッジと一定の成果が出るまでランニングコストを必要としている探求とは致命的なまでに相性が悪いため、このような事態に陥るのはは必然ともいえるが。

 

「フン! 大型の銃を持っていながらサンクタではない? 嘘を吐くならもっともらしくでっち上げろ!」

 

 押し殺しきれずに現れた怒りを孕んだ声に怯むことも無く、サルカズの傭兵は報告を続ける。

 

「一人は脳天をぶち抜かれ、もう一人は肩を貫通させられた。弓やボウガンの類には見えなかった上にサルカズはそんなに脆くはない。最後の男に至っては更に奇妙だった」

 

「………どういう意味だ」

 

「俺はそいつに吹っ飛ばされたが、その時の感触的に恐らく骨が折れた筈だ。だが、体制を立て直した時には何事も無く地面に立っていた」

「その上に、触手を出していた。あの様子から複数出せ、自在に操ることができる上に、一本一本の力も相当な筈。あのまま戦闘していれば手痛い被害を負っていた」

 

 その報告を聞き、思考の海に浸かっていたドラッジの耳にここ最近で聞き慣れて来た声が伝わる。

 

「――非常に興味深い話だ。是非ともこの目で見たいものだ」

 

 この地に迷い込んだ『神秘の探求者』、科学者のレヴィ・クリチコがそこにいた。

 奥で研究を続けていたものの、気まぐれを起こして彼等の会話を盗み聞きしていたのだろう。

 

「また何か失敗したのかと来てみれば……何とも興味を唆られる話が聞こえてたものだ」

 

 彼はその眼に興味と期待を宿らせ、自身のスポンサーであるドラッジを押しのけてサルカズの傭兵に詰め寄る。

 

「その男の身長は? 骨の再生方法は? 触手の種類は? 展開できる触手の数は? それらの能力はこの大地では常識的な事なのか? さあ、私の好奇心を刺激してくれ! 進化の神髄、その一端を見出せそうなその人物の詳細な情報を私に聞かせてくれ」

 

 体躯に差がありすぎるために全くビクともしない彼の身体を揺すりながら彼は問い詰める。

 

「仕事はどうした、科学者」

 

「全く、神秘の探求は科学者の至上の命題だというのに……『無粋な愚か者が』」

「素材が足りない。無から有を生み出せる境地にはまだ至っていない。故に素材を受け取りに来たのだよ」

 

 全く異なる物理法則、アーツと呼ばれた未知の現象、『たまたま入手していた』源石と呼ばれる物質が大量にあることにこれまでになく心を躍らせてはいたものの。設備も動力も、何よりも資金が必要な為に手を組んだが只々徒に自分の造り上げた創造物を食い潰し、挙句にはこれでは足りぬとわがままを言う子供そのもののドラッジの言動は、崇高な科学者を自負するレヴィには心底不愉快なものであった。

 しかし、非常に彼にとって腸が煮えくり返る思いではあるが、資金も物資も、『素材』でさえも提供して貰っている以上、『今』ドラッジの要求を聞き入れない程彼は愚かではない。目的の為にはこのようなことも必要なのだと理解しているからだ。でなければ、あのような辺境の廃棄されていたとはいえラボで研究できるだけの規模を得ることは出来なかった。

 故に、ドラッジの咎める声にレヴィは煩わしげにしながらも答えた。

 

「オリジニュータントはかなりの数を渡した筈だが、全滅させてしまったのかね? いや、大型の銃器を持った4人に『奇妙な男』がいたんだな…成程。成程」

『これはとんだ傑作だ! よもや友人たちもこの世界に来るとは! いや、私が此処にいる時点で彼らが此処にいる可能性も考えるべきだったか』

 

「何を呟いている? 仕事に戻れ! さもなくばこの場で惨たらしい死をくれてやる!」

 

 盗み聞いていた会話を思い起こし何やら呟いていたレヴィにドラッジは苛立ちのままに言葉をぶつける。

 一刻も早く、この地の支配権を入手しクルビアからの支援者との契約を果たさなければ。契約の履行をしなければどうなるのか、その焦りが彼を急きたてていた。

 

――領主と衛兵を全員排除すればこの地の領主はこの私だ。それだけだというのになぜこうも上手くいかないっ!

 

 ドラッジの怒りとも焦りともとれる表情を見ながらレヴィは内心の侮蔑を隠し口を開く。

 

「彼等がこの地にいるならば私の創造物があっさりと全滅したのも頷ける。その上、不確定要素も加えればアレだけの量では足りない。か」

「良いだろう。非常に不本意ながらペースを上げよう。しかし先に渡したものよりも質も寿命も劣悪なものにはなるだろうが」

 

「……なら仕事に戻れ。四度目は言わん」

 

 お互いの価値観故に深い溝を作りながらも、片方は己の利益と契約。片方は倫理観と道徳心を投げ捨てた悍ましき神秘の探求の為。

 互いの目的の為に、互いを利用しあうのだ。何れ不要になるその瞬間まで。




 ま、この会話の数日後にはドラッジは裏切られるんですけどね初見さん(盛 大 な ネ タ バ レ)

イノー君のぶらり一人放浪記要る?

  • ん、要る。一つずつ順番に情報を流すべき。
  • ん、要らない。さっさと龍門に帰るべき。
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