ただしこのキヴォトスはネットミームに汚染されてるものとする   作:流石兄者

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しばらく仕事が忙しく筆がとれない間に、なぜか文章が書けなくなっていました。
ネットで治し方を調べたら「いいから書け」「とにかく書け」と言われたので何とか書いてみましたが、今まで通りにかけたかはあまり自信ないです。

私はうまく書けたのでしょうか。心配だ…。


16話【下】バレなきゃ犯罪じゃないということは、バレたら犯罪だということです。

 

 

 やあ、人生初の銀行強盗チャレンジをしたら先客……いや、先強盗がいてたまげた鬼灯モカだよ。

 流石は硝煙の香りが充満しているキヴォトス。

 銀行強盗はキヴォトスで流行ってるってはっきりわかんだね。

 銀行を襲った経験が無い人、私ガチで危機感を持った方がいいと思う(マウント)

 

「警戒して。私達よりも先にこの銀行を襲った人がいる」

 

 シロコさんは人差し指を前に突き出しながらゆっくりと歩を進める。すぐあっち向いてホイで敵を吹っ飛ばせるようにしてるんだと思うんだけど、現場猫のヨシ! のポーズみたいでちょっと面白い。前方ヨシ! 

 

 だけどそれに和んでいる暇はなさそうだね。お客さんや職員さんだけではなく強そうな警備員ロボの人たちも倒されているのを見るに、この事態を引き起こしたのはそこらのモブじゃなくネームドの誰かだと思う。

 

 一体だれがこんなことを……。

 あれかな、『私こんだけ強いんならちまちま働いて稼ぐより銀行襲ったほうがよくね?』っていうことにだれか気づいちゃったかな? 

 そんなことしちゃあ、だめだろ! (マジメ君)と言いたいところだけど、お金目的ではないとはいえ私、現在進行形でしてるからなぁ……

 

 

 そんなことを考えながら進んでいると、倒れている人たちの中に友達を見つけた。顔の血の気が引いていくのを感じる。

 灰色を基調としたスーツ。その右手部分には青い線が入っており、胸には『RK800』の文字。この特徴的な服を着ている人を、私は一人しか知らない。

 

「カンナさん!!」

 

 思わずマグナムを取り落とし駆け寄る。犯罪真っ最中の今一番会いたくない人ではあったが、流石にぶっ倒れている友達をスルーはできない。

 

「カンナさん、大丈夫ですか!? いったい何が……?」

 カンナさんの頭を膝の上に乗せ、着ている白いコートの袖で顔の汚れをぬぐう。それに反応したのか、カンナさんが苦しそうに呻きながら目を開けた。

 

「警部補……!」 

「鬼灯モkゲホッゲホッ……私はⅯです(コードネーム)」

 アッブね! 思わずいつものノリで訂正しようとしちゃったよ! 

 私の言葉にきょとんとした顔をしたカンナさん。その後一瞬だけクスリと笑い、それでどこかが痛んだのか呻きながらも言葉を続けた

 

「変異体が…………いました」

「……変異体?」

 

 変異体ってなんだよアリスさんかぁ? まあ「枕がデカすぎます!」とか言っているから変異体みたいなもんだけどさ。

 でもあの子銀行襲ったりはしないと思う。結構遊んだりしたことあるけど、いい子なんだよね。割と煽ってくるけど。

 

「カンナさん! 変異体って何です!? パンちゃんでもいるんですか!?」

「変異体だ……! 止めろ……!」

 

 その言葉を最後に、ヘイローがふっと消えた。慌ててカンナさんの口元に顔を近づけると、息が当たるのを感じた。よかった、呼吸してる。

 私はそっと頭を撫でた後、コートを脱ぎそれを丸めて枕の代わりにしカンナさんを寝かせた。

 

「何か情報、手に入った?」

 

 代わりにあたりを警戒してくれていたシロコさんが聞いてくる。

 

「なんかやべー奴がいるらしいです」

「ん、見ればわかる」

 

 だよね。死屍(気絶)累々みたいな状態見ればなんかいるんだなっていうのはわかるよ。

 あの遺言残す的なシーンでなんも情報増えない事あるんだ……。

 

 その後、放り出したマグナムを拾いに行く途中でロケットランチャーを見つけた。キャノン砲ー! (レ)

 まじで異形の化け物がいたときには役に立つかもね。拾っておこ。

 ……私の身長とどっこいどっこいじゃないこれ? すごく……大きいです……(小並感)

 

 ロケランが私に対して大きすぎて大岩を運ぶ巨人エ〇ンみたいになりながらも、私は金庫室を目指し歩き始めた。うう……首が痛い。

 

 

 

 

 まるで自分の庭であるかのように迷いなく進んでいくシロコさんに頼もしさを感じながら付いていく。

 進むにつれ壁や床はだんだんと無機質なものになっていった。『お客様は』入れない部屋に近づいている証拠だ。

 本当に銀行強盗をやってしまっているという事実に緊張と興奮が高まる中、バン! という銃声とチュゥン! という跳弾の音がほぼ同時にきこえた。うわぁ~やっぱり怖ぇよぉ(レ)

 音の発生源は、曲がり角の先だ。銃声がするということは少なくともパンちゃんではないだろう。ランチャーを背中に背負い、マグナムを取り出す。

 そしてシロコさんと共に、そっと覗き込んだ。そこには

 

 

「ふむ、銃では無理か。どうやってあければ……?」

 

 金庫の前で悩まし気に立っているサオリさんがいた。サオリサン!? ナニィシテルンディス!!  

 

「うっそでしょ!? サオリさん!?」

「!? そこに誰かいるのか!?」

 

 やべ、意外過ぎる人物に思わず声が出ちゃった。

「ん、おバカ」という言葉と共に軽く頭を叩かれてしまう。正直すまんかった。

 

「あー、どうも。私のこと覚えてます? ミレニアムでお会いした……」

 

 そう言いながら二人で出ていくと、サオリさんは目を丸くさせる。

 

「お前たちは、先生甘々甘やかしボイス盗難未遂事件の時にいた……!」

 

 うーん、なんとも気の抜ける事件名だねぇ。

 

「あー、まあ、はい、そうです。その事件の時に居ました。あの時はお世話になりました」

「そうか、お前たちも5分で1億を稼ぎに?」

「……はい?」

 

 思わず反射的に隣に突っ立っているアニマンスナオオカミを見てしまう。

 ……あら? シロコさんも目をパチクリさせてるな。どゆこと? 

 

「あの、その情報はいったいどこで……?」

「ああ、実はな……ネットで見つけたんだ」

 

 自慢げに胸を張りながらサオリさんは語り始めた。

 

「ネットは素晴らしいぞ、こんなにもお得な情報も見つけられるんだからな」

 

 

 

 

 

 ──数時間前

 

 

「姫、なぜマダムは床で伸びてるんだ?」

「あ、サっちゃん。起こさないであげて。死ぬほど疲れてるの」

「なんか先生の配信が見れないことが頭にきて一人で光回線を引いたらしいよ。キーキーわめきながら電波探すマダム面白かったのに……」

 

 今サオリの目の前には、いつもの白いドレスではなく青いオーバーオールを着たベアトリーチェが疲労困憊によりぶっ倒れていた。その周囲にはドリルやケーブル、さらには『頭コハルでもわかる! 電気通信技師』という本まで散乱していた。

 ベアトリーチェの顔にあるたくさんの目。そのすべてが真上をむき、いわゆる『あへぇ……』状態となっている。

 アツコとミサキはそれをしゃがみながら愉快そうに眺めていた。

 

「こういう時の行動力凄いよね。『全ては虚しい……ですが、それは先生の生配信を諦める理由にはなりません!』だって」

「いや、言っている場合なのか? マダムの目すごいことになっているが……」

 

 何をどうしたらいいのかわからずサオリがおろおろとしていると、アツコは『Ⅿ』と書かれた赤い帽子を被せ、口を皿という漢字のようにして笑った。

 

「みてみて。ジェネリックマリオ」

「……ぷふっ」

「フッ……。ひ、姫、そこまでにしないと……」

 

 

「誰が髭の配管工ですってぇ……?」

 

 足元から聞こえてきたおどろおどろしい声。見ると、今まで虚空を映していた無数の瞳がぎょろりとアツコの方を向いていた。

 

「狙われてる……? (ノーマルスキル発動)」

「エホォッッ! ゲッホォッッ!?」

「大丈夫かミサキ!?」

「貴方また室内でスモークを焚きましたね! 今度という今度は許しません! あの広間にあるよくわからないオブジェに張り付けにしますよ!」

 

 殺気を感じ取ったアツコは仮面をつけ、煙幕の中に消えていった。対するベアトリーチェは勇ましい言葉とは裏腹によろよろと立ち上がり、壁に手をつきながら追いかけていく。

 残された2人は煙から離れ、一呼吸ついていた。

 

「まったく、2人とも相変わらずすぎる……」

「姫には後で注意しなければな。そういえば、ヒヨリの姿が見えないが」

「ああ、ヒヨリなら」

 

 そう言いながらミサキが指をさす。その方向に目を向けると、何やらパソコンを熱心に操作しているヒヨリがいた。

 

「あそこで回線の動作確認を「うわぁーん! サイトを覗いてただけなのになぜか小説を書くことになりましたぁ!」

 えぇ……?」

 

 突然椅子から立ち上がり泣きわめくヒヨリに、2人は困惑しながらも近づいていく

 

「どうしたのヒヨリ?」

「うぅ、スレッドでよさげな設定のお話を見つけたので続きが読みたいって書き込んだら『お前が書け』『いいから書け』と強要されて……」

「そんなことがあるのか。ネットとは恐ろしいな」

「いや、珍しすぎる例だから参考にしない方が……。そんなことよりヒヨリ、マダムから言われてたチェックは済んだの?」

「あ、はい! 有線ってすごいですねぇ。阿〇寛のホームページが爆速で開きましたよ」

「ほぅ。よくわからないが、すごいんだな」

「……もうそれでいいよ」

「リーダーも使ってみてください。私はこれからプロットを考えなければならないので。辛いですねぇ……苦しいですねぇ……」

「いや、無視すればいいんじゃ……」

 

 ぶつぶつと何かを呟きながら部屋から去っていくヒヨリ。それを呆れた顔をしながらミサキは追いかけていった。

 

 

「ふむ……仕事でも探してみるか」

 

 先生や『先生ファンクラブ』とやらからの援助があるので暮らしていくのには問題ない。だがサオリには金が必要だった。

 

「姫は花畑、ヒヨリは雑誌、ミサキは……鼻セレブだったか。マダムは後で聞いてみるとして。まずは購入できるだけの資金を集めねば……」

 

 それは皆にプレゼントを購入するためにだった。検索フォームに『金 短時間 稼ぎ方』と入力しサイトを眺める。

 だが、そんな都合のいい方法はないのかどれもこれも嫌な現実を突き付けてくるものばかり。

 いい加減『短期バイト』と検索し直そうかと思ったその時、とてもインパクトのある文章が目にとまった。

 

「なにっ5分で1億だと!」

 

 すぐさまクリックし閲覧し始めるサオリ

 

「銀行を襲う……? だがそんなことをしたらヴァルキューレに……。バレなければ犯罪にはならない? なるほど、そんなルールがあったのか。勉強になる」

 

 書いてあった内容はあまりにも暴論。しかし純粋なサオリはそれを信じ、まるでスポンジのようにいけない知識を取り込んでいった。

『嘘を嘘と見抜けない人でないと難しい』。今サオリはその言葉が生まれた所以を体現していた。

 

「ならば電撃戦をする必要があるな。装備を整え向かうとしよう」

 

 早速サオリは自室に向かい装備を整えた。そして外に向かう途中、ベアトリーチェに首根っこをつかまれたアツコに話しかけられる。

 

「あれ、サっちゃん出かけるの?」

「ああ、お金を稼いでくる」

「そんなに武装して、傭兵の仕事でも見つけたのですか? まあ、せいぜいケガしないように気をつけなさい」

「ありがとうマダム。行ってくる」

「そうだ、ついでにロ〇ヤルブレッドを帰りに買ってきてもらえませんか。切れてしまいまして」

「わかった」

「まだ諦めてなかったんだ。毎朝食べても変化なかったのに」

「崇高なんてなれるならなった方がいいでしょう。……やっぱり何か読み間違えましたかね? 確かにロイ〇ルブレッドと書いてあったような……?」

 

 一億円と書かれていた脳内メモにロイヤ〇ブレッドを書き加えながら、サオリは外に出る。

 今からサオリが銀行を襲いに行くとは夢にも思ってない二人は、彼女を見送ってしまったのだった──。

 

 

 

 

「というわけでここに来たのだが」

「絶対シロコさんが書きましたよね!? 5分で一億って!?」 

「ん、そういえば趣味仲間が欲しくて昔書いた。読んでくれてうれしい」

 

 やっぱりな(レ)これで違うって言われたら絶望するところだったよ。シロコさんが二人になったら手が付けられな……あれ? シロコテラーさん来る可能性あるじゃん。 

 お、恐ろしい! 悪夢じゃんね☆

 

「まて、書いただと?」

「そう。私が強盗団Xフォースのリーダーでブログの制作者。今日もここに稼ぎに来た」

「そして私がメンバーのMです。よろしくお願いします」

「そうか! 会えて光栄だ。私は錠前サオリだ。よろしく頼む」

 

 そう言って頭を下げるサオリさん。アリウススクワッドの環境がある程度まともになった影響かな。なんか世間知らずで純粋なおバカになってない? 

 

「ん、あなたもメンバーに入るべき。歓迎する」

「……いいのか?」

「強盗仲間はいつでも歓迎してる。仲間が増えて嬉しい」

「私はお金が目当てではないので、分け前が減っても大丈夫です」

「そうか、頼もしい仲間が増えるのはこちらとしても好都合だ。入らせてもらおう」

 

 うーん、この疑うことを知らないピュアっピュアぶり、なんか眩しいね。私も本来は純粋な幼女だったはずなのに、直視できないよ。

 仮面を貫通するほどの眩しさに顔を背けていると、シロコさんはサオリさんに向かって手を出し握手を求めた。

 

「ようこそ、Xフォースへ」

「ああ、よろしく頼む」

 

 うーん、今からでも名前変えられないかな。タイタニックって名前の船に乗ってる気分になるからさ。

 

 

 

 

「じゃあ早速開けちゃいますか」

 そう言いながら背負っていたカバンを下し、中から鋼入りのダン(埴輪のすがた)を取り出す。

 結局シロコさんにねじ込まれたんだよね。酷くない? 

 

「あれは一体……?」

「ん、ミレニアムで開発された最新型の埴輪偽装型超高性能高周波式ドリル。大人のおもちゃに偽装してるから職質されても安心」

「面妖な……変態技術者どもめ……」

 

 ミレニアムの子たちまじでごめん。後でこれ分解させてあげるから許して。

 心の中ですさまじい風評被害を被った子たちに謝罪しながら、私はスイッチを『自殺』にした。

 後はこれで金庫のロックがかかっている部分を液状化させれば開くだろう。

 埴輪の先端を金庫に襲当てようとしたその瞬間

 

 

 

「エ゛ゥ゛エ゛ゥ゛エ゛ゥ゛ア゛ァ゛イ゛ィ゛イ゛ィ゛」 

 

 

 スピーカーを通したようなノイズが混じった声……声? が私の動きを止めた。

 なに? 近くに国境でもできた? 

 

「リーダー、今のはいったい……?」

「! まさか!」

 

 シロコさんが何かに感づく。だが私に正体を教えてくれるその前に、大音量で答えが流れてきた。

 

「銀行強盗犯に告ぐ! お前たちは我々ヴァルキューレが完全に包囲した! もう逃げ場はないぞ、観念して投降しろ! そうすれば痛い目には合わない!」

「先輩、最初のあれなんだったんです?」

「え? ただのマイクテスト」

「おかしな人だ……」

 

 おっそうだな(同意)……いや言ってる場合じゃないね!? 

 

 

「まずい、警察が来たぞ!」

「そんな!? だって、通報する人なんて誰も……! 誰も……?」

 

 あれ、待てよ? さっきカンナさん見たな。あれってもしかして巻き込まれたんじゃなくて、通報受けてすっ飛んできたけど返り討ちにされただけだったりする? 

 ……あーやばい! (ヘドバン)狂うぅ^~~~! 

 

「どどどどうしましょう! もうおしまいですぅぅぅぅぅ!」

「捕まったらスクワッドの皆に迷惑がかかる。ここは金は諦めて引き上げないか?」

「そ、そうです! 袋に詰めてる時間もないですし……リーダー?」

 

 シロコさんの方を見ると、顔を俯かせていた。ギュッと、銃のグリップを強く握る音がかすかに聞こえる。

 

「ん。私は、銀行強盗の先輩。後輩の初めての銀行強盗は、成功させてあげたい……」

 

 そう言いながら顔を上げる。その目は『覚悟』に満ちていた。

 

「私は今まで27回もの強盗を成功させてきた。今まで乗り越えられなかったトラブルなんて……たった一度だってなかった!」

 

 そう言いながらシロコさんは金庫に向き合う。

 

「一分でいい。時間を稼いでほしい」

「あの、一体何を……?」

 

 

「ん、金庫ごと頂く」

 

 

 

 

 

 

「っ! 隊長! 犯人と思わしき人物が出てきました!」

「なんだと!」

 

 銀行から出てきた顔の下半分を覆い隠した女。無数の銃口に囲まれているにも関わらず、その歩みはゆったりとした余裕のあるものだった。

 その手には人質と思わしき幼い女の子が抱えられており、その顔には日曜の朝にやっている魔法少女のお面がかぶせられていた。あれはまさか……! 

 

「クソッ、人質か!」

「まずいですよ! 早く何とかしないと人質の子が撃た……れ……?」

「? どうした?」

「あの女の子、何を突き付けられてるんだ?」

「何って銃じゃないのか?」

 

 そう聞きながらも隠れていたパトカーから身を乗り出し覗き込んでみた。

 女の子に突きつけられているピンク色の細長い物体。最初はピンク色に塗られている銃かと思っていたが、よく見るとなんか卑猥な形をしており、その上振動している。つまり、あれは……

 

「バイ〇……!?」

「おい、うそだろ!!? (イーサン並感)」

 

 信じがたい事実を裏付けるように、恐怖に耐えきれなくなった幼女の叫びが轟いた。

 

「誰か助けてええええええええ!!!!!! これ(鋼入りのダン(スティーリー・ダン))を押し付けられたら(物理的に)逝っちゃう! (液状化して)逝っちゃうのおおおお!」

「近づくな! こいつがどうなってもいいのか!?」

「ほんとにどうなるんだ!?」

「そ ん な も の(SCPー297)私に近づけないでええええええ!」

 

 たとえ相手が超能力者であろうとも、市民の安全を守るため勇敢に戦ってきたヴァルキューレのモブちゃん達。

 しかし今この状況においては、まるで指揮官のいない新兵のようにオロオロと戸惑うばかりだった。

 

「隊長! あのおもちゃだけしか持ってないなら制圧できます! 突撃しましょう!」

「バカお前! そんなことしてあの子がェ、エッチな目にあったらどうするんだ! 上司になんて報告すりゃあいい!? 『下手に突撃したせいで幼い女の子の心に一生癒えない傷がつきました。サーセンwww』なんてお前言えんのか!?」

「すいません! 言えません!」

「ど、どうしよう……。あんな変態、相手にしたことなんかないよぉ……」

 

 そんなヴァルキューレモブたちを尻目に、小声で2人は会話していた。

 

(いいぞモカ、見事な演技だ。将来は俳優になれそうだな)

(自殺、自殺になってる! 戻して! せめて強にして!)

(? すまん、なんの話だ?)

 

 そんなこんなで混沌に満ちていく現場。そこに──

 

「あっちむいてぇぇぇぇぇ────ホォォォォォォイ!」

 

 

バコォ!!  

 

 

 太陽の光を受け鈍く輝く金庫が、壁をぶち破りながら現れた。

 

 

 

 

 ヴォーすっげぇ! ほんとに金庫ごと盗んだ! 

 降ってきた金庫は私たちと警官たちのど真ん中に落ち、二つの勢力を分断させた。

 本来そこにあるはずのないものが堂々とある。その異質さが異様な雰囲気を漂わせている。

 それに呑まれたのか、ヴァルキューレの子たちは全く動けていなかった。

 

「サオリさん。手筈通りに」

「わかった」

 

 サオリさんは私を下ろし私たちが乗ってきたバンに向かって走った。

 あー怖かった! ドリル使って相手脅すって言ってた時点で成功するか怪しかったのに、命の危機まで訪れるとはね。

 

「! 人質が解放されたぞ!」

「待ってて、今保護する!」

 

 そう叫びながらこちらに向かってきてくれる。ヴァルキューレの人達。優しいね。

 

 

 

 

 だまして悪いが強盗なんでな。どいてもらおう。

 

「M!」

 

 その言葉と共に投げられたロケットランチャー。私はそれをキャッチし、包囲網に向かって構えた。

 

「え……?」

 

 きこえる困惑の声を無視し、私は脱出するための風穴を開けるためランチャーの引き金を引くと。

 

 

 

 そのロケットランチャーからは、弾が28発出てきた。

 

ボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボ!!!!!! 

 

「きゃああああああああああああ!?」

 

 突然肩に襲い掛かった無数の衝撃。それと共に発生した硝煙のカーテンは私をパニックに陥らせるのに十分なものだった。

 前が見えない! 制御できない! なんだこのトンデモ兵器!? EDF製か!? 

 

 反動と振動により砲身があちらこちらに振り回されどこを狙っているのか見当もつかない。だがせめて後ろには向けないように懸命に制御を試みていた。

 するとふとランチャーが大人しくなり、何も吐き出さなくなる。よかった。弾切れみたいだね。

 私はランチャーを投げ捨て煙の中から抜け出す。どうだろう、突破口はできたかしら……? 

 

 

 見てみるとそこには絨毯爆撃でも喰らった? と言いたくなるような、炎上して廃車になった車の墓場が出来上がっていた。

 遠くの方には吹き飛ばされ目を回しているヴァルキューレのモブちゃんが、運よく被害にあわなかったモブちゃん達に回収されている。

 

「よくやったM、乗り込め!」

「ん、Good Job」

 

 その言葉と共に傍に到着するバン。ち、違うんです。ここまでやるつもりはなくって! 

 ご、誤チェストにごわすよ……。

 

「あ、悪魔たん……」

 どこか遠くの方から聞こえてきたその言葉に全力で否定したい気持ちを振り切り、頭を下げながらもバンに乗り込んだ

 

 

 

 

 

 法定速度なんて知らねー! 糞して寝ろ! と言わんばかりの走りを見せるバン。

 その後ろを出来の悪いラジコンのごとくあちこちにぶつかりながら金庫が追従していた。

 バンの後ろのドアをあけ放ち、金庫に対してシロコさんは能力を振るいまくっていた。

 

「あっち向いてホイ! あっち向いてホイ!」

 

 ぶつかっている理由は、金庫が直線状にしか進めないからである。

 なにあの邪悪な塊魂みたいなの。

 

 

「金庫が、金庫が街を爆走してます!」

『なに!? 寝言は寝て言え!』

「本当なんです! 金庫が── 

「あっち向いてホォイ!」

 ああああああああ来るううゥゥゥゥゥゥ!!!」

 

 助手席から顔を出して後ろを見ると、パトカーの真横に金庫が体当たりをかまし、一瞬で廃車にする光景が見えた。

 まるでワイルドスピードメガマックスみたいだぁ……。バレたら矯正局行きでしょこれ。

 初めは私もマグナムを構え、追走してくるパトカーを撃とうと思ってたけどこれ私要らないな。

 体を引っ込め、サオリさんのナビゲートに戻る。

 

「あ、次の交差点を右です」

「右だな。わかった」

 

 後ろの惨状とは打って変わって和やかな空気が漂う運転席。

 うーん。こんなに緊張感無いものなのかな? 

 

 

 

 

 

 しばらく走っていると、後ろからは金庫がガコンガコンところがる音しかしなくなった。

 どうやら追っ手を巻いたらしい。

 

「ん、この先で金庫を開けて中身をバックに移し替える。さすがに学校に金庫ごとは隠せない」

「確かにそうですね。サオリさん!」

「わかった。止めよう」

 

 

 バンが止まり、皆車から降り金庫に集まる。

 対キヴォトス人を想定して作られているためか、あちこち傷だらけではあるが大きな損傷は見当たらない。

 あれだけ転がしたのにすごいなこれ。

 

「じゃあ、開けますね」

 早速鋼入りのダンを金庫の扉に押し当てる

 ものの数秒で堅牢だった金属がドロッと溶け、施錠部分が崩壊し容易に開けることが可能となった。

 シロコさんがまだ機能している取っ手の部分をつかみ、重い扉を引っ張ると……

 

 そこには転がされていたせいか散らばってはいるが、それゆえに紙幣の海ができていた。

 こちらが濃厚無双金庫お金トッピングです! うっひょ~~~~~~! 

 

「わあ……! すごい! まるでお札の海です!」

「おお! これだけあれば花畑や雑誌やロイヤル〇レッド、鼻セレブだっていくらでも買える! 

 銀行強盗とは最高だな!」

「ですね! 強盗サイコー!」

 

 感極まってサオリさんと一緒に小躍りしてしまう。

 その様子をシロコさんは腕を組み、うんうん頷きながら眺めていた。

 

「いったい幾らくらいあるんですかね?」

「ん、二百那由他飛んで三万円」

「な、なゆた……?」

「あはは、そんなにはないですよぉ!」

 

 シロコさんが真顔で放つギャグに笑いながらも、金を詰め込むためのボストンバックを取りに行くためにバンの方を振り向く。

 

 

 

 

「……やっと見つけたよ。モカ」

 そこには、見たことないくらい真剣な顔をした先生が立っていた。

 

 

 

 

 

「あぇ……」

 急速に喉がカラカラになっていくのを感じる。まずいまずいまずい! なんで先生がここに!? 

 ていうかもう私だってバレとる! 仮面してるのに! 

 

「ん、人違い。この子はモカじゃない」

「いいや、わかるんだよシロコ。私は先生だからね」

「ん!?」

「君はサオリだね? ダメじゃないか、強盗なんかしちゃ」

「いいいいいや? わ、私は錠前サオリではないぞ!」

 

 助け舟を出してくれたシロコさんやサオリさんまで正体がばれていく。

 本編では制服着たままでヘイローすら隠さずに強盗してもばれなかったのに、おかしいね? 

 い、いや、まだ助かる! ゴー★ジ〇スさんだってそう言ってくれるよ! 

 えーと、Mって名乗ってたから……

 

「初めましてメリ。私はメインヒロインのメリナだメリ」

「ん、私がメインヒロイン(対抗)変な語尾着けたって無駄」

「そっか。じゃあ、これは何だい?」

 

 私のかんぺき~な擬態を華麗にスルーしつつ先生が取り出したのはシッテムの箱。

 それを少し操作した後、私にシッテムの箱を差し出してきた。

 受け取り画面を見てみると、そこには前世で見慣れたガチャ画面が映っていて。

 

 

 

ピックアップ募集『金庫強奪のド迫力』

 

 シロコ ★★★(銀行強盗)

 モカ ★★(銀行強盗)

 

 

「えええええええええ!?」

 

 ずるいぞ勝舞兄ちゃん! こんなの言い逃れのしようがないじゃんね!? 

 え、うそ、待って! 紹介映像で私がメモロビ顔してる! やだ、なんか恥ずかしい! 

 しかも星2!? 水着やらクリスマスやら差し置いてこれが!? 嘘でしょ!? 

 

 私が情報の洪水でフリーズしてる間に、先生はかがんで私に目線を合わせてくれていた。

 

 

「モカ、君の事情はシュロから聞いたよ。路地裏で生まれたという話を」

 

 そう話を切りだした先生の顔は、どこか申し訳なさそうだった。

 待って。それ違うの! 違くないけど違うの! 

 

「聞いた時はとても驚いたよ。モカはとてもしっかりしているから、そんなこと夢にも思わなかった。

 だけどその話を踏まえれば、大人び過ぎていることや今回のことも納得がいった」

 

 そう言って先生は私の目を見据えた。仮面越しだと言うのに、まるで蛇に睨まれたかのように体が動かせなくなる。

『あ、あれ嘘じゃないけど嘘なんですー』なんてとても言えそうにない真剣な目だった。

 

 

「いいかいモカ。どこかを襲ってお金を奪うことは犯罪。つまり悪いことなんだ。

 ……今まで、私が、先生がそばに居ながら教えることができなくて、ごめん」

 

 あ~~~~すっごいいたたまれない。誰か助けて。

 その言葉を練りに練りこんだ視線をシロコさんたちに向けてみる。

 その目線を受け取った2人は大きく頷いてくれた。まじ? 通じた!? Xフォースサイコー! 

 

 

「大丈夫だ先生。バレなきゃ犯罪じゃないんだそうだ」

「ん、銀行強盗は良い。私達にはこれが必要なの。

 好きに生きて、理不尽に死ぬ」

 

 駄目みたいですね(諦め)はぁ~つっかえ! 

 

「……そっか。じゃあまずは──

 

 そう言いながら、先生は懐から大人のカードを取り出した。

 

いつも通り殴り倒してから説得させてもらうよ! 

 

 教師の姿か? これが……? 

 

 

「モカ、君と一緒に考えたこの部隊で!」

 

 

 うお、まぶしっ! 

 大人のカードから閃光が放たれ、一時的に視力が奪われる。

 視力が回復するまで両腕で目を庇う。

 視界が鮮明になり、恐る恐る前を見ると……

 

銃を持たない6人の生徒がいわゆる攻殻立ちをしていた。

 あっ一瞬で数的有利がひっくり返った! 

 やっぱし怖いスね、大人のカードは。目的のためなら手段を選ばない。ポーカーフェイスでチート使うスよ(地下生活者並感)

 というか、あの6人ってまさか……! 

 

 

「まさか、あのメンバーは!?」

「知っているのモカ?」

 

「あれは私と先生が冗談で作った……鉛玉や弾頭、炎が飛び交うこのキヴォトスで、あえてステゴロで戦う狂人だけで構成されたクレイジーチーム!」

 

「機動殴打部隊 、シャーレパンチングセンター(S P C)!」

 

 

「狂人とはご挨拶ですね。私は超天才清楚系美少女物理学者ですよ?」

 特異現象捜査部部長 明星ヒマリ 『財団神拳』

 

「気に入らない奴を拳で捻じ伏せ、黙らせる。私の理想のチームです」

 連邦生徒会防衛室室長 不知火カヤ 『アームストロング上院議員』

 

「マコトちゃんに『アロマ暴走特急』の施術中だったのだけれど……」

 万魔殿所属議員 京極サツキ 『霊幻新隆』 

 

「ばあっ‘‘超危険生物‘‘仲正イチカっス」

 正義実現委員会 メンバー 仲正イチカ 『灘神影流』

 

「……先生。私あまりこのチームにはいたくないかなーって」

 ティーパーティー パテル分派首長 聖園ミカ 『トリニティ最強生物聖園ミカ』

 

「趣味で筋トレをやっているものです」

 ミレニアムガクエントレーニング部部長 乙花スミレ 『筋肉の悪魔』

 

 

「全員、突撃イイイイイイ!」

 

 普段生徒一人一人に的確な指示を与えている先生からは絶対出ないような言葉が響き渡った。

 その言葉を受け、6人全員がこちらに突っ込んでくるのが見える。

 やばい、ちびりそうなくらい怖い。

 

 

「こ、来ないでええええ!」

「ッ! 狂ってる!」

「ん、地に伏せて」

 

 突撃してくるバーバリアン達に向かって全力で迎撃を行う。

 状況的には長篠の戦いだけど、すげー負けそうな気がする! 

 

「いいエアガンですね!」

「なんか(痛覚)忘れちゃってんだ」

「ひぃ! 私は別に弾を防ぐ方法なんて持ってないわよ!」

 アサルトライフルの射撃はカヤさんの硬化した体やスミレさんの筋肉の鎧に阻まれ、その後ろに隠れていたサツキさんまで届かず

 

「きゃあ! もーびっくりしたじゃんね!」

 あっち向いてホイによる地面への叩きつけは、トリニティ最強生物ゴリラには効かず

 

「瞬時に弾道を計算し、最も当たる確率の低いコースを選ぶ『確率論的回避』。ふふ、超天才清楚系美少女物理学者にしかできないわz

「しゃあっ弾丸すべり!」

 え、ちょ、変数が──エイミ゜ッ!」

 

 私の全力で神秘を込めた射撃は、ヒマリさんにしか当たらなかった。

 あれ、1人脱落したな。やったぜ。

 

「あっち向いて──「対超能力者ドロップキック!!!!」ん゛っ!!」

 

 だけど、接近されてしまった。肉弾戦を最も得意とする人たちに。

 

「全部めちゃくちゃにしたーい! 何もかも消し去りたい!」

「がはっ! す、すまない。みんな……」

 

 これはもう、負けちゃったかな。

 

「ゴングを鳴らせっ戦闘開始っス!」

 

 だけど、せめてぶっ倒れるまではXフォースとして戦おう。

 銀行強盗をやってみたいっていう私のわがままに最後まで2人は付き合ってくれたから。

 

 私はあるものを握り締め、掌に神秘を纏わせる。

 殴りあいを楽しみにしているのか、満面の笑みを浮かべながら開眼しているイチカさんの顔目掛けて拳を放った。

 

「へっ下種の拳などかすりもしないっス」

 

 フォームなんてあったもんじゃない拳。それは首を傾けるだけでよけられてしまう。

 だがこれでいい。私のド素人パンチなど当たりはしないことは自分が一番よくわかってる。

 それを想定して仕込みをしたのだ。

 

は──っ灘神影流! 

「なにっ」

 

 私の言葉に驚くイチカさん。その瞬間、突き出した拳で握っていたチャフグレネードがイチカさんの耳元で炸裂する。

 

「鼓爆掌!(大嘘)」

「はうっ な、なんだぁっ」

 

 本家とは似ても似つかない耳元で炸裂音を響かせるだけのこの技。だが確かに、イチカさんを怯ませることに成功した。

 よし、このまま仕留める! 

 

 さらに拳を振りかぶり、追い打ちしようとした。その瞬間。

 

 

私の顔にソードオフショットガンが突き付けられた。

 

 

「しゃあっ灘神影流 ショットガン!」

「は?」

 

 これマジ? ルール無用すぎるだろ……。

 

 ゼロ距離から襲いかかる轟音、散弾、炎。

 それら全てを顔面で受け止めた私が最後にできたことは、

 

「熱いメリィィィィィィ!」

 

 最後まで私は鬼灯モカではないと誤魔化すことだけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 架空生徒紹介

 

 砂狼シロコ(銀行強盗)

 ・EXスキル メガでマックスな逃走劇 コスト6

 金庫を召喚。7秒間縦横無尽に戦場を駆けまわり敵を轢きまくる。その間は行動不能になる。

 接触した敵に攻撃力の465%ダメージ/確率で気絶を付与

 ・ノーマルスキル 狂乱の砲撃

 20秒毎に発動。モカが登場し扇状に28連ロケットランチャーを発射。

 ・パッシブスキル 仲間を得た喜び

 攻撃力が増加。

 ・サブスキル Xフォースの絆

 同じ部隊に自身を含めて編成されているXフォースのメンバー(モカまたはサオリ)生徒が2/3人以上の場合、それぞれ攻撃力を30%/50%増加

 

 

 鬼灯モカ(銀行強盗)

 ・EXスキル 前代未聞の脅迫 コスト8

 サオリが登場しモカに鋼入りのダンを突きつけ、相手を脅す。この間行動不能になる。

 画面内にいる敵全員に攻撃力の100%分のダメージ/恐怖(3秒)を与える。これを3秒おきに3回くりかえす。

 ・ノーマルスキル 『先生』の苦労を知る者

 戦闘終了まで戦闘不能になっていなかった場合、ランダムな育成素材やクレジットを拾ってくることがある。スキルレベルが上がるとレア度や金額が上昇する。

 ・パッシブスキル 倫理観喪失(一時的発狂)

 攻撃力が増加。

 ・サブスキル Xフォースの絆

 同じ部隊に自身を含めて編成されているXフォースのメンバー(シロコまたはサオリ)生徒が2/3人以上の場合、それぞれ攻撃力を30%/50%増加





イラつくぜ…強盗に…憧れたんだ……!!


要注意団体S P C(シャークパンチングセンター)
http://scp-jp.wikidot.com/groups-of-interest
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