触手と粘液は使いよう 作:ぬぇへへへ……
上を見れば青い空、白い雲。眼前は青い海に白い砂浜。静かな波音が心地よく耳に残る。肌を撫でる風は涼しく潮の香りを運び、太陽の熱で流れた汗を乾かしてくれる。
ここはシエスタ。当初の目的であり、リゾート地としてボリバルにあるドレッソスと並んで有名な場所だ。
いやぁ、此処に来た時*1は素っ裸だったからどうしようか悩んだもんだが、たまたま裏路地にいた親切なお兄さん方*2から快く服だけじゃなく金まで頂けたぜ。*3
サングラス越しの景色を眺めながら傍の机にあるドリンクをストローで吸い、ビーチチェアーに身体を預ける。
デカいイベントが既に終わっているにも関わらず、未だに残ってストリートライブをしているバンドの音楽が余韻を残すシエスタの喧騒が心地良い。
――――こいつがいなけりゃなぁ!!!
横に設置されたテーブルを見る。
「…溶けた」
真っ白な肌、真っ白な髪、『碧いおめめ』がチャーミングな『幼女』が垂れたクリームを一生懸命に舐め取っていた。
「ンなゆっくり食ってっから溶けるんだよ。ッあーもーちょっと待ってろ拭いてやるから」
何でこんなことになったのかねぇ……いや俺が殺し損ねたのが原因だけど。
まあ、殺し損ねたおかげでこいつが崩落した研究所から引っ張り出してくれたから何とも言えんが。
口周りと手に付いたクリームをふき取り、半分溶けかかったアイスクリームを受け取る。うん、普通のアイスだな。
…大丈夫なんだろうな? 此処で暴れられたらあの研究所の二の舞になるぞ。
「…この前も言った。私にその意思はない」
ナチュラルに脳内を覗くんじゃねぇよ。プライバシーもへったくれもありゃしない。
「わあってるよ。確か、俺が拒む理由を知りたいんだろ?」
小さく頷くチビッ子。テーブルに置いてあるドリンクに口をつけ――おっと。
「…私に年齢は関係ない。飲んでも平気」
「外聞を気にしろ。未成年にアルコールを飲ませる保護者なんぞ真っ先にしょっ引かれるわ」
タダでさえ身分証も無いし不法入国までやってんだ。更に罪を被せようとするんな。
しっかしどうすっか。此処を出るにしても地図とか車…は最悪要らねぇな。バックパックと交渉に使えそうな食料やら酒やら嗜好品の類があれば十分か?
ただなぁ……カネ。金だよなぁ。それらを揃えるにも金が要る。お兄さん方から頂戴した金じゃ心もとないし、なんかこう…いい仕事が無いもんかねぇ。治験とか検体の仕事以外で。
「なら丁度良いのがある」
チビッ子がある方向を指差す。その先にはストリートライブをしているバンド達。
………成程?
「お前、歌えるか?」
「……ある程度は」
うし、じゃあどっかでギターをレンタルするか。
罪状一つ追加。無許可でストリートライブ。警備が来る前にある程度稼いでとんずらするか。
▼ ▼ ▼ ▼
「戻ったわ。ケルシー」
ロドス艦内。指定された研究所内を捜索し終えたスカジはケルシーの事務室にいた。
通常なら報告書も提出するのだが彼女の場合、基本的にほぼ簡潔すぎる一文で終えていることが多いため、直接の対話で引き出す他無いのである。
「一通り研究資料を持ってきたのだけれど…本当にあの場所に手がかりがあるの?」
その問いに対し一通り資料に目を通し終えたケルシーは、今度はとある報告書を取り出してスカジに渡す。
それを怪訝な表情を浮かべながらも受け取り、報告書のタイトルを見て僅かに驚いた表情を受かべる。
それはイベリアで起きた災害に匹敵する事件、その調査報告書だった。
「約一年前、イベリア北部で発生した山脈崩壊の調査報告書だ。裁判所はすぐさま調査員を派遣したものの、国内の状況とその後の調査員の不調により全くと言っていい程調査が進んでいない」
報告書を見ると確かにケルシーの言った以上の事は書かれていない。枚数も数枚程度で収まるほどだ。それもそのほとんどが調査員の不調で埋められている。
報告書に記載されたものを見るに調査に当たった全員が似たような症状を引き起こし、同じく全員が命を落としている。
複数回に及ぶ嘔吐、一時的な回復。からの急激な不調。
苦悶と苦痛を訴えながら衰弱死して逝く調査員の様子が詳細に書かれている。
「……これが何か関係あるの?」
「その山脈の何処かに君が調べた研究所の支部、いやどちらかと言えば本部があったと思われる」
「君が持ってきた研究資料と研究員の日誌を見るに、他にもイベリア内部に支部がいくつかある」
君が調査したのもそのうちの一つだ。と続けながら地図を広げる。
「研究内容の重要度はさほど高くないものが多いが、どれも『深海教会』の影が見える」
スカジの手に力が入り、作られた拳の音が室内に静かに響く。彼女の表情も険しくなっていく。
「気持ちは分かるが抑えて欲しい。君が調査した場所は廃棄されていたようだが、他の場所もそうであるとは言い切れない」
「君の力は十分に理解しているが今は別の任務に―――」
「いいえ、そうではないわ」
背後の扉に顔を向け、彼女は呟やいた。
「歌が聞こえる」
彼女の耳にのみ確かに聞こえる、馴染の深い旋律。
そのまま弾かれるように彼女は部屋を飛び出した。破壊された自動扉を見つめ、ケルシーは無言で技術部に内線を入れた。
もしわかりにくかったら補足を追加します。
この世界って放射線っていう概念あるのかな…? 基本的にエネルギーは源石だよりだし、エネルギーとか兵器関連にしか殆ど使い道のない放射能の概念が無いんじゃないかなぁと愚考しております。
急募:合流するならどこ?(原作死亡キャラの生存に関わります)
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龍門(1098年10月頃)
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シラクーザ(1099年10月)