触手と粘液は使いよう   作:ぬぇへへへ……

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 初手から高評価がついて脳内でチピチピチャパチャパしている作者です。


二本目

 サンセット通り東1301号。入り口にペンギンの落書きのあるところ。そこがペンギン急便のボス、エンペラーの持つ拠点且つバーの一つ。『大地の果て』

 …毎度思うがボスの顔はどれぐらいあるんだか。ラッパーで? ペンギン急便のボスで? この移動都市とやらのボスに裏のボスとも面識がある。全く、とんだ人? の元に就職したもんだ。

 

「ボス、この酒―――」

 

「飲まなくても判る。そいつぁ、明らかに安酒だな。新入りの歓迎会にぁ似合わねえ。不意の来客用にとっておけ」

 

 最も、当の本人は歓迎会とかこつけて酒の選別にこき使われている始末だが、

 

「ったく、何が『酒は苦手』だこの野郎。全ッ然酔う気配も無ぇじゃねぇか! おい、ソラ!」

 

 エンペラーの言葉にはーいと応えて空になった俺のグラスに酒が注がれる。

 

「いや、ソラ先輩が注ぐ必要は……」

 

 俺が慌てて止めようとするが、ソラ先輩は気にせずに琥珀色の液体をショットグラスに注いでいく。

 

「……ボス、この酒は?」

 

「まあ飲んでみな」

 

 ニヤニヤと笑うエンペラーとクロワッサン先輩にエクシア先輩。

 それらを横目にショットグラスを煽る。

 グラスを近づけた瞬間に薫る独特でスモーキーな香り。

 舌にのせた瞬間に痺れるほどに強烈な味わい――いや歯医者の麻酔の味だこれ。

 

「…ラフロイグですか」

 

「知ってるのか。意外だな」

 

「前に飲んだことがあるので」

 

 昔の記憶の殆どを忘れていたが、これだけは飲んだ瞬間に思い出した。

 

「何やつまらんなぁ」

 

「ちょっと初めて飲んだ時のリアクションを楽しみにしてたんだけどなぁ」

 

 外野二人がブーブーと文句を言ってくる。これでも酒にはちょっと、ほんのちょっとだけ詳しいんだよ。

 

「すいませんね。リアクションが薄くて」

 

 チェイサーを飲んでエクシア先輩手作りのアップルパイをつまむ。うん、美味い。ただ、ウィスキーのお供にするのは如何なものかとは思うが。

 そういえば一つ聞いておかなきゃいけないことがあったわ。

 

「クロワッサン先輩にエクシア先輩」

 

「相変わらず堅っ苦しいなぁ、別に呼び捨てでもええんやで?」

 

「…こればっかりは性分、と言いますか、先輩方を呼び捨てするのは少し抵抗が、じゃなくてですね、聞きたいことがあるんですよ」

 

「何や?」

 

「カップラーメンの貯蔵は十分ですか?」

 

「…………」

 

 おいその縋る様な目をこっちに向けるな。エクシア先輩、アンタもか。二人揃って全財産叩いて何買った?

 

「…流石に二人分作れるだけの貯蓄は…ありますけど面倒くさいですねぇ」

 

「そんなこと言わんといてやぁ!」

 

「今更カップラーメン生活に戻れないよぉ!」

 

 ええい後輩に縋るな酒臭いのと良い匂いが混ざって気持ち悪くなるんだよヤメロ身体を押し付けるな柔らかいものが、あ、クロワッサン先輩のは、イッてぇ! 口に出してないのに何でバレた!?

 

「乙女はなぁ、異性の視線に敏感なんやで!」

 

「アンタが乙女? ・・・ッハ」

 

「お? ええ度胸やないの。表出よか、先輩としての力見せたるわ」

 

「ヤメロォ! タダでさえソラ先輩にも力負けしてるのにアンタ相手にしたら骨折どころじゃ済まねぇー」

 

 ガラン、とバーの扉についているベルで俺たちのバカ騒ぎは中断された。

 いかにもなガラの悪い顔つき。仕事中に俺の事を追っていた連中の片割れ、ペンギン急便に恨みを持っている破落戸連中だっけか。

 

「悪いが今日は新入りの歓迎会でな。この酒をくれてやるからさっさと帰りな」

 

「ほぉ~? 良いじゃねぇか。なぁ?」

 

「ああ、俺達も混ぜてくれよぉ?」

 

 エンペラーの丁寧な退場願いを無視してニヤニヤ笑いながらこっちに向かってくる連中。

 

「はぁ~…しゃーないなぁ」

 

 よっこらせと呟いてクロワッサン先輩と、それに続いてテキサス先輩も立ち上がる。

 

「お、なんだテメェ等が俺達の相手をしてくれんのかぁ?」

 

「こりゃ良い! ベッドの上で鳴かせてやるよぉ!」

 

 ゲラゲラと笑う破落戸連中。その下品な哄笑に俺のフラストレーションも溜まっていく。

 

「ブベッ!?」

 

 おっとうっかり。

 『何か』が当たった一人が吹っ飛んでドアをぶち破って消える。

 

「て、てめえー」

 

 惚けてたやつの一人が俺に吠えるがこれも吹っ飛んでいく。

 

「全く…折角いい酒飲んでたのにアンタ等のせいでダイナシだ」

 

 そう言って腕から生やした触手を振る。触手に纏わりついた粘度の高い液体が残りの奴等をまとめて外に吹っ飛ばしたのを見て、俺は席から立ちあがる。

 

「ちょいちょい、パーティーの主役は大人しくしてなって」

 

 エクシア先輩に肩を掴まれる。

 

「いやぁ、配達中に邪魔されてたんでねぇ。どうにも連中をボコボコにしないと気が済まないッス。エンペラー、良いですか?」

 

「今日の標語だ。『因縁つけられてんならさっさと清算してこい』」

 

 いや、朝礼の時は確か『健全な配達は健全な肉体と精神に宿る』じゃなかったか?

 ボスからの直々の命令だ。肩に置かれたエクシア先輩の手をそっと下ろして外に出る。

 どうにも今日の龍門の夜は肌寒い。バーの中と温度差に身体を少し震わせていると、復帰した連中がいきり立ちながら俺の前に立つ。

 

「テメェ…不意打ちたぁ卑怯な真似してくれんじゃねぇか」

 

「覚悟できてんだろうなぁ!?」

 

「切り落としたお前の首の前であの女共を犯してやる!!」

 

 おーおー怖い怖い。ナイフなんか出しちゃってまぁ…

 腕から無数の触手を生やし、腕に纏わり付かせる。その触手から更に触手を生やし、それを繰り返しながら形を整えれば――デカい腕の完成。

 ブヨブヨの質感と卑猥なピンク色が見事にマッチして気持ち悪さが倍増。それが無数に絡みついているので更に気持ち悪い。

 

「此処じゃ殺しはご法度何でね。仕方ねぇから拳骨一発とブタ箱行きで勘弁しておいてやる」

 

 触手を作っている様子を目の当たりにして理解できずに惚けている連中の頭に振り下ろした。




 ラフロイグ云々は作者の感想でございます。異論反論は受け付けます。
 ……あれは医者の麻酔の味だよね?

 簡易的な紹介コーナー

 伊能翔也…日本人。色々あって触手を生やせるしその触手から触手が生やせる。あと粘液を分泌できる。趣味は適当料理。時間があれば凝った料理に手を出している。金欠でカップ麺生活のクロワッサンを見てられなかったので弁当作って以来金欠の時以外でも集られるようになった。このままいけばバーの料理担当にされる。童貞。

 皆様の感想が作者の理性回復剤になりますので感想をよこすのです(傲慢)

イノー君のぶらり一人放浪記要る?

  • ん、要る。一つずつ順番に情報を流すべき。
  • ん、要らない。さっさと龍門に帰るべき。
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