触手と粘液は使いよう 作:ぬぇへへへ……
だったらもっと出してやろうじゃねぇかオラァン!!
車を走らせて数時間。俺たちはロングスプリングに辿り着いた。
取り敢えず、小隊の面々を数キロ離れたところにあるという彼女達のセーフハウス代わりのボロ小屋で降ろし、残っている物資を纏める準備を進めるらしい。
俺達は町で物資の補給としばしの休息をとろうということになったが………
「なんか変じゃないスか?」
宿屋の一室でモスティマ先輩と窓の外を見る。
町にいる衛兵の武装が異様に厳重になっている。それに伴って住人たちの気もどこか張り詰めた様子だ。話を聞いた感じだと、どうにも見たことのないモンスターが襲ってくるようになったらしい。
「見たことのないモンスター、ねぇ…どうにもキナ臭いね。私の経験だと、こういうのは大抵大きな厄介ごとの前触れなんだ」
ベッドの上で腰かけながら自分のアーツユニットを整備しているモスティマ先輩のその言葉に、俺の中の嫌な予感センサーが緊急アラートを鳴らしている。
俺達でどうにかなるような様子じゃないし、予定を早めてゴタゴタに巻き込まれる前にさっさと逃げ出した方がいいか?
モスティマ先輩に問いかける。
「う~ん……確かに街の騒動に個人が首を突っ込んで碌なことになった試しがないからね。君の判断はトランスポーターとしても、部外者としても正しい」
「だけど彼等はどうするんだい?」
「彼等も一緒に連れていきます。物資は粗方補充し終えましたし、先日も言った通り俺の分を抜けば――」
漣の音が強くなる。耳鳴りの中で声が強く聞こえる。
――遲斐お縲?謌代Λ繝九??謗医こ繝ィ
――蜷瑚?縲?菴墓腐縲?謌代Λ繝主」ー縲?閨槭き繝翫う
「イノー君?」
モスティマ先輩の声が聞こえた。漣の音は遠くなった。
「……大丈夫、大丈夫です…先日も言った通り、俺の分を抜けば大分持つはずです。アレぐらいあれば、次の都市までには持つ筈です。確かマッピングシステムと通信機器は直ったんですよね?」
頷いて応える先輩の眼にはやや心配の色が見える。
「大丈夫ですよ。少し長旅の疲れが出ているだけです」
それでもまだ色が消えることはない。やっぱりこんな気休めじゃ誤魔化せないか。
「…この際俺の事は置いておきましょう。早い内にこの街から抜け出す―――」
突然聞こえて来た怒号で俺達の話し合いは中断された。
外を見るとどうやら二つの集団が言い争っているみたいだ。
片方は普通の市民に見える。が、片方は顔の一部に黒い結晶が見える。あれが鉱石病に罹った奴か。
何やら大声で言い合い、手が出そうな激しさだ。
「ヤバそうじゃないスか?」
「……見て、あそこ」
先輩の指す場所。集団の後ろで眺めている大男。よく見れば布にくるまった大きなものを背負っているが…アレはなんだ? 農具にしてはデカいし、何より布で包んでいる理由がない。剣か、槍か…形状的に剣に見える。
怪しすぎる。タダの一般人があんなデカい剣を持っている理由がない。そんなもん持ってたら衛兵にしょっ引かれるのがオチだ。
いよいよ暴力にまで発展しかかっていた時、そこに小隊の一人、確か名前は―――ケッツさんだったか、盾を持っていた男が仲裁に入った。
それでも騒動が収まる様子もなく、彼がどこかに連れていかれるのを引き留める青年と、その後ろに残りの小隊の面々。
そこに来て、静観して見ている連中が動いた。
引き留めている青年に詰め寄り、脅し掛けるがそれに臆せずに何か反論している。
「行きましょう。彼等が巻き込まれる前に――」
時間は無いみたいだ。話している間にも大男は大布をはぎ取り、その下の凶器――大剣を抜こうとしている。
「―――~っ! すみません先輩! 俺首突っ込んできます!!」
窓ガラスを破り、触手を伸ばす。
大男の周囲に突き刺さり、俺の身体も引っ張られて突き刺さった先、触手の発射位置である此方に顔を向けた大男に蹴りを入れた。
吹き飛ぶ大男、鈍い痛み、へし折れた脚は一瞬で
また、漣の音が聞こえた。
――豎昴??蜷瑚?縲?讌オ轤ケ縲?霎ソ繝ェ逹?繧ッ縲?蝎ィ
ウルセェ、俺は人間だ。
身体的な疲れではない。己が人間性を蝕まれることに、理外の声に誘われ、其れ等に抗うことに精神を苛まれるのだ。
イノー君のぶらり一人放浪記要る?
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ん、要る。一つずつ順番に情報を流すべき。
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ん、要らない。さっさと龍門に帰るべき。